● 遭難事故発生 季節は初夏。野山には緑が満ちる季節だ。山開きのシーズンでもある。秋は紅葉、初夏には緑を楽しみに、山へと足を運ぶ者も増えて来る。 それと同時に、頻発するようになるのが登山中に起きる遭難事故だ。 足を滑らせての滑落。道を見失っての遭難。自然災害に巻き込まれての行方不明など、山で起きる事故のほとんどは注意しているだけでは回避し難いものである。 ましてや、そこに神秘が絡めば、一般人にはどうしようもないだろう。 舞台はとある山中だ。さして標高の高い山ではないが、道は険しく、上級者には物足りないが初心者には厳しいと評判の山である。 その山に登山していたある学生のグループが帰ってこない、その報告を受けて山岳救助隊が捜索に乗り出した。 しかし今度は、数名の救助隊員からの連絡が途絶えた。 それと同時に、山ではある異変が頻発するようになる。 その異変というのは、山を上っていたはずなのに、気づいたらいつの間にか登山口に戻って来ていて、一向に目的地へ辿り着けない、とそういうものだ。 何度繰り返しても、何人挑戦しても、それは変わらない。 それどころか、いつの間にか他の登山客も登山口に戻されて来ていた。 つまるところ……。 現在、この山の中に居るのは遭難者及び救助隊員、合わせて7名だけということだ。 彼らの安否を祈りながら、しかし誰も山へは登れない。 ただその無事を、願うことしかできないのだった。 ● 生存者を掬え 「山の神の祟りだー……、なんて言ってみたり。実際は、EフォースとEアンデッドが数体居るだけ」 それでも十分脅威だけどね、なんて苦笑いを浮かべて『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はモニターに映像を映す。モニターに映ったのは、ある山の全景だ。山の登山口には人だかりができている。 「Eフォース(木霊)は、大人数の人の気配を嫌う。一方で、人のたてる声や物音がないと存在を保てない」 その結果が、7人の男女のみを山に閉じ込めるという現状を招いた。 それ以上の人数が山に入るのを嫌うため、結界のようなものを張って、一般人の侵入を阻むことにしたのだろう。 「もっとも、E能力を持っている貴方達には関係ないけど」 山に立ち入って、遭難者を救助できるのは現状リベリスタ達だけ、ということになる。 「山の中には、全部で4体のEアンデット(野犬)と3体のEアンデット(怪鳥)、そして3体のEアンデット(名も知れぬ死体)がうろつき、生者を狙っているわ。アンデットのどれかに、Eフォース(木霊)が寄生している」 木霊の居場所を見つけ出すのは容易ではないだろう。手がかりがあるとすれば、木霊は極々微小な音でEアンデットを誘導しているという点だろうか。無論、移動や戦闘で大きな音が鳴り響く中から、見事それを聞き出し、木霊の居場所を発見するのは手間がかかる。 「木霊が指揮をとっているみたいだから、木霊さえ倒してしまえばだいぶ楽になるとは思うけれど」 と、イヴは言う。 アンデットを連れたまま山を降りることはできない。神秘は秘匿する必要があるのだから。 しかし悠長に構えている時間も、残されては居ない。 「遭難者7名のうち、意識があって自力で動けるのは3人だけ。残りの4人は怪我をしていて自力では動けない。また、けが人のうち1名は重傷を負っているから慎重かつ迅速に下まで連れて行かないと。 木々の隙間を縫って、空を飛ぶのがてっとり早いだろうか。 しかし、空にはEアンデット(怪鳥)が飛んでいる。 「生存者を、全員下まで連れ帰って来て」 そう言ってイヴは、仲間達を送り出すのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年05月25日(日)22:03 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●迷いの山 山へと足を踏み入れたリベリスタ達は、奇妙なほどの静けさに不気味な何かを感じていた。