●骨休めという大義名分があるので 「そういえば夜倉さん、先日保護した革醒者の方、居ましたよね。なんでしたか、アーティファクトの色々なアレの人」 「ざっくりとした物言いですね。大方、真白室長のとこにでも行ってるのかと思いましたが。違うんですか?」 「いえ、まあ、そうだと思ったんですが……流石に、方向性が方向性なので扱いきれているわけでは無いようでして」 「とは言っても、飼い殺しみたいな扱いになってしまってもアーク的に評価として困りますね。どうしましょうか」 「私にいい考えがあります」 「……宮実君、司令官的な立場じゃなかったことに喜びましょう」 ●タダで転ぶ気はないので 「というわけで温泉に行きましょう」 「今か」 「今だからこそです」 リベリスタ達を集めたので何かと思えばこれである。『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)は既に湯桶を構えていた。臨戦態勢もバッチリである。 「今なら先日保護したばかりの端平 康介君もついてきます。二つ返事で了承してくれました」 「お灸の人?」 「お灸の人です」 何時保護したんだっけ。つい先日です。まあそんな感じの人も腕が鈍ると困るのでリフレッシュ担当になりました。 「ところで」 「混浴じゃないですよ?」 「だよな」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:風見鶏 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年07月04日(金)22:12 |
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■メイン参加者 20人■ | |||||
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●貸し切りじゃなかったら死人が出ていた 人間というのは、大体やればできるように作られている。つまりは、多少の無理が利くということだ。 何が言いたいかというと、人間の上位互換である革醒者に無理がきかない筈がなく……。 「す、すごい……伊吹さんがすごい勢いで建築を……っ」 実際の所、三郎太が見たのは完成品ではあるが、時間を逆算すればそのあまりの勢いに舌を巻いて然るべきだ。 それほどまでに、伊吹の手際は人並み外れていた。革醒者が人並でどうするって話であるが、一端のコテージをこさえるとかそれ以前の問題な気もする。 ともあれ、秘湯が秘湯(笑)になる勢いの建築をぶち上げる伊吹はマジ匠の技もいいところなのでもう少し別のベクトルで頑張るべきでした。 「三郎太くぅぅぅん! おねえちゃんが、温泉でキレイキレイしてあげりゅ☆」 「ふわっ!? 舞姫さん混浴はありませんよ?」 いつのまにやら温泉饅頭の準備など始めていた三郎太を襲った一陣の風は、舞姫とかいう猥褻から生まれて来たような少女に襲われていた。 せっかく頑張ろうとしても決意ごと捻り潰す舞姫マジ鬼畜ですわ。間違いない。 でも今日作ろうとしてる温泉饅頭を「名物」と言い張ろうとした三郎太もぶっちゃけ大概なので、いまさら。 「うひゃー、わたしってば超色っぽい!」 「はいはい色っぽい色っぽい。アイスは湯上がりにしような。あと三郎太逃げて三郎太」 意外と息ぴったりだなあ、こいつら。 「おんせん! ミーノの! おんせん!」 「お前のジャネーヨ……サウナは無いのか?」 いきなり自分のもの宣言をおっぱじめたミーノと、早々にサウナを求め周囲を見回すリュミエール。 君は去年も来ただろう、と思わなくもないが、ここはそういうことを言うだけ無粋であった。脱衣所の前ですでに脱ぎ始めて特攻しかねない危うさを見守る宮実のメンタルが既にマッハなのだが、保護者とはそういうものであることを忘れてはならないのだ。 ……保護者? うん、保護者。 「夜倉さん、ここに湯船に浮かべたお盆と、お燗に向いた生もとづくりの純米酒がある。よかったら付き合ってくれないかな」 湯帷子を纏ったまま浸かっている夜倉に対し、快が持ちだしたのは言うまでもなく、湯船で一献やるための用意である。彼らしいといえば、これ以上ない用意だ。普通なら、無条件で喜ぶだろう。 「なんですかその、存在そのものが圧倒的魅力を放つブツは。シチュエーションも相まって中年ホイホイじゃないんですかね……というわけでどうですか、義弘君」 「ん? ああ、俺は湯上がりのビール派なんだが……ご相伴に預からせてもらおう、せっかくだからな」 だがしかし、快に限らず、夜倉に対し無条件の好意が向けられると思うのは初心者の考えである。裏に何かあるのをまず疑うべきなのだ。