● 薄暗い洞窟の中。 頼れるものはどこからか入ってくるうっすらとした光だけ。どこからか祈りの声が聞こえてくる。か細く、されど終わらない祈りだ。 嗚呼。 それはあたかも、この揺らぎ続ける世界の縮図のようであって。 1つ、蝋燭に明かりが灯される。 次々に蝋燭に火が点き、明かりが広がって行く。それは世界に希望があることの証左であろうか。 しかし同時に、闇の中に浮かび上がる。世界に刻まれた傷痕の悪意ある顕現だ。 生きようとする意志と死に向かう力、護ろうとするとする力と破壊の意志。それは等しく鬩ぎ合い、今日も世界は揺らいでいる。 故に人は抗い続ける。 止まれば転ぶ、一輪の車。抗い続けよ、進み続けよ。倒れて全てが潰えるその日まで……。 ● 次第に蒸し暑さの増してくる6月のある日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。そして、リベリスタ達に対して、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は事件の説明を始めた。 「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。あんたらにお願いしたいのは、ちょっと特殊な任務だ。便宜上、エリューション・フォースってことになるかな」 首をかしげるリベリスタ達の前で、守生が端末を操作する。すると、スクリーンには神社の写真が映し出された。 「最近、諸々の事件で崩界が著しいことはあんた達も知っての通りだ。国内の協力組織も数年前に比べて増えていて、事件に向かえるリベリスタも増えている。だけど、それでも手が足りないってのも事実。そこでアークは本格的な対処に乗り出す決断をしたんだ」 崩界の促進により、国内ではアザーバイドの跳梁、エリューションの暗躍が多数発生している。そこへきて、先日現れた『恐怖神話』の異形達が日本へ牙を向けた際の爪痕は、早急な対処を必須とする程に大きな歪みをこの国に生じさせた。つまりは、今回の任務はそれである。 「具体的に言うと、あんた達にはある儀式を遂行してもらう。それに成功すれば、世界はある程度修復されて、崩界度は下がるって寸法だ」 リベリスタ達から驚きの声が上がる。しかし、話の割に守生の顔は暗い。 そう、ただ都合の良いだけの話など、この世界には存在しないのだ。 「ま、当然の話だ。それなりのリスクを負っているんだ、この作戦は。だから、あんた達に向かってもらう必要がある」 儀式の内容は、パワースポットと呼ばれる霊地の力を借り、作成した結界内に世界の歪みの概念をほんの一部だけ切り離して災厄として実体化させるというものだ。これを殲滅すれば、崩界度は減少する。リベリスタ達が負うことになるのは、その殲滅の役どころだ。 言うなれば大規模な災厄が起きる前に、小規模な災厄を誘発することでガス抜きを行うという理屈であり、当然これにはリスクも伴う。 1つには、同じ霊地を何度も使いまわしは出来ないということ。霊地の力を回復するには時間がかかり、失敗は許されない。 そして2つ目、殲滅に失敗した場合、より大きな災厄を招きかねないということだ。切り離した歪みの概念がリベリスタの手に負えぬ災厄と化して結界を破壊し外に漏れれば、状況は今よりも悪化する事すらあるだろう しかし、手をこまねいている暇は無い。世界が致命傷を受ける前に、何かしらの手段を講じなくてはいけないのだ。 「あんた達に向かってもらうのは、滋賀県日吉大社。ここにある秘匿された洞窟の中で、戦ってもらうことになる」 一説にはとある怨念が鎮められたとされる場所だ。ここで儀式を行えば、歪みの概念は『数多くのネズミ』の形を取って現れるのだという。儀式を行う場所には霊石が複数祀られており、災厄の戦闘力を削いでくれる。 「だけど、問題は簡単じゃねぇ。