●ルゴ・アムレスの黒塔 ボトム・チャンネル。 それは階層上になっている世界において、一番下であるという世界のこと。 故にボトムチャンネルは上位世界からの脅威に晒されてきた。時折Dホールを渡ってくるアザーバイドにより、大きな被害を受けることもある。それに対抗するためにリベリスタは徒党を組み、組織だって警戒に当たっているのだ。 さて、上位世界にもいろいろな世界がある。ボトムチャンネルよりも広大な世界も在れば、ただ樹木が一本生えているだけの世界も。時間が止まった世界もあれば、今まさに消え去ろうとする世界も在る。 そんな世界の一つ、ルゴ・アムレス。 半径五キロ程度の大地に、天を衝くほどの黒い塔が存在する世界。そこは多種多様の戦士達が集う修羅の世界。 その塔の上にこの世界のミラーミスがいるといわれ、今なお塔は天に向かって伸びていた。何を目指しているのか、誰にも分からない。狭い世界ゆえに、塔はどこからでも見ることができる。 息を吸い、そして吐く。異世界の空気もボトムチャンネルの空気と変わった様子はなかった。 その塔の中に、リベリスタはいる。 ● 塔の一階は丸まる街になっていた。 聞けばこの階は塔に挑む人たちが休憩用にキャンプを組み、それがそのうち大きくなって生まれた町だという。構造物の中に石作りの建物を見た時は驚いた。 アザーバイド……定義で言えばリベリスタもこの世界ではアザーバイドなのだが……はこの階で酒を飲み、傷を癒し、そしてまた上の階に挑むのだ。つまりこの階は塔に挑む者たちの活動拠点的な場所である。 最もリベリスタたちはDホール解放時間の関係上、活動拠点は必要としない。五十時間以内に元の世界に戻らないと、自分達やこの世界にどんな影響が出るか分からないのだ。 なのでこの階は手早く通り過ぎるに限る。上の階に通じる扉へ挑んだ者たちに合流しようとしていたところに、かかってくる声一つ。 「そこ行く異世界人さんよぉ! なかなか強そうじゃねぇか!」 猿。 ルゴ・アムレスのアザーバイド達の容姿は、ボトムチャンネルの動物の姿に酷似する。ビーストハーフをさらに動物よりにしたような。この男の容姿もまた、動物よりだった。 「俺の名前はゴエモン! あんたらが負けたら、この俺の軍団に加わってもらうぜ! 何? 少しの時間しかいられない? だったら来ている間だけは俺にしたがってもらうぜ!」 びし、と自分を指差し一方的に告げるゴエモン。知ったことじゃない、と無視すればその瞬間に切りかかってくるだろう。諍いは全て戦って解決。それがこの修羅の世界のルールなのだ。 「うき! 戦いウキー!」 小猿。そう言ってもいいアザーバイド達が木陰から出てくる。数の上ではこちらが有利だが、この異世界の存在は戦いに明け暮れている為馬鹿に見えても油断はできない。せめて相手の情報が分かれば―― 「このゴエモン、この愛刀『ゲンロク』と『チドリ』で倒した数は百をくだらない! 聞くがいいこの俺の武勇伝を!」 なんかベラベラと自分の能力と攻撃方法を喋り始めた。とりあえず耳を傾けるリベリスタ。話し終わるまでに付与でもしておくか、と思いながら。 「先ずはこの技『一閃』で、群がる敵をばったばったと切り倒し――」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年05月31日(土)22:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「時間があれば町を探索したかったな」 少し離れた場所にある街を見ながら、『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)は時間のなさを惜しむ。この世界の情報を手に入れたいということもあるが、この世界の文化に触れたくもあった。 「やれやれ……この世界の住人も、この世界に来る者達も似たもの同士ということか……」 わかってはいたがな、とベオウルフ・ハイウインド(BNE004938)がため息をついた。