●ムーンフラッグ ――地上に巨大なピエロが現れた! それはサーカスのテントであった。全長十メートルを超えるピエロのお腹の中からは大勢の人の歓声や悲鳴、笑い声など、様々な感情が一塊になって漏れ出してくる。サーカス団ムーンフラッグの公演は今日も大盛況であった。 特に今回の目玉は猛獣使いの少女が操る摩訶不思議な珍獣であった。胴体はダンゴムシを一メートルほどに巨大化させたもので、その口先はアリクイのように長い。その口から伸びる舌は自身の身体を何周もできるほどに長く、遠くの獲物も一瞬にして捕らえてしまう。 サーカスのチラシではシルエットだけが載せられ、その姿は見てのお楽しみとなっている。実際に見た者は一人として違わず顔をしかめ、中には堪えきれずに嘔吐する者まであった。巨大な昆虫を思わせる珍獣は全身が黒くべっとりと湿っており、さらにそこから分泌される粘着性の体液を利用してサーカス内を上も下も無く素早く動き回る。舌先でペロリと舐められて失神してしまった見物客も少なくは無い。 その生き物の正体は何なのか。どんな動物学者にもわからない。サーカスの団員も、操っている猛獣使いの少女ですら知る由も無い。ただ団長が何処からか連れてきたということだけが団員の認知している事実である。 ムーンフラッグがやって来たのと時を同じくして周辺の町では毎日のように行方不明者が出るようになった。その内の何人かは失踪する直前にサーカスを訪れていることがわかっている。疑われては堪らないとサーカス団も積極的に警察に協力しているが、今のところその原因は掴めていない。結果的にこの噂がまたサーカスの評判を広め、更なる見物客を呼び込んでいる。 今日もまた、珍獣ショーが開催される。好奇心旺盛な見物客を集めて。 ●ブリーフィングルーム 「この化け物の正体はエリューション・ビースト。どんな図鑑にも、うっぷ、掲載されて無いわ」 口元を押さえながら『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が世間の疑問に答える。先ほどから顔色が悪く、エリューションの話をするたびに吐き戻しそうになっていた。 「行方不明事件はこのエリューションの仕業よ。サーカスの最中に獲物の目星をつけてマーキングをするの。術中にはまった人間は誘われるようにして深夜にテントを訪れ、犠牲者となる。後には骨の一本、値の一滴すらも残さないわ」 リベリスタたちにサーカスのチケットを差し出す。『ムーンフラッグへようこそ! 珍獣ショー開催!』と大きく縁取られた文字の下に黒塗りされたエリューションのシルエットが写っている。他にもテントの外見や案内図、開催時間など一般的なサーカスの情報は一通りが記されている。 「サーカスは夜の七時から九時。その時間内にマーキングを行い、深夜の零時過ぎに獲物の捕食を行うわ。サーカスの団員たちはこのことを知らないただの一般人だから、彼らに悟られないようにエリューションを退治して欲しいの。エリューションの存在なんて知らないほうが幸せだから。それも、信頼してる団長が持ち込んだ化け物がお客さんを犠牲にしてるなんて」 一時的に真顔に戻ったイヴだったが、エリューションの特徴について話すときにはまた気分が悪そうに顔をうつむかせた。 「相手は素早い動きと粘着性の体液による縦横無尽の攻撃を特徴とするわ。このエリューションにとっては天井も壁もすべてが地面と同じだと思って。触れただけで毒を受ける長い舌で相手を捕らえたりとか、身体を丸めての体当たりとか、いかにもサーカスの団員っぽい動きをするから」 最後にもう一つ、とイヴはこれまで以上に真剣な面持ちで言葉を付け加える。 「エリューションの、グロテスクな外見に注意して。いくらフェイトを得てても気持ち悪いものは気持ち悪いから。苦手な人は直視するだけで体調を悪くするかも」 そういい残したイヴは両手で口を押さえ、ブリーフィングルームから走り去っていった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:霧ヶ峰 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月14日(日)22:14 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●サーカス開催前 大食らいなピエロのお腹が開き、台車を押したスタッフが外に現れた。 一度別のテントに入り、再び出て来た時には台車の上に大きな荷物が乗せられていた。白い布が被せられて中は覗えないが、動くたびにうなり声が漏れ出し、その声にスタッフは顔をしかめている。 