そんな訳で巻き込まれるのは、不運にして義弘である……いや、不運てこともなかろうが。 「だってどう考えても騒ぎが起こるに決まっているし、騒ぎが起これば俺は首謀者一味として疑われるのは明白だ。なら、ここで確固たるアリバイを確保しておくことが重要だろ?」 「1年前に皆さんを誘った時の半数なんですよ、今回……? そんな出来事が起こったら僕の顔が立ちませんよ、いい加減」 「よくわからんが、ゆっくり湯船に浸かれればそれでいいと思うがね」 「落ち着いてお風呂に浸かれる一時くらいはあるでしょう、多分。オレは一旦失礼しますよ」 「ああ、居たんですか義衛郎君」 訓練されたリベリスタってこわい。夜倉はそう思った。 「女湯リポーターの宮実さーん? そちらの様子はどうですかー?」 『そんなものになった覚えはありませんよ!?』 「なってる、なってる……」 時間さかのぼって、女湯。 「超あったかい! 超温泉っぽい! 超温泉たまごたべたい!」 調子に乗りすぎた代償として頭部に小さいたんこぶを作ったミーノは、相変わらずハイテンションだった。 説得(物理)ぐらいはものともしないのは、果たして美徳なのか懲りてないのか。 「つか温泉の成分次第じゃ作れないところモアッタンジャナカッタカ」 大丈夫だとおもうけどなあ(適当 「覗きが出たらグラスフォッグで速攻湯冷めアタックかますので……お姉様の珠肌は私が護ります」 「そうそう私達を覗こうとする不埒なのって居ないと思うわよ?」 既に出た後の排除に頭を巡らせるリンシードに対し、糾華は飽く迄冷静である。当然、そんなものが居たら排除はするだろう、と言葉を添えているものの、そこまで警戒していないふうでもある。 この過疎具合で出られたらそれはそれで処理にこまるので、出なくて良かったです(ド本音) 「お背中流しますよ、お姉様……遠慮しないでください」 「あら?じゃあ、お願いしちゃおうかしら」 以前の自分だったら、背中を預けられただろうかと考えながら、糾華はその背をリンシードに晒す。 自らの過去そのものである姿を無防備にさらし、ありのままであることを否定しない彼女の姿は、酷く儚く映ったのは確かだったろうか。無意識に、背後から抱きすくめてしまう程度には。 「すみません、華奢な背中と消えてしまいそうなくらい白い肌を見てたら……なんだか消えてしまいそうで……」 「馬鹿ねぇ……私は消えはしないから、大丈夫よ?」 互いが互いを喪う未来など、あってはならない。約束という形でしか情況を留めることはできないとしても、それは彼女らがこの世界から離れそうになった時、何をおいても楔となるのだろう。 「あねさん! おせなかおながしいたしやすっ!」 「姐さん、って私ですか……? 何でそこまで任侠魂溢れる申告なんでしょうか」 唐突なせおりの言葉に、宮実はおもわずたじろいだ。どうやら、せおりは宮実(というか『エンジェリカ・レイン』にか)に対し強い関心と憧憬を抱いているようで、一人カラオケですら繰り返し歌うほどだとかそうでないとか。なにそれこわい。 ただ、言葉遣いは兎も角彼女の意思は十分伝わったらしく、おずおずと背中を預ける宮実が地味にいじらしい。 「どうせですから、樹沙……さん、でしたか? 貴女もどうですか」 一人体を洗おうと構えていた樹沙に、宮実は軽く手招きする。こういう時、革醒者同士というのは実に便利だ。何故なら、お互いの境遇も特異性もありふれたもののひとつして扱えるからで。 広い湯船に頬を緩ませた彼女が、新たな交友のきっかけに抗える筈もなく、ふらふらと(腰元はしっかり隠して)歩いて行く。 コンプレックスが、時間をかけて削ぎ落とされていけば、じきに残るは彼女らの率直な生き方そのものなのかも、しれなかった。 ●お灸とか鍼とか香油とか 「康介さんハジメマシテ、とらだよ☆ アーユルヴェーダしよ♪」 「随分軽い言い方だな……処置に時間がかかるんだ、あれは。ピリツイルだけでいいんだろう?」 「え、オイル適当に体にぶちまけるだけじゃないの?」 自らの誘いに対し、専門用語が飛び出すとは露ほども思っていなかったとらは小首を傾げ、相手の言葉を待つ。康介は曲がりなりにも鍼灸師であり、本来はアーユルヴェーダは専門外……の、筈である。だが、恐らく雰囲気だけのまがい物よりはうまくやって見せるだろう。因みに、オイルマッサージはアーユルヴェーダにおける前処置に過ぎず、それも細分化されているのだ。インドおくふけえ。 「オイルが温まるまでは軽く鍼でも打っておいてやる。転がれ。凝ってないところが無いなら丁度いいだろう。……ふくらはぎも揉んでおくか。いいんだってな、アレ」 「あ゛っー!」 ……オイルが温まるまでお待ち下さい。 「端平先生、よろしくどうぞ。何分初めてのお灸なものですから、お手柔らかに」 「ああ、何か先生ってほど大したモンじゃないからやめて欲しいんだけど……まあいいや、そこに寝てくれ。