自分の戦果を話しているゴエモンを見ながら、体内のギアを上げる。戦い始まった瞬間に後ろに下がれるように、足の向きをわずかに変えた。 (刀の銘は『元禄』『千鳥』……麻雀のイカサマ技の一つ。まさかとは想いますが、何らかのイカサマを交える可能性もあるのでは?) 疑り深く『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)がゴエモンの様子を見る。『嘘をつかないこと』を信条としているというのは彼自身の言だ。そこが嘘なら目も当てられない。警戒を怠らず舞姫は話を吟味していた。 「刀が武器で、名前がゴエモンですか……」 『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)は自分が今住んでいる国の大怪盗の名を思い出していた。ただの偶然だろうが、奇妙なこともあったものだ。感心しながら自らの神経を強化する。反射速度を増すが、自らの体を痛めるソードミラージュの加速法。 「異界の剣士とは、興味深いですね」 ゴエモンの武勇伝を聞き『蜜蜂卿』メリッサ・グランツェ(BNE004834)は胸を躍らせる。勿論情報収集という意味もあるが、純粋に武勇伝にはあこがれる。それが異世界の武勇伝ならなおのことだ。 「うみもフェアにいくよ。うみの能力は……」 ゴエモンの説明が終わるや否や、『Nameless Raven』害獣谷 羽海(BNE004957)が自分の能力の説明を始める。高みを目指すには平等な条件で勝つことが前提だ。包み隠すことなく自分のできることを説明していく。 「お互い、ベストを尽くしましょう!」 『霊刀東雲』を抜きながら、『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)が笑顔を見せる。剣士である異常、最強という称号にはあこがれる。闘争の異世界に住む剣士。それと手合わせできる。それを思うとセラフィーナの心が歓喜に満ちてくる。 「任務を開始する」 防御の構えを取りながら『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)が口を開く。修羅の世界ルゴ・アムレス。この邂逅が大きな争いの元にならないことを祈るのみだ。今はただ、任務をこなすのみ。 「そんじゃ、始めるとしようかねぇ!」 「その前に。勝負を仕掛けた以上、貴方が負けた場合に何もなし、は無いでしょうね。こちらが勝てば、私達に協力して頂けますか?」 メリッサの質問に、ゴエモンは笑みを浮かべて切り込んできた。 「いいぜ、そっちが勝てばな!」 ――刃金の交差する音が響く。 ● 「行きます」 真っ先に動いたのは、舞姫だ。その速度を生かしてゴエモンの懐に迫り、脇差を振る。約三十六センチの刀とその倍近くある長さの刀が交差する。押し合えば負ける。それを察し、舞姫は押し合うことなくさらに懐にもぐりこんだ。 間合を外した武器は十全の威力を発揮しない。この距離は舞姫の武器の間合。腰を回転させ、舞うように脇差を振るう。独楽のような動きで振るう刀。速度が加わった刃がゴエモンの胸を裂く。 「『挨拶(プリヴィエート)』だ」 舞姫の反対側からウラジミールが迫る。その手にナイフを構え、強く鋭く踏み込んでくる。攻防一体の構え。そこから繰り出される一撃。足をしっかり踏みしめ、ウラジミール自身の重量を乗せた重い一撃。 お返しにとばかりに振るわれる横なぎの一閃。ウラジミールはゴエモンの腕を払い、刀の動きを逸らす。そのまま踏み込んでナイフを突き出す。首をひねって避けたゴエモン。ウラジミールは手首を回転させ、払うようにしてゴエモンの顔に傷を入れる。 「立ちはだかるなら退けるまでだ! 変身!」 疾風は幻想纏いから『強化外骨格参式[神威]』を装着し、ポーズを決める。