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嘘つき少女。或いは、ライアーマリーの冒険。

●嘘つきな彼女
 彼女は生来の嘘つきだった。右を左と言い、上を下と言い、何を聞かれても嘘をつき、何を話すにも口から出まかせを言う。そしてなにより、彼女はずっと生きていると言い張って、その実、その体は血が通わぬ死者のそれであった。
 アザ―バイド(ライアーマリー)は、ただただ呼吸をするように嘘を吐く。そして、恐ろしいことに、彼女の吐く嘘は時として現実に影響を及ぼすのだ。
 例えば、彼女が火事だと言ったその時、彼女の周囲で火事が起こる。
 例えば、彼女が地震が起きたと言ったその時、大きな地震が起きた。
 嘘を吐かずに生きればいいだけの話しだが、どういうわけか、彼女は嘘を吐かずにはいられない。嘘を吐く為の存在として、生まれてきた。
 嘘を真に。それが彼女の能力だ。
 しかし、彼女が何度生きたいと口に出した所で、その願いだけは叶わない。彼女の身体は死体のままで、永い永い時を過ごして来た。
 いい加減、全てが嫌になったのだろう。
 偶然見つけたDホールを潜って、彼女はこの世界へとやって来た。とあるショッピングモールの上階、おもちゃ売り場のすぐ近く。
『嫌だな……』
 思わず、ライアーマリーはそう呟く。
 次の瞬間。
 おもちゃの周りに、黒い影が纏わり付いた。影は、おもちゃのディティールを醜悪なそれに変える。
 熊のぬいぐるみは、半壊し、腹や口から綿が零れる。
 ロボットの人形は、錆色に染まった。
 ラジコンカーは、黒い影に包まれ暴走を始める。
『あぁ、まただ……』
 自分の言葉は、全て嘘だ。だけど、本当になる。
 それが嫌で、逃げ出したのに。
 生来の業からは、逃れられない。
 おもちゃの群れが、モールの客を追いたてる。
 おもちゃの群れは、ライアーマリーを襲い始めた。
 嫌だな、と再度思う。
 ライアーマリーは口を噤み、おもちゃ売り場に座りこんだ。

●ライアーマリーの嘘
「彼女は嫌だな、と言った。それはつまり、羨ましいと、そう言う意味」
 嘘つきな彼女の口から出る言葉は、本心でないことが多い、と『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は言う。アザーバイド(ライアーマリー)の来訪と、その言葉に寄っておもちゃ売場は混乱状態にあった。マリーの言葉に呼び寄せられた、影のようなアザーバイドが、おもちゃに取り憑き、人を襲い始めたからだ。
「おもちゃの襲う対象は、一般人だけではない。マリー自身にも、おもちゃ達は襲いかかっているみたい。マリーも現在、冷静な判断力を失いながらもおもちゃに対抗しているけど、このままでは手数で押し負けて、その命を失うでしょう」
 今回の件は、マリーによって引き起こされた事態ではあるが、マリーが亡くなったからといって解決するものでもないのである。
「こちらの世界に留まってもらうわけにはいかないから、マリーには元の世界に還ってもらいたいものね。できれば、自主的に……。最悪の場合は討伐も視野に入れないとかもだけど」
 できることなら、血の流れない事件の解決が、望ましいではないか。
 そう言って、イヴは集まったリベリスタ達の顔を見渡す。
「マリーの能力は、嘘を本当にする、というもの。自分の力を恐れてしまっている現在、その効果や威力は制限されている状態にあるわ」
 それはつまり、マリー自身がある程度自分の力をコントロール出来るようになりかけている、ということだ。
 その事実に、マリーは気づいていないようだが、誰かの口添えなりがあれば、そのことを自覚するかもしれない。
「ちなみに、マリーの体は死者のそれなので、討伐するにはバラバラに分解する必要がある」
 嘘を本当にする能力を恐れ、ふらふらと旅に出た死体の少女。
 彼女の嘘を消し去って、元の世界へと還ってもらう。
 それが今回の任務の内容だ。
「余裕があればでいいけど……。マリーに声をかけてあげて欲しい。無理なら仕方ないし、マリーが還りたくないというのならこの世界で命を終わらせることになるけど……」
 少しだけ、彼女に同情するわ、と。
 そう言ってイヴは、仲間達を送り出した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年06月29日(日)22:45
おつかれさまです、病み月です。
今回は、異世界から来た嘘つき少女の物語です。
嘘を本当にする能力に悩み、この世界に迷い込んだ少女を救い、元の世界へと送還する任務。
選択次第で、結末は大きく変わるかと思います。
それでは、以下詳細。

