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ヒーロー。或いは、正義の価値。

●正義の味方
 彼の名前は(ジャスティス)という。白を基調としたボディスーツに、何か、魔方陣染みたエンブレムの刻まれたフルフェイスヘルメット。赤いマフラーと、両腕に嵌めた装飾過多なガントレット。正義の味方、特撮番組のヒーローのような姿をしているのは、彼の「そうありたい」という想いからだ。
 Dホールを潜り、数々の世界を旅する彼は数多くの世界で、数多くのヒーロー像を吸収し、その身に取り込んできた。それらヒーロー像を用いて、フォームチェンジするのが彼の能力である。
『悪は罰せられねばならぬ』
 それが彼、ジャスティスの口癖だ。名乗りを上げて、ポーズを決めて、高い位置から飛び降りて。
 そして彼は、1人の男性を殴り飛ばす。
 鼻血が噴き出し、前歯がへし折れる。意識は既にないようだが、それでもジャスティスの手は止まらない。鳩尾に数発拳を叩きこみ、更に両の腕をへし折った。
『お前は悪だ。盗みの計画を立てていたのを耳にした』
 優れた聴覚が、どれほど小さな囁きであろうと聞き逃さない。至近距離にあっては、筋肉の収縮する音さえも聞きとるほどの聴力である。
 意識を失い、手足の骨を折られた男をその場に放置し、彼は何処かへ姿を消した。
 向かった先は、港の倉庫街。犯罪者たちの塒になっているのだと、彼は耳にしたのだ。
 そこで倒れ伏している盗人は、その道中で遭遇し罰したにすぎない。
『悪は罰せられねばならぬ。正義は遂行されねばならぬ』
 拳を握り、決意を胸に、ジャスティスは正義の名の元に、この世の悪を滅ぼすために。
 もうすぐ日が暮れる。悪の蔓延る時間になる。

●悪の断罪
「アザ―バイド(ジャスティス)は正義の味方。だけど、彼の正義はいかんせん度が過ぎているように思う。それにこのまま放置しておくわけにはいかないしね」
 悪は罰されねばならぬ。その想いだけがジャスティスを突き動かすのだろう。『リンクカレイド』真白・イヴ(nBNE000001)は、モニターに映ったボディスーツの正義の味方を見て、溜め息を零した。
「悪……。彼の言う悪がどういうものかは知らないけど、犯罪者を取り締まってくれるのなら少しは世の中平和になるかもね」
 かといって、放置はできない。
 既に1人、ジャスティスの制裁に合って大怪我を負っている者が居る。
 正義の味方を名乗っていても、彼の行っているのは暴力だ。
 そして、これからもそれを繰り返すのだろう。
 悪には正義を、罪は暴力によって淘汰する。
「それが決して悪いことではないのだろうけど……。少なくとも、この国の現状にとってそれは、悪と変わらない。それにアザ―バイドを野放しにしていては、世界の崩壊にもつながるし」
 少なくとも、彼をこの世界から追い返すか、討伐するしかないだろう。
 できれば追い返すだけで済ませたい。
「また、港には1体のEフォース(ヴィランス)が発生しているわ。人の感情の悪意を増幅する能力を持ったEフォース。港に集まる犯罪者たちの想いから発生している。ヴィランスのせいで、犯罪者たちは好戦的になっているから、注意してね」
 ジャスティス相手に喧嘩を売って、間違ってその命を落とすことも十分にあり得るだろうから。
「通常の格闘戦に加え、ジャスティスはいくつかのフォームチェンジを使いこなす」
 討伐対象は(ヴィランス)、追い返す対象は(ジャスティス)。
「行ってらっしゃい」
 そう言って、イヴは仲間達を送りだした。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年05月22日(木)22:25
お疲れ様です。皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
今回は、異世界から来た正義の味方を追い返すことが目的となります。
それでは、ご参加お待ちしています。

