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わがままクイーン。或いは、女王のゲーム

● ホテルの悪魔
 潰れかけのホテルがあった。かつては、毎シーズン、観光客を多数収容し満室になることもザラだったのだが、今は閑古鳥が鳴いている。今年を最期に潰れることが決定しているホテルだ。
 ホテルスタッフを含め、8階建てのホテルには今現在30名ほどに人間しかいない。各階5〜30部屋ほどの客室があるので、そのほとんどの部屋が空室となっていることになる。最上階のスウィートルームや、7階のラグジュアリールームに泊まっている客はいない。数少ない観光客の中から、更に少数が泊まりに来る程度だ。
 そんなホテルに異変が起きたのは、ある週末の晩のことである。
 監視カメラに映ったのは、廊下を進み4階の一室に入っていく西洋甲冑を着込んだ何者かだった。それも、同時に8カ所。1〜7階の廊下に現れた。
 更に、ローブを着込んだ老人、馬に乗った騎士、分厚い鋼鉄の鎧を着込んだ巨漢の姿も伺える。ローブを着た老人がカメラの方を向いた瞬間、監視カメラの映像がプツリと途切れる。
 どうやら、監視カメラは破壊されるか、映像を切断されてしまっているらしい。その犯人は、ローブの老人だろうか。奇妙で、怪しく、物騒な客人を前にして、ホテルスタッフ達の間に混乱が起きる。
 ホテル内には、他にも客人が泊まっている。客人の安全を確保するためには、奇妙な来訪者の正体や目的を突き止め、ホテルから排除すべきだろう。
 しかし相手は鎧を着ていた。馬に乗っていたものもいる。果たして安全なのだろうか? 答えは否だ。誰だって分かる。
 警察に連絡するべきだ、との声があがり、若いフロントマンが受話器を取り上げる。
 だが、しかし。
 返って来たのは、無音だけ。電話が外に通じない。携帯を取り出すが、当然のように圏外となっていた。
 それを見て、彼らは確信する。
 自分たちは、このホテルに閉じ込められたのだと。

● 女王のわがまま
「ホテルの一室に、Eゴーレム(クイーン)が陣取っている。彼女の討伐が、任務の成功条件。クイーンの部屋がどこかは不明だけど、Eゴーレム(ナイト)(ビショップ)(ルーク)のうち2体を倒さないと部屋のドアは開かない」
 加えて、ホテル内には8体の(ポーン)もうろついているようだ。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は額を押さえて、小さく首を振る。
「本来なら、全員で1体ずつ対処すればいいのだろうけど、そうも言っていられない要因が1つ」
 それは、ホテル内にいる30人もの一般人の存在である。スタッフが10名ほどと、客が20人ほど。客は2〜6階に分かれて泊まっているが、スタッフ達は皆一階に集まっているようだ。もっとも、スタッフのうち何人かは、これから様子を見るために館内を見回りに行く予定である。
「クイーン以外のEゴーレム達は、館内をぐるぐると移動して回っているみたい。ビショップは遠距離神秘攻撃を、ルークは遠距離物理攻撃を、ナイトは素早い移動と、壁や床をすり抜ける能力を持っている。ちなみに、ポーンにできるのは近距離攻撃のみ」
 ただし、とイヴは指を1つ立てて、注釈を入れた。
「ポーンの中には、他のEゴーレムに成り済ますことができる者も居る。そいつは、他のEゴーレムの能力をコピーするけど、そいつを倒してもクイーンの部屋のドアは開かない」
 クイーンの部屋のドアの鍵は、あくまでオリジナルだ。ポーンによって成り済まされた者では意味がない。
「クイーンを倒せば他の駒は全滅するみたい。できるだけ、迅速な解決をお願いするわ」
 そう言ってイヴは、仲間達を送り出すのだった。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年05月31日(土)22:42
おつかれさまです、病み月です。
今回は、ホテル内に現れたチェスの駒に似たEゴーレムが相手です。
目的など不明のままですが、何も考えていないわけではないようです。
それでは以下情報。

● 場所
8階建てのホテル。1階はフロントや食堂など。2階〜8階は客室。7、8階はそれぞれ10室と5室しかない。他の階は30室ずつある。それらの部屋や廊下に、Eゴーレムは散っている。
クイーンはどこかの部屋に潜伏している。ビショップ、ルーク、ナイトのうち2体を討伐してからでないと、クイーンの部屋のドアは開かない。
ホテル内には30人の人間が居るようなので、要注意。
鎧を着ていて視界が悪いのか、クイーン以外には不意打ちなど比較的有効である。