どこで聞き付けたのか、『恐怖神話』の信者と化した連中がやって来る可能性が提示されている。一応、一般人ではあるが狂気に堕ちていて、精神的な効果を及ぼすスキルは効きが悪そうだ。具体的な対策はあんた達に一任するが……アークとしては強硬策に出ることも許可している」 先日の事件の際にもあった話だ。『恐怖神話』のアザーバイド達の振りまく狂気は、確実に人々の心を蝕んでいる。これもそうした表れだ。相手の性質も考えれば、アークの判断も致し方ない所である。無力化する効率の良い術があれば、救うことも出来ようが。 多数の人員を動員できれば良いのかも知れないが、現状を考えるとこの場にいるリベリスタ以外を動かすのも難しい。 四面楚歌としか言いようのない状況、それでも人は戦わなくてはいけない。 「説明はこんな所だ」 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年06月22日(日)22:48 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 暗闇に続いていく通路の中を『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷・小夜(BNE001462)は進んでいく。これから始まる儀式のためだ。リベリスタではあるが、本業は巫女。場所柄礼儀正しく振る舞うのは当然と言うものだ。 そっと礼をして開けた場所に入る。すると、そこからははっきり分かる程の妖気が立ち込めていた。 「凄そうな奴はだいたい神様って聞きましたけど……どうなんでしょうね?」 ふと知り合いの言葉を思い出して、細い首を傾げる。 「悪そうな奴はだいたい友達」みたいなノリではあるが、あながち間違ってはいない。であれば、歪みの概念も神と呼べないことも無い。ただ、いずれにしろ今日優先するべきがリベリスタの仕事になってしまうのは、致し方ない所だ。 そう、今宵相手にする敵はこの「妖気」。 世界に現れた歪みの顕現そのものだ。なるほど、たしかに神相手の戦いと言えなくもない。 「リターンに見合うだけのリスクがある儀式か。確かにそう容易く出来る手段じゃないね」 渡された資料を確認しつつ、四条・理央(BNE000319)は苦笑を浮かべる。 やり直しは効かず、敵は強力、失敗すれば世界に歪みがばら撒かれるときた。たしかにこれはそうそう行える手段ではない。アークの創設期に同じ提案がなされたとしても、リベリスタの練度を理由に却下されることは想像に難くない。 崩界は世界を危機に陥れるが、同時に世界を救う者達にも力を与えた。知恵ある梟は世界に闇が広がってから飛び立つもの。まことに奇妙な運命である。 「やーん、じめじめする洞窟とかめんどくさーい」 もっともその世界の守り手の1人、『本気なんか出すもんじゃない』春津見・小梢(BNE000805)はそんな事情などどこ吹く風でカレーを食べている。相変わらずの平常運転だ。 蒸し暑い日にはカレーを食べるのが彼女の流儀。何が哀しくてこんなじめじめした所で儀式なんぞを行わなくてはいけないのだ。カレーを作るというならいざ知らず。 とは言え、世界が崩壊してはカレーが食べられなくなるのもまた事実。そんな訳で、リベリスタ達は儀式の準備を行う。儀式の手順は確認済み。そして、歪みが顕現して敵が現れるのも分かっている。だが、準備が必要なのはそれだけではない。 この世界に属しながら、世界を滅ぼすものについた人間もいるのだ。 「ガス抜きの対処療法か」 「ガス抜きしねェと危ねェほど崩界が進んでんのか。ずいぶんとまァ深い傷を残していってくれたモンだぜ」 理央と共に影人を配置しながら零す『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)。その横で億劫そうに『悪漢無頼』城山・銀次(BNE004850)は自分の肩を叩く。 