●紹介して欲しい人この指とまうぇーいうぇーい! あいきゃんすぴーくじゃぱにーず! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年05月30日(金)22:06 |
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●ヒャッハー初心者だー! 染めろ染めろー! 世話を焼き尽くせー! 「黒木屋は……ここであってるのかな」 彼の名前は剣城豊洋。 たまたまアークリベリオンになった三十六歳の住所不定無職である。 『アークと世界の空気を知るために』とアークリベリスタたちの集まりにやってきた彼だが……。 「ちょっと早く来すぎましたかね。開店時間前だけど、ちょっと待たせて貰おう」 そんな独り言を述べながら扉を開ける。 と。 「Welcome! to My Sweet!(日本語字幕:俺に抱かれて夢を見な!)」 孔雀をジョグレス進化させたような服を着た司馬鷲祐が美女を両腕に群がらせた状態でソファに腰掛けていた。 シバシューさんは眼鏡をチャキっとやると、唐突な効果線を出しながら叫んだ。 「者ども、新人だ! 取り囲め!」 「囲め、だと?」 豊洋の背後に祭義弘の身体が当たった。 振り向くと結構な巨体が立っているんだから驚かない筈が無い。しかも手にはビールジョッキ。 しかも義弘に気を取られている間に左右をあばたとヒロ子が挟み込んでいた。 「お初ー。じゃあ早速洗礼を受けてみましょっか!」 「あの……私はもつ煮やつくねをつまみながら酒飲んだり美女の乱れ場を期待する程度のつもりで来たんですけど……」 「アークのノリは初めてか、力抜けよ。ってことでビール持ってきてくださいジョッキで。いやピッチャーで。もしくはサーバーで」 「俺はイチゴパフェでいい」 義弘にがっしりと掴まれたまま部屋の中央に連行される豊洋。 ソファに腰を下ろした所で、左右を蜂須賀朔と新城拓真ががっしり固めた。 日常会話のついでに人を斬り殺していそうな朔と、道を聞いたら次の瞬間に殺されそうな拓真である。常人ならそろそろ失神している頃である。実際この二人をその辺の極道系フィクサード事務所に放り込めば三十分後には全員殺して帰ってくる筈なので、その反応は少しも間違っていない。 拓真はジャックダニエルのロックを傾け、シリアスに語り始めた。 「俺が二刀流に拘るのは祖父の影響だ。特に一騎打ちには拘りたい。自分の限界を確かめるには最適だからだ。俺は剣士であり武人であり、そして求道者だ。剣はともかく精神まではそうそう鍛えられん」 「おもしろい価値観だ。試しに死会(や)ってみるか?」 「……無事では済まんぞ」 刀の柄に手をかける朔。ガンブレードの安全装置を外す拓真。 途端。 「おっと、武人トークなら俺を混ぜてもわらねーとな!」 豊洋の後ろからツァインが飛び出してきた。 両手にビールジョッキを持っていた。 それを同時に一気のみでカラにすると、どこからともなく剣を引っこ抜く。 「アンタら、ここでおっぱじめるのは結構だけど……」 瞬きひとつの間に、いつの間にかテーブルの上に甚兵衛姿の女が立っていた。常盤平荘園である。 彼女は頭からかんざしを抜き、ギラリと目を光らせた。 「今ヤったら、アタシの一人勝ちだよ?」 限界まで膨らむ殺気。 その中央で、剣城豊洋はビールジョッキを傾けた。 「今日死ぬのかな、じぶん」 隣のテーブルにて、ナビ子がメモ帳にさらさらとペンを走らせていた。 「えーっと『バトルマニア連中とそれに囲まれた新人』……っと。はい紹介おーわりー。カルアミルクちょーだーい!」 向かいでビールを飲んでいた義弘が興味深そうにメモ帳を覗き込む。 