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メタルヒーロー。或いは、鋼の心と失ったもの

● 地下鉄
 車体が揺れる。ライトに照らされた線路の上に、人影が見えた直後の出来事だった。急ブレーキをかけて車体を緊急停止させ、慌てて線路に飛び降りた。
 十数年もの間、地下鉄の乗務員を努めてきた彼、山田務だが、こんな体験は初めてだった。地下鉄の線路に、人が迷い込む事など滅多になく、仮にあったとしても即座に駅員によって線路外へと連れ出される。そも、線路内には立ち入れないようになっているのだから、当然だろう。
 懐中電灯片手に、山田は線路を照らし、先の人影を探す。衝撃からして、自分の乗っていた地下鉄は、人影とぶつかったのだろう。正面ガラスに血や臓物がふりかからなかったことが、唯一の幸運だっただろうか、と山田は思う。
 バラバラに、或いはぐちゃぐちゃになっているであろう誰かの遺体を思うと、気が滅入る。積み重ねた実績も、これで帳消しだろうか。
 ところが……。
「どういうことだ……」
 車体の下を覗き込んでも、線路をいくらか遡ってみても、誰の遺体も、けが人も、それどころか鮮血すらも落ちてはいない。
 だがしかし、今しがた電車は何者かにぶつかった。それは確かだ。
 ぶつかった衝撃を、今も覚えている。
 疑問に思いつつも車体の正面に回り込んで、そこで山田は、信じられないものをみた。
 それは、手形だった。
 車体の正面に、人間の拳がめり込んだ痕跡がある。
 鉄製の車体に拳の痕を残すなど、果たして自分は何を跳ねたというのだろうか。得体の知れない何かに対する恐怖を感じながら、山田は急いで運転席へと掛け戻っていった。

 一方その頃、何者かは途切れていた意識を繋ぎ直すことに成功。頭をふって、起き上がった。キシ、と金属の擦れる音がする。
 ライトの光と共に、自分に向かって突っ込んで来た何かを、彼は迎撃しようとしたのだが、いかんせん衝撃が強すぎて失敗。はじき飛ばされ、意識を失った。片腕と片足が歪んでいるが、これくらいならすぐに直せると判断し、彼は立ち上がる。
 電車にはじかれた彼は、今は使用していない古い路線の中まで吹き飛ばされていた。山田がこの場所を覗き込んだ時、すでに彼は意識を取り戻して、物陰に身を潜ませていたのである。
『…………』
 キン、と金属を弾くような音。彼が腕を動かした音だ。
 ヘルメットのような頭に、鈍色に光る鋼の体。彼は、全身隈無く、それどころか内蔵のほとんどをも機会や鋼鉄に変えている。おかげであらゆる衝撃に耐える強度を手に入れた。
 代わりに、思考回路や感情の大半も、失ってしまっている。
 覚えているのは、自分には何か使命があったということだけ。
 何かを倒し、どこかへ帰る、その目的だけ。
 どうやら彼の記憶は、何かしらが原因で、一部欠落しているらしい。

● 鋼の戦士
「彼はアザーバイド。地下鉄の線路上に開いたDホールから、この世界に迷い込んだみたい。なにかの目的があって、体を鉄と機会に作り替えている」
 言葉も通じないみたい、と『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は溜め息を零す。
 画面に映っているのは、多少長身ではあるが、あくまで人間の形をした鉄の塊だ。電車と正面からぶつかっても耐え切るだけの強度を持っているらしい。
「彼は非常に頑丈。強い衝撃を頭に受けるか、継続して頭部を揺らされるかすると、意識が途切れて動けなくなる」
 恐らく、討伐してしまうことは不可能に近いだろう。彼の目的は不明なままだが、言葉が通じず、意思の疎通もできないのなら確かめようがない。
「元の世界に追い返すのが無難かも」
 そういってイヴは、モニターの映像を切り替える。
 モニター一杯に、彼の腕から胴体にかけてが映し出された。
 太い腕と逞しい胴体は、鋼で出来ているようだ。腕や胴に走る細い線がある。どうやらその部分で体が展開する仕組みになっているらしい。
 彼は体内に、何かを仕込んでいるようだ。
「怪力と、特攻。軍人が使うような洗練された格闘術。そして防御を要さない眼鏡な体が、彼の武器」
 名前は、メタルヒーローとでも付けようか、とイヴはいう。
 異世界からの来訪者。記憶喪失の鋼の男を送還するため、イヴは仲間達に出撃の指示を下した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年05月30日(金)22:08
おつかれさまです、病み月です。
暑くなってきましたが、皆さんいかがおすごしでしょうか?
今回は、記憶喪失のタフガイを送還する依頼になります。
皆さんのご参加、おまちしています。
それでは、以下詳細。