● 場所
ショッピングモールの上層階にあるおもちゃ売場。現在、客は混乱状態にあり、エスカレーターや階段は人ごみで混雑していて、動き難い。
おもちゃ売場を中心に、何かに取り憑かれたおもちゃ達が暴れている。
足場や視界に問題はないが、おもちゃ達の体は小さいので物陰からの不意打ちなど、注意が必要になる。
おもちゃ売場の前には、半ば錯乱しているものの、なんとかおもちゃの攻勢に対抗しているマリーが居る。

● ターゲット
アザーバイド(ライアーマリー)
異世界から来た嘘吐きの少女。彼女の吐いた嘘は、本当になる、という能力を持っている。その能力に嫌気がさして、なんとなく旅に出た。別の世界に行けばなにか変わるかも、と思ってDホールを潜ったが、結果なにも変わっていない。
彼女の身体は死体のそれなので、討伐しようと思えばバラバラに解体するしか方法がない。
嘘を本当にする力、を無意識ながら制御できるようになりかけているが、気付いていない。
錯乱状態であるため、リベリスタ達のことを攻撃してくる可能性も高い。
【火事が起こる】→神遠単[火炎][隙]
火事が起こる、という嘘。小規模な火災を起こす。
【雷が落ちる】→神遠貫[雷陣][弱点]
落雷の嘘。空中を紫電が駆け抜ける。

●ターゲット
アザ―バイド(悪霊)×60
おもちゃに取り付いた、正体不明のアザ―バイド。おもちゃを操って、人を襲う。単体では弱いが、不意打ちや回避能力に優れている。
体力は少ないので、1~2発の攻撃で討伐できる。
【おもちゃの氾濫】→物近単[弱点][流血][ブレイク][麻痺]
おもちゃの身体から、黒い霧の爪を伸ばして攻撃してくる。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
フライエンジェクリミナルスタア
イスタルテ・セイジ(BNE002937)
フライダークホーリーメイガス
メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)
ハーフムーンミステラン
テテロ ミミルノ(BNE003881)
ノワールオルールクロスイージス
浅雛・淑子(BNE004204)
ハイジーニアスアークリベリオン
アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)
ジーニアスアークリベリオン
国包 畝傍(BNE004948)
フライエンジェスターサジタリー
骨牌・亜婆羅(BNE004996)
ビーストハーフマグメイガス
月草・文佳(BNE005014)

●嘘吐きな彼女
 ショッピングモールは混乱の極みの中にあった。突如として暴れまわり始めた無数のおもちゃ達に襲われ、悲鳴をあげて逃げ回る客達。そんな中、どんよりとした瞳の少女が1人、おもちゃ売り場に立ちつくしていた。彼女の名前はライアーマリー。異世界から来たアザ―バイドである。
 彼女の吐いた小さな嘘が、この混乱を巻き起こした。
 行く先々で、事件や事故が起きる。彼女の吐いた嘘は、真になるから。彼女は嘘をつかずにはいられないから。
 仮面のように凍り付いた表情で。
 しとしとと涙を零し。
 自分の元へと襲い来るおもちゃ達を、じっと見つめていた。