そのまま地を走り、ゴエモンの後ろから呪いを放ってくる小猿に迫る。ゴエモンを抑えている二人の怪我の具合を見ながら、破界器を構える。 構えと同時に腕から刃が生まれる。構えは一瞬、思考は刹那。地面を蹴ると同時に刃の間合に小猿を捕らえ、刃を振るった。格闘の軌跡のままに刃が走り、その動きに対応できなかった小猿から血が流れる。 「これがアークリベリオンの力。話すより戦ってみるほうが早いよね」 羽海は自らの魂を燃やしながら、漆黒の翼を広げる。体内を駆け巡る厚い血液が、活力を与えてくれる。その熱を体中で感じながら、飛ぶべきルートを想像する。広げた羽根が空気を叩く。進むべき道が、見えた。 羽根をはためかせ、全力で飛ぶ。体内の熱。加速する力。そして自らの破界器。三つの要素を組み合わせ、小猿にぶつける。羽海はまだ小さいが、歩んできた戦士としての経験は小さくはない。鋭い一撃が小猿を吹き飛ばす。 「さて、全力で相手させてもらおう」 前線から距離を離しベオウルフが破界器を手にする。とはいえ今回の役目は刀を抜くことではない。鞘から抜くことなく柄を手にし、神経を集中させる。この構えは心穏やかにするための儀式。幾度と泣く振るって来た鍛練が、心をクリアにしていく。 戦場にいる味方の位置を把握する。頭の後ろにさらにもう一つの目があり、戦場全体を俯瞰するようなイメージ。それぞれを注視するのではなく、戦場の『流れ』を掴み取る。朗々と紡がれるベオウルフの癒しの言葉が、リベリスタたちの傷を癒す。 「先往く為の始まりの道――通らせていただきます」 反りのある片手半剣を手にリセリアが走る。修羅の世界。闘争の黒塔。そこに足を踏み入れたリセリアは、異世界の文化に感心するばかりだった。どこか自分達の世界に似た、しかし全く違う世界。強さを示す塔の中で、愛剣を握り締める。 狙いは小猿の一匹。小猿を間合に入れるや否や、剣を抜き放った。殺すつもりはないが、手加減するつもりもない。放たれた剣の軌跡に、光が走る。幻惑された小猿が、味方の小猿に呪いを仕掛ける。 「ガンガンいきますね!」 白い翼を広げてセラフィーナが舞う。異世界の空気を大きく吸い込んで、大きく吐き出す。一呼吸で体内に酸素を取り入れ、神秘の力を広げていく。全身にその力を届けて、目を開く。底の反応速度を高め、世界がスローに見えてくる。 羽根で空気を叩き小猿の一匹に近づいて、横薙ぎに抜刀した。七色の光が小猿を包み、刃筋が小猿を薙いだ。そして帰す刀でさらに一撃。まさに虹の乱舞。高速で舞うセラフィーナの動きは、遠くで見るものすら魅了する。 「呪いが届く前にこの剣が届けば、一歩は優位に立てそうですね」 細剣を手にメリッサが前に出る。ただ真っ直ぐに。自分ができることは剣を振るうことと決め、自らを律した戦士の動き。構え、そして突く。ただそれだけの動作。ただ真っ直ぐに積み重ねてきた、メリッサの剣術。 目に見えぬほどの高速でもない。針を通すほど精密でもない。されどその一撃には重みがあった。何度も、何度も、何度も鍛練を重ねた突き。それは積み重ねた分だけ鍛えられ、重みを増した突き。たとえかすっただけでも、十分な威力を持つ。 「うぉっと!? 危ねぇな!」 魅了された小猿の呪いがゴエモンに飛ぶ。存外なれた手つきでその呪いを刀で切り裂いた。魔を切り裂く構えが、呪いを切り裂いた。 「もしかして、小猿に攻撃されるのは日常茶飯事なのでしょうか?」 「アイツラ、隙を見ると悪戯して来るんだよ! こら、真面目にやれ!」 舞姫の問いかけに、ゴエモンは怒りで顔を赤くして答えて小猿に怒鳴る。魅了されているのだから仕方ないのだが。 小猿を優先的に攻めるリベリスタ。数も質もリベリスタが圧倒している。掃討はそれほど時間がかからないだろう。 だがそれを率いるゴエモンは、けして侮れない。相対している舞姫とウラジミールはそれを肌で感じていた。 ● 「交代だ」 「分かりました。参ります!」 