●恐怖の夜 真夜中に部屋の電気を消して独りでホラー映画を観る事。それが山口創の密かな楽しみだった。 今観ているのはB級ホラー映画『ザ・キラーオブデス・オブザデッド 5』。よくある、殺人鬼が大暴れするタイプのホラー映画だ。1は傑作だった。2はホラー映画なのにアクション映画になっていた。3でまたホラー路線に戻った。4は1の主人公が出てきたがあまり印象に残っていない。そして5は……宇宙からきたクリーチャーと殺人鬼が殺しあう話。人類とばっちり。 丁度、買い替え時を逃した古いテレビの画面には殺人鬼とクリーチャーが映っていた。それを創はポテトチップスを齧りながら眺めている。殺人鬼が持った大鎌に勢い良くぶった切られたクリーチャーがピギィーと悲鳴を上げて汚い体液を撒き散らしながら画面のこちら側にぶっ飛ばされて―― ぱりーんとテレビ画面を突き破って、創が駄菓子を摘んだ手に、ベチャッと落ちた。 「…… !?」 創は我が目を疑った。見開いた目には、ねちゃねちゃしたクリーチャーの緑色の体液が付着していた。 そんな。まさか。馬鹿な。 ホラー映画のキャラクター達が、次々にテレビの画面を突き破って『こっち』にやって来る――!? ●メタへの侵略 「映画のキャラが『こっち』に来てしまいました――思念体、Eフォースとなって」 事務椅子をくるんと回し、振り返った『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)の手にはDVDの箱があった。レンタルのやつだ。『ザ・キラーオブデス・オブザデッド 5』とチープなフォントが乗っている。どうやら一昔前のホラー映画らしい。内容もよくあるタイプのものらしい。 「そうです。お察しの通り、その映画のキャラというのはこのホラー映画の殺人鬼と、宇宙から来たクリーチャーでして――」 ピッと再生ボタン。メルクリィの背後モニターに映画が映る。 悪魔の風貌をした殺人鬼が大鎌を手に一般人をばっさばっさと切りまくる。そして、うじゃうじゃ気持ち悪いクリーチャーが人々を喰らったり分裂したり恐怖を埋めつけながら殺人鬼に襲い掛かる。血やら汁やら悲鳴やら臓物やらが吹き荒ぶスプラッターだ。でも、血とか諸々の表現が露骨に作り物である。それでもグロやホラー耐性のない者には大変だろうが……。 「これですね。この殺人鬼のフェーズ2Eフォース、そしてクリーチャーのフェーズ1Eフォース10体を、皆々様に討伐して頂きますぞ。 現場は町の中。先ほどご覧頂いた未来視内容の通り、一般人のいるアパートに殺人鬼がいますぞ。しかしクリーチャーは窓を割って外へと行ってしまいまして……町に行ったそれらを見つけ出し、被害が出る前に倒さねばなりません」 つまり2班に分かれる事を推奨するとメルクリィは続けた。狭い室内で殺人鬼と戦うか、町に出てクリーチャーをサーチアンドデストロイするか。どちらにおいても神秘秘匿が重要になってくるだろう。 「ホラー映画の中に皆々様が迷い込むと、どんなポジションになるんでしょうかね。バッドエンドを打破する救世主でしょうか? それでは皆々様、行ってらっしゃいませ! どうかお気をつけて……死亡フラグは立てちゃ駄目ですぞ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年05月25日(日)22:04 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●ザ・キラーオブデス・オブザデッド 5 ~地獄から来た恐怖の殺人鬼~ その映画を、一部のネタ的ファンはTKDと呼んだ。一作目時はK・OD2と呼ばれた。一部のファンはKDDとも呼ぶ。 ザ・キラーオブデス・オブザデッド。 「俺的にはTKD3かなあ、1への原点回帰を行いながらも、挑戦的な試みが忘れられない。中でもゾンビを生み出すために、人をゾンビ化させるピザと炭酸飲料を町にばらまくという行為には恐怖したものだ……ボブのトラウマになるのも当たり前だよな」 「うちは二作目までは見たんやけど、『やっぱり初代を超える次作はあらへんのか……』って、それ以降見んくなったんよなぁ。