●ショッピングモール突入作戦
「飛行を利用して屋上から侵入した方が、エレベーターや階段を使った移動手段より早くおもちゃ売場に到達可能……ですね」
 ショッピングモールの裏手に周り、『モ女メガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)は千里眼でモールの内部を観察する。現在、モールの上層階にあるおもちゃ売り場ではおもちゃ達が暴れ回っていた。おもちゃ達から逃げるように、階段、エスカレーター、エレベーターには人が密集している。
 混乱は、加速度的にモール全体に広がっているようだ。
「結局のところ、自分の事すらどれが本当で嘘かわからなくなっちゃってるんだろね」
 助けてあげなきゃね、と『NonStarter』メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)は呟いた。普段は隠している翼を広げ、ふわりと地上から浮き上がる。
「急ぎマリーさんの許へ向かいましょう」
 翼の加護で得た羽で、『blanche』浅雛・淑子(BNE004204)を先頭に一行はビルの屋上へと飛び込んだ。二階分ほど下へと降りれば、マリーの居るおもちゃ売り場へと辿り着く筈だ。
 だが、屋上には既に数体のおもちゃ達が待ち構えていた。接近を悟られていたとは考えにくい。早速遭遇してしまったのは、単なる偶然だろうか。
 全身から黒い霧を噴き出しながら、熊のぬいぐるみが襲いかかってくる。霧の形状が鋭い爪のように変化した。仲間達の前に飛び出し、爪を身体で受け止めるのは『くまびすはさぽけいっ!!』テテロ ミミルノ(BNE003881)であった。
「ふふふっミミルノにぶつりこーげきはきかないのだっ!!」
 自身に付与したエル・ユートピアの効果で彼女に物理攻撃は通用しない。
「お前らが悪いわけじゃないが、放っておくわけにもいかないんでな!」
 アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)の刀がおもちゃを切り裂く。鋭い斬撃を1、2撃も受ければおもちゃはすぐに動かなくなる。どうやら、おもちゃにとりついているアザ―バイドはそこまで強い存在ではないらしい。
「早めに店員さんを落ち着かせ、避難誘導を行わせて任せてしまえるならしましょう。先に行きます」
 屋上の床を蹴って、『御峯山』国包 畝傍(BNE004948)が駆け出した。肩からぶつかるようにして、おもちゃを数体弾き飛ばす。そのまま、屋上のドアをあけて、階下へと駆け降りて行った。
「上に逃げる人はいないでしょうから、比較的素早く到着できるわね」
 畝傍を追っていくぬいぐるみを、背後から矢で射抜き『いつか迎える夢の後先』骨牌・亜婆羅(BNE004996)が呟いた。屋上に居たおもちゃは数が少ない。討伐を終えたのを確かめて、畝傍に続いて階下へと進む。
「何でも嘘が本当になるっていうのも……。んー、この世界でそういう能力あったら便利そうなのにね」
 仲間達に続き、『狐のお姉さん』月草・文佳(BNE005014)が階段を降りる。魔方陣を展開し、すぐにでも戦闘に移れるように体勢を整える。
 下の階では、何かが壊れるような音が立て続けに鳴り響いている。先行した畝傍が、おもちゃ相手に戦っているのだろう。
 二階下のフロアへと辿り着く、その手前。家具売り場真ん中で、本棚やテーブルの下敷きになってぐったりとしている畝傍が居た。