ゴエモンの刀で傷を負ったウラジミールがリセリアと交代する。限界が近くなったと感じる舞姫も、ちらりと疾風を目配せしていた。 「今癒すぞ。無茶をするなよ」 傷ついた者を癒しに回るベオウルフ。彼の回復がパーティを支えていた。癒しの神秘がリベリスタ達を包む。痛みが引いて気分が落ち着いてくる。傷を負っていないベオウルフだが、仲間の傷が言えると我が事のように安堵する。 「いいコンビネーションじゃねぇか。かなり戦いなれてるな」 ブロック交代に小猿の押さえ。そして回復。息のあったコンビネーションにゴエモンが感心する。個としての強さではなく、連携の高さ。それが彼らの真価だと気付く。 「ええ。勿論コンビネーションだけではありませんよ」 防御に回っていた舞姫が攻めに転じる。小猿の数が減り、攻め時を感じたからだ。相手の刀を繰り出す前に脇差を突き出し、動きを制する。先の先。速度を重視し、責められる前に攻める武技。 「同じ塔の挑戦者として、挑ませていただきます」 同じくリセリアもゴエモンに切りかかる。体全体を使った剣の動き。力だけではなく技を乗せた速度の剣。その軌跡が青く光る。一撃で決めるのではなく、多撃をもって相手を追い詰めていく。 「逃がさないよ」 羽海が小猿の一匹に突撃する。幼く、ぼうとしているように見えてその一撃は鋭い。不吉を告げるカラスの羽。自らにかかる不吉を転じて羽海は相手を追い詰めていく。重みのある一撃が、最後の小猿を地に伏した。 「異界の剣術、とても興味があります」 メリッサがゴエモンに切っ先を向けて、構えを取る。機械化した腕で細剣を構え、意識を集中する。剣の切っ先まで神経が通っているほど、精密な剣の動き。細剣を体の一部とし、幾度も繰り返した動作のままに突き出す。それがメリッサの剣術。 「悪いが仲間が待っているのでな。押し通させてもらうぞ!」 恨みはないが、邪魔をするなら押し通す。疾風はゴエモンに向かい駆け出し、跳躍した。跳躍のエネルギーに落下エネルギーを加え、突き出した足に力を篭める。パワータイプのゴエモンすら圧倒する一撃が叩き込まれた。 「私達の世界の剣技を魅せてあげます!」 小猿を全て掃討したあとで、セラフィーナがゴエモンのほうに向かう。ゴエモンが力で攻める剣士なら、セラフィーナは速度で攻める剣士。味方と連携し、避けにくい方向に誘導しながら追い詰めていく。 「確実にやらせてもらおう」 ウラジミールはゴエモンに聞いた剣技を脳内で再現し、それに適した防御で対応する。攻撃を受け止め、そして攻める。後の先と呼ばれるカウンター技法。堅実に、そして確実に相手を追い詰めていく。 「こいつは厳しいかねぇ」 ゴエモンは波状攻撃を仕掛けてくるリベリスタの攻撃を捌きながら、苦境を口にする。小猿が魅了されて、満足にリベリスタの足止めができなかったのが敗因か。一人でこの状況を脱するには、さすがに厳しすぎる。 「なら降伏するかね?」 「はっ! むしろ楽しいじゃねぇか!」 ウラジミールの降伏勧告を、笑って拒否するゴエモン。彼もまた、闘争の世界ルゴ・アムレスの住人の一人。 「ですよね! じゃあこれで決めさせてもらいます!」 セラフィーナが『霊刀東雲』を手にゴエモンに迫る。魔を切り裂く構えを確認し、構えを変える。七色の剣閃が数多の軌跡を描く。 「奥義、七光連斬!」 ゴエモンの反応速度を超える刀の動き。それが『ゲンロク』と『チドリ』を弾き飛ばす。胸に切り傷が走り、奇妙な乱入者は倒れ伏した。 ● 「負けた負けた! 煮るなり焼くなり好きにしな!」 倒れ伏して数秒後、結構元気な口調で半身を起こしたゴエモンは、腕を組んで負けを認めた。 「いや。命をとる気はない。少し聞きたいことがある」 ベオウルフがゴエモンと小猿の傷を癒しながら、問いかける。それは他のリベリスタも同じだった。この世界がどのような世界なのか。情報があるなら得ておきたい。『万華鏡』のサポートがないのだ。情報はあるだけありがたい。 