そう、アークが決断を下した理由は、先に日本を襲った『恐怖神話』の存在である。 かのアザーバイド事件によって、再び世界に大きな傷が穿たれた。それだけではない。巷には彼らを神として崇める者――フィクサード、一般人を問わず――がいるのだという。今回の儀式をどこで聞き付けたのか、ここにやって来るのはそうした連中だ。そのような者がいる限り、世界に安息は無い。 「地道なのは嫌いではないな。火の車状態は好きではないが。まぁ、やることに変わりはない」 ユーヌが印を結ぶと影が立ち上がり人の姿を取る。ユーヌの生み出した影人だ。 「生かして心が元に戻るかは知らないが、精神病院は満員御礼、溢れだしそうだな」 「影響は甚大だな。この儀式にまで当てられた一般人が絡んでくるとはな……」 話を聞いて以降、アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)の顔は暗い。 世界を護る戦士――リベリスタになるべく研鑽を積んできた彼女にとって、曲がりなりにも一般人と呼べるものが敵に回るのは心苦しくもあるのだろう。 しかし、それでも同時に彼女はサムライでもあった。 「ここまで高まった崩壊レベルを放置するわけにもいかないからな。精一杯務めさせてもらうぜ」 装備の具合を確かめると、来たるべき災厄に備えるアズマ。 そして、仲間の準備が整ったことを確認して『祈鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)は頷くと儀式を始める。リベリスタ達の前で蝋燭に火がともされていく。霊石がほのかに輝くと、周囲に漂っていた「何か」が形を取って行くのが見えた。 (頼豪鼠……だったかな?) 遥紀はこの神社を調べている時に出会った名前を思い出す。 伝承は伝承でしかないし、どこまでが事実なのかも定かではない。ただ、文献によるとかつて現れたとされる84000匹のネズミはありとあらゆるものを食い破ったとされている。そんなものを世間にばら撒くわけにはいかない。 そんなことを思う遥紀の周囲に獣の鳴き声と腐った肉の匂いが立ち込める。 『元・剣林』鬼蔭・虎鐵(BNE000034)は不愉快そうに鼻を鳴らすと、神秘の力で変異した双眸を輝かせる。 (……甘い事は言ってられねぇんだよ。世界を治すってそんな甘ちゃん思考じゃできねぇだろ?) 元々フィクサードであった彼にとって、手段を選ぶという発想は無い。目的があるのなら、そのために全てを尽くすだけの話。愛するものを護るためだったら世界の総てを敵に回しても悔いはあるまい。 だから、今宵も存分にその力を振るうとしよう。相手が何者であろうと。 「さぁて……災厄つぶしと洒落込もうか?」 現れた災厄に向かって、虎鐵は肉食獣の笑みを浮かべた。 ● 現れ出でた災厄の化身は、早速近くに感じた気配――リベリスタ達に向かって攻撃を開始した。 それらが発する巨大な妖気はリベリスタ達を覆い尽くさんばかりの勢いだ。だが、その程度のことではいそうですかと素直に恐れるような人種は、そもそもリベリスタなどになりはしない。 「駄目押しもしておいたよ! 存分にやって!」 理央の術によってこの場は完全に世界と切り離された。やって来るはずの狂信者たちの中に神秘の業を使えるものがいないことは確認済みだ。こうしておけば、邪魔されることは無いはずだ。 「ちっ、それでも数が多いな……まあいい、纏めて吹っ飛べ!」 理央の言葉を受けて、アズマは全身に力を巡らせる。すると、その身は炎の塊へと転じ、取り巻く災厄の群れを燃え散らしていく。災厄からも攻撃はあるが、自身の理想の力、奇跡の顕現に包まれた彼女を傷付けることはそう簡単に出来はしない。 その炎を抜けて、災厄達は雄叫びを上げて迫りくる。それに対して臆することなく、銀次は進み出ると挑発するかのように指で手招きの仕草を行う。 「俺を殺すんじゃなかったのかい?」 