 幸い、意識はあるようだ。しかし、畝傍の身体には十数体ものおもちゃが張り付き、彼の身体に霞の爪を突き刺していた。だくだくと、畝傍の身体から溢れた血が床を赤く汚す。
「がんばってサポート! えいえいおーっなのだっ!」
 ミミルノは、魔砲杖を畝傍へ向けた。展開された魔方陣から放たれたのは、淡い燐光を放つ光弾だ。畝傍に着弾すると同時に弾け、その身の傷を癒していく。
「ライアーマリーさん発見しましてよー。急ぎましょう」
 イスタルテの千里眼が、下階に居るライアーマリーを発見した。メイと並んで、階下へと飛んで行く。
畝傍に迫るおもちゃをアズマの刀が追い払い、淑子の斧が彼に圧し掛かる本棚とテーブルをたたき壊した。畝傍がおもちゃを引き付けてくれていたおかげで、階下へと降りる階段は開いている。転がるように8人は下階へ。その後を、おもちゃの群れが追いかける。
 階段を降りると、そこは炎の海だった。
「火事だ……。火事だわ」
 炎の海の真ん中で、うわ言のように火事だ火事だと呟く少女が立っていた。ライアーマリーだ。呆然と、焦点の合わない瞳で空中を見つめていた。彼女を遠巻きに眺めていたおもちゃが、リベリスタ達の接近に気付く。
「いらっしゃい迷い子さん。刺激的な大冒険、たまには背伸びもいいじゃない。でも冒険はいつだって、無事に帰るまでの物語なのよ。さ、貴女を送り届けるわ。おもちゃの兵隊を蹴散らしてね」
 炎の海の最中へと、亜婆羅が歩み寄る。リベリスタの接近に気付いたマリーの口が『落雷……』と囁く。室内に雷など落ちない。これは嘘だ。だけどライアーマリーの吐いた嘘は現実へと変わる。空中を疾駆する紫電が、亜婆羅の身体を貫いた。
 亜婆羅の身体を貫通し、しかし雷は止まらない。空中を疾駆する雷を回避し、文佳は叫んだ。
「とりあえず事態を収拾させるわよ、だから無理しないで。落ち着いて。あたし達が何とかする」
 だが、彼女の声はマリーの耳には届かない。炎の最中、火傷を負いながらも亜婆羅は少しずつだが、マリーへと近づいていく。そんな亜婆羅の元へとおもちゃ達が跳びかかる。背後からも、上階から追ってきたおもちゃ達が迫りよる。
「とにかく数減らしを優先、弱った敵を主なターゲットにっ」
 魔導書を広げ、文佳は叫ぶ。彼女の展開した魔方陣から、膨大な紫電が放たれた。跳びかかってくるおもちゃ達を雷撃が撃ち抜いた。それだけで動きを止める者もいれば、雷撃を器用に回避してみせるものもいる。
「マリーくん、私は貴女の味方です。それは行動で示します。行動は、嘘をつきません。貴女も、行動で示してください。戦うべき相手は、誰なのかを」
 畝傍が炎の海へと駆け込んで行った。マリーの放つ火炎や落雷から、亜婆羅を守るようにして彼女の元へと接近する。おもちゃの攻撃も、その身を張って受け止める。
「っち、邪魔くせぇ……! こっちだ!」
 群がるおもちゃを切り払いながら、アズマは炎の中を走りまわっていた。アズマを追っておもちゃ達は跳びまわっていた。あまり頭はよくないらしい。目立つ者をターゲットにする習性があるのだろう。おもちゃをアズマが引きつけている間に、亜婆羅を先頭とした数名は、ライアーマリーの元へと辿り着く。
 困惑し、表情を引きつらせるライアーマリーを引き連れて壁際へと移動する。
「大丈夫よ。わたし達は貴女を助けに来たの。どうか信じて」
 淑子は言う。彼女の言葉を耳にしたライアーマリーは、口を押さえて瞳に涙を溜めた。不用意な発言が、人に危害を加えることをマリーは知っている。そして、口を開けば人を傷つけることも。
『あ……。やめ、来ないで。火事、だから』
 火事が起こっているから、この場から逃げて。
 そう言って、彼女は売り場に居た客を逃がしたのだ。けれど、その結果本当に大火事が起きた。今もまた、リベリスタ達のことを逃げ遅れた客と勘違いして逃げ出させるために嘘を吐いた。
 ごう、と淑子の足元から火炎が吹きあがる。
 淑子は炎に包まれたまま、大斧を振り払って近づいてくるおもちゃを切り飛ばした。
「マリー!! じぶんのちからにほんろーされちゃだめなのだっ!」
 淑子のダメージを癒しながら、テテロが叫ぶ。
 他の者たちも皆、口々にマリーへと励ましの声を投げかける。
「本当に嘘をついて実現するのを嫌がってるのかな?」
 メイはじっと、マリーの顔を見つめていた。
「ふえええ、悪霊の数が多すぎですよう」
 襲いかかってくるおもちゃ達を、神気閃光で薙ぎ払いながらイスタルテは言う。炎の海の外側で、アズマと文佳が着実におもちゃの数を減らしている。残りの敵はどれくらいだろうか? 炎の影や、天井、壁、物影などに姿を隠し、隙をついて襲ってくるおもちゃ達の相手は手間だ。
 おまけに、時折マリーの嘘によって火炎の勢いが増したり、空中を疾駆する雷を避けたりせねばならない。ドン、とアズマの背中に霧の爪が突き刺さる。魔方陣を展開していた文佳の足を影が捉え、その場に引きずり倒した。
 2人の動きが止まった隙に、数体のおもちゃはひと塊になって炎へと突貫。マリー達へと襲いかかる。
『いやっ……。落雷っ、が……助けてくれる』
 それは、マリー自身を守る為の嘘だ。しかし今の彼女は、敵と味方を区別できていない。目の前にいたメイの身体を、マリーの雷撃が撃ち抜いた。ゆっくりと倒れて行くメイの身体に、無数の爪が突き刺さる。
 ごぼり、とメイの口から血が溢れた。意識を失い、メイはその場に倒れ伏す。戦闘不能に陥ったメイの身体を乗り越えて、おもちゃ達がマリーへと襲いかかった。