「ところで、俺はなんて書いてあるんだ?」 「『人間サイズのハルク』って書いてあるけど」 「せめて色は合わせてくれないか。まあ、自分で思っている程普通じゃなかったということか……」 「巨人は自分の身の丈を『大きすぎる』とは思わないもんだよ」 「巨人ねえ……」 彼の隣ではあばたがビールを瓶から直接飲んでいた。 「じゃあわたしは?」 「『正しい毒舌家』」 「喧嘩売られてる気がする……いや、買われてるのか、この場合」 納得したのかしないのか、塩辛を大胆につまんで頬張るあばた。 その更に横ではヒロ子がウィスキーを勝手に水割りしていた。 「え、じゃあ私は? 正直絡んだことないんだけど」 「ぬふふ、フォーチュナを甘く見ちゃいけないよお嬢さん。えーっと……あ、『CV三石琴乃』って書いてある」 「紹介でもなんでもないねそれ」 「トナメの情報しか知らないし、そんなもんじゃね?」 そのまた隣のテーブル。 鷲祐は麦焼酎をシニカルに傾けていた。例の衣装で。 「そっちの調子はどうだ、アドプレッサ」 「おかでで研究が進んでるわ。新しくて有益な情報だとそうねえ……エディコウンとの密接な接触状態を続けた一般人は平均して四十八時間で倫理異常をきたすっていうデータが取れたわ。最低でも三十時間は大丈夫みたい。長期的かつ非連続的な接触についてはデータがそろってないけど、大体週四が限度ね」 「随分詳しくデータをとっているようだが?」 「アークとの交渉がまともに進んだおかげね。それまでは研究どころじゃなかったし」 「研究といえば……あなたの評価、実はすっごく高いみたいよ」 「ほう」 眼鏡に指を添える鷲祐。 「『まともに交渉を成功させる』って時点で相当な実績なのね。アークにはそういう人間、滅多にいないそうだし」 「まあ、多くは『あっち側』だからな……」 そう言って、鷲祐は豊洋たちのいる席を見やった。 豊洋はどうしていたかというと。 ……一センチ間隔で細切れにされたテーブルとソファーの中に沈んでいた。無事である。 「白田無動流に三分間も打ち続けるたあ、なかなかやるじゃないか」 「斬って斬られてが戦いの本質だ。これができなくてどうする」 「いやー、白田さん思い出して楽しかったよ。今頃どうしてんのかね、あの人」 ツァインや朔たちはなんか消化しきった顔をして酒を飲み交わしていた。 「知りたいかい?」 グラスを床に放り捨て、荘園は薄く笑った。 「中国、上海。そこで白田さんを見た奴が居た。気になるなら調べてみな」 「……」 床で割れるグラス。 豊洋は薄めを開け、するめを口にくわえた。 「この世界で生きていくの、大変そうだなあ……」 ●このシナリオのタイトル、『グレランドへ行こう』だっけ? 先に説明しておこう。グレランド(正式名称『任侠ツバキーランド』。あえて呼ばない理由を察してくれ)とは千葉を震撼させた伝説の極道こと十三代目紅椿がよその金と人員をまるごと利用して建設したという暗黒面しかない遊園地めいた何かである! ……と、書かれたものを依代椿は強引に引っぺがした。 「極道ちゃうねんて……ただの支配人やし、グレランドも普通の遊園地やし」 「ヤベー! グレさんスチール製の看板素手で引きちぎってる!」 「ヤバイヨヤバイヨー!」 「ッシャー俣勝に川出、あとゆでたばご! 『グレランドに来てもいいよ』と言われた途端急に集まってきた十二人ものリベリスタに接待するぞ!」 「野球選手やねんでほんばにー」 椿の後ろでナベシンアニメかってくらいの動きで道を掃除しまくる岡崎時生以下紅椿親衛隊。 そこへ大型バイクを肩に担いだ熊みたいな男がやってきた。 「姐さん! 熱投風呂用意しやした! 五百度に保ってやす! 気に入らない奴を放り込むんですね!」 