木々の擦れる音や動物、虫の鳴き声も聞こえない。なにかに恐怖し、息を潜めているのだろう。 この山は現在、EフォースやEアンデッドによって支配された状態にあると言える。 その山中に数名、なんの力も持たない一般人が取り残されていることを、彼らは知っていた。彼らの目的は、遭難した一般人の救助なのだから。 「山岳救助隊みたいな任務ですね。救助対象を無事に助けるために全力を尽くしましょう」 雪白 桐(BNE000185)が、目を閉じ耳を澄ませて周囲の音を探っている。集音装置。音を使ったアクションを得意とするEフォース(木霊)には有効な索敵手段。 「おおよそ……」 と、一人呟いたのは『ツンデレ兵器』五十嵐 千涼(BNE004573)だ。形のいい鼻をくんくんと動かし、エリューションや遭難者を探す。 「探索や敵の捕捉に使えそうな能力はだいたいあるからね?」 「しかし、状況的にあまり時間が無さそうだな……。早急に救出しないと……な」 頭を掻きながら蒼峰 龍星(BNE004603)が千涼の後に続いて歩く。索敵は、索敵に向いた仲間に任せればいい。万が一の不意打ちに備え、龍星は周囲への警戒を怠らない。 「できる限り皆さんの「目」になりましょう」 エリン・ファーレンハイト(BNE004918)の千里眼にも、現状ターゲットの姿は映っていないようだ。しかし、これだけの人数が同時に探索を続けているのだ、ターゲットの発見も時間の問題だろう。 「しかし、熱のない山ですね……」 小さな溜め息を零し、『御峯山』国包 畝傍(BNE004948)は周囲を見渡す。熱感知による、熱源の捜索が彼の役割であるが、未だそれらしきものは発見できないでいるようだった……。 ●音と死体 キン、と細く高い音がする。それはもしかしたら気のせいだったのかもしれないが、それでも遭難者の1人は、確かにその音を聴いた気がした。 遭難者は全部で7名。怪我人、重傷者が居るため不用意に動きまわることはできない。救助、或いは他の登山客が来るのを待っているのだが、待てど暮らせど誰も通りかからない。何度声を張り上げただろう。どれだけ叫んでも、木霊が返ってくるだけで、返事はない。 そろそろ、待つ以外の行動を取らねば、と考えたはじめたその時。 メンバーの1人が、鼻を押さえて不穏な表情を浮かべた。何事か、と思ったが答えはすぐに出た。 腐臭だ。耐えきれないほどの腐臭が、漂ってきたのである。 そして……。 『あ、うあぁぁぁぁぁあ!!』 悲鳴を上げたのは誰だっただろう。意識のある、全員だったかもしれない。 草木を掻きわけ、彼らの眼前に現れたのは、腐りかけた体を引き摺る人間の死体。歩く死体を、この国では一般的にゾンビと呼称するのではなかったか……。 悲鳴に反応し、死体が彼らに襲いかかる。逃げきれない。このままでは、数十分後には自分達も死体の仲間入りだ。そう覚悟を決めたその直後、金の髪を躍らせながら小柄な人影が彼らの横を駆け抜けていった。 「一般人などどうでも良いのですが」 ナイフと銃とで武装した『朱蛇』テレザ・ファルスキー(BNE004875)が、死体へと飛びかかり、ナイフを首へと突き立てた。走る勢いそのままに、死体を押し倒し、歪な笑みを浮かべる。 そんなテレザの真横から、腐りかけた犬の死体がテレザへ襲い掛かった。テレザの腕に、鋭い牙を突き立てる。噴き出す鮮血で頬を汚しながら、テレザは犬へと銃を向けた。 テレザの放った弾丸は、しかし犬に避けられた。その隙に、テレザの下から死体が抜け出す。 抜け出した死体が、テレザを無視して遭難者へと襲い掛かる。だが、次の瞬間には、死体の首は切断されて地面を転がっていた。 