● ターゲット
Eゴーレム(クイーン)×1
フェーズ2
真っ赤なドレスを着ているEゴーレム。体は、黒い宝石のような素材で出来ている。あまり動き回りたがらず、ホテルの1室に引きこもっている。
配下の見ている光景を、クイーンも見ることができる。
【クイーンズゲート】→神近複[不運][呪い][ショック]
周囲の空間に穴を開け、そこから武器を撃ち出す攻撃。
【女王の審判】→神遠単[必殺][呪縛]
対象一体を断頭台にくくり付け、処刑する。

Eゴーレム(ビショップ)×1
フェーズ1
ローブを纏った老人のような姿をしている。ゆっくりとあちこち動き回る性質を持っている。
【僧術】→神遠複[虚弱][氷結][ブレイク]
青白い魔弾を無数に撃ち出す攻撃。

Eゴーレム(ルーク)×1
フェーズ1
分厚い鋼鉄の鎧を着込んで鉄槌を持っている。動きは鈍重だが、防御力は高い。じっとしていて、ほとんど動かない。
【城壁】→物遠貫[ノックB][重圧][圧倒]
鉄槌を力任せに投げつける攻撃。

Eゴーレム(ナイト)×1
フェーズ1
馬に股がった騎士。自由奔放に動き回る素早いEゴーレム。壁や床をすり抜ける能力を持つ。
【単騎駆け】→物近複[混乱][流血][連]
縦横無尽に駆け回り、槍による攻撃を繰り返す。

Eゴーレム(ポーン)×8
フェーズ1
甲冑を纏った兵士の姿をしている。規律のとれた動作で、連携も得意。他のEゴーレムに成り済ます能力を持つ。
【兵士の太刀】→物近単[致命][ショック]
一撃に全てを込めた強烈な斬撃。
 
皆さんのご参加、お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
アウトサイドホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
ノワールオルールスターサジタリー
天城・櫻霞(BNE000469)
メタルイヴクロスイージス
大御堂 彩花(BNE000609)
ハイジーニアスマグメイガス
六城 雛乃(BNE004267)
フライダークインヤンマスター
エイプリル・バリントン(BNE004611)
ハイジーニアスアークリベリオン
逢川・アイカ(BNE004941)
ハイジーニアスアークリベリオン
アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)
アウトサイドアークリベリオン
水守 せおり(BNE004984)

●ホテルの女王
 不気味な雰囲気に包まれたホテルの廊下に、ガチャガチャという音が響いていた。鎧のぶつかり合う音だ。チェスの駒から生まれたEゴーレム達が、8階建てのホテルを彷徨い歩く。
 何かを探しているようだ。
 クイーン含め12体。各階に、1~2体の敵がいる計算になる。
 ガチャン、と重たい音をたてて。
 ホテルの異常に困惑するホテルスタッフが集まっていた、1階エントランスにも2体のEゴーレムが姿を現した。

●チェスの駒達
「何を起因にエリューションが湧いたのやら」
 銃声が1発。エントランスの入口を開けて、『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)が現れた。後に続いて、ぞろぞろと他の仲間達もホテル内に踏み込んでくる。Eゴーレムは、ビショップとポーンだ。ビショップの眉間に櫻霞の銃弾が命中する。
「王のいないチェスとは見ていて締まらないですね。陣頭を取るべき存在を欠いた軍など所詮は烏合の衆に過ぎないと教えてさしあげましょう」
 ビショップの眉間に銃弾が命中すると同時に、ホテルスタッフから悲鳴があがった。銃声と悲鳴を合図に『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)が弾丸のように飛び出した。彩花の拳が鮮烈に輝く。するどい拳激を、しかし飛び出して来たポーンが身を挺して阻む。
「あたしは戦うしか取り柄の無い不器用な子なので……」
 杖を掲げて『六芒星の魔術師』六城 雛乃(BNE004267)は言う。掲げた杖から溢れだすのは、血液を固めて作ったような真黒い鎖の濁流だった。しかし、それと同時にビショップが無数の青白い魔弾を散弾する。
 空中で衝突し、その場で衝撃波を撒き散らす魔弾と黒鎖。衝撃に弾かれ、彩花の身体が地面に倒れ込む。吹き荒れる暴風。悲鳴をあげるホテルスタッフ。
「大人しくしててよ。見回りに出られて被害者になられても困るしね」
 いつの間にそこに居たのだろう。エイプリル・バリントン(BNE004611)が衝撃波からスタッフを庇うべく、魔風を吹かせて魔弾と黒鎖を掻き消した。それから、ゆっくりと背後を振りかえると二コリと笑って「宿泊客の数と部屋、教えてくれる?」とそう言ったのだった。