「ヤバイヨヤバイヨー!」 「いやちゃうし! 『なんか暖かいものもってこい』ゆーたんや! コーヒーとかや!」 「やべえよ、コーヒー豆みたいに挽きつぶして煮てやるって意味だよやべーよ!」 「おい島上、このバスタブ片付けろ!」 「クルリンパ! よし任しとけ、そして押すなよ? 絶対押――ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」 椿たちの様子を監視カメラごしに眺めながら、ヴェイルは管理室のデスクに顎肘をついた。 「なんか人員増えてない? 調べてみたら全員リベリスタ化してるし……まあ、遊園地経営が崩壊に至る行為になるわけないか。案外有効な更正方法かもね。でも遊園地として運営するにはリピーターが足りないのよね。なにげに赤字が続いてるし。簡単にはいかないわね……」 ヴェイルはカメラを操作すると別のところを表示させた。 右下には『極道コースター ~いてもうたろか~』とある。 ジェットコースターであった。 「……」 黒塗りベンツに似た乗り物に固定され、ランディが黙って前を向いていた。 もう『黒塗りベンツとランディ』という組み合わせの時点で誰かが死ぬ予感がするが、さておき。「すげーな! 身長制限のない絶叫マシンなんてあるんだな! 俺でも乗れるやつって少ないんだよ」 「遊園地に来たからには絶叫マシンだよねー。きゃっほーう!」 後ろではラヴィアンと水守せおりがうずうずした様子で身体をゆすっていた。 そのまた後ろでは目をキラキラさせたコヨーテ、という図である。 「遊園地かァ。昔ダディにつれてってもらったっけな。別世界みたいに輝いてたっけ……そのあと連中と戦って……」 特殊な思い出にうっとりするコヨーテ。彼の呟きをキャンセルしてラヴィアンが振り返った。 「あんさ、気になったんだけど、ここ入る前に『神秘制限』って無かったか?」 「あー、ありましたねー。『え、身長じゃないの?』って思いましたけど」 ガコンと音を立てて止まる車体。 斜め上に設置されたドラム缶が傾き、車内に大量のコンクリートが流し込まれた。それも高速で凝固するタイプである。 「ああ、そんな予感はしてたんだよ……クソが」 ランディはずっと先を見て毒気付いた。 急勾配で下っていくレールの先が、あろうことか存在していなかった。 傾く車体。 コンクリ詰めにされたリベリスタたちは高速でレールを下り、ジャンプ台の要領で東京湾へと飛び立ったのだった。 ちなみに着水寸前の状態をカメラで撮影して表示してくれるサービスがついているらしい。 「えーっと、『正しい凶暴性』『意図的な無邪気』『なんか見たこと無いひと』『野良の牧羊犬』……っと。紹介ってこんなもんでいいよね?」 「いいよねって聞かれても……」 管理室のヴェイルはげんなりした顔で振り向いた。 ナビ子がバーチャルボーイしていた。 「なんでもいいけど、私の紹介まだして貰ってないじゃない」 「手のやつが……」 「それは前に聞いた」 「『ピンポイント・スペシャリスト』」 「……無駄にうまいのが腹立つわね」 ぼやきながら監視カメラを操作。 「ぱんぱかぱーん!」 ……していると、後ろでテテロさんちのミーノちゃんがにょきっと生えた。 ポップやらチップスやら指というなのチュロスやらをもぐもぐしつつ、カメラを覗き込む。 「そういえば、グレランドにテーマソングないのかな。じゅうさんだいめのカッコイイセリフ入りの。だれかつくって!」 「ぐ、ぐ、ぐれらんど!」 なんか発音しちゃいけない感じのイントネーションを口ずさむリンシード。 腰からドスを一丁引き抜くと、襲いかかってくる野郎どもへと飛び込んだ。 「スッゾオラー!」 「ザッケンナオラー!」 