「寿司勝負?」 その日、アーク本部に呼ばれたリベリスタたちは、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の意外な言葉に顔を見合わせた。 「回転寿司・鵬と、銀座の名店・佐助が勝負する。 回転寿司を勝たせて欲しい」 「佐助って、すっごい高級寿司店ですよね? 各国首脳の接待に使われるくらいの」 グルメ番組で見たらしい女性リベリスタが、目を見開いた。 「鵬って店は聞いた事ないっすけど?」 「百円寿司」 イヴの返事に、あちゃーと顔を伏せる女性。 「勝ち目ないじゃないですか」 「そう、しかも勝負方法が極めて不公平」 勝負は、地方の一デパートの催事場で行われるのだという。 一万円の買い物ごとに一枚、寿司券を配る。 その日は催事場に鵬と佐助が臨時店を出店しており、客は寿司券をどちらかで使って寿司を食べてもらう。 一日で、お客から寿司券を多く集めた店が勝利というルールだ。 「それなら、勝ち目があると思うが?」 男性リベリスタが首を傾げた。 「佐助の握りなら一貫、何千円ってのもある世界だよな? とりあえず一万円の買い物で千円分の寿司券が貰えるのだと仮定する。 千円じゃ佐助に行ったら、かっぱ巻き一本食わせてもらうのがやっとじゃないか?」 「確かに、だったら、回転寿司でお腹一杯食べた方がいいって、客もいるっすよね?」 むろん、何枚か貯めて、一貫でいいから佐助の握りを食べてみたいという客もいるだろう。 それなら、そう不公平な勝負とは思えない。 イヴは首を横に振った。 「当初はそのルールだった。 ところが、直前になって佐助サイドが主催であるデパートを買収し、ルールを変えさせた。 寿司券一枚に付き五貫、どんな寿司でも好きなものを食べられる」 「回転寿司でも、高級寿司でも、同じ五貫っすか!?」 「だったら客は高いのを喰うに決まっている!」 「そう、当日、佐助には大行列が出来、回転寿司・鵬は閑古鳥」 「でもそれ、佐助は大赤字じゃないっすか!? そこまでする理由でもあるんすか?」 千円の価値しかない寿司券で、一貫何千円の握りを五貫も食わせては原価だけでも大赤字必至であろう。 「佐助の背後には暴利を貪っている悪徳地上げ屋がある。 鵬が代々、店を構えている土地が欲しくて、嫌がらせを繰り返した。 鵬の大将のストレスが限界に達した時に、土地を賭けたこの勝負の話を持ち出した。 鵬の土地を奪えれば地上げ屋は元を採れる」 「一見、公平なルールを示して承諾を得て、直前になったら絶対に勝たせないルールに変更か、汚ねえなあ」 「『寿司は庶民の娯楽であるべき』と信念を持ち続けてきた鵬の大将は、信念を砕かれ、寿司を握る場所を奪われ、絶望と共にエリューション化し、人々を襲い始める。 ここまでが私の予見。 絶対に阻止しなくてはならない」 「阻止しろって言われても、その条件なら、私だって佐助の寿司を喰うっすよ?」 イヴは首を横に振った。 「佐助にも隙はある。 まずは、その行列」 人気が圧倒的過ぎるのが、欠点ともなりうる。 たかが五貫の寿司を喰うのに、客は何時間も並ばねばならないわけである。 佐助の寿司のありがたみを知っている大人ならともかく、子供は我慢出来ない。 「勝負は日曜日のデパートで行われる、六割は家族連れ」 そして、家族連れの決定権を握っているのは、実際のところ子供だ。 「並び飽きた子供が『パパー! あっちのお寿司食べたいー!』って騒ぎ出したら、親としては折れざるをえないって事っすね」 「催事場は広い、人の目を引くためのいろんなパフォーマンスが出来る。 リベリスタならスキルを活かしたパフォーマンスも可能」 例えば、斬撃スキルを活かしたマグロの解体ショー。 火や冷気のスキルだって活かす方法はあるはずだ。 むろん、身体能力や、素人ならではの斬新なアイディアを活かしても良い。 