左肩だな? ただ立ってるだけで下がってるんだ、相当だ」 「え、何で分かるんですか寝違えたんですよ」 「……革醒者でも寝違えるんだな、俺も気をつけよう」 マッサージ関係の人間の場合、多少の歩き方の癖やボディバランスで対象がどこを病んでいるかを把握するのが上手いという。革醒した身である康介にとっては、それを見抜くのは大分楽なのかもしれない。 「結構熱いですね……」 「まあ、そりゃあな。左半身に負担大きそうだからそっち重点的にやっとくか」 そんなマッサージ室の端では、シュスタイナを含めた逆ハー(語弊あり)が展開されていた。既に足湯を満喫してきたシュスタイナ・ソウル・翁の三名が寛いでいた。 敬老精神顕な二人のマッサージを受け、翁は満足気である。……内心は複雑な部分もあるのだろうが。 「おー、丁度ええ具合じゃわい……ふぉっふぉ……」 気を抜いて寝てしまわぬよう、目を開けつつ翁は二人の様子を伺っている。時折、シュスタイナがソウルのマッサージを行ったりしつつ会話は続く。 「それで、シュスカのお嬢ちゃん。最近の調子はどうだい」 「ん? 調子はいつも通りよ」 その『いつも通り』を常に保つのが大変なんだろうが、と言葉に出さずともソウルは思っているのだろう。同じスピードで歩き続けるのは、思いの外疲れることを彼は知っている。 だから、乱れず歩き続ける少女の姿は眩しくもあろう。悩みはないのか、と言葉を継ぐと、少女は年齢相応の思案顔を見せた。 「会ってお礼を言いたい人はいるわね。向こうにとっては些細な事だし、とうに忘れちゃってるでしょうね。でも、私にとってはそうじゃないから」 彼女がぽつりぽつりと言葉を続けるのに、二人は興味津々である。いい大人二人が少女の色恋に興味を示すというのも、異な話だが。 「二人とも人生経験豊だって言うのなら。年若な私に色々教えてくださる? そうね。勿論恋の話を」 包帯のアレとかをからかうときに見せるような表情で、シュスタイナは二人に向かって微笑みかけた。 「色恋の話かの。若い者はそういった話に興味があるんじゃなあ」 何時の世もそんなものか、と感慨深げに頷いた翁の口から語られた彼の慕情が、果たして二人に理解できるほどのものかはともかくとして。 貴重な意見、という意味ではそのとおりだったことだろう。 ●ばくはつしろ 「ごめんね、待たせちゃったかな」 「別に待ってないぞ、単に男は準備が少ないから早く上がっただけだしな」 髪を乾かすのもそこそこに温泉から上がってきた旭は、やはりと言うべきか、先に待っていたランディに視線を合わせる。 彼の言葉はある意味事実だが、私的な部分も持ち合わせている。 確かに準備が早いのはあるだろうが、彼なりに急ぎ上がってきたのも事実である……理由は、敢えて語るまい。 「早くあがったのに待ってないの?」 きょとんとした表情で彼を見やる旭に、ランディは顔をそむけ休憩所を探す。 まああるとしたら伊吹の一夜城(語弊あり)か康介の居るマッサージルームだけどな! 前者は誰もいないしヘーキヘーキ(欺瞞 「旭、今回は別々だったがそのうち一緒に入れるといーな」 「……いっしょ、に?」 さり気なく言ったつもりの言葉に、過剰なほどに反応する旭の姿はランディからすれば魅力的、の域を超えていたのかもしれない。そういう意味では、確かに魅力的ではあるのだろう。 「……あー、旭、なんかたまんなくなった」 そんな言葉を残して彼女を抱きしめるランディに、よくわからぬままに抱きしめ返す旭である。次の約束とかもちゃっかりする辺り、本当にこの二人はこう。 「うむ……丁度いいくらいの温度だな。向こうまで行くと少し熱い様だが」 「そうですね。この辺りにしましょうか」 既に円熟期に入って久しい気さえする拓真と悠月は、足湯でまったりとした時間を過ごしていた。 代謝量が比較的多い足裏を温めることは、汗腺を開いて老廃物を出す意味でも悪い選択ではない。寧ろ、全身浴でかかる負担を抑える意味でもよかったと言えるだろう。 周囲の自然の音に耳をすませ、互いに視線を合わせず雰囲気を満喫する辺り、やはり互いに対する信頼を感じもするものだ。 「どうだ、悠月。ちゃんと温まっているか?」 「ええ……とても気持ちいいです」 「そうか、ならば良い」 短いやりとりと、手を握るだけの軽いスキンシップ。それだけでも、彼らには十分なのだろう。自然の音と拍動とが聞こえるほどの静寂は、当面破られることがなさそうである。 余談として。 女性側、男性側ともに二名ほどずつ、のぼせる者が出た事を残す。 |
■シナリオ結果■ | |||
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