スタッフがピエロのテントに入る前に『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)、『現役受験生』幸村・真歩路(BNE002821)、『ライアーディーヴァ』襲 ティト(BNE001913)の三人が声を掛ける。猛獣使いのファンだという花束を持った来客に対し、スタッフの男性は困ったように苦笑いを浮かべた。 「いや、この通り! 一度だけ会わせてくれりゃそれでいいんで!」 「申し訳ありません。マリーネはショーの準備に掛かってまして」 「それならショーの後でお話聞かせてもらえませんか。お時間は取らせませんから」 猛と真歩路が必死に頼み込むも男性は取り付く島も無い。人の声が大きくなるほど布の中が騒がしくなり、がちがちと檻を叩くような音が周囲に響き渡った。男性がたしなめても一向に治まる気配は無い。 布の端がわずかにめくれ上がる。そこから赤色の物体が飛び出し、男性スタッフの顔を撫でてまた布の中に引っ込んだ。触れられた場所にはべったりとした液体が染み付き、男性が必死にハンカチで拭くも糸を引いてまったく剥がれなかった。 「この中に例の猛獣がいるのかぉ」 興味津々といった様子のティトが布の前に身を屈める。ちゅるりと舌なめずりをするような音が漏れたかと思うと、台車から粘着性の液体が染み出し、タイヤに絡んで少しも動かせなくなった。 男性スタッフは慌ててマリーネの名を呼ぶ。裏のテントが開き、十五、六歳ほどの片手にムチを持った派手な衣装の少女が現れた。 「どーしたの。またコロちゃんとケンカしたの?」 台車に駆け寄ったマリーネが布をめくり上げる。狭い檻の中では黒いダンゴムシを思わせる珍獣の眼光が赤く光っていた。マリーネの登場にはしゃぐようにして小刻みに足を動かし、飼い主の腕に絡みつく。 「困らせちゃダメだよコロ。さ、いい子だからこれ外して」 マリーネが叱り付けると台車を包んでいた粘り気が消え、水のようなサラサラとした液体に変わった。 笑顔で珍獣を撫でるマリーネは来客の存在に気づいて腰を上げる。自分のファンが花束を持って訪ねて来たことを聞き、歓喜の声を上げて一人一人と握手を交わした。 「わー、嬉しいな。サーカスはもう見てくれたの?」 「前に一度。あんまり凄かったんでまた身に来たんだ、な?」 猛の言葉に二人が同意すると、マリーネはさらにはしゃいで地面から何度も飛び上がった。 「動物と心を通わせて人を楽しませるお仕事って凄いよね。あたし受験生なんだけど、まだ将来のこととかピンと来なくて。良かったらお話聞かせてもらえないかな。ショーの後とか。ファーストフードとかになるけど食事も奢るから」 親しげに話しかける真歩路にマリーネは考えるような仕草を見せながらも、ごめんねと手を合わせて食事の誘いを断った。 「コロちゃん、この子ね、マリーネがいっしょに居ないと眠れないんだ。お父さんからも夜中に一人にしちゃダメって言われてるから。ホントにゴメンね」 「お父さんっていうのは団長さんのことかぉ?」 「うん、そうだよ。それじゃ、今夜は楽しんで行ってね!」 マリーネは大きく手を振って男性スタッフと共にピエロのテントに入って行く。 三人はそれ以上食い下がることはせず、大人しくサーカスの開演時間を待った。 ●サーカス開演 ムーンフラッグのサーカスは観客の期待を著しく裏切る不出来なものであった。 トップバッターとして登場したピエロは玉乗りに失敗し、続いて現れた人形遣いは上手く操れずに糸を切ってしまう。曲芸の際には床に安全のためのマットが敷かれ、ナイフ投げでは狙いのリンゴに当たらず見当違いの方向に飛んで行った。会場内に湧き上がるのは歓声でも悲鳴でもなく欠伸と失笑であった。それをテープレコーダーで誤魔化して盛り上がっているように見せかけている始末である。 観客の反応が変わったのはメインイベントである珍獣ショーが始まってからだった。スポットライトの当たった舞台の上でマリーネが布を外す。姿を現すと共に幾人かの悲鳴が上がり、会場は一気に騒然となった。 マリーネの手によって檻が開かれ、珍獣が縦横無尽にテントの中を駆け巡る。舌をだらしなく伸ばし、小さな足をせかせかと動かして走り回る様に大勢の観客が身を縮め、顔を引きつらせた。 「グロテスクだとは聞いてたけど……これは、苦手な人じゃなくても直視は辛いなぁ」 珍獣の動きを目で追いながら『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)がぼやく。隣に座っている『ストレンジ』八文字・スケキヨ(BNE001515)も同様の感想を漏らした。 「悪いのは大きさかな。サイズが違うだけでこんなに印象が変わるものなんだね」 「でも良く見ればキモ可愛い、かな?」 