彼らの釘バットや鉄パイプをくぐり抜け、背後から頸動脈を切断。 「「グワアアアアアアアア!」」 血の泡を吹いて崩れ落ちるヤクザ。サツバツ! 「得意戦法は隙を突いての急所(いいとこ)どり。好きな食べ物はあざかお姉様……どうも、リンシードです。あとナビ子さんは今度から『おすぴょろぽーん!』って鳴いたらいいと思います」 「ドッソイ!」 そんなリンシードの背後へ突如降ってくる巨体。スモトリヤクザだ! 「ドッソイオラー!」 「いやー」 「アイエエエエエエエエ!」 が、スモトリの額が突然爆発。壊れたスプリンクラーのように血をまき散らしながら崩れ落ちた。コワイ! リンシードが振り向くと、トカレフを構えたシィンがしてやったり顔で立っていた。 「新感覚アクションゲーム、ジムショ・オブ・カチコミ! オジキのために鉄砲玉と化したプレイヤーが事務所にカチコミをかけ最後には派手に散るまでの得点を競うゲームです。散り際の派手さと死に様の潔さがポイントに加算される斬新なシステムが……がふ……!」 銃声がして、シィンは胸に手を当てた。 血まみれの手を見て、ゆっくりと倒れるシィン。 「ところで、自分……そんなに黒いですか、ね……?」 ……というゲームをやり終え、サマエルは席を立った。 隣の『バーチャコップ』のハイスコアランキングの上にSUMが並んでるあたり、これに飽きて移ってきたかんじらしい。 十年ほど前のポリゴンでできたナビ子がぴょんと飛び出してきて「今のキャラをテキトーに紹介すると、『許されたヤンデレ』と『ワタミグループくらいのホワイトさ』だヨ!」と言い出した。なんのことかわからん。 わからんので、サマエルはカメラ(どこだろう)に向けて呟き始めた。 「僕はサマエル。前の家族から逃げるときに出会った『あの人』を探すために、アークへ来たんだ。家族は僕が日本のハイク・マスターになったと思ってるよ。あと僕刻の果てが見えるよ、ほんとだよ」 ひとしきり言い終わると、そのままゲームに戻った。 なんかアフリカ象を素手で瞬殺した後むしゃむしゃ食い始めるバケモンがボスキャラっぽかった。ベニツバキって書いてあった。 いっぽーそのころー。 ゆーえんちってゆーだけにー、かっぷるとかー、いるみたいだしー、やっぱー、デートシーンとかー、書く流れー? みたいなー? 「なぜだろうな。想定してもいなかったデート描写に重い腰を上げる赤スーツの姿を想像しちまったぜ……」 「気のせいじゃねえの?」 『キック一筋』と書かれたTシャツを着た郷が、『スーパー大切断』と書かれたTシャツ姿の鎖と並んで座っていた。 ちなみに郷の背中には『センスフラグが服を着て歩いてるやつ』と書かれている。鎖のほうは『アマゾンは改造人間じゃねえ』である。出番がこない間に随分丸くなった気がするなあこいつ。 鎖は棒付きキャンディを口の中で転がした後、前方の席を見やった。 「こっちはともかく、あっちのカップルはどうなんだよ」 「あっち?」 同じ席を見やる郷。 そこには慧美と守夜が並んでパンフレット的なやつを広げていた。 『法規戦隊サイバンジャー』とか書いてあった。 ステージでは法廷に立たされたクモ怪人が弁護士ブラックと裁判官ブラックの違法取引により無期懲役が下されるシーンで終了していた。ちなみに残りは検事ブラックと警官ブラックと傍聴席ブラックの五人である。ブラックしかいねえ。 「いやー楽しかったですねえ。怪人が非番の際に麻薬違法所持の疑いで家宅捜索を仕掛けて確保するシーンは以外なくらい動いてましたし」 「二百件の痴漢えん罪を同時にでっち上げるシーンなんて白熱したな。自分の身にふりかかったらと思うとぞっとしたぜ! しかし……」 「なんです?」 「こう、もっとヒーローらしいものが欲しかったな。