● 場所
今は使われていない旧い地下線路。すぐ傍を、現役の線路が走っていて、現役線路の上にDホールは開いている。
辺りは薄暗いが、非常灯などのおかげで一部を除き、視界に問題はない。
旧線路は、足場が痛んでいて不安定。
広範囲攻撃や、天井、壁面への攻撃を繰り返せば天井が崩落する危険もある。


● ターゲット
アザーバイド(メタルヒーロー)
全身、ほとんどの箇所を鋼鉄製に改造された男。言葉は通じず、発声すら行えないようだ。
事故の衝撃で、記憶が欠落しているため、自分の目的など忘れている。
何かを倒すこと。どこかへ帰ること。なにか使命があったこと。
感情はすでに鈍っていて、思考回路も錆び付いているようだ。
頭部に強い衝撃を受けるか、衝撃を受け続けると意識が途切れる。
非常に時間と手間はかかるが、討伐することも不可能ではない。
[反射]の特性を持っている。
【ウォーブレイクダウン】→物近単[ショック][ノックB][重圧]
近くの相手を、鋼の拳で殴りつける。
【ブレイクアウト】→物近単[弱点][ブレイク]
的確に急所を狙う打撃攻撃。
【シークレットウェポン】→神遠全[隙][致命][圧倒][雷陣]
体内に仕込まれた何かしらの武器による攻撃。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ハイジーニアスクロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
ギガントフレームクロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
ハイジーニアスプロアデプト
離宮院 三郎太(BNE003381)
ギガントフレームダークナイト
鋼・剛毅(BNE003594)
ノワールオルールインヤンマスター
赤禰 諭(BNE004571)
ハイジーニアスソードミラージュ
中山 真咲(BNE004687)
ハイジーニアスアークリベリオン
アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)
ジーニアスアークリベリオン
国包 畝傍(BNE004948)

●記憶喪失の鉄男
 自分が何者だったかも分からない。思考回路は錆ついて、何故ここに居るのかさえ定かではない。
 分かっているのは、何か倒し、どこかへ帰る。そんな曖昧な使命感。
 事故に遭ったのは覚えている。頭の奥が僅かに痛む。
 しかし、そんなこともうどうでもいいのだ。
 何者かが、強い意思を持って自分の元へとやってくる。
 薄暗い地下線路の真ん中で、彼はその何者達かの到着を待ちながら、鋼鉄の拳を握りしめた。

●言葉はいらない
「全身が鋼鉄で覆われた男か……。並の戦いでは終わらなさそうだ」
 旧線路。静寂の中、低い声が響く。『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)が線路の上へと姿を現した。メタルヒーローは拳を構え、臨戦体勢に入る。言葉の通じない相手。武装をしている。油断なく、ヒーローは義弘の背後へと視線を投げた。
「ハロー! 落ち着いて一つ、話しでもどうかな! ……ってまぁ無理か」
 こっちも臨戦態勢だしな、と剣を引き抜き『陰月に哭く』ツァイン・ウォーレス(BNE001520)が漏らす。ツァインの背後では離宮院 三郎太(BNE003381)が強結界を展開し、一般人の介入を防ぐ。
「ヒーローはヒーローであって欲しいとボクは思います」
「妙ちくりんなものですね……」
 ヒーローの姿を確認し、『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)は溜め息を零した。
「守るべきものが彼にもあるはずです。できれば穏便に送り返してあげましょう」
 そう呟いて、『御峯山』国包 畝傍(BNE004948)は剣に手を添え、姿勢を低く下げる。即座にでも駆け出せる、そんな体勢だ。万が一、ヒーローが怪しい動きを見せた時に真っ先に駆け出すのは畝傍になるだろう。
 リベリスタとヒーローとの間に、静寂が満ちる。
 しかし、次の瞬間けたたましいエンジン音と、くぐもった雄叫びが静寂を打ち破る。線路の先からやって来たその男は、バイクに乗っていた。ガタガタとバイクが揺れ、その度に男の雄叫びが震える。
「無敵は素敵、勝利はプラズマ!」
 鋼の鎧を纏ったその姿は、異様としか言いようがない。否、鎧ではない。彼の肉体は、そのほとんどが鋼と化していた。名を『疾風怒濤のフルメタルセイヴァー』鋼・剛毅(BNE003594)と言う。
 鎧の隙間から、蒸気が噴き出す。最前線に立っていた義弘とツァインを追い越し、ヒーローの眼前に到着。地響きと共に地面に着地し、どこからか鋼の大剣を取り出した。
 その大剣を、ヒーローの眼前へとまっすぐ突き出した、その瞬間。
『------------』
 甲高い金属音と共にヒーローの拳が振り抜かれ、大剣ごと剛毅の身体は背後へと弾き飛ばされた。

