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エリューション鉄道の夜


 ――それは深夜の出来事だった。
 モトマチ・ケンタロウ(52)は疲れていた。
 妻は出ていった。
 長く務めた鉄道も、事故とそれへの対応のまずさに、遂に廃線となった。
 この歳になって、転職を余儀なくされるのもつらい話だ。
 大阪の実家に残した母は、孫の顔を見たいと言い続け、昨年亡くなった。
 ごめんなかあちゃん。わし、かあちゃんの期待になんもこたえられてへんわ。
 駅舎を出てすぐにある公園で、ビール缶のプルタブを引く。
 ぷしゅ、と。
 こぼれそうになる泡に口を付け、そのまま煽る。

 ごくっ、ごくっ、ごくっ。
 ぷはー。
 ……げぇーっぷ。

 誰憚る事無く大声でげっぷをし、へへっと笑う。
 口についた泡を拭う。
 随分と長く剃刀を当てていない気がする。
 無精ひげがじょりっとあたるだろうというその予想。

 しかしそれは裏切られた。

「……へ?」

 ばふ、と顔に当たる羽毛の感触。
 手に当たる、固く尖った、くちばしの感触。
 状況をつかめず、慌てて公園のトイレに駆け込めば、そこにいたのは鳩だった。
 頭の先から両手まで、どこからどう見てもそれはハトだった。
 混乱した頭のままトイレから飛び出せば、道路の向こうから光が差してきて、こんな時間に車が走っているのかと驚き、こんな姿を見られてはいけない、逃げようと思い、どちらに逃げるべきかと振り返り――そして、ケンタロウは自分の姿が人ならざるものであることも忘れて、呆然とそれを見上げた。

 そこに今しも停車したのは、一台の電車――しかも、自分の働いていた鉄道の――であった。


「あとはみんなの仕事」
 最近、夜の市街地を疾走する電車があると、ネットの噂になっていた。
 幾人かのリベリスタは、ただの与太話だろうと思っていたのに、と頭を抱えた。
 そうではない、と。
 現実であると目の前に立つ『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は告げているのだ。
「乗り込んだ彼は、革醒直後にこの電車に乗り込んで、運転席にいる。
 自分が生きて夢を見ているのか、それとも死んでいるのか――
 カムパネルラなのかジョバンニなのかに悩んでるみたい。
 エリューションとの接触が原因なのかな、フェイトは得たみたい」
 たたかおうよげんじつと! と誰かが呟いた。
「現実感がないのは仕方ないよ。
 ――革醒してすぐ、自分の状況を飲み込めた人がどれだけいる?
 家系でもなかったとしたら、なおさら」
 そういうものか、と唸るリベリスタを無視してイヴは続ける。
「みんなに頼みたいのは、この電車の撃破。
 ……事故で廃線になった路線に配備されたばかりだった車両。
 誰も乗せることなく廃棄されることになったのが、エリューション化した。
 道路を走ってるのは、一番どこまでもいける方法だからなんじゃない?」
 首をかしげてたぶん。と続けたイヴ。
「今の乗客は、先に革醒してたこの人の他に、今朝2人ほど乗ってしまったことがわかってる。
 ――もしかしたらこのエリューション、自分を運転する人としてこの人を欲したのかも。
 でも、他の2人は乗客。放っておくと、ノーフェイスになるよ。
 外から攻撃したいところだけど、乗客にどう影響が出るかわからないから乗り込んで撃破して。
 20時に出現するポイントまではアークが送り届ける。頑張って」


「すごい……!タカちゃん、この電車光ってるよ!」
「おい、あまり暴れるなよナオミ」
 幼い二人は目の前に突然現れた電車に、ただ目を丸くしていた。
 窓から顔を出した影が、二人に声をかける。
「ぼっちゃん、お嬢ちゃん。あかんでこんな朝はように。親御さんはどないしたんや?」
「お、親なんてどうでもいいだろ!」
「タカちゃん……あの人の顔、ハト?」
 ぎゅ、と少年の服を掴む少女の腕に、大きなアザがある。
 よく見れば、その可愛らしい顔にも擦り傷や、アザの痕があるのが見て取れる。
「あんたも、ナオミの親に頼まれたのか!
 絶対、渡さない、ナオミは僕が守る!」
 少年の顔は必死で、それは何かを決意した男の顔だった。

 ケンタロウは微笑み、安心させようと声をかける。
「ええ覚悟や。
 おっちゃんは、君らに何があったんかわからんけども……良かったら乗って行くか?」
「……あんた、何者なんだよ」
「おっちゃんか?」
 少し考え、ケンタロウはにっと笑った。

「ポッポや」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年08月16日(火)23:40
だから出落ちって言うの禁止だってば! ももんがです。
夏休み向けアドベンチャーですね。