こう、なんというのか……」 腕組みして瞑目する守夜。 目を開けると、隣にいたはずの慧美がいなくなっていた。 あたりを見回す。そして、どこか高い所に人影を見つけた。 「スーパーサトミ只今参上!」 「それだ!」 ●今日の『奇をてらった結果明後日の方向へ飛んでいった』枠 「ばろらじネーム、『レベル40過ぎてもチェライ現役』さんからです。『イベシナに行こうかどうか迷っていて、最終的に滑り込み出発したんだけど、ろくにプレイング書けませんでした。こんな私をばとってください』」 「「ばとって、ベニー!」」 「コノヤロウ! ……描写量、おまけしときますね」 「「ばろらじ!」」 「はいあらためましてセラフィーナです」 「同じくハーシェルです」 「二人併せてセラフィーナ・ハーシェルです!」 「もう六月になりますね」 「そうですね、梅雨になると病気もしやすいですから、気をつけたいですね」 「梅雨と言えば、空を飛んでるときに雨に降られるとすごく大変になりませんか?」 「わかります! 羽根はぐっしょり濡れちゃうし、傘さそうとしてもバッて逆さまになっちゃうし!」 「空を飛ぶときは天気予報を注意したいですね」 「ところでなんでさっきから同じ声の人が会話してるんでしょう」 「それはですね――!」 ●商店街はいつも晴れ 『他に誰もいな――』 新田さんちの快さんはラジオを途中で切った。 「なんだこのラジオ、恐いな……」 「ラジオなんてどーでもいーアル! さっさと仕事手伝うネ!」 「やめてスリットさん、いくらノーダメージだからって俺のスネをベル代わりにするのやめて」 快は空いたテーブルを片付けると、そのついでにテーブルを回ってウーロン茶を配っていた。 「やあナビ子さん、久しぶり。エビチリ焼けたんだけど、どうだい?」 「いたっきゃーっす」 春巻きをくわえたまま両手を掲げるナビ子。 ナビ子の前にエビチリ置きつつ、快はウーロン茶を注いでやった。 「ところで、俺の紹介はしてくれるの?」 「ショゴシンッ!」 「断末魔の紹介じゃなくて、もっとこう、最初の頃の印象と違うな、みたいな」 「あー……」 ナビ子は春巻きをごっくんすると、天井を見上げた。 「『依頼ごとの空気を読んで的確に砕けることができている反面特別な状況に立たされるとプレッシャーゆえか急に判断力が低下して初歩的なミスを犯しがち』」 「……お、おう」 俺、そうなのかな……とか呟きながら厨房に戻っていく快。 それを見送っていると、向かいの席に惟が座った。 「これだ」 「ナビ子だ」 「所で最近、目的を見失っている。やるべきことをやり尽くし、先の見えぬ状態だ」 「あー、Gガンでいう師匠倒した辺り?」 「そうだ。起死回生の上位スキルを狙うことを一応の目標としたが、自分(パーソナリティ)としての目標が定まらん」 「あー、じゃあそっちはウィングでいうところのゼロ乗り始めた辺りだ」 「……どういう意味だ?」 「つまりー……『これまで表層的な目的で動いていたところを、根本的な目的で動く局面に達した』ってこと。ロボやライダーでいう後期バージョンアップ展開」 「ふむ……」 惟は静かにウーロン茶を奪うと、そのまま一気のみした。 一方隣のテーブルでは、禍原福松がジジイとメイドロボに挟まれていた。 「お前さん、千葉半立を破壊しなきゃ人に渡せない病気かなにかか?」 「そんな筈は無い。買った時には綺麗だったんだ……満員電車に巻き込まれたから、多分それで……」 「全然美味しいですよ福松さん、大丈夫です! 元気出して!」 「励ますな、悲しくなる」 中華料理屋で持ち込みの半立を喰うという極悪非道なマネをするかたわら、福松は呑んでいたウーロン茶をテーブルに置いた。 