「一般人をしっかり守らねばならないな」 死体の首を切ったのは、アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)であった。一般人を護るように彼らの前に立ちはだかる。 いつの間にか、周囲には数体のEアンデッドが近づいてきていた。動く死体を見たのも初めてなら、乱入してきた者達にも見覚えは無い。ナイフや銃、刀まで持っている。困惑しているうちに、遭難者たちの身体は何者かに持ち上げられていた。 何者? と、視線を落とす。そこに居たのは、影で出来た人型であった。 「ああ落ち着いて、救助のものです。別に落ち着かなくても良いですが、その場合は命の保証はしません」 酷薄な笑みを浮かべる『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)が遭難者たちに声をかける。式符を手に、召喚した影人たちを指揮して、遭難者たちを後ろへと下がらせた。 相手のEアンデッドは数が多い。 他人を護りながら相手をするほど、余裕がある戦いにはならないだろう。 残る死体は、9体だ。空に3体、鳥の死体が飛んでいる。唸り声をあげる野犬の死体と、その向こうには誰のものか分からない人間の死体。なるほどこれは、ゾンビ映画を見ているような気分になってくる。 「さて……新しく身に付けた力、試させてもらうぜ? 壱式迅雷!」 大声で叫び声をあげながら、龍星が飛び出した。雷を纏い、地を這うように敵へ近づく。飛びかかってくる野犬3体を、目に見えないほどの速度で放った拳によって弾き飛ばした。だがしかし直後、背後から襲いかかった死体によって龍星の動きは封じられた。ギシ、と掴まれた腕が軋んだ音をたてる。 弾き飛ばした野犬も、再度起き上がって襲いかかってきた。Eアンデッドのどれかに寄生した、木霊による指揮で敵の動きは統率がとれたものとなっている。 龍星を助けに向かおうとテレザが飛び出したが、眼前を飛び回る鳥に阻まれ、動けない。 木々が邪魔で、視界が悪い。敵に掴まりながらも、龍星が大声で叫んでいるのは少しでも木霊の音による指揮、探索を妨害するためか。 遭難者たちが下山するまで、抑え込めればこちらの勝ちだ……。 「それでは私は、周囲の敵への対処に」 諭と、諭の指揮する影人が遭難者を連れて離れていくのを見送ってから、畝傍は戦線へと戻る。 地面を蹴って、全力疾走。進路を阻む鳥の死体も畝傍のダッシュについてこられなかった。そのまままっすぐ、龍星を捉えていた死体へと肉薄。全力疾走の勢いものそままに、身体ごとタックルをかます。 どちゃり、と腐った肉の潰れる音。死体が宙を舞い、大きく後ろへと弾き飛ばされる。 「さて、斬り合いましょうか」 死体が地面に落ちるより速く、落下地点に回り込んだ桐の大剣がその身を真っ二つに切り裂いた。大上段から、重さに任せて叩きつける全力中の全力だ。それを放った桐の身体にも、相応の負荷がかかっているようで、彼女の口元から一筋の血が零れた。 「うぐ……」 剣が叩きつけられた地面が、衝撃で大きく抉れている。真っ二つに切られた死体も、衝撃に飲まれてぐちゃぐちゃだった。 「攻撃は任せるわ。こっちはダメージ与えるよりはBSばら捲きに集中するから」 とん、と桐の肩を軽く叩いて千涼が両手を広げて見せた。指先や、服の裾から無数の目に見えないほど細い気糸が、四方八方へと展開された。トラップネスト。動きを封じる気糸の罠だ。 展開された気糸に捉えられ、宙を飛んでいた鳥の死体が1体、ピタリと動きを止めた。 動きの止まった鳥の身体を、エリンの放った矢が貫く。正確無比な彼女の射撃でも、高速で動きまわる空中の相手に対してでは、命中率が幾分低下するようだ。 しかし、気糸に捉えられ、動けない相手など的でしかない。 