というか、なんでいきなりアクションにしてん。いやまぁ、それはそれで面白かったんやけど……主人公チートすぎて、もはや別作品やったからな……」 「私はお姉様と一緒に1~5まで全部見てます。いつもは凛々しくて可憐なお姉様ですが、ホラーを見てる時の姉様はまるで生まれたての小鹿のように震えて弱々しくて、『怖くない』なんて言いながら私にぎゅっとしがみ付いてくるんです。すごく可愛いんです……」 夜道の中で、映画座談会。3をプッシュする『剣龍帝』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)、その話に相槌を打つ『十三代目紅椿』依代 椿(BNE000728)、白い頬をポッと染めて愛しのお姉様を思い出している『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)。 これが三高平での平和な一日ならばそれで良かったのだが、生憎そういう訳にはいかないもので。 「さて、今日も元気にお仕事やね」 椿の視線の先にはとあるアパートのとある一室。 そのドアを勢い良く、蹴っ飛ばしてブチ開けたのは竜一だった。思い返すのはTKD3、人をゾンビ化させるピザと炭酸飲料を町にばらまく行為。それを逆に4で主人公に使わせたのは秀逸だった。そう、4でも丁度こんなシーンがあったのだ。ピザ配達人の主人公がドアを蹴り開け、ピザ屋の制服でビシリと決め、帽子のつばをピンと弾き、4で一番の名台詞を言い放つ。 「ピッツァの配達の時間だぜ」 言葉と共に、暗視によって照明のスイッチを発見した椿が電源をオン。文明の光が部屋に満ちる。腰を抜かして呆然としている一般人、山口創が照らされる。それから、大鎌を振り上げる殺人鬼キラーオブデスも。 「!?」 創が状況についてこれず口をパクパクさせる中で。かくして彼にキラーオブデスの凶刃が振り下ろされる事はなかった。 「私……この任務が終わったら、お姉様と結婚するんです……」 リンシードが立てた死亡フラグ。それに反応したキラーオブデスが狙いを少女に定める。ホラー映画では子供というだけで生存フラグが立つが、それすらも打ち消す勢いの王道的死亡フラグだ。悪魔の無慈悲な一閃。だがそれは少女の頸を捉える事は無く、トップギアに身体能力を高めたリンシードの刃に敢え無く往なされ逸らされる。 「くっくっく、ここの住人が寝てる間に色々頂いていくぜー……」 頑張って死亡フラグを立てながら(棒読みだけど気にしちゃ駄目だ)、返す刃は瀟洒な剣技。刃の銀色、靡く長い水色、ドレスがきらきら翻り、敵を射抜くは灰色の双眸。 鮮烈にして峻烈。そんな剣戟の合間の彼方より、口角を不敵に吊った椿が魔銃Retributionを構えていた。 「お前の罪を裁くのは……このうちや!」 おや。確か2の主人公がこんな事を言ってたっけ。 (考えてみたら、2の主人公って悪魔のハーフやし、見た目だけやったらうちも似たようなもんやんな) 身に着けた拘束戦闘衣「紅蓮の摩訶鉢特摩」(実際は仮装)も若干2の主人公の衣装と似てるし。そう思いながら引き金を引いた。銃口から禍々しい音を奏でながら吐き出されるのは憎悪の鎖。自身に逆らう愚かなる者を裁く絶対断罪の一撃。幾重ものそれがキラーオブデスの首に絡みつき宙吊りにする。絞首刑を受けた死刑囚の如く。 が――やったか!? 鎖を引き千切る殺人鬼。戦いは始まったばかり。 「Prism Misdirectionは今まで499人を切り殺してきた……貴様を500人目にしてやろう……」 死亡フラグを頑張るリンシード。(つっこんだらあかん)と脳内で唱えまくりながら銃を向ける椿。 さてキラーオブデスは美少女二人に任せておいて、っと。 竜一は、担ぎ上げて部屋の外に出した創の肩を掴みその目を見た。 「ここは俺に任せて先に行け。隣の空き部屋で酒でも飲んでおねんねしてな。んん? 鍵がかかってる? なあに、エクスカリバーを貸してやる! こじ開けろ!」 手渡す鉄パイプ。頷く創は迷う事無くそれを受け取り、そして隣部屋のドアの前に立った。 「エクスカリバァーーーーッ!!」 