●場所
港の倉庫街。
道路は広いが、背の高い倉庫が立ち並んでいるため死角は多い。
倉庫街には、多くの人間が潜んでいる。
Dホールは、倉庫街から数百メートル行った所にある林の中にある。
現在倉庫街にはEフォース(ヴィランス)が、倉庫街の入口付近にアザ―バイド(ジャスティス)が存在している。


●ターゲット
アザ―バイド(ジャスティス)
白を基調としたボディスーツに身を包んだ、正義の味方。
悪は罰されねばならぬ、という信念のもと、悪人を罰してまわる。
優れた聴力と、身体能力を持っている。
通常は、格闘術を用いて戦う。
【ブレイブフォーム】→物近範[圧倒][業火]
赤を基調としたフォームに変身する。両手に持った燃える剣による高威力の斬撃。
【ライトニングフォーム】→神遠貫[雷陣][連]
青を基調としたフォームに変身する。銃を使った遠距離攻撃と、高速での移動が得意。
【ジャスティスフォーム】→神近複[必殺][弱体][ブレイク][ノックB]
白いスーツに、赤と青のラインが走るフォームに変身する。オーラで強化されたキックやパンチによる攻撃。


Eフォース(ヴィランス)
フェーズ2
悪意から発生したEフォース。
周囲の悪意を増幅させる。彼のせいで、港にいる二十名ほどの人間は皆、ひどく好戦的になっているようだ。
【悪意の渦】→神遠範[不運][呪い]
どんよりとした悪意のオーラが対象を包み込む。



 
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ハイジーニアスクロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
アウトサイドスターサジタリー
桐月院・七海(BNE001250)
ハイジーニアス覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
ノワールオルールクロスイージス
ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)
フライダークインヤンマスター
エイプリル・バリントン(BNE004611)
ビーストハーフ覇界闘士
翔 小雷(BNE004728)
ハイフュリエソードミラージュ
フィティ・フローリー(BNE004826)
ヴァンパイアインヤンマスター
彩堂 魅雪(BNE004911)

●hero
 真夜中の倉庫街。声を潜めてはいるものの、辺りには無数の人の気配がある。脛に傷持つ、犯罪者たちが、この辺りには集う。
 辺りに漂う不気味な気配が、この空間に満ちる悪意を増幅させているようだ。どんよりとした影を纏った奇妙な人影は、Eフォース(ヴィランス)という。
 ヴィランスの影が不意に揺らぎ、その姿を隠した。
 直後……。
『正義参上。悪は罰されねばならぬ』
 倉庫の屋根に、白を基調としたボディスーツを纏った、奇妙な男が現れた。

●彼の正義
「正義、正義ですか……。聞こえの良い言葉です。常にその側に居られるならそれに越した事はない」
 仲間と共に倉庫街を駆け抜けながら『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)がそう呟く。視線を巡らせ、アザ―バイド(ジャスティス)の姿を探す。
「迷い無き『正義』の意志。彼には『悪気』はないのでしょう。罪を罪として罰を与えるのは法の役目……」
 最も、それは神秘が絡まない一般人相手の話である。アザ―バイドやエリューションに対応するのが、彼女達リベリスタの役割だ。『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)が溜め息を零す。
「んー……確かに、同じ正義……とはいえやっぱり違うかな。罪を憎んでヒトを憎まずってよく言うけれど彼にソレは無いようだし……うーん」
 首を傾げながら『儀国のタロット師』彩堂 魅雪(BNE004911)は考える。どうも、異世界からやって来たヒーローのやり方に納得がいかないようだ。
「それにしても、なぜヒーローはボディースーツ姿が多いのだろう?」
 そんなことを呟くエイプリル・バリントン(BNE004611)の耳に誰かの悲鳴が届いたのは、その直後のことだった。