●成功条件
E・ゴーレム「電車」の撃破
小学生二人の生存

●電車
この撃破が成功の絶対条件です。
硬いですが、運転席が核となっているようです。

・指差し確認
(対象1体・魅了してくる)
・急停車にご注意
(全体・車内の全てが物理的に暴れてくる)
・線路は続くよどこまでも
(外にいる対象にのみ使用。命中・威力大)

EX:君に決めた!
(この技で魅了した相手を運転士にする。現在ケンタロウ相手に使用中。
 この魅了は使用者の撃破か、このスキルにより別の運転士が任命される以外では解除されない)

20時に一度公園前に停車して、子供たちがお手洗いに行くようです。

●乗客
小学校高学年の男女と、革醒したばかりのビーストハーフの男。
計3名。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
メアリ・ラングストン(BNE000075)
ナイトクリーク
アリシア・ガーランド(BNE000595)
覇界闘士
神代 凪(BNE001401)
クロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
デュランダル
緋袴 雅(BNE001966)
デュランダル
イーシェ・ルー(BNE002142)
ホーリーメイガス
月杜・とら(BNE002285)
マグメイガス
ティオ・ココナ(BNE002829)


 停車した電車ゴーレムから、子供たちが慌てた様子で公園に降りていく。
 ケンタロウはそれを見送ると目を細めた。
 自分にも、あんなに純粋な頃があっただろうか。
 守りたいと強く思うものがあっただろうか。
「……なかったから、わし、ハトになってしもたんかも知れんなぁ」
 誰にともなく呟き、深くため息を吐く。
 その時だった。
「くっはぁ! クーラーまじサイコー!!」
 それは子供たちが出たのと反対側の扉をこじ開け車内に入って来た『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)の、この節電の夏、どこもかしこも暑い熱帯夜に涼を得たことへのハイテンションな感想。
 ケンタロウはキョトンと、それこそ鳩が豆鉄砲食らったような顔で目を剥いた。
「この列車、どこまで行くんスか?
 アタシ、行く場所ないんで、載せてもらっていいッスかね?」
 そう言って『守護者の剣』イーシェ・ルー(BNE002142)も悠々と乗り込み旅行者然とした、しかし明らかの目的のある表情でにっと笑う。
「妾は特殊部隊『さっと』じゃ! すみやかに無力化するのじゃ~」
「な、なんや? お客さんら、どっから来はりましたんや!?」
 メアリ・ラングストン(BNE000075)の叫ぶ突然の宣言に、ケンタロウはようやく我に返って誰何した。
「蒸気が無いけど鳩でぽっぽ屋とは寒いですね」
 昭和テイストを一蹴しながら『シャーマニックプリンセス』緋袴 雅(BNE001966)が乗り込み、後部の運転台に繋がる扉を壊そうと機関銃をぶっぱなし始めた。
 あのベストセラー、平成なんですけどね。
「ぅひょえー! かなわんわ……!」
 その様子にケンタロウが珍妙な悲鳴を上げて運転台に繋がるドアを固く締め、閉じこもってしまった。
「あかんて、あかんて! 電車の中ではマナーをお守りくださーい!!」
 情け無い声を上げるケンタロウの、その明らかに戦う意思の無い様子に、脅して客席に座らせようと考えていたメアリが軽く唖然とする。――どうやら、運転士はあくまで運転士と言う事らしい。
「この独占状態の広々シートで寝てぇー!
 じゃあなくて。お仕事、ですよねー?
 いっくよ~☆……このっ、ブタ野郎ーーーっ!!」
 そのドアを破ろうと、嬉々とした様子でとらが魔力の矢を撃ち放つ。
「ひー!?」
 ケンタロウが悲鳴を上げながら、計器のスイッチを次々に入れていく。
 外を見れば、進行方向目前にある障害物と、子供たちを囲むような人の姿が見える。
 ――ゆっくりと、電車のモーターが回転を始める。

 プァアアアン!

 電車は、けたたましい警笛を鳴らした。


 少女は逃げたかった。
 笑ってくれない父親から。助けてくれない母親から。
 少年は許せなかった。
 少女を傷付ける全てが。少女を救わない全てが。
 だから逃げた。
 逃げた先で不思議な電車と、鳩の運転士に出会った。
 それが異常な事だとは分かっていた。
 少なからぬ危険も感じていた。夏休みの読書感想文、課題図書の物語なら読んだばかりだ。

 それでも、これまでに比べたら未だマシだと思ったのだ。

 ナオミがたった一人ひたすら傷つき続ける現実より、不思議な電車とその行き先の方が。
 誰も手をさしのべることなく、面倒なことと、大人が正しいのだと、いなして流して誤魔化そうとするだけの人間より、鳩面の怪人の方が、ずっとマシだと思ったのだ。

 そんな彼らだったから、公園で降ろしてもらった自分たちの目の前に現れた『ロリ巨乳』ティオ・ココナ(BNE002829)が、どうやってか『頭の中を覗いてきている』事には、寧ろ期待すら感じていたのだ。
 ――辛く苦しい現実より、非現実感の強い不思議な現象の方が、少年達には余程リアルだったのだ。
 だからこそ。
 ティオの口から「ボク達は正義の味方だよ」と言う言葉が出た時の、失望。
 何度聞かされたことだろう。
 正しいことをしていれば、いつかは自分に帰ってくるなんて、耳障りの良い、嘘っぱちの言葉!