竜一の魔眼により催眠状態になったそのままに、2でゾンビの包囲網を突破したキャラの有名台詞で障害物をぶち破る。彼ならきっと大丈夫だろう。色んな意味で。 という訳で竜一は現場に舞い戻った。死亡フラグを立てるリンシードがキラーオブデスの攻撃をひきつけてはその見事な身のこなしで華麗に回避し、椿が的確無比に強力な攻撃をブチ当てる。状況はリベリスタの優勢――ああ優勢だとも。 「なんせ俺が来たんだからな! さぁ、お待ちかねのパーティタイムだぜー! ハッハー!」 どっかのシリーズの名言を放ちながら振り抜く、澄色の宝刀『宝刀露草』に無骨な西洋剣『Je te protegerai tjrs』。十字の斬撃が『空を裂き』、キラーオブデスを刻み付ける。 さてここが正念場。竜一は刃を振るう手を休めない。キラーオブデスの一撃は強力だが、それを上回る一撃を加えればいい。そう、徐々に! 効率より浪漫派。竜一は構える双剣にありったけのエネルギーを込め、怒涛の勢いでそれを振りぬいた。 が、そんな風に調子に乗っていたからか。キラーオブデスの振るう鎌がザックリ刺さり、竜一の体を切り裂いた。映画の様にぶばっと噴出す赤。映画だったらきっと死んでる。現実でよかった。よかったのか? まぁいい、取り敢えずまだ生きてる。 「お前の唯一のミスは、俺を地獄に送れなかった事だ!!」 これまた映画の名言を吐きながら。調子に乗ってピンチに陥るまでがお調子者のテンプレだ。竜一の全身の筋肉がビキビキと音を立てながら隆起する。100%中の100%、即ち120%。切るというよりは潰すそれがキラーオブデスを叩きのめす。だがそれはトドメには至らない。それでいい。何故ならば、 「こういう敵は、強いヒロインたちがトドメを刺すものさ」 言葉の終わりと、ワープの様にキラーオブデスが動いたのは同時だった。されどそれは椿の目にはお見通しである。現れたそのタイミングのドンピシャで、殺人鬼を絡め取った断罪の鎖。 「どう動こうと関係あらへん、うちにははっきり見えるんやからな」 またこれも2の主人公が言ってたような。ならば折角だしこうキメようか? 「先に地獄へ戻っとき、第二ラウンドはうちが死ぬまでお預けや」 ギリリと首を絞められ動けぬそれに。リンシードは思う。実は肝心な映画の内容はよく覚えていない。怖がるお姉様を毎日見たくて、その口実を作る為に全巻を毎日一つずつ借りて……なのに、というのは、お姉様を慰めるのと、リンシード自身がクリーチャーになって彼女に襲い掛かるのを抑えるのに必死だったからだ。 そう、リンシードには帰る場所がある。帰る約束がある。まだやりたい事が、たくさんある。 「貴方に負ける訳にはいかないんです……こんな化物が襲い掛かって来ても私が必ず護りますって、お姉様と約束したんです……!」 握り直す剣。飛びのいた勢いのそのままに、バネの如く地を強く蹴りだし鋭き一突。リンシードの剣は守備に特化しているとは言えども、速度に乗ったその切っ先は彗星よりも鋭く万物を貫き穿つ。護るべきものがある者は、強い。 心臓を貫かれ消滅した殺人鬼。こちらの任務は成功である。 さてB班はどうなっただろうか。通信機を起動する―― ●ザ・キラーオブデス・オブザデッド 5 ~宇宙から来た恐怖の侵略者~ 『ラック・アンラック』禍原 福松(BNE003517)はザ・キラーオブデス・オブザデッドの2が好きだ。「エクスカリバァーーーーッ!!」と叫びながら鉄パイプを振り回していた奴が特に。何だかんだでゾンビの包囲網を突破できたのは奴のお陰だったし、死亡フラグを立てるだけ立てて生き残るとかいう別の意味で期待を裏切る奴だったな……なんて思いながら、夜の町を大型トラックでかっ飛ばす。 その荷台には強結界を張る『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)、後方をバイクで走るのは『咢』二十六木 華(BNE004943)。 「アークに来て一番名伏し難き外見を持ったエリューションがこれなんだが……く、夢なら早く覚めてくれ!! またあの悪夢が繰り返されるというのか!! それだけは……それだけはどうしても止めないといけねぇんだよ!!」 