 衝撃波の真下を潜り抜け、『ジルファウスト』逢川・アイカ(BNE004941)がポーンへと殴りかかる。全力疾走からの拳による強打。ポーンの身体にアイカの拳が突き刺さる。
「う……?」
 拳に返って来た衝撃が重い。視線をあげると、そにに居た筈のポーンの姿がいつの間にか厚い鎧を着込んだルークのそれに変わっていた。大上段から振り下ろされた鋼の槌が、アイカの肩を強打する。
 倒れ込みながら、アイカはしかし更に一歩踏み込んだ。
「それなら、動きを止めてっ!」
 アイカの拳に冷気が宿る。青白く揺らめくアイカの拳がルークに成り済ましたポーンの身体を凍りつかせる。動きの止まったポーンの真横を、アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)が駆け抜けていく。
「悪いが此処で終わりだ」
 魔力を杖に集め、魔弾を展開する途中のビショップの眼前に、アズマが躍り出る。ビショップがアズマの接近に気付いた時には既に襲い。鋭い斬撃が、ビショップの首を切り落とした。一瞬でその姿が掻き消え、後に残ったのは黒いチェスの駒が1つだけ。
 ビショップの討伐と前後して、アズマの背後でポーンが消えた。その身を真っ二つに切り裂いたのは『スターダストシュヴァリエール』水守 せおり(BNE004984)であった。
「今、このホテルは普通じゃない状態です。電子機器も使えないし、何と無く分かるかしら? 普通じゃない状態を解決しに、普通じゃない奴がやってきたってことです」
 ホテルの宿泊客に向け、せおりは簡単に現状の説明を始めた。

「ある児童小説で読んだ事がありますわ。我侭なクィーンにこき使われるチェスの駒達が居ましたが……まさにそれなのかしら?」
 ダメージを受けた仲間の治療を施しながら『ODD EYE LOVERS』二階堂 櫻子(BNE000438)がそう呟いた。櫻霞の持つ千里眼のスキルと、エイプリルの聞き出した宿泊客の部屋の位置を参考に、Eゴーレムを避けながら客達を一階へと避難させていく。
 それでも、数度に渡るナイトの急襲や、ポーンとの遭遇もあって無傷とはいかなかった。ヒット&アウェイの手段をとるナイトはともかく、ポーンは遭遇する度に討伐しているのでここまでに合計4体、半数を撃破したことになる。
 宿泊客のほとんどは、これで避難させたことになる。後は残りのEゴーレムと、6階に居る2人の客を避難させれば、Eゴーレムの討伐に集中することができる。
 6階に辿り着き、宿泊客2人を呼び出す。階下へと繋がる階段に足を踏み込んだリベリスタ達の眼前に、しかし巨大な影が立ちはだかる。ルークだ。威圧感が、ポーンの成り済ましたそれとは桁が違う。これは恐らく、オリジナルのルークだ。
 それだけではない。
「うおっ!?」
 壁から飛び出して来た槍を、アズマが咄嗟に受け止めた。何度目になるか分からない、ナイトによる急襲。それだけではない。
「背後からも来たぞ」
 後ろから3体。ポーンが迫って来ているではないか。避けて通って来たはずなのに、いつの間にか挟まれている。クイーンによる指示によるものか、奇妙なほどに連携のとれた動きだ。
 追い込まれた、挟み射ちにされた、リベリスタ達の脳裏に走る戦慄。状況を整理する時間はない。一度は壁の中に逃げていったナイトが、次はいつ攻め込んでくるか分からない。
 背後から、鎧を鳴らしてポーンが駆けてきた。
 眼前にはルーク。両手を広げ、進路を塞ぐ。
「集団ならっ……」
 駆け出したのはせおりだった。その体が火炎に包まれ、1つの火球と化した。背後から迫っていたポーンたちを、纏めて弾き飛ばす。
「後はこの人たちだけだし、何とか逃がしてあげたいけど」
 眼前に聳えた壁のようなルークを見やり、エイプリルは表情を固くする。彼女の背後には2人の宿泊客が控えていた。護衛としてアイカとアズマもその場で臨戦態勢を整えていた。
「立ち塞がるなら潰すだけだ。実に何時も通りだな」
 銃声が鳴り響く。櫻霞の弾丸が、ルークの身体に穴を穿つ。じっと動かないまま、ルークは無言でその攻撃を受け続けた。如何ほどのダメージが通っているのか、その様子からは判断できない。それならば、とアイカが飛び出す。アイカだけではない。彩花もまた、櫻霞が弾丸を放つと同時に駆け出していた。
 大上段から、鉄槌が振り下ろされる。彩花は両腕を頭上で交差させて鉄槌を受け止めた。衝撃と、轟音。彩花の身体に走った衝撃は、彼女の内臓にダメージを与えるほどのものだった。ルークが鉄槌を投げる前に、それを攻撃に使わせただけでも上出来と言える。後衛にまで貫通する鉄槌投擲はこれで防いだ。
 全力疾走から、跳躍し、ルークの眉間にアイカが拳を叩きこむ。ルークの身体が大きく傾き、階段を転がり落ちていった。
 その隙に、宿泊客を連れてエイプリルとアズマが階段を駆けおりる。しかし階段の踊り場に辿り着いたその瞬間、壁から飛び出してきたナイトに道を阻まれた。
「ちっ……良いか、こいつはオレが食い止めるから、この先の階段を下りて1階まで逃げるんだ!」
 ナイトの槍を刀で弾いて、アズマは叫ぶ。エイプリルを先頭に、宿泊客たちは階段を駆けおり、見えなくなった。ナイトは壁の中へ姿を消そうと馬を返すが、アズマがそれを許さない。