 悲鳴が聞こえる。次いで、怒号が響く。声の主は数名の男のようだ。現場に急行したリベリスタ達が見たのは、地面に横たわる男性が1名と、その対面でポーズを決める白いスーツの男、ジャスティス。そして、ジャスティスに向けて敵意を放つ数名の男達の姿だった。恐らく、仲間の1人がジャスティスにやられて、憤っているのだろう。
 手にナイフを持っている者もいる。
 ジャスティスの正義は、勧善懲悪。悪人に手心を加えるようなことはしないだろう。それを考えると、このまま男達をジャスティスに相対させておくのは悪手だ。この場に居ると言うことは、犯罪者ではあるのだろうが。
「助太刀しますぜ、ヒーロー!」
 男の1人がナイフを振りあげたその瞬間、『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)が矢を放った。矢はまっすぐに、男が手にしたナイフを弾く。突然の乱入者にジャスティスや男達の視線がこちらに集まった。
「人は時に過ちを犯すが悔いれば自らを正す事も出来る。正義の味方はただ悪を断罪すれば良いとは思わない。時には許す心も無ければと思う。正義そのものであってはいけない」
 そうだろう? と、『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)が男達の間に駆け込み、ジャスティスへとそう語りかける。疾風の拳が、眼前の男の鳩尾を打ち抜く。短い呻き声をあげ、男はその場に倒れ伏した。
 ジャスティスの挙動から、彼が困惑していることが窺える。そこへ更に『質実傲拳』翔 小雷(BNE004728)が乱入し、疾風と共に他の男達を無力化していく。ジャスティスに向けられた殺意や害意は、七海の矢が阻むことで、ジャスティスによる過剰な正義が行使されないようにする。
 男達を無力化し終えたのを確認し、ジャスティスはリベリスタ達へと視線を向けた。こちらが何者なのか、何の目的があって乱入して来たのか、その真意を測りかねているようだ。
「悪人に騙されて財産を失い、身内に重病人が居る子供が、あくどい商売してる薬局から薬を盗んだとして。それは貴方の言う悪なの?」
 沈黙を破ったのは『龍の巫女』フィティ・フローリー(BNE004826)だった。水色の髪をなびかせながら、ジャスティスの元へと接近する。
 ジャスティスからの返事はない。フィティは更に質問を重ねた。
「奴隷のような存在が居て、それを虐待することを許される法律がある国で、法に従って虐待を行うことは正義なの?」
『…………』
 ジャスティスは無言を貫いたまま。
 くるりとフィティに背を向け、走りだす。高く跳び上がり、倉庫の屋根に飛び乗ると、そのまま何処かへ消えていった。「まて!」というフィティの叫びも届かない。
 ジャスティスが信じるものは、己の正義のみなのだろう。だとすると、彼が向かった先は決まっている。新たな悪のいる場所だ。
 正義を行使するために、悪を罰するそのために、ジャスティスはまだ、止まらない。

 港の倉庫街。都心からは程遠く、遮蔽物も多い。一般人が近寄ることも少ないこの場所で、違法な薬物や銃火器の売買が行われることもある。
 それらのやり取りを、ジャスティスの耳は聞き逃さない。至近距離ならば筋肉の収縮や心音ですら聞きとるほどの聴力だ。声を潜めたやりとりなど、問題なく聞きとることができる。
 そんな折、彼が耳にしたのは、大規模な犯罪組織の行う武器の売買の予定だった。対立する組織との抗争に備え、この国では不必要なほどの量の武器、薬が運び込まれるらしい。
 その話を聞いたジャスティスは、全速力でその場へと向かった。

 ジャスティスが、港に停泊する大型船の元へ辿り着いた瞬間、彼は辺り一帯に満ちる身の毛もよだつような、強烈な悪意の奔流に飲み込まれた。今まで、数々の悪と向き合っていたジャスティスをしても、これほどまでの悪意を感じた事はなかった。
 大型船の下、トランクケースを持って取引をしようとしている男達の奥に、虚ろな人影が佇んでいる。恐らくそれが、Eフォース(ヴィランス)だろう。周囲の悪意を増幅させる能力を持ったEフォースだ。
 問答無用。事情を確かめるまでもなく、あの人影、ヴィランスを悪だ。そう判断し、ジャスティスは飛び出す。ジャスティスのヒーロースーツに赤いラインが走る。両手に召喚された剣を構えて、ジャスティスはまっすぐヴィランスへと向かう。
 しかし、直後ヴィランスの放った悪意のオーラがジャスティスを飲み込み、その動きを封じた。どろどろとした悪意の波が、ジャスティスの身体から力を奪っていく。
 港に居た男たちが、ナイフや銃を構えて、それを一斉にジャスティスへと突きつけた。男達が引き金を引く、その寸前……。
「この力は人々を、日常を護る力だ! 変身!」
 掛け声。閃光。装備を纏った疾風が、倉庫の屋根から飛び降り、ジャスティスの前に着地した。