開演前にチラリとだけ目にしている真歩路は他と比べれば余裕を見せていた。それでも自分の真上から珍獣の唾が垂れ下がってきたときにはさすがに小さな悲鳴を上げて座席から飛びのいた。 珍獣の動きはより激しく、よりアクロバティックになっていく。テントの端から端までを地面と変わらない要領で転がり回る姿を雪白 音羽(BNE000194)は冷静に見守っていた。グロテスクな外見にも惑わされることは無く、ごく細かな動きまで冷静に見つめている。 「天井も壁も関係無いってのは本当みたいだな。ただ方向転換の際にはさすがに一度止まるか。あの隙を狙えれば上手くいきそうか」 分析した結果をそのまま桐生 武臣(BNE002824)に伝える。しかし武臣はただうなずくばかりで、珍獣が登場してから一言も言葉を発しない。かろうじて視線は動いているものの、身体は固まってしまったかのように腰を真っ直ぐ伸ばしたまま静止していた。 幾人かの観客が醜悪な生体に慣れ、さすがに悲鳴も少なくなった頃、それまで絶えず走り回っていた珍獣がテントの上部で動きを止めた。のけぞるようにして首を伸ばしたかと思うと、長い舌で観客の頬をペロリと舐め回した。舐められた女性は声を上げながらテントから逃げ出して行った。 「いくら平気でもあれは嫌だなぁ……よく悪評のが先に広まらなかったね……」 呟くレイチェルの横で武臣が立ち上がる。追うのかと尋ねる音羽に固い表情でうなずいた。 「珍獣が唯一接触した客だ。獲物に選ばれた可能性が高い」 口調は堂々としていながらも足取りはおぼつかず、何度かパイプ椅子に躓きそうになっていた。 サーカスを出て人気の無いところに出ると、大きくため息をついて近くの電柱に片手をつく。 「グロい……」 武臣の呟きは誰にも聞かれることは無く、薄暗いテントの中では青ざめた顔色も誰にも気づかれることは無かった。 ●真夜中の大サーカス 深夜の零時を過ぎた頃、すっかり灯の落ちたテントに足を踏み入れる人影があった。 それはサーカスの開演中に頬を舐められた観客の女性だった。夢遊病のようにぼうっとした様子ながら、一切の迷い無く大きなピエロのテントに向かって歩いていく。 最初にその姿を発見したのは暗闇でも目の見えるスケキヨだった。すぐさまテントの中に身を隠している音羽に連絡を入れ、自身は他の仲間と共に珍獣が現れるのを待つ。女性がピエロテントに入ってからそれほど時間をおかずにちゅるりと唾を飲み込むような音が響き、別のテントの入り口がふわりと持ち上がった。 暗闇の中で赤く光る瞳が鮮明に浮かび上がる。素早い動きでピエロのテントに潜り込み、これまでよりも大きな、汚らしい音を立てた。 その音が合図となり、身を潜めていたリベリスタたちがテントの中に潜り込む。同時に獲物とされた女性を抱えた音羽がテントの外に飛び出した。 エリューションである珍獣が怒りの咆哮を上げる中、テント内がわずかな明かりで照らされる。薄暗い中でもはっきりとわかるグロテスクな姿に『冥滅騎』神城・涼(BNE001343)は一人うめき声を上げた。 「こいつは、想像以上だな。捕まって舐められたりしたら……気分が悪くなるぜ」 わずかに目を逸らしながらも赤い刀身の斬魔刀を構える。唾を飛ばしながら伸びてきた舌をギリギリのところで避け、素早く胴体を切りつけた。 傷ついた身体の表面からどろりとした液体が吹き出る。漂う不快な匂いに涼は鼻を押さえてその場から距離を置いた。 目の前が空いたことでエリューションは自らの身体を丸める。少しだけ後退し、後は入り口に向けて一直線に転がり出した。 「させるかっ……!」 勢いをつけた突進を武臣が自らの身体で受け止める。衝撃で骨への損傷を感じながらも、一歩も引かずにエリューションの身を押し留めた。 「オレらが負けたら、また犠牲者が増える……足はひっぱらねぇ!」 両手の塞がれた武臣は口を大きく開ける。硬質化した胴体に食らい付き、奇妙な匂いを放つ血液を躊躇無く啜った。 「コレはなかなか。大したもんだね」 口笛を一つ吹いたスケキヨがエリューションの顔面を狙ってボウガンの矢を放つ。装甲の無い部分を狙われたエリューションは奇声を上げながらテントの奥に逃げ込み、ボール状の体勢を解いた。 「おい武臣、大丈夫かよ。あんなバケモンに噛み付いて」 「俺の歯が立つ相手だ。慣れれば案外かわいいもんさ」 武臣の鋭い犬歯が光る。その先端に付着している黒い液体を見て涼は引きつった笑顔を浮かべた。 そこに獲物を逃がして戻って来た音羽と真歩路が駆け付ける。遠目から改めてエリューションを見た音羽は何でもないことのように頬をかいた。 「ま、確かに気持ち悪い外見だがアンデットの連中よりはマシだわな」 「そういうのとはまた違った気持ち悪さだが……ここまでカッコつけられちゃそうも言ってられねぇか」 それまでの躊躇は何処へやら、涼は堂々と敵を見つめてエリューションと対峙する。 