「邪魔な彫刻はスクラップにするに限る」
 彩花とアイカがルークを押さえる。彩花が攻撃を受け止め、その隙にアイカが拳を叩きこむ。
 2人の拳に弾き飛ばされ、鉄槌が床に転がった。その瞬間、櫻霞は銃の引き金を引く。撃ち出されたのは、星のような煌めきを纏う弾丸だ。
 真っすぐ、鋭く、ルークの胸に吸い込まれそして弾けた。内側から、爆発するかのように鎧が砕け、ルークはその姿を消した。彩花の足元に転がるのは粉々になったチェスの駒。
 仲間がやられたのを確認し、ナイトは天井へ跳び上の階へと逃げていった。

 炎を纏い、せおりがポーンと斬り合っている。せおりの身体から流れた血が、床を真っ赤に染めていた。彼女の奮闘のおかげで、宿泊客は逃げおおせ、ルークも無事に討伐できた。
「巻き込んじゃうからそこ退いて、攻撃できない。まあどっちにせよ倒すには変わりないんだけどね~」
 雛乃の声に従って、せおりは素早く仲間の元へと引き返す。傷ついたせおりを櫻子が抱き止め、治療を施す。淡い燐光がせおりの身体を包み、その傷を癒した。
「痛みを癒し……その枷を外しましょう」
 優しい光だ。暖かく、安心する。
 チラと一瞬、それを見て、雛乃は前へと向きなおる。彼女の腕から、どろりと血が溢れだした。流れた血液は黒鎖へと形を変えて、眼前のポーン達を飲み込んでいく。せおりとの戦いで弱っていたポーンは、それでその動きを止め、チェスの駒へと戻っていった。

 エイプリルが戻って来たのを確認し、8人はクイーンの部屋の前にやって来ていた。クイーンが潜伏していたのは、8階のスウィートルームである。豪華なドアに向かって櫻霞が銃弾を撃ち込んだが、結界のようなものに阻まれ傷すらつかなかった。
「ふん……無理か、横着はするなってことかね」
「チェスに似ているけれどキングが居ないんだね。まぁ、楽だからいいけれどね」
 エイプリルが、ドアノブに手をかけそれを回す。意外なほどにあっさりと、クイーンの部屋のドアは開いた。ライトの光量は控えめに設定されているのだろう。部屋の中は薄暗い。
 その部屋の奥、大きなベッドに腰掛けてドレス姿のクイーンが。その隣には、どういうわけかもう1体クイーンが座っている。恐らくどちらかがポーンの変化なのだろう。
 そんな2体を護るように、馬に跨ったナイトが眼前に控えていた。
「何が目的かなんて知ったことじゃありませんが……ツケは払ってもらいますよ!」
 アイカの言葉を合図となった。一斉に、その場にいた全員が動き出す。Eゴーレムとの最終戦の開幕だった。