「まだアドバンテージはある、佐助は寿司だけ、回転寿司は何でもアリ」 「回転寿司屋は寿司だけじゃなく、麺類とかデザートとかいろいろ出してるっすもんね」 「それらも寿司券と引き換えに提供出来る。 いわゆるサイドメニュー三つと寿司券一枚が妥当」 当日限定の新メニューを提案しても良いそうだ。 ただ、一人前のラーメンのような、大きすぎるものはサイドとして認められないだろう。 「佐助の方は高級店のプライドがあるから、そんな事は出来ないっすね」 女性リベリスタが勝利の光明を見出した時、男性リベリスタは勝負条件の書かれたルール表を食い入るように見つめていた。 「どうしたっすか?」 「絶対に勝てないとまで思えたこの勝負だが、実は必勝法があるぞ」 「なに!?」 「いや、最初からそれを使ってしまうと鵬の大将とやらのプライドが傷つくだろう。 使うのは負けそうな時か、勝利がすでに決定付けられた時にダメ押しとして使うくらいがいい」 イヴはリベリスタたちに、臨時バイト店員として回転寿司・鵬を勝たせる手助けをするよう指令を出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:スタジオi | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年06月12日(木)22:14 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 5人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 午前十時二十分。 はやくも勝敗は明らかであるような光景が、展開されていた。 寿司屋・佐助VS回転寿司・鵬の寿司勝負。 デパート七階、催事場ホールに出された臨時支店には、早くも長蛇の列が出来ていた。 佐助側のみに、である。 予見そのままに、鵬側には閑古鳥が鳴いている。 鵬の回転寿司レーンの中央では、割烹着姿の大将が沈痛な面持ちで肩を落としていた。 「わかっちゃあいたが、辛いもんだな」 かなり思い詰めるタイプのようである。 敗北後、エリューション化してしまうという予見になんとなく納得がいった。 「先手は譲ってこうぜ」 黒髪に浅黒い肌の美青年、『影の継承者』斜堂・影継が大将を元気づけるべく、強気に発言した。 この光景は誰の目にも見えていたのである。 こちらは廉価品、あちらは最高級品である。 同じチケットで同じ量を食べられるなら、佐助に並ぶのは当然であろう。 E事件で無くとも卑怯な連中の勝手は見過ごせないな 「ま、大船に乗ったつもりでいてくれ……多分」 影継が、震えている大将の背中に語りかける。 絶対的不公平なルールを押し付けて来た佐助側の人間に、『KAMINARIギタリスト』阪上 竜一も怒りを感じていた。 「やれやれ、お金が絡むと人間どこまでも汚くなるもんだZE。 手段を選ぶなというのなら、こちらも容赦しないZE? 安心しなYO! 暴力に訴えたりはしない、ラブアンドピース! 俺はただ、歌うだけYO。 チェケラ!」 怒りを感じているのである――多分。 「まわるお寿司には、いっぱいお世話になってる……から。 この勝負、勝たせてあげたい、な」 いつも空腹、腹ペコキャラの『トライアル・ウィッチ』シエナ・ローリエが呟いた。 まだ雌伏の時である 影継主導で待機客用に椅子を準備したり、店頭や、催事場入口でもビラを撒いて告知したりと、地道な宣伝を続ける。 佐助サイドは『客なんか来ないのに無駄な事を』と嘲笑っているようだが、この地道さが実を結ぶこと今は信じて。 ● 十一時を過ぎたころ。 佐助側に並んでいる家族連れの子供たちが、騒ぎ始めた。 反攻の機会はここからだ。 催事場に設置した大型モニターに、寿司の画像を映し出す。 イカ、マグロ、エビなどの定番 ハンバーグとか焼肉、鳥の唐揚げなど子供の喜びそうな創作寿司。 