「所で最近、剣星招来を使いこなすための試行錯誤を続けてるんだが、おかげで八岐大蛇を使ってないんだよな」 「あー、ロボにのった中学生がロボを中心にしか人生を考えられなくなるアレか」 「お前らなんでいちいちロボアニメに例えるんだ?」 「シンジくん、ロボにさえ乗らなければとらぶるの主人公並にモテモテじゃったろうに」 「確かに奴は中学生男子としてのスペックが異常に高かった……」 「七栄、ちょっと考えてみろ」 「あぇっと……貫通スキルは敵前衛に接着している状態が一番効果を発揮するから、大蛇で飛び込んでから最適なラインに移動しつつ貫通攻撃を連射という形が最適かと」 「しかしノックバックがなあ」 「貫通とは地味に相性が悪いですからね」 「まあともかく、技に引きずられんようにすることじゃ。力におぼれて自らを見失うぞ」 「……力におぼれる、か」 話が聞こえていたのか、カウンター席で静かに酒を飲んでいたアーサー・レオンハートがゆっくりと顔を上げた。 左右には曳馬野涼子と坂本瀬恋。 「二丁拳銃でハードボイルドなガンアクションを決めたくなる日がある。決めたくなると言えば、最近もふもふな依頼が無――」 「アタシは喧嘩のやり方にいちいち拘らねえよ。カタギ巻き込まねえならそれでいいさ。強いて言うなら、拳で殴るのが性に合ってるかもしんねえな」 「そこをいうならわたしは、間合いと視線かな……」 グラスの中の氷をゆらしつつ、涼子はちらりと隣の席を見た。 『613番』が黙って肉まんを囓っていた。 「毎度呼んで、悪いね」 「別に、気にしてないわ」 「そうかい……所でアンタ、好きなお菓子は」 「……」 『613番』はぴたりと手を止めると、横目で亮子を見た。 「飴」 娘々飯店の外では、サポ子がタブレットを操作しながら何事か語っていた。 「紹介します。トランプでいうハートのキング、アーサー様。スペードのエース、涼子様。スペードの『裏エース』、瀬恋様。以上でございます。では真独楽様、自己紹介をどうぞ」 画面下からぴょんと出てくる五十嵐真独楽。 「あなただけに潜り込んで、とろけるような甘いキス(メルティーキス)! 五十嵐真独楽だよっ!」 「かわいい!」 「あのね、まこ絶叫系制覇してきたの。『いてもうたろか』でコンクリ詰めにして東京湾に人生のジェットコースターされたあと『しばいたるで』で連帯保証人にされて人生のフリーフォールしたあと『ええゆめみろや』で生命保険をかけた五ヶ月後にひもの無いバンジージャンプをさせらたよ! 楽しかった!」 「かわいい! そしてつよい!」 「あとお化け屋敷が『紅椿十三代目伝説』だった。誕生と同時に病院を爆破してて、五歳の時には織田信長を焼き討ちしてた。中学生の頃にはリンカーン暗殺してた」 「時系列すごいことになってますね」 「でもほんとはパパと来たかったな。遊んで、パフェ半分こして、ドライブして、夜景見て、えへへ……でも今日はソロなの。寂しいし、一緒に遊ばない?」 「お言葉ですが、真独楽様が『ソロ(ひとり)』になることはありえないかと……」 ふと空を見上げると、輸送ヘリから杏が自由落下してくるところだった。 「まーこにゃーん! プレゼント買ってきたあああああああああぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ!」 「わー!」 地面に生まれたクレーターからそそそっと離れつつ、サポ子はタブレットを閉じた。 「それでは皆様、良い日常を」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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