「ゴエモンさんはどこまで上ったの? あと塔の構造とか戦いの作法とか美味しい物とか」 「オレは十八階までだな。塔は一階ずつ登る形式じゃねぇ。一気に登ったり下ったりだ。 後うまいものが食いたきゃ一階(この街)に結構あるぜ。異世界の料理でよけりゃな」 羽海の問いかけに、すらすらと答えるゴエモン。一気に上ったり、の件がよくわからなかったが……それは別働隊と合流して理解した。 「この塔の上にはミラーミスがいるとも聞いたんですが、本当ですか? あとミラーミスはいったいどんな人なんですか?」 「ミラーミス……。いるらしいが、誰も見たことねぇからなぁ。つーか、何でそんなヨタ話をするんだ?」 ミラーミスのことを問いかけるセラフィーナに、頭をかきながら応えるゴエモン。彼からすればミラーミスの存在は都市伝説レベルの噂話だ。気にするものではないらしい。 「こちらにも色々ありまして……さし当たって理由は自分の世界への影響でしょうか?」 「ああ。あんたら『下』の世界から来たのか。そいつは大変だな」 メリッサが自分達の世界の苦境を語り、ゴエモンが他人事のように同情する……事実他人事なのだが。火急にこの世界のミラーミスを倒さなければならない理由はないが、世界の構造上影響は受けるのだ。 「塔の事で知っている事は無いか。上の階がどうなっているかとか」 「上に行きゃ、強いヤツがいるってぐらいかね。オレが知ってるのは。いつからこの塔があるのかとかそんなことはオレも知らん。生まれたときから既にあったからな。 ま、上のほうにどんなヤツがいるかぐらいは教えることができるぜ」 疾風の問いかけに肩をすくめるゴエモン。その言葉に、リベリスタたちは喜びの声を上げる。意外な情報源が手に入ったようだ。 「ゴエモン殿は、やはりこの塔の最上階を目指してというところか?」 「最上階というよりは……オレは自分の剣を鍛えるのが目的で、最上階到達はそのための手段かね。天辺にこだわりはないな」 ウラジミールの問いかけに一瞬悩み、言葉を放つゴエモン。強さを求める。このアザーバイドにとって、切磋琢磨こそが目的なのだ。 「誰かの為に強くなるのではなく、ただ強さを求める……」 「そちらの世界は知らないが、この世界はそれが普通なんだよ」 仲間意識がないわけではないが、強さを求めるのに理由と意味を求めない。そういう理由もありかとリセリアは無言で思う。養父や姉への憧れで剣を取ったリセリアからすれば、少しさびしくもあった。 「総合するに……この世界の人間もこの塔の全てを知る者は少ないということですか」 「少なくとも、全階突破したヤツの話は聞かないな」 今まで話を聞いていた舞姫の言葉に頷くゴエモン。古くから存在し、ミラーミスがいるといわれる塔。その世界の人間すら何があるか分からない。まさにこの世界の神秘的存在といえよう。 『門』に向かっていた人間がこちらに歩いてくる。向こうの戦果を聞き、Dホールの解放時間の兼ね合いもあり、元の世界に撤退する運びとなった。 「またな、異世界人。機会があれば、またやり合おうぜ」 いつの間にか復活した小猿と共に、ゴエモンが見送ってくれた。それに手を振り、Dホールを潜るリベリスタ。次来る時には、どんな戦いが待っているのだろうか? 元の世界の空気を吸いながら、そんなことを考えていた。 闘争の世界『ルゴ。アムレス』―― 戦いが全てを決する修羅の世界。その中心にある黒塔に挑むものは後を絶たない。塔の中に町があったりと、ボトムチャンネルの常識外のことが起きる。頂上にはこの世界のミラーミスがいるとも言われ、謎多き塔だ。 そこで結ばれた奇妙な絆。それがどんな未来をつなげるのか。フォーチュナ為らざる彼らには、予想すらできなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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