さらには、 ゼリー、プリン、果物類など人の熱気で乾いた喉を刺激するようなデザート類。 「ママー、あれ食べたい」 「おじいちゃん、のどかわいたー」 案の定、子供たちが騒ぎ始めた。 「もう少し我慢しなさい、こっちのお店なら、もっと美味しいの食べられるから」 「こっちのお店、ゼリーあるー?」 「――煮こごりならあるかも」 そう、佐助にはないのである。 接待用超高級店ゆえ、大衆の子供が喜ぶメニューなど、ほとんど置いてはいない。 そこが、当初から指摘されていた隙であった。 その隙を『狐のお姉さん』月草・文佳提案の、大型モニターで視覚から食欲刺激作戦で押し広げたのである。 「すぐお座りになれますよ」 影継が案内に出た。 「う~ん、でも佐助の寿司は滅多に食べられないしねー」 「つかれた、すわるー」 「おなかへったー」 「のどかわいたー」 可愛い我が子や孫が疲れや空腹を訴えたら勝てないのが、親や爺婆というものである。 一人が折れて回転寿司レーンに移動すると、付和雷同する日本人の性質からか、雨だれのようにポツポツとだが、鵬に足を向ける家族客が出始めた。 ● それでも、引き入れられたのはごく一部の客だけである。 経済観念の硬い家庭では、騒ぐ子供を黙らせるため『こっちのお寿司は美味しい』『あっちのお寿司は不味い』とまで言いくるめて、子供を我慢させようとしているのだ。 時刻は正午。 リベリスタたちは、今回のメインプロジェクトを開始した。 『この物語は、寿司を民衆に伝える為に戦う一人の戦士の物語である』 突然、鵬側の照明が落とされ、同時にナレーションが流れた。 「時は平成、平和に見えるこの街で静かにスシを握る者がいた。その名を『海鮮仮面オオトリン!』」 回転寿司レーンの中で忙しく働いている銀髪の女性『quaroBe』マリス・S・キュアローブに、スポットライトが当てられた。 「だがしかし、街の寿司屋さんを潰そうとする悪のSASUKE怪人! 彼らの攻撃が迫る!」 ガスマスク+モルぐるみ+捻り鉢巻で悪徳寿司怪人に扮した影継が催事場の奥から姿を現した。 「クックック、鵬寿司を不利な勝負に引き込んだでSASUKE」 語尾がSASUKEという相当なキワモノキャラだが、一回限りだし、子供にはわかりやすくてよかろうという判断である。 「ああ、悪のSASUKE怪人が観客の子供達のほうに!」 不気味な怪人に扮した影継、いつものバトルスーツに色眼鏡で女幹部に扮したシエナが佐助の列に残っている子供たちの元に寄った。 怯えて泣き出す子供もいる。 ナレーション担当の竜一が切羽詰った声を出す。 「みんな、声を出してあの名を呼ぶんだ! 『海鮮仮面オオトリン』!」 これで子供たちが『オオトリン』と叫んでくれれば良いのだが、そうはいかない。 竜一のテンションの高い叫びのあと、場がシーンとしてしまった。 TVで放送中のメジャーなヒーローでもない限り、こうなるのが常なので仕方がない。 むしろ、ヒーロー系ゆるキャラとしてはお約束な風景でご愛嬌だった。 それでもマリスはめげずに、ヒーローを演じた。 「店長! 怪人です! 出撃の承認をお願いします!」 本来、店長は鵬の大将で然るべきだが、どうにも職人気質で不器用なので、代わりに、見た目一番お姉さんな文佳が、全自動寿司機械のスイッチを押した。 「――し、承認」 スゲー恥ずかしそうだったが、頑張った! もっと恥ずかしい役のマリスが幻想纏いを使って、一瞬で変身する。 煙でごまかして役者が入れ替わるだけのヒーローショーと比べ、非常に凝った演出である。 「悪のSASUKE怪人! そして幹部! 許さんぞ たあ!」 全力で怪人の元に移動する。 「――安くて美味さ本格派! 海鮮仮面オオトリン参上!」 キメ顔のマリス。 意外と向いているのかもしれない。 「正義の力見るのです!」 ヒートオブソウルを使用し、気魄めいた揺らぎの演出するオオトリン。 「生意気な! バッテラバットをくらうがいいSASUKE!」 