直線攻撃を受けないよう、真正面には立たずに距離を詰めるが、手の届く範囲に近付く前にエリューションは再び身体を丸め、背後の椅子をなぎ倒しながら壁を転がった。そのまま天井を経由してステージの真上に来たところで体勢を戻し、のけぞって長い舌を伸ばした。 「か、顔を、こいつっ!」 エリューションの舌が鞭のようにしなり涼の頬を打つ。軌道の読めない攻撃の嵐は次々とリベリスタたちを痛めつけていく。しかし癒し手であるレイチェルとティトがその都度治療を行うため、舌での攻撃は決定打にはなりえなかった。 「のんびりやってる暇は無いんだよ……こっちはさ!」 堪えきれなくなった猛が自分に狙いを定めた舌に掴み掛かる。触れることこそできたがエリューションの力は想像以上に強く、逆に振り回されて壁に叩きつけられた。 「引き摺り下ろすのは無理か。なら自分から降りてもらうしかないな」 「ずっとその場に張り付いてるなんてサーカスの出し物としても面白くないもんね。もっと動いてもらわないと」 音羽とスケキヨは同時にエリューションの身体を狙う。天井に張り付いて舌を伸ばしている間はいかなサーカス団員とはいえ小刻みに動くことしかできない。二人にとって一メートルを超える大きな身体は狙いやすい的であった。 「あたしもこれでっ!」 真歩路も負けじと腕を真上に上げ、両手から弾丸を発射する。無数の弾丸が正確にエリューションの顔面を捉え、舌での攻撃を止めさせた。 エリューションの身体がぐらりと揺れる。徐々に天井から離れていくのに気づいたレイチェルが皆に向けて腕を振り上げた。 「みんな! その場から離れて!」 言い終わるか終わらないかのうちに巨大な体躯がステージの上に落下する。轟音を上げて着地したエリューションは逆さまになって足をざわざわと動かす。間一髪、その背中に押しつぶされた者は一人も居なかった。 「つつ……ようやく降りてきたか。今がチャンスだ!」 傷つきながらも猛は無防備な身体に何度も拳を打ち込む。涼も今度は躊躇せずに近付き、何度もエリューションの身体を切り裂いた。 ようやく身体を丸めたエリューションがその勢いのままテント内を転がり始める。観客席をなぎ倒し、事前に配置した障害物も苦にせずドーム型のテントを走り続ける。スピードが乗ってしまっては止めることも狙うこともできず、リベリスタたちは回避に専念するしかなかった。 火事場のような騒ぎの中、テントの入り口がわずかに開いた。現れたのは裏のテントで休んでいたマリーネだった。まだあまり開いていない目でテント内を見回し、なんの騒ぎと小さな声を出した。 「君は……猛獣使いの……」 「仮面、さん? それにあれ、コロ――」 「あれは僕のペットだよ。ちょうど秘密の芸を仕込んでるところなんだ」 咄嗟にウソが口を付いて出る。まだ寝ぼけているマリーネは、そうなんだと呟いてぼうっとした目をテントの中に向けた。 「悪いけどこれは秘密の秘密なんだ。テントに戻ってくれないかな」 特に疑うことなくマリーネはテントを出て行く。ほっと安堵のため息をついて視線を中に戻すと、エリューションは元の姿に戻って来た。 這い蹲るような姿勢で全身を大きく上下させている。身体のあちこちから血が流れ出し、この暴走が最後の抵抗であったことを感じさせた。 「ようやく止まってくれたか。こっちもかなりやられたがな」 休み無く続く猛攻によりリベリスタたちはかなりの痛手を負った。しかしエリューションが疲労するまで、だれ一人として倒れるものは無かった。 「こんな化け物を連れてくるなんてね。団長のことも気になるけど、今は目の前の脅威を払おう」 ほとんど身動きもできなくなったエリューションに一斉攻撃を仕掛ける。大きな体躯がごろりと転がり、足を上に向けて絶命した。 「あー、マジ気持ち悪かった……」 心からの叫びと共に、涼はステージの上に寝転がった。 ●後片付け テント内の片付けはエリューション退治に勝るとも劣らない辛さだった。 暴れまわったエリューションによって壊された道具を直し、パイプ椅子を並べ、遺体と痕跡を消し去る。ようやくすべての作業が終わったころにはすでに朝日が昇っていた。 それぞれにテントを離れる中、最後まで残っていた武臣はタバコに火を点け、テント内をぐるりと見回した。 「忘れねぇぜ、てめーの曲芸はよ……」 人に嫌悪されたエリューションの姿を自分に重ねるようにして、そっと別れの言葉をつぶやいた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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