鼠の形をしているとは言え、災厄の姿はほぼ猛獣と言っても良い。 そんなもの相手に挑発を行うなど、正気を疑う行為だ。 しかし、城山組組長として戦いを渡り歩いてきた銀次にしてみれば、狂気こそが正気。戦場こそが生きる世界だ。無銘の刀と鞘を手に、敵陣へ踊り込むと災厄を薙ぎ倒していく。その姿はまさに鬼神の如くだ。 リベリスタ達の攻撃は苛烈なものだ。それを以ってしても、災厄の有する「数」という力は強敵だった。元より、対策をしているとは言え、いつ来るとも知れぬ狂信者のことも気に懸けなくてはいけないのだ。だから、リベリスタ達も持久戦への備えは行っていた。 「というわけで私の相手は鼠ですよ、ちゅーちゅー。いっぱいいるねーめんどいねー」 カレェェンという擬音と共に小梢は災厄の前に立ち塞がる。 カレーの加護と共に在る彼女を打ち破ることはそうそう出来はしない。 「小梢シールドで楽でいい。さすが小梢だ、なんともないな?」 「ユーヌさんに集めてもらっちゃおう。そしてそれを私が庇う、よし完璧」 小梢の後ろにいるユーヌも共々、だらけた雰囲気で災厄を招く。そのままサボっていたい所でもあるが、そうは問屋が卸さない。 ユーヌの後ろに控える影人達が、彼女の動きを真似るような仕草で射撃を行うからだ。 「飢えた鼠がわんさかと。こそこそ隠れない分、的としては程よいな? 単なる駆除処理、砕けて消えろ」 派手に災厄と影人達の攻撃がぶつかり合う。戦場の性質上、影人達の被害を減らし切れないのが辛い所だ。その中でリベリスタだけでも倒させまいと、小夜は高度な術式を組み上げ、高位存在の力を呼び込む。これもまた、神の力である。 だが、ここで形勢逆転と簡単には言えない。 怨念の深さゆえか、崩界が強大であるためか、敵の数は尽きることが無い。霊石の加護が無ければ、正直危うい所だったはずだ。 「エリューションの見た目を深く考えている暇は無さそうですね」 一息つく小夜の横で、遥紀は唇を噛む。 まずい流れが発生しつつあるからだ。 戦場を俯瞰する彼の目には、まずい流れが見えつつあった。情報を制するものが戦場を制する。だが同時に、流れを変えるだけの力が足りていない。 「鬼蔭!」 「おう!」 流れを変えるべく、虎鐵は漆黒の刃を振り抜く。 轟 すると、虎鐵自身の生命力が暗黒の瘴気となって災厄へと襲い掛かる。彼にとって、この程度の痛みは痛みとは言わない。どんな傷も大事なものを喪う傷に比べれば浅いことを知っているのだ。 リベリスタの宿命とは、世界や他人のために自分を傷付けてしまうこと。 故に今宵、世界の歪みはリベリスタ達に牙を剥いた。 ● 「俺の邪魔するんだったら、ぶっ散れやぁぁぁ!」 血まみれの銀次が世界の歪みに向かって雄叫びを上げる。しかし、運命の加護にも限界はある。 3度目のドラマは起きる事無く、地に伏せる銀次。 災厄もまた数を減じていたが、同時にそれはリベリスタ達の力も削いでいた。そして、個に勝る分、リベリスタ側が1人倒れることは、災厄を1匹屠ることと意味は異なる。 銀次がカバーしていた分の災厄が小梢へと襲い掛かる。常識を超える防御力を誇り、カレーがある限り戦い続けることすら可能な彼女ではあるが、今日はカレーが足りていなかった。 「いけない!」 瓦解していく前線に対してカバーに入ろうとする理央。しかし、そんな彼女を巨大な災厄の牙が襲う。 派手に血飛沫が舞い、何かが崩れたような音がする。 それは場を支配していた陣地が破壊された音でもあった。 「畏み畏み申し上げます、できればお鎮めくださいませっ」 小夜が懸命に祈りを捧げる。 既に祝詞も何もあったものではない。あえて言うなら、自棄の祈りだ。目の前の「神」を鎮めることは出来はしない。それでも、リベリスタ達に力を与えることは出来る。 それは災厄の側も同様だ。怒りを鎮めはしない。ただ、力を与えるために祈る者がいる。精神を崩壊させ、『恐怖神話』を神と崇める狂信者どもだ。 