どうやら華は映画をちょっとだけ見たらしい。 「もし、俺が帰らなかったら……特殊部隊の皆を宜しくな……!」 「死亡フラグ中にすまんが いたぞ!」 千里眼で索敵する福松が早速一体、見つけた。トラックのヘッドライトに照らされるクリーチャー。運転手は迷う事なくアクセルを踏み込んだ。アクセルバスター(車)。 「ゴーストバスターのエントリーだ!!」 2の相棒ポジションにいるザックの台詞。車を使う以上は外せない。ばむっと鈍い音、撥ねられ轢かれたクリーチャーは爆発四散。だが直後、バックミラーに映るクリーチャー。車に乗ったら後部座席になんかいるのはホラー映画ではお約束。目を見開く福松の視界一杯に、飛び掛ってくるクリーチャーが―― 「ウワアアアアアアーーー!」 電柱に激突。ぐしゃあ。様式美。 「ふ、福松ーーー! お前の事は、忘れない!」 華は炎上するトラックから視線を逸らし唇を噛む。というのはさておき。聞こえたのは誰かの悲鳴。顔を上げた華の視線の先に、クリーチャーに襲われそうになっている一般人。 そうはさせるか――バイクのアクセルを思い切り吹かせた。加速。からの急ブレーキ。前のめり。体がぽーんと投げ出される。これでいい。ぶっ飛ぶ勢いのまま、この猛速度のまま。ド真ん前に一直線。まるで映画さながらに。 「オイそこまでだぜ。それ以上は俺が許さん!!」 身を捻る。体ごと施条銃弾の如く、衝撃波と共にクリーチャーへ文字通り『叩き付ける』のはアクセルバスター。ぶっ飛ばす。一般人から引き離す。 「なっ、君達は」 「説明は後だ、下がってろ!」 へたっと腰を抜かした一般人を護る様に立ち、華は剣を抜き放った。 見渡せば、いるわいるわワラワラと。正に映画のシーンの様に。しかしフツにとってそれは好都合に他ならない。 「緋は火。緋は朱。招来するは深緋の雀。これぞ焦燥院が最秘奥――」 朱雀招来。紅蓮の羽ばたきが世界を燃やす。全てを清める浄化の炎。 「よう、化け物。狩られる立場になった気分はどうだい」 それは第4作で1の主人公が言った台詞。4の主人公のピンチに颯爽と駆けつける初代――続編で初代の主人公が出てくるとやはり盛り上がる。 ていうかクリーチャーVSお坊さんというこの構図である。洋ホラーVS和ホラー。エイリアンVS寺生まれのTさん。卓越したお坊さんはクリーチャーをも成仏させる。お坊さんオブザデッド。 そんなフツの強結界で人除けがされ、戦闘の気配も起こったからか。続々と集まってくるクリーチャー達。それがどれくらいいて何処にいるのか、福松にはお見通しである。倒した分も含めれば10。事前情報通りの数だ。逃げられる前に一気に潰したいところである。 「『車の後部座席には何かいる』……ふ、常識だぜ」 なんと福松はホラー映画なら絶対死んでいる状況で無事だったのである。念頭に入れていたからこそ奇襲は防げた。彼の足元には弾丸に穿たれたクリーチャーの残骸が転がっていた。 火に炙られたクリーチャー達がカサカサ這い寄って来る。3体がいっぺんに福松に躍りかかる。が、既に構えられていた黄金銃オーバーナイト・ミリオネア。夜の灯りに妖しく光る。きっと漫画なら表現はこう。『BLAAAM!』あまりに速すぎて一発の銃声にしか聞こえない神速連射。6発の44マグナム弾が3体のクリーチャーにそれぞれ2発ずつ突き刺さる。狙うは頭、必ず『2発』。人間とは違うんだ、1発じゃ倒せない場合もある。 (……所でコイツの頭ってどこだ?) 硝煙。その中で華はあの言葉を口にする。 「やったか!!?」 お約束入りました。そんな通りに、皆の攻撃にやられたかと思ったクリーチャーがカサカサ動き出す。 「くっ! もう二度とフラグなんか立てるか!」 やらなきゃよかったなんて思いながら、その時にはもう華は加速に入っていた。暴走車の如く一騎奮迅と駆ける様はクリーチャー達を掻き乱し、その意識を華へと強烈に引き付ける。 (俺にできる事なんてこれぐらいしかねー……だが!) 己は英雄になれない。自覚している。しかしそれは、卑屈でも卑下でもない、ましてやヘタレて逃げる口実でもない。 出来る事が限られている? それが何だ。だったらそれを我武者羅にやるだけだ。