「エリューションを先に全滅させてから救助、が楽ではありますがおそらくそうもいかないでしょうね……」 空にはまだ2体、縦横無尽に飛び回る鳥の死体が2体居る。諭と共に、影人と遭難者を護衛するために、エリンは踵を返し後方へと下がって行った。 リベリスタ達の相手をするのは、負担が大きいと判断したのか。 野犬たちが、龍星やテレザの攻撃を回避し、遭難者を追いかけはじめる。流石に動きが速い。4足で駆けまわる犬の身は、不安定な足場をものともしない。 「みんな、オレとは反対側に進んでくれ。行くぜ!」 影人を先導して下山していたアズマが、進路を変えて元来た道を戻っていく。仲間達が追いつくまで、追ってくるEアンデッドを食い止める心算だ。 先頭を駆けてきた野犬に向けて、アズマが駆ける。 瞬間的に、アズマの移動速度が急激に上がった。彼女の姿が、ぶれて見える。下段に構えた刀を振りあげると同時に、先頭を走っていた野犬の首が切り落とされた。それを見て、他3体の野犬も動きを止める。アズマに対して、警戒心を顕わに唸る。 刀を正眼に構え、犬に向き合うアズマの頭上を、2羽の鳥が飛び抜けていった。 ぎゃあぎゃあと、腐った体液を撒き散らしながら鳥の死体が矢のように突っ込んでくる。それを迎え撃つのは、数体の影人を従えた諭だった。遭難者の誘導はエリンに任せている。 「騒々しいことですね。判り易くて助かりますが」 一斉砲火。影人と諭の放った砲弾が、突っ込んでくる鳥を撃ち落とす。砲弾に撃たれ、体の大半を失いながら、それでも鳥は止まらない。重力に引かれるような突進が、諭と影人の胴を穿つ。 血を流し、蹲る諭の傍へ、テレザが駆けこんできた。地面に転がる鳥の死体へ、立て続けに銃弾を浴びせる。鳥の死体は、これで3体全部撃破した筈だ。 残る敵は、野犬が3体と人の死体が1体だ。 遭難者たちは、エリンの先導で幾分先へと逃がす事ができた。 残りの敵も殲滅せんと、傷口を押さえて諭が立ち上がる。仲間達も、追いついて来た。野犬や死体は、いつのまにか視界から消えている。 再度索敵を、と桐が耳をそばだてた、その直後……。 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン! と、甲高い爆音がリベリスタ達を飲み込んだ。 耳が痛い。頭が割れる。身体の内側がシェイクされるような気分。吐き気と激痛。口から零れたのは胃液と血液の混ざり合った液体。身体の中から、壊されるような感覚。木霊による攻撃か。 爆音の波に紛れるように、リベリスタ達の周囲にアンデッド達が近寄ってくる。 アンデッドに指示を出し、爆音によってリベリスタを攻撃している木霊は、アンデッドのどれかに寄生しているはずだ。だが、爆音が邪魔をして、どの個体が指示を出しているのかは分からない。 そうしている間にも、アンデッド達は近づいてくる。自分達がやられてしまえば、次に襲われるのは遭難者たちだ。 野犬の牙が、テレザの肩に突き刺さる。 野犬の爪が、アズマの首に深い傷を刻んだ。 野犬に押し倒され、千涼の身体は泥に汚れる。 死人の怪力が、畝傍の首をギリリと締めあげた。 木々に反射し、爆音の出所は不明のまま、リベリスタ達はアンデッドの総攻撃を受ける。 けれど……。 「見つけたっ……。お前だっ」 耳から血を流しながらも、桐は剣を振りあげた。桐の斬撃は、まっすぐテレザを襲っていた野犬へと迫る。野犬は素早く後退し、それを回避。音は鳴り止まないが、それでも敵の居場所は分かった。龍星が飛び出すが、死人に足を掴まれ地面に引き倒された。 倒れた龍星へ野犬が迫る。 その直後。 「そこですね」 と、一言。 トン、と軽い音と共に野犬の喉に矢が突き刺さった。矢を放ったのは、遭難者を避難させ、現場に駆け戻って来たエリンである。音の波が止まると同時に、諭が影人を召喚し畝傍の首を掴んでいた死人へと攻撃を加える。 死人の拘束が解けると同時、畝傍は死人に体当たりを慣行。