「まいごのまいごのヒーローさん♪ あなたのおうちはどこですか♪」
 弾き飛ばされた剛毅の頭上を、小さな人影が飛び超えていった。『アクスミラージュ』中山 真咲(BNE004687)だ。手にした真っ黒い斧を、ヒーロー目がけて振り下ろす。鋼の腕で、ヒーローは真咲の攻撃を受け止めた。火花が散って、ヒーローの腕から鉄片が零れる。
「こいつはまたいかつい敵だな。鋼の体とはねぇ、刃が欠けなきゃいいが」
 ガラ空きになった胴へ、刀による一閃を浴びせかけたのはアズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)だ。鋭い斬撃は、しかしヒーローの持つ鋼の身体に僅かな傷を付けるだけに終わる。
 驚愕に目を見開いたアズマの頬に、ヒーローの拳が突き刺さった。鋼の拳による頭部への一撃。リベリスタとして、戦いの訓練を積んでいなければ即死していてもおかしくないほどに、重たい一撃だった。アズマの身体が地面を転がる。
「やば……」
 ぎろり、とヒーローの視線が真咲へと向く。それを察知し、真咲は素早く後ろへ退避。振り抜かれたヒーローの拳は、真咲の鼻先をかすめるに終わった。
 立ち上がった剛毅とアズマを伴って、真咲は一度ヒーローから離れる。ヒーローは、そんな3人を追いかけるようなことはせず、ただその場に立ち続けていた。
 胸の前で拳を打ち合せ、甲高い金属音を鳴らすヒーロー。
 その音はまるで、試合開始のゴングのようで……。
「頭部を狙える程器用ではないからな……」
 義弘は、大上段にメイスを振りあげ駆け出した。