覚悟と挑戦。赤の眼光に強い強い色が宿る。 「俺は絶対に、隊の皆の所に戻らないといけねーんだ! こんな場所でしねねぇぇんだよおおお!!」 勿論ノリも忘れないのが華のナイスなところである。 フツは仲間が作り出した隙を見逃さない。再度招来された朱雀が、周囲一体を劫火で包む。 その最中で。『KDD4はホラーじゃない』『爽快感はホラーに必要ない』――そんな意見をよく聞く事をフツは思い返していた。一理あると思う。だが、続編(しかも4作目だ!)のプレッシャーに耐えながらのチャレンジスピリット、オレは嫌いじゃないぜ! と、そんな時であった。火達磨になりながら飛び掛ってきたフツに飛び掛り、その体に喰らい付く。 「ぐ、ぐわあーー! オレが一番怖いのはお前らじゃねえ……ピザだ! ピザこわい炭酸飲料こわい!」 それは3でボブが死んだ時の台詞だった。 (ボブはピッツァ怖いとか言ってた割に登場シーンではピッツァ見つけて「ピッツァーーーーーー!!」とか腕振り上げてガッツポーズして喜んでたよな) ボブに思いを馳せる福松。 「それはそれとして死ぬな焦燥院ーーー!!!」 「大丈夫! ちゃんと生きてるからな! オレ反射あるし!」 バリアシステムでばりーん。そう、フツはお坊さんな上にターミネーほにゃにゃなのである。デデンデンデデン。 取り敢えず仲間の無事に福松は戦場に意識を戻す。クリーチャーの数は少なくなってきている。状況は優勢。そろそろ終わりにしよう。 「いい火加減だし、バーベキューにしてやるよ」 言いながら天に翳す手。招来される星の魔剣。その手を振り下ろせば流星の如く放たれた剣がクリーチャーを纏めて貫き――フツの劫火と共に、葬り去った。 敵をすべて斃し、一段楽したところで華は守りぬいた一般人へ振り返る。アワワとしている一般人。それに、福松とフツが傍にしゃがみこんだ。 「いいか、落ち着いてオレの目を見ろ」 そう言う福松の瞳は魔眼。『この坊主の言う事を信じるんだ』と暗示をかける。 「よし、いい子だ……焦燥院、後は頼むぞ」 「ウン。お前さんが見たクリーチャーはもちろん偽物だよ、映画宣伝用の等身大フィギュアが捨てられてただけだよ」 お次は記憶操作。コクコク真顔で頷く一般人がフツに合掌する。なんの宗教だ。でもまぁ大丈夫だろう。お坊さんの言う事を信じたら膝の痛みが取れました的なアレで済む筈だ。 さてA班は――と思った所で通信が来た。無事成功。こちらも同じ。一件落着。 ●スタッフロールの最後で画面の手前を黒い影が横切る的なアレ という訳でB班の成功を確認し、あとは速やかに撤収するのみ。 竜一は隣部屋を覗いてみた。創は隣部屋の玄関でパタリと倒れて気絶していた。その周りにビール缶やら酒瓶やらを転がし、鉄パイプを回収し、ウインク一つ。 「今はいい夢見ろよ、目が覚めた方が悪夢さ。部屋とかぐっちゃぐちゃだし」 「それもそやな……まぁなんとかなるやろ」 ちょっとだけ同情するわ、と創が目覚めてからの事を思い椿は苦笑した。リンシードと共にある程度部屋の片付けを行いながら、ふと目に留まったのはザ・キラーオブデス・オブザデッド5のパッケージ。三作目以降は作品情報すら集めていなかったが、意外にも面白そうだ。ギャグ的な意味で。 「……帰りに借りに行ってみよか」 「私も……ホラー映画借りて帰りましょう。また姉様と一緒に見るのです」 よし、と意気込むリンシード。伸ばした手でパチンと電源を落とし、真っ暗闇で閉幕。 そして朝日が昇った後、創は目の前の大惨事に愕然としたとか。映画のキャラ達が暴れたんだなんて言っても、彼の周りには酒の跡。そして朧に覚えている鉄パイプをぶん回した記憶。結局は飲み過ぎたんだろうという話になって――それがリベリスタの思惑通りであった事など知る由もなく――そんな話もこの巡る日常に埋没していって。 一つ変わった事をあげるならば、しばらく三高平のビデオ屋でザ・キラーオブデス・オブザデッドシリーズが貸し出し中になった事、だろうか――だがこれは、また別のお話。 『了』 |
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