バッテラ寿司に似せた棍棒で殴りかかってくる悪徳寿司怪人。 その一撃を見事に腕で受け止める。 「そんな攻撃! 正義の力の前には通じません!」 「さあ、反撃だ! 出るぞ高速ネギトロパンチ! 唸れ鋭いかっぱ巻きキック!」 竜一のナレーションが終ると同時に、アクセルクラッシュをお見舞いする。 「高速ネギトロパンチ!」 見た目、どこがネギトロなんだかわからないが、とりあえず寿司にちなんでみる。 「かっぱ巻きキック!」 色物ネーミングにしている上、手加減しているとはいえ、強力なスキルであるアクセルバスターを受けているのだから、悪徳寿司怪人こと、影継は相当に痛いはずである。 だが、本物の迫力を出すには妥協はしない。 特撮ヒーローの必殺技とは比類にならない、本物のヒーローの迫力! オオトリンは早くも子供たちを虜にした。 「ガンバレー、オオトリン!」 ボロボロになった悪徳寿司怪人は、やけっぱちになって叫ぶ。 「おのれオオトリン! こうなったらマグロの解体で勝負だSASUKE!」 オオトリンことマリスと、怪人は回転寿司レーンの内の調理場に移動した。 包丁を手に取る怪人。 「くっ、手が短くて上手く切れないでSASUKE かくなる上は全員、道連れにしてやるSASUKE!」 自爆せんとする悪徳寿司怪人。 「自爆なんぞ、させません!」 「最後は必殺技だ! 皆で声を合わせて、オオトリンにパワーを送るんだ!」 「ガンバレー、オオトリン!」 竜一のナレーションと、子供たちの声援に合わせて陰陽・星儀を繰り出す。 「必殺! オオトリン! 卵焼きアターック!」 殴られ、蹴られたあげく、最後はこうして不吉な影に包まれるという風に、影継は完全に貧乏くじを引いている感がある。 椅子の配置やビラ配りなど、細かい気遣いといい、実に縁の下の力持ちである。 ● 「わたしが相手……だよ」 女幹部シエナがマグロの置かれた調理台の前に立った。 「オオトリン・ブレード!」 マリスも包丁を手に取る。 ヒーローと怪人の勝負とあって、子供たちが沸き立った。 「ちかくでみるー」 勝手に佐助の列から外れてしまう子供たち。 「あ、こら戻りなさい」 自分たちが列から離れては、散々並んだ分の時間が無駄になってしまうが、小さい我が子が勝手にどこかに行く不安には耐えられない 渋々、列を抜けるしかなかった シエナは頭上に、黒い魔力の大鎌を呼び出した。 「見るがよい! 悪の調理法! マグロメッシス!」 強力な戦闘スキルを惜しげもなくショーに使う。 本来、マグスメッシスなのだが、今日だけはマグロメッシスである。 十分とかからず、マグロがバラバラになった。 霜のかかった、淡いピンク色のトロが露わになり、観客たちの食欲をそそる。 「ママー、あれたべたい!」 「そうね、新鮮でおいしそうだし、あっちでもいいか」 TVモニターよりもさらに直接視覚的に訴える攻撃に、今度は親たちまでもが陥落し始めた。 佐助の行列が崩れ、その三分の一ほどが回転寿司の席に座る。 それを鵬の大将が食べやすく裁き、赤味、トロ、炙りトロと目にも鮮やかなマグロ寿司たちをレーンに流していった。 一方、オオトリンことマリスはまだ解体を終えていない。 だが、一部位一部位丁寧に裁きながら、各所の旨味を説明し、自分の手で丁寧に握ってカウンター越しに直接渡すという、丁寧な仕事をしていた。 「寿司は心! 速さはなくても正義の魂で握った寿司は何より美味い! 食べれば体に正義の力が湧くのです!」 口上を述べながら、カウンター越しに直接寿司を出す。 正義の味方が握った寿司を食べれば、正義の力が湧く。 ちびっこ殺しのフレーズもあり、小さな手が次々に伸びてきた。 「オオトリン……今日の戦いは引き分けね」 女幹部・シエナも色眼鏡だけ外しウェイトレスを始める。 こちらは、悪人設定で子供にはウケが悪いため、大きなお友達とか、お酒を注文してくれた人にお酌するとかが中心である。 