 義弘の後に、ツァインと畝傍も続く。それぞれの武器を手に、義弘の左右へと展開し、三方向からヒーローへと攻撃をしかけるつもりなのだろう。
 雄叫びと共に、義弘がメイスを振り下ろす。ヒーローは、義弘の放った渾身の一撃を受け止めようとして、左右から迫るツァインと畝傍の存在に気付く。防御の姿勢から一転。地面を蹴って、数歩後退し、義弘のメイスを回避した。
 義弘のメイスが、地面に大きな穴を穿つ。攻撃直後の隙を狙うべくヒーローは駆けだすが、全力移動で間に割って入った畝傍がそれを妨害。義弘の代わりに、ヒーローの拳を受け止めた。鋼の拳が、畝傍の胴を薙ぎ払う。
「これ以上先へはいかせませんよ」
 口の端から血を流しながら、畝傍は腰の剣へと手をかけた。しかし、彼が剣を引き抜くよりも早く、ヒーローの拳が振り抜かれ、畝傍の身体を壁へと叩きつける。
 衝撃音と共に、湿った壁に大きな罅が入るのが見えた。ボロボロと、天井からコンクリート片が零れ落ちる。壁に押し付けられ、血混じりの咳を繰り返す畝傍の顔面目がけ、ヒーローは拳を振りあげた。
「やべぇ、壁と畝傍さんの身体が持ちそうにない、吹っ飛ばせ! 位置をずらすぞ!」
 下段から斬り上げられるツァインの剣が、ヒーローの拳を弾き上げた。更に、ヒーローの頭部を三郎太の放った気糸の束が撃ち抜く。頭を揺らされ、ヒーローの動きが一瞬止まった。
「頭部への集中攻撃で、気絶を狙いましょう」
 仲間へ向けての、的確な指示。三郎太の指揮に従って、アズマが飛び出す。全力疾走の勢いそのままに、身体ごとぶつかるようにして、メタルヒーローを弾き飛ばす。げほ、と血を吐き畝傍が解放され、その場にがくりと膝をついた。
「やれやれ、脆い所は嫌ですね。まあ逃げ場がなくていいですが」
 天井のコンクリートがはがれおち、畝傍の頭上に降ってくる。それを受け止めたのは諭の召喚した影人だった。コンクリート片を受け止めた影人とは別の影人が、畝傍の身体を安全な場所へと引き摺って行く。
「すごくカッコよくて、すごく強そうで。ふふ、ここで食べられないのがちょっと残念だな」
 無邪気な、それでいて純粋な殺意の滲む歪な笑みを浮かべながら真咲が駆ける。降ってくる瓦礫を回避しながら、ヒーローの眼前へ。遠心力を利用して斧を大きく振り回す。ガツン、と金属のぶつかる音がして、真咲の斧がヒーローの片腕を僅かに曲げた。
 しかし、真咲が次の動作に移るよりも速くヒーローの拳が、真咲の胸を打ちのめす。呼吸が詰まり、真咲はその場に倒れ込む。意識はあるが、的確に急所を打たれたことで大幅に体力を削られたようだ。
 ヒーローは、真咲を一瞥し、拳を構え直す。真咲への追撃に意識を向けている場合ではないと判断したのだ。ヒーローの視線が向いた先には、鋼の大剣を肩に担いで、ゆっくりとこちらへ歩いてくる、鋼の身体を持った巨漢の姿があったからだ。
「鋼っぽさならこの俺の右に出るものはいないと言われたメタルヒーローっぷりを見せてやるぜ」
 ガシャン、と金属音を鳴らし、剛毅は再びヒーローの前へとその身を晒したのだった。

 大上段に剣を掲げ、力を溜める。オーラを纏った剛毅の剣が通常の何倍にも大きくなって見える。
 剣を振り下ろす剛毅の腹に、メタルヒーローの拳が突き刺さる。鋼同士がぶつかる激しい音が鳴り響いた。剛毅の巨体が僅かに浮き上がるが、背後から彼の背を支えた影人の助力により、弾き飛ばされることは免れた。
「狙うは頭です。しっかり狙って……」
 諭の声が響く。その声に頷くことで返事を返し、剛毅は更に一歩、足を前へと踏み込んだ。
 メタルヒーローの肩に、剛毅の剣が叩きつけられる。
 轟音。衝撃。ヒーローの肩に刃が突き刺さった。傷ついた箇所から火花が散る。
 ヒーローは、剣を引き抜くと剛毅の腹を蹴って背後へと飛び退った。肩を押さえ、リベリスタ達へと視線を巡らせる。
 直後。
『-------------』
 ヒーローの全身が、赤く輝き始めた。
 
 ヒーローの、鋼の身体がまるで熱せられた鉄のように赤く染まる。空気中の水分が、熱されて蒸発しているようで、ヒーローの周辺には白い霞が漂い始めた。
 ヒーローの身体、数か所の装甲が開き、銃口のようなものが飛び出す。熱の原因はそれだ。恐らく、事前情報にあったシークレットウェポン……。
 そこまで理解したところで、リベリスタ達は回避動作へと移る。
 だが、間に合わない。
 ヒーローの身体から飛び出した銃口から、真っ赤なレーザー光線が、四方八方へと解き放たれる。

「逃げろっ!」
 そう叫んだのは誰だっただろう。
 四方八方へと撃ち出された紅いレーザーの射線上に、義弘をはじめとする前衛達が飛び込んだ。
「ガラクタもどきに倒される気はないですね。名も無き戦闘員のようでみっともないですしね」
 それだけでは防ぎきれないと判断したのだろう。諭は、召喚していた影人を全て、自分と三郎太の盾とするべく前へと呼びよせる。スクラムを組む黒い壁。前衛が防ぎ損ねたレーザーが影人の身体を撃ち抜き消し飛ばす。
 暗い地下道が、次の瞬間には真っ赤な閃光に包まれていた。
 