その身を大きく背後へと弾き飛ばした。 木霊の居場所は判明した。 リベリスタ達の反撃が始まる。 ●木霊するのは…… 耳から血を流す桐を支えながら、諭は戦場を離れていく。2人は撤退、及び先行した遭難者の保護のために、エリンも弓を構えたままその後に続く。 それを追って、野犬が1匹、木々の隙間を縫って駆けるが、その眼前に割り込んだ畝傍がそれを阻む。長剣による一閃が、野犬の前肢を切り落とした。 背後から弾丸のように駆け寄ったアズマの一刀が野犬の身体を真っ二つに切断。腐った内臓が地面に巻き散らかされた。 しかし、アズマの身体は次の瞬間には近づいてきた死人によって持ち上げられ、投げ飛ばされる。投げられた先に居たのは畝傍だ。安定しない足場が命取りとなり、2人はもつれるようにその場に倒る、斜面を転がり落ちていく。 「相手をぶっ殺せるお仕事、素敵ですわよね」 死人の追い打ちを受け止めたのはテレザだ。ナイフを死人の腕に突き刺し、銃をその眉間に突きつける。自由な方の手で、死人はテレザの銃を掴んだ。ギリギリと、その場で膠着するテレザと死人。力は死人の方が強いらしい。 じわり、とテレザの額に冷や汗が浮かぶ……。 千涼の眼前で、野犬の動きがピタリと止まる。彼女の展開していた気糸によって、体の自由を奪われたのだ。身体の骨を軋ませながら、内臓を糸に押しつぶされながら、それでも拘束から逃れるべく野犬は暴れ続けている。 千涼は、野犬の眼前で弓を構え、魔力の矢を番えた。 「哀れな死体……」 一言、たったそれだけを呟いて、千涼の矢が野犬の頭を射抜いた。野犬の動きが停止し、元の単なる死体に戻る。後で、余裕があれば土にくらい埋めてやろう。そう考えた千涼の背後で、爆音が鳴った。 耳触りな雑音だ。壊れたスピーカーが、割れた音を撒き散らしている、といった有様である。耳を押さえ、千涼が背後を振りかえる。そこに居たのは、どろりとした唾液を垂らし、此方へ向かって襲いかかってくる野犬の姿だ。 木霊に寄生された個体だろう。間近から爆音に飲まれ、千涼の意識が途切れそうになる。 千涼が気を失う、その寸前。 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおらああああああああああああああああああ!!」 割れんばかりの雄叫びをあげながら、龍星が音の波の中へと飛び込んできた。滑り込むように野犬の真下に駆け込むと、そのまま野犬の喉に突き刺さっていたエリンの矢を掴み、そのまま喉を引き裂いた。首を半分ほど切断され、野犬の頭がだらんと垂れさがる。それでも動きを止めず、雑音を撒き散らしているのは寄生している木霊による影響か。 頭の割れるような雑音の中で、ふらりふらりと野犬が歩く。その背後から、片耳を手で押さえながら千涼が手を伸ばす。気糸が宙を走り、野犬の身体を拘束した。 「弾切れだと思ったか? 甘いな! ナックルショット!」 動きの止まった野犬に向けて、グローブを射出する龍星。まるで、マンガやアニメに出て来るロケットパンチである。まっすぐに飛んだグローブは、そのまま野犬の頭部を粉砕してみせた。撒き散らかされていた雑音が止まる。 野犬はその場に崩れ落ち、動かなくなる。寄生していた木霊共々、野犬はその動きを停止した。 パン、と渇いた銃声が鳴り響く。 誰の者とも判然としない、腐りかけた死体が地面に転がる。それを見降ろし、テレザは1つ、溜め息を零した。 今頃、遭難者たちは山を降りただろうか。 これで依頼は達成。 エリューションと化した哀れな死体を土に埋め、リベリスタ達は下山の準備を開始した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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