 霧の爪がマリーに迫る。マリーの目の前に飛び込んできた亜婆羅が、その身を挺してマリーを庇った。亜婆羅の身体から血が溢れる。亜婆羅は、しかし笑っていた。口の端から血を零し、広げた両腕や骨のような翼を傷つけながら、マリーへと微笑みかける。
「女の子は素直じゃないくらいでいいのよ。その方が本心と笑顔が印象に残るもんよ……」
 ゆっくりと、やせ細った身体でマリーを抱きしめ、亜婆羅は何度も「大丈夫」と繰り返した。

「嘘をつくな、なんて言わないわよ、あたしだって嘘ぐらいつくし。難しいのは重々承知だけど、人を傷つけない嘘だけ、つくようにすればいいんじゃない?」
 この声が、マリーの耳に届いているかは分からない。けれど、文佳は彼女へと声をかけ続ける。
 文佳の放った紫電が、周囲のおもちゃを撃ち落とす。残りの敵は少ない。このまま戦闘は、リベリスタの勝利で終わるだろう。
 だが、そんなことはどうでもいい。
 マリーの今後が、一番の懸念事項だったのだから。
「何を言うかも大事ですが、何をするか、というのも大事です。貴女はすでに、何かを出来るように、変われているはずです。貴女の世界が待っていますよ」
 マリーの言葉は全てが嘘だ。
 しかしその嘘は本当になる。
 けれど、人は成長する。制御できなかった力を、制御できるようにもなるだろう。畝傍は、マリーの今後を想い、彼女へ言葉を投げかける。
 近づいてきたおもちゃを、長剣で斬り捨て畝傍は優しく、マリーの肩を軽く叩いた。

●ばいばいマリー
「無関係の人を、逃がすための嘘だったんですね」
 燃えさかる炎を掻き消し、近寄ってくるおもちゃを弾き飛ばしてイスタルテは言う。震えるマリーは、何も言わない。必死に、亜婆羅の身体にしがみついているだけだ。マリーの方は、これである程度落ち着いただろう。
 後は、敵の残党を片づけるだけ。
『火事なんて、無かったの……』
 と、マリーは言った。目の前は火の海と化している。火事なんてなかった、なんて嘘だ。だが、彼女がそう呟いた途端、炎は掻き消え焦げ跡さえも残っていない。
「だいじょうぶだいじょうぶ、なにもしんぱいはいらないのだっ」
 炎が消えて、今まで攻撃を躊躇していたおもちゃ達が一斉に駆け寄って来た。震えるマリーを安心させるようにテテロは笑って、傷ついた亜婆羅の傷を癒す。マリーの死体の身体は、多少の攻撃を受けたところで、その命を散らせるようなことはない。
 だが、敵意や殺意は恐ろしい。身体は平気でも、心が恐怖を受け付けない。
「例え身体が冷え切っていても、貴女はこんなにも『生きている』わ。自分のために、嘘をつきましょう?」
 マリーを守る為に、淑子が前へ。
 大斧を振り回し、近寄ってくるおもちゃ達をまとめて薙ぎ払う。まるで台風のようだ。暴虐の嵐の中心で、淑子は優雅に舞う。
「お前らが悪いわけじゃないが、放っておくわけにもいかないんでな!」
 最後に残った1体のおもちゃを、アズマが一刀のもとに斬り捨てた。
 炎は鎮火。おもちゃは全滅。
 Dホールは、おもちゃ売り場の傍にあるのを確認済みだ。
「ねぇ、貴女はまだ還りたくない?」
 亜婆羅がマリーへと、そう問いかけた。
 ぼろぼろと涙を流しながら、マリーは言葉を吐きだした。
 ただ一言。
『帰りたくない……』
 と。
 その言葉が、本心なのか、嘘なのか。
 マリーの言葉によって、何か変化が起きるようなことはなかった。
 自分の力を、制御できるようになったのかもしれない、とそう思いながら。
 亜婆羅は優しく、マリーの身体を抱きしめた……。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様です、依頼は成功です。
ライアーマリーは無事に帰還し、その能力もある程度制御できるようになったようです。
おもちゃに取りついた悪霊は討伐。一般人は無事に避難し、死傷者も0です。
おめでとうございました。
マリーのことを気遣うプレイングが多かったことが印象的でした。ご参加ありがとうございます。

それではそろそろ失礼します。
縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。