 疾風が両手を振りあげる。正面に居た男の身体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。男達の間に動揺が広がる。ジャスティスも、突然の乱入者に混乱しているようだ。だが、今はそれどころではない。素早く体勢を立て直し、ヴィランスや疾風、男達に警戒の眼差しを向けるジャスティスの傍に、魅雪が近寄ってくる。
「彼らは只の使いみたいなモノ…私達でも大丈夫です。時間が掛かるほど、相手方は増えますよ?」
 すっ、と魅雪が指さした先にはヴィランスの姿。ヴィランスの元へ向かえ、という合図だろう。ジャスティスの元へ駆け寄って来た男が1人、魅雪の放った投擲武器に打たれて、動きを止める。男の身体には、呪印が浮かび上がっていた。その印が、男の動きを封じたのだ。
 魅雪の言葉に戸惑いながらも、ジャスティスは駆けだす。狙うは敵の親玉、ヴィランスだ。

「まずはお前と共闘、かな……。だけど、本当はこの世界の秩序というか、ルールとして。貴方のような異邦人がいるだけで世界が崩壊に向かう。つまり存在は本来、認められてないよ」
 それだけは覚えておいて、とジャスティスに告げてフィティはヴィランスに侵された男達の中へと走り込んで行く。両手に持った剣を、踊るように翻して男達を無力化していく。無傷とはいかないが、それでも致命傷は避けているようだ。
 細心の注意を払いながらの攻撃。どうしても隙が生まれる。男の撃った弾丸が、フィティの肩を撃ち抜く。
「ヴィランスには人の心を悪の方面に追いやる力がある。おそらく奴を倒せばここにいる人間も正気を取り戻すはずだ」
 フィティに続いて、小雷も、ジャスティスの進路を開く為に駆ける。素早い打撃の連続が、周囲の男達を次々と気絶させていった。ビーストハ―フの身体能力を持ってすれば、一般人の無力化など容易いことだ。
 しかし、敵の数が多い。船の中から、次々に黒いスーツの男達が出て来るではないか。
 ジャスティスの両手に剣が現れる。眼前に立ち塞がった銃を持った男に向けて、剣を振り下ろすが、横から割り込んだユーディスが槍を突き出し、ジャスティスを止めた。
「例え悪心に囚われていようと弱者には違いない。私達のような武力を以て制圧する事は、この世界では必ずしも正義ではない。正義のため、人々を悪に染めるヴィランスの退治を手伝って欲しいのです」
 眼前を塞いでいた男は、七海の放った矢に手を射ち抜かれてその場に倒れ込んだ。それを乗り越え、ユーディスとジャスティスはヴィランスの元へと向かう。無抵抗の相手でも、悪であれば討伐するのがジャスティスのやり方だが、しかし今はそれよりも優先すべき敵がいる。雑魚に構っている暇はないと判断したのだろう。
「やはり勧善懲悪なヒーローですが。確かにそれくらいの方がわかりやすいですが……更正するチャンスを与えるのもまたヒーローというものです」
 ジャスティスが一般人に手を出さないよう、七海は先回りして進路を阻む男達を矢で追い払う。正確な射撃能力を持つ彼だからこそ可能な芸当だ。
「正義を掲げるなら常に己に問いかけなければ、己は本当に正しいのかと……」
 強い力は、時に正義を見失わせる。アラストールもまた、正義のあり方について改めて、考える。剣と鞘とで、男達を気絶させながら、ジャスティスや他の仲間の行動が妨害されないように対処していた。
 進路を開き、追撃を阻む。ヴィランス討伐の邪魔はさせない。
「通しませんよ」
 一閃。それだけで、眼前の男がその場に崩れ落ちた。