「ナオミちゃんは虐待を受けてたんだよね? まったく酷い話だよ」
「……おまえ、どうしてナオミの名前を知ってるんだ」
 自分の言葉が逆効果に働いていることに、ティオは気がついた。
 きっと睨む少年の顔に、はっきりと説得の言葉を決めてこなかったことを今更ながらに後悔する。
(適当な言葉で言いくるめて、家に帰らせる気だ!)
 それが少年の出した結論であり、少女もまた同様の疑いを色濃く顔に浮かべている。
 当然と言えば当然だ。
 彼らの知る『普通の大人』は、家出中の子供を見かけたら大抵の場合そうするのだから。
 彼らを危険から遠ざけようとしているティオはそれを『読み取り』ながら内心歯噛みする。
 この様子では、少女の両親の差し金でない事さえ、上手く伝わっているかどうかわからない。
 既に少年は油断無くこちらを睨み、その手は少女の手首をしっかり掴んでいる。
 ――何時でも走って逃げ出すことのできる体勢だ。
「あのっ! 二人とも、危ないよ」
 そこに響いたのは『ロンサムブラッド』アリシア・ガーランド(BNE000595)の遠慮がちな声だった。


 引っ込み思案ゆえに一歩引いていたアリシアだが、説得の流れが芳しくない様子に、勇気を出して声をかけた。新たな人物の登場に、子供達は戸惑いながらもギリギリで聞く姿勢を繋ぐ。
 ――逃げたところで囲まれると考えたのだろうと見た方が、正しそうな様子ではあったが。
「ぼくたちは、あの電車が事故を起こすかもしれないと聞いて、止めに来たんだ。」
 事故と言う具体的かつ酷く現実的な『危険』を提示され、ナオミがぎくりと肩を縮める。

 そもそも、あの電車は線路を走っていない。
 それが異常だと言う事は、それこそ子供達にだって分かる事だった。

「だから電車から降りて、待っててくれないかな、って」
 その言葉には少年の方が考え込むような仕草を返す。
「……待っている間に、警察でも呼ぶ気か?」
「タカちゃん、けど……やっぱりあの電車、変だよ」
 警戒は解けないまでも、話を聞いてくれそうだ――そう、アリシアが胸を撫で下ろした、その時。

 プァアアアン!

 慌てて振り返った彼らの視線の先、警鐘を鳴らした電車がゆっくりと、動き始めていた。
 誰が置いたのか目前を通せんぼする大きな人形を避けるため、一度バック。
 そして、電車はその車体を公園に――つまり、自分たちに向かい、徐々にスピードを上げてくる。
「危ないっ!」
 迫る大質量に硬直した少年と少女を近くの茂みから飛び出してきた神代 凪(BNE001401)が引き倒し、同じく飛び出した『寝る寝る寝るね』内薙・智夫(BNE001581)が自分の体を盾にして方向を逸らす。
「ぐあ……っ!」
 速度もそれほど出ておらず、倒れるほどではないにしても、智夫の怪我は軽くない。
 もう一度来られたら――今度は、立っていられないかもしれない。智夫の背筋を詰めたい汗が流れる。
 しかし、電車は木々やブランコをなぎ倒し公園を突っ切りながら加速していく。
 ――電車の中からは、破壊音が響いている。
「しまった!」
「一体中で何が……!?」
 その音に智夫と凪は顔色を青くし、絶句する子供たちを抱えたティオとアリシアは顔を見合わせた。