今まで、佐助の列に並んでいた若年層、中高年層の男も、おまけにもらったチケットで、あんな可愛くて魅惑的なコスプレをした女の子にお酌してもらえるなら、どこぞの店より安いと判断したのか、鵬に移動し始めた。 ついに鵬にも列ができ始め、佐助の列と半々近くになった。 ● 「お前ら、勝手やってくれているようやないの」 ここに至り、ついに佐助の人間が乗り込んできた。 派手な背広にパンチパーマ、典型的あっちの世界の風体をしているのを見るに、職人ではなく、件の地上げ屋であろう。 「ここは自由に使っていいって許可をもらっているスペースだから、文句言われる筋をないのよねえ」 文佳が作り置きしたかき氷を冷蔵庫から出しながら、あしらうように返事をする。 「アホゥ! 内容が問題じゃ! 悪徳寿司怪人がSASUKE SASUKE言うとうたようやんけ!」 「なお、この物語はフィクションであり、実在の寿司屋、佐助、寿司勝負とは無関係です」 悪徳寿司怪人の中の人が、棒読みで答えた。 「フィクションやないやろ! 明らかに喧嘩売っとるわ!」 「HEY! ダディ! フィクションじゃないなら認めるんだNA? 卑怯な手で不利な条件の勝負に持ち込んだ事を認めるんだNA? 」 ヒーローショーが終わった後は、ギターでBGM係をしていた竜一が曲に乗せてメッセージを送る。 地上げ屋は歯噛みし、捨て台詞を残して帰って行った。 「くっ! バイトどもが生意気な!夜道に気を付けろよ!」 残念ながら、このバイトどもはリベリスタなのである。 チンピラ如きに襲われたところで、簡単に返り討ちに出来るのだ。 ● 客数が同じになると、あとはもうガチンコ勝負だった。 高級食材を使った本格派寿司の味だけで一点突破勝負をする佐助。 文佳のレストランでの経験から生まれた、ピザ風味やスパゲティなどの軍艦巻きなどの子供向き創作寿司。 影継や提案したケーキ、アイス、かき氷、冷風和菓子、冷やしうどんといった納涼メニュー。 シエナ提案の旬のメロンパフェに定番いちごパフェ、甘夏のパフェなど、食事の合間でも食べられるスイーツ。 などなど、多様なニーズに応えようとする回転寿司・鵬。 だが、どうにも鵬のパフォーマンスが目を引くのである。 特にシエナがフレアバーストで、しめ鯖をさっと炙ったりする光景は滅多に見られるものではない。 そんな寿司、佐助の寿司以上に口に入る機会が少ないのだ。 また佐助側にも誤算があった。 意外にオーダーミスが多く、それを修正するために、まごつきが発生している。 子供が多いゆえに、さびぬき、さびありの間違いも多い。 これは普段、予約客しかとらない専門店の職人が、ごったがえしたデパートで無数の客の相手をするという慣れない状況に陥ったがゆえに発生した現象であろう。 対して、鵬側は回転寿司だけに客が好きなものを取れば良いのだし、オーダー品に関しても、影継が瞬間記憶でオーダーミスを0にしてしまっていた。 わさびに関しても、文佳が「わさび抜き」「わさびあり」を判りやすく表示しており、苦情はない。 そういった細かな要因が重なり、最終集計では、ごくわずかながら鵬が引換券を多く集めるという結果に終わった。 ● 「さすが美味いNE!」 「本当に助かったよ、これでまたみんなに安くて美味い寿司を食わせてやれる。 残り物だが好きなだけ食ってくれ」 デパートが閉店した後、片づけ業者が来るまでの間、鵬の大将は直々にお寿司を握ってくれた。 腹ペコキャラのシエナは、好きなお寿司を値段を気にせず食べられてご満悦だし、他の四人も散々働いた後に食べるお寿司は格別だった。 安い材料ながら、大将の仕事には本物を思わせるものがある。 庶民の味方は正義の味方。 ショーにこそ出なかったが、本物の『海鮮仮面オオトリン』は大将なのかも、と思わせる味だった。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|