 ジャスティスに次ぐ乱入者と、目の前で次々と倒れていく悪人たち。ヴィランスがいくら悪意を増幅させたところで、彼らは所詮僅かに武装した一般人に過ぎない。
 ヴィランスの前を塞ぐように男たちが移動するが、エイプリルの放った閃光弾が弾け、強烈な光を撒き散らすと共に男達の動きが止まった。目が眩み、動けなくなったのだ。
「暴徒鎮圧にはスタングレネードだよね」
 ヴィランスの傍に居た男たちには、アッパーユアハートによって挑発し、その場から遠ざける。人の壁が居なくなり、ヴィランスを護る者はもういない。
 逃げ出すか、それとも迎え撃つか。僅かな迷いが、ヴィランスの行動を遅らせた。
 その隙に、ジャスティス、ユーディス、疾風の3人がヴィランスの眼前にまで辿り着く。

●悪と正義
「ヴィランスという原因を消せばおさまるはずだ」
 疾風が指さすのは、眼前の黒い影ヴィランスだった。ユーディスは素早くヴィランスの横へと周り、逃げ道を塞いだ。
 逃げ場はないと悟ってか、ヴィランスの全身から身の毛もよだつような悪意のオーラが解き放たれた。身が竦むのを堪え、疾風はあえて前へと飛び出す。
 疾風の全身をオーラが包み込むが、即座にそれをジャスティスの放った青い弾丸が撃ち抜いた。いつの間にか、ジャスティスのスーツには青色のラインが入っていた。素早い動作で、オーラを回避し、ヴィランスに迫る。
 その場から逃走しようとするヴィランスの眼前に、ユーディスの槍が突き出された。怒りを込めた鋭い眼光がヴィランスを捉えた。
 逃げ遅れたヴィランスの腕を、疾風のアームブレードが切り落とす。腕の断面から溢れるのは、血ではなく悪意の煙だった。煙を間近で浴びた疾風は、思わず後ろへ跳び退る。
 耐えがたいほどの嫌悪感に、眩暈がする。しかし、ここで退くわけにはいかない。疾風の全身に闘気を纏い、ヴィランスの元へと再度、飛び込んだ。
 それと同時……。
『こいつが……悪の元凶か』
 低い声が響く。ジャスティスの声だ。彼の脚が、眩く光る。赤と青の粒子が飛び散る。疾風とは逆から、ジャスティスはヴィランスへと飛び蹴りを決行。
 ヴィランスがアクションを起こすより速く。
 闘気を纏った疾風の拳が、ヴィランスの胴を。
 粒子を撒き散らすジャスティスのキックが、ヴィランスの頭を捉た。
 声にならない悲鳴をあげて、ヴィランスの身体は霞のように掻き消える。
『……協力、感謝する』
 着地し、ジャスティスは疾風に向けて、握手を求めるように右手を差しだしたのだった。

「例え悪心に囚われていようと弱者には違いない。私達のような武力を以て制圧する事は、この世界では必ずしも正義ではないのです」
 地面に倒れた男たちを見つめながら、ユーディスは言う。
 ジャスティスは、それを無言で聞いていた。しかしやがて、彼はゆっくりと踵を返すと、Dホールへと向かって歩いていく。
『やはり、悪は罰されねばならない……。だが、この世界のルールに沿うのなら、私の正義も場合によっては悪ととられかねないようだ。君達みたいな存在が居るのなら、今のところは大丈夫そうだな……。任せたぞ、ヒーロー』
 疾風の胸を拳で叩き、異世界のヒーローは、元の世界へと還って行った。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。
異世界から来たヒーローに、この世界を守るもののあり方を見せつけることに成功したようです。
ヴィランスは殲滅され、依頼は成功です。
この度は、ご参加ありがとうございました。
縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。
それでは、そろそろ失礼します。