 電車を壊すことを目的とした班と、子供たちの確保を目的とした班。
 足並みを揃えた訳でなく、連絡を取り合って居た訳でもない彼らは完全に分散してしまったのだ。


『えー、ただいま車内にて破壊行為をしておられます乗客の皆様の攻撃を願います。
 快適な車内環境作りのため、みなさまのご理解とご協力を、お願いします』

 車内放送独特の声が流れる。質の悪い冗談のような内容だったが、魔力の篭ったその声にイーシェは抵抗しきれず、その武器である白銀の刃を仲間たちに向けた。
 ――魅了されたのは、これで既に2人目である。
 最初に魅了されたのは、とらだった。真っ先に指さし確認を試みられたのは一人で後部運転台にかかっていた雅だったのだが、彼に魅了が効かないと見て取るやいなや、E・ゴーレムは前方にいた他のリベリスタを対象に指定しだしたのだ。
 車内の人数は、決して多くない。
「ヒャッハ-! 治りたい奴はいるかー?」
 メアリが怪我の回復を急ぐが、次に彼女が魅了されてしまえば、治療もおぼつかなくなるだろう。
「鳩の人は、こっちに来なかったですね……」
 読みが外れたと、雅は歯噛みする。
 ケンタロウは運転手にすぎない。
 直接破壊を妨害しに向かうのではなく、E・ゴーレムに指示する形でリベリスタに対抗したのだった。
 魅了されたリベリスタが自力で正気を取り戻すのが先か、電車の破壊に成功するのが先か。
「……分の悪い賭けですね」
 呟き、機関銃を構え直す雅。
「タッチして、GO! アデリーペンギンは無敵☆」
 とらはよくわからないことを口走りながら、麻痺毒の気糸を雅に向けて張り巡らせる。
 水色のカモノハシだっていいじゃないか。
「この電車の車掌さん、面白い顔してるッスけど……アタシも血が吸えそうな牙生えちまったんスよ!」
 イーシェもまた牙を光らせながらメアリに飛びつく。
 電車は当分、止まりそうにない。


 少女の腕や顔のアザは、どう見ても、ぶつけた程度のものではなく。
 特に顔のものは、ほとんどを髪で隠していたものの酷く変色しており、跡が残るだろう状態だった。
 アリシアは泣きそうになりながらナオミを抱きしめる。
「もう大丈夫だから……ぼくらがなんとか、するから」
 少女は、先の電車が向かってきたショックからかしばらく無言でいたのだが、ようやく安心していいのだと悟ったようだった。アリシアの胸に顔を押し付け――やがて、押し殺した泣き声を漏らす。
「……おまえら、いったい何なんだよ。
 なんで電車にぶつかっても、平気な顔してられるんだよ!」
「ボク達は――正義の味方だよ」
 ティオが、最初と同じ自己紹介をする。
「信じるもんか!」
 語気を荒げて吐き棄てる少年。
 説明に悩むティオに、助け舟はアリシアの腕の中で泣き腫らした顔を上げた少女から出された。

「タカちゃん……信じよう?
 この人達、あの電車から、助けてくれたんだよ?」
「おい、ナオミ!」
「だって!」
 強く声を上げるナオミに、少年が少し戸惑った顔を見せる。
「タカちゃんもわたしも、あのままだったら、電車に轢かれてたよ?」
「…………」
 その言葉に、少年が唇を噛んでうつむく。

 そのまま、どれくらいの時間が経っただろうか。
 電車を追跡していた智夫と凪が、気落ちした表情で公園へと戻ってきた。
「みんな、この先ずっと行ったところで降ろされてたよ」
「アークに連絡してすぐに治療班が来たから、もう大丈夫だけど……」
 智夫はゆっくりと首を左右に振って、電車を見失ったことを告げた。
「ハトの人は?」
 心配そうに聞くナオミに、凪が困ったように笑いかける。
 少女はなんとなく察したようだった。
 おそらく、自分たちが見たのは――知ってはいけない世界だったのだ、と。

 少年が、凪と智夫に厳しい目を投げかける。
「僕達は……これから君たちを、警察とか、児童相談所に連れていかなきゃいけない」
 智夫が、その目を正面から受け止めて告げた。
「……ちくしょう!」
 少年は悟る。
 自分ひとりでは、ナオミは守り切れなかったことを。
 智夫が盾にならなかければ、もしかしたら、自分たちは今この場に居なかったかもしれないことを。
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!」
 叫びながら智夫に飛びかかり、殴りかかろうとする。
 当然、智夫にとっては少年の拳など、痛くもなんとも無い。
 それでも、この場に居る唯一の同性として、少年の悔しさを受け止めていた。
 アークは、小を捨てて大を取る組織だ。
 智夫たちは、そこに所属するリベリスタだ。
(見方を変えれば……僕は破壊者なんだ。
 エリューションを壊して、タカ君のナオミちゃんを守るっていう夢を壊して、ナオミちゃんを『大人達が言う安全な所』に連れていく……)
「ちくしょう……」
「タカ君。ひとつ聞いていいかな?」
 泣き崩れかけた少年の肩をつかんで、智夫はその顔を覗き込む。
 悔し泣きの顔が、それでも真っ直ぐに見返してくるのを見て、智夫はひとつ頷く。
 この子たちならきっと、大丈夫。

「もしタカ君がそれでも諦めず『ナオミちゃんを守る』と誓うなら、必ず事情を伝えておくよ。
 それは一番大切なものだから」

 それは男同士の、女には聞かせられない約束だった。

<了>

■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
このような結果になりました。お疲れ様でした。
判定の理由は、出来る限り提示しています。