 全力疾走からの打ち上げるようなアッパーがクイーンを襲う。素早く間に割り込んだナイトが、クイーンに代わって、アイカの攻撃を受ける。返す槍で、アイカの脇腹を刺し貫いてナイトは床に着地。背後にクイーンが控えていては、壁や床をすり抜けて姿を消すわけにはいかないらしい。
 脇を押さえ、床に蹲るアイカを下がらせアズマが前に。他の仲間をクイーンの元へと進ませるために、刀を構えて切り掛かる。
「悪いが、お前らの好き勝手にはさせないぜ! オレの名はアズマ。推して参る!」
 アズマの斬撃がナイトを襲う。狭い場所での戦闘は、馬に乗ったナイトには不利だ。長い槍も、室内では十全には扱えない。
 アズマの刀とスピードも、活かしきれているとはいえないが、それでも槍よりはマシだ。
 アズマの剣が、ナイトの片腕を切り落とした。しかし、逆の手に持った槍がアズマの喉へと突き出される。回避も防御も間に合わない。そう思ったその時、飛び出して来たアイカが槍をその身で受け止めた。アイカの肩に槍が突き刺さる。
 だが……。
「止めきれない」
「十分だ」
 アズマの刀が閃いて、ナイトの首を切り落とした。

「クイーンがなんだっていうのかな? だったら私は……カイゼリン(女皇帝)よ!」
 刀を振りあげ、全身に炎を纏ったせおりがクイーンの元へと斬りかかる。2体のクイーンは、同時にすっと手を上げて、細い指をせおりに向けた。
 一瞬の後、せおりの身体は断頭台に拘束される。せおりの身を包む業火が、断頭台を焼くが即座に逃れることは出来ないだろう。顔のないクイーンが、笑った気がした。断頭台の刃がせおりの首を切断せんと放たれる。
「遊んでないで、クイーンの討伐に向かうよ」
 刃がせおりの首を切り落とす寸前、飛び込んできた一羽の鴉が刃を破壊し、せおりの拘束を解き放つ。鴉は式符となって、燃え尽きた。鴉を指揮していたのはエイプリルだ。その目は戦意に満ちている。彼女だけではない。
「なにしにきたのかな?  ひょっとして王様になってくれる人でも探しに来たのかな?」
 そう言って、雛乃は杖を掲げた。眼前に展開された魔方陣から、黒鎖の奔流が溢れだした。

●チェックメイト
 黒鎖が部屋を埋め尽くす。一瞬でクイーンの姿が並に飲み込まれて消えた。
 だが、それも一瞬の事。
 黒鎖の壁を打ち破り、無数の武器が飛び出して来たのはその直後のことだった。
 前線に立っていた彩花や、エイプリルの身体を無数の刃が刺し貫く。血を吐き、その場に崩れ落ちるリベリスタ達。黒鎖の壁の向こうから、クイーン達が姿を現す。ドレスや体は傷だらけだ。背後の空間に穴が開き、その中から武器を射出したらしい。
「美しき白光、そして更なる癒しを……」
 それはまるで雪のようだ。櫻子は胸の前で手を組んで、祈るような姿勢をとった。彼女自身も刃を受けて傷を負っているが、仲間達が身を挺して庇ってくれたおかげで、まだ動ける。降り注ぐ白雪が、仲間達の傷を癒していく。
 それを見て、クイーンはその細い指を櫻子へと向けた。先と同じ断頭台による攻撃。横から飛び出したせおりが、櫻子の身体を床に押し倒し断頭台から逃れさせる。
 空中に出現した断頭台を殴り壊して、彩花が跳んだ。その様はまるで弾丸だ。輝く拳による刺し貫くような一撃がクイーンを襲う。
「私の実力、とくと御覧なさい!」
 間に割り込むも1体のクイーン。どうやらこちらがポーンのようだ。彩花の拳がポーンの頭部を打ち砕く。崩れていくその身は、しかし最後までクイーンを護るべく立ち塞がったまま、床に伏しはしなかった。
「怠惰なクイーンというのも難儀だな、扱き使われて哀れなことだ」
 崩れて消えたポーンの向こう。櫻霞は銃を構えてそこに居た。銃声は1つ。弾丸は素早く、目で捉えることは難しい。
 クイーンの胸を、1発の弾丸が撃ち抜く。
 一瞬の静寂。弾ける閃光。クイーンの、宝石のような体に罅が走り、そして粉々に砕けて散った。
『…………。キング』
 消え去る直後、皆の脳裏にクイーンの声が響き渡る。
 床に転がったのは、クイーンの駒と、Eゴーレム化していなかった他のチェスの駒だった。しかし、黒のキングだけが無い。
 恐らくそれが……。
 失われたキングの駒を探すことが、彼女達の目的だったのだろう。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様です。
ホテルに閉じ込められていた一般人は無事に救出されました。
Eゴーレムの討伐も完了。依頼は成功です。
キングを探すチェスの駒の物語、いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけたなら、幸いです。
それではそろそろ失礼します。
縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。