●異世界の戦士
 蒸気を噴き上げるヒーローの身体は、全身真っ赤に染まっていた。地下道の壁は、無残にも焼け焦げている。それでも辛うじて崩壊を免れているのは、その攻撃のほとんどをリベリスタ達が身を張って受け止めたからだろう。
 全身に大火傷を負い、肩や腹から血を溢れさせる義弘が立ったまま意識を失っていた。しかしそれも一瞬のこと。戦闘不能なほどのダメージを負いながらも、意識を取り戻し戦線へと復帰する。
「侠気の盾の意地、見せるてやる」
 地面を血で汚しながら、義弘は前へ進む。メイスを振りあげる義弘の身体を、淡い燐光が覆う。
「すぐに回復しますっ。体勢を立て直しましょうっ」
 三郎太による回復術だ。仲間達の負ったレーザーによるダメージを癒す。
 三郎太だけではない。まっすぐ、ヒーローへと指を向けているのは諭であった。ヒーローの身体から吸い取ったエネルギーを、諭は自身のそれへと変換する。
「不味いですね。鉄とオイルの味しかしない」
 エネルギーを吸い取られながら、ヒーローは再びその身を赤く染めていく。先ほどのシークレットウェポンを、再度使用しようというのだろう。しかし、義弘のメイスがそれを阻む。
 ヒーローの胴を、メイスが強打。溜めこんでいた熱とエネルギーとが霧散した。
「鋼の体は格好いいけどよ、それを意志で動かすから最高に格好いいんだろうが……格好いいとこ見せてくれよ、ヒーローさんよぉ!」
 追撃に放たれたのは、ツァインの剣だ。鮮烈な光を放つ一閃が、ヒーローの身体から突き出した銃口を数本、斬り飛ばした。
 だが、ヒーローの動きは止まらない。限界はとうに超えているのか、オーバーヒート気味に蒸気を上げ続けている。
「あははすごいね、まだ動けるんだ! じゃあもう一発行ってみようか、死んだらごめんね!」
 ヒーローが拳を握る。腰を低くし、力を溜めこむが、その拳を放つよりも速く真咲が駆け寄り、無数の斬撃を浴びせかけた。ヒーローの身体に、無数の傷が刻まれた。しかし、鋼の装甲を打ち砕くには足りない。反射によるダメージが、真咲の身体を痛めつける。
 ヒーローは動かない。彼の拳は真っ赤に染まっていた。ヒーローが反撃に出るよりも先に、真咲は後退。入れ替わるように、剛毅が前へと飛び出した。
「セイヴァーダイナミック!!!」
 雄叫びと共に、剛毅の剣が降り降ろされた。
『-----------!』
 声にならない叫びと共に、ヒーローは真っ赤に染まった拳を剛毅の胸へと叩きこむ。
 激しい金属音。剛毅の胸に罅が入る。
 剛毅の剣は、ヒーローの頭頂部を捉えていた。暫しの沈黙の後、地面に倒れたのは剛毅である。しかしなんとか意識はあるようだ。
 一方、ヒーローはというと倒れこそしないものの、意識が朦朧としているのだろう。ぼんやりと頭上へ視線を向けたまま、ふらふらしている。
 残っているのは闘志のみ。赤い拳を、ゆっくりと振りあげる。
 だが……。
「このまま、送還してしまいましょう!」
「くっそ、分かってはいたが、やっぱ重いなコイツ!」
 ヒーローが拳を振り下ろすよりも速く、畝傍とアズマが接近し、その鋼の身体を弾き飛ばした。交差するように振り下ろされる2本の刃が、ヒーローの額に十字の傷を刻んだ。
 力づくで弾き飛ばされたヒーローは、そのまま地面に転がって動かなくなる。地面に膝を付いたまま、畝傍とアズマは互いの拳を打ち合せ、勝利を確認。後は、今のうちにヒーローをDホールへと送還するだけだ。
 ヒーローの記憶が戻ったかどうか、確認することはできないが、このままこの世界に置いておくわけにはいかないのである。
「向こうでちゃんといいとこ見せてくれよ、ヒーロー」
 鋼の身体をもつヒーローを、Dホールへと送り還して、ツァインはそう呟いた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様です。メタルヒーローの意識を奪い、元の世界へと送還しました。
依頼は成功です。被害は旧線路の損害のみにとどまりました。
ヒーローの記憶が戻ったか否かは定かではありませんが、これにて任務終了です。
みなさん、ご参加ありがとうございました。
それではそろそろ失礼します。
縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。