人でありながら魔に堕した者達の姿を目に、虎鐵は修羅へと変じる。 「ふん……戦いのたの字もしらねぇ一般人がこんな戦場にウロチョロしてんじゃねぇよ……」 狂信者の歩みを止めるはずだった影人達は災厄との戦いで十分な効果を発揮できないでいる。そして、この場を逃せば世界が傷つき、また大事なものが傷つく可能性がある。殺すまでも無いなら骨の2、3本で済ましても良かったが、既にそのような状況ではない。そうなった以上、虎鐵に迷いは無い。 所詮自分が進むのは修羅の道。既に血で濡れた手を再び血に染めることには、何のためらいも無い。 「おっと、させるか! ちと荒っぽいけど我慢しろよっ!」 それはアズマも同様だった。再びその身に炎を纏うと、狂信者も災厄も構わず体当たりをぶちかます。 彼女の力は世界を護るためのものだ。であれば、その力は世界を滅ぼそうとする力に向けられるべきである。それは冷酷すぎる程に非情な天秤。 何を滅ぼし、何を護るのか。考えるまでもないことだ。今手にかけている狂信者もまた、護るべきものに属するのではないかという疑問にさえ目をつぶってしまえば。 「悪いが、当てられた連中を助けるほどの余裕はないんでな。……ったく、余計な手間を掛けさせないでくれ」 既にリベリスタの側は倒れている仲間がいる。そして、災厄の側には(事実上戦力と言えないまでも)増援があった。アズマの言う通り、既に余裕は無い。 ましてや、ただ敵を蹂躙すれば良いだけの災厄に対して、リベリスタ達は仲間も守らなくてはいけないのだ。 その目指す勝利条件の差は、次第に次第に、真綿で首を絞めるようにリベリスタ達を追いつめて行く。 加えて事前のアドバンテージも既に残されていない。ユーヌは残った影人に命じて狂信者を取り押さえようとするが数が足りないのである。本音を言えば纏めて動きを止めたい所だが、この乱戦状態では仲間も巻き込んでしまう。しかも、相も変わらず災厄の攻撃は続いているのだ。 「運が良ければ生き残るか。死ねばご愁傷様だが」 華麗な跳躍で災厄の攻撃を躱し、逆に拳銃で牽制する。指一本触れさせる事無く、ユーヌは災厄の攻撃をいなしている。お陰でまだしも戦いうる余裕がリベリスタ達にあった。経過がどうあれ、全ての災厄を倒し切ればリベリスタの勝利なのだから。 その時、乱戦をかき分けて狂信者達が輝く霊石の前に立った。 『恐怖神話』の語る邪神の加護か、彼らもまた霊石の力を知っている。 「させるか!」 遥紀の目が殺意を帯びる。 ここで狂信者の動きを許せば、全てが終わる。既に残された策は強硬策――つまり神秘を持たぬ人間の殺害――しか残されていない。 相手は邪悪に魂を売った存在だ。アークも許可しているし、既に屍を晒す者だっている。 躊躇う必要は何処にもない。 しかし、 (……自分の力不足に反吐が出る) 救える可能性に最善は尽くした。しかし、足りなかった。遥紀はそれを自身の力不足と認めた。ならば、非道に進むしかないのだ。それが、最愛を守る「父」の覚悟。 (俺は、愛する者達の為ならこの手を血に染めると決めた。遺して死ぬわけには、いかないんだ!) 祈りと覚悟を乗せて魔力の風が躍る。 しかし、風が届くよりほんのわずか早く、リベリスタ達の前で霊石が砕け散る。 世界の歪みが溢れ出した。 ● 撤退するリベリスタ達を無視して、災厄の群れはいずこかへ去って行った。 おそらくは、何かを食い荒らすために向かっていったのだろう。古の伝承が語る通りに。 その後、アークは儀式場の調査に当たった。狂信者から『恐怖神話』に対する何かの手掛かりが得られるかも知れないからだ。 しかし、その調査は徒労に終わる。 儀式の場に残されていた者も物も、全て食い荒らされていた。 残っていたのは、ほんのわずかな肉と骨の欠片だけ……。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|