●滅びの象徴 それは本来ならば、人の手によってエリューションと化すべき存在だった。 ゴーレムとして建造され、兵器として運用される存在だった。 正確に言えば……その為の試作、実験体となるべき存在だったのだ。 けれど、そうはならなかった。 未完成のまま、放棄された存在。 そのまま時が過ぎれば、ただ朽ち果てるだけだった存在。 忘れ去られ消えていくだけの……存在。 それを覚醒させたのは、世界だった。 人の手によって造られ、その途中で放棄された存在は……人の手を借りずして世界を逸脱し、世界の手を借りて世界を滅ぼす存在となった。 そして……それは、何かを待ち侘びる。 護衛の1機もなく。 僚艦も無く。 唯、1隻のみで……唯、何かを待ち侘びる。 ●戦艦 「軍艦型のE・ゴーレムが現れました」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう前置きしてから、詳しく説明し始めた。 ゴーレムが出現した場所は、ある工業団地の近くに作られていた貯水池である。 「E・ゴーレムはその貯水池の中央付近に暫くの間は留まっています」 貯水池は、岸近くは浅く中央に向かって深くなっているようで、中央付近は3m程度の水深がある。 「ですが貯水池そのものは狭く、池の中央までは10~20m程度の岸があるようです」 遠距離攻撃の手段さえ用意できれば、攻撃に困るような事は無いだろう。 とはいえ準備が難しい者や近距離攻撃を主力とする者は、何らかの手段を講じる必要がある。 「E・ゴーレムは1機……1隻のみです。味方、僚艦らしき個体は存在しません」 軍艦に似た形状のE・ゴーレムで、大きさは5m程度。 フェーズは2に値するが、3クラスに近しい戦闘力を持っているらしい。 「大型の戦艦のような外見をしていて、高い攻撃力と防御力を所持しています」 耐久力の方も高いことに加え、異常効果を受け難い耐性に似た能力も所持しているようだ。 「反面、速度は遅く回避能力もやや低めのようです」 とはいえ大きさを考えれば機敏と言える旋回行動で攻撃を回避しようとするらしい。 「攻撃の方は、主砲、副砲、機銃による攻撃を1回ずつ行ってきます」 攻撃は全て物理攻撃で、精度は高い。 「攻撃力の方は主砲、副砲はかなり高く、対空機銃の方は威力に劣るものの射程内全体への攻撃が可能なようです」 副砲の方も、全体は不可能だが複数への砲撃が可能。 主砲は単体しか狙えないものの攻撃力は高く、加えて相手を吹き飛ばす程の威力があるようだ。 「ただ、それ以外の特殊な攻撃能力等は無いようです」 接近する者などには体当たり等を行ってくるかもしれないが、それは通常の物理攻撃という感じで射撃と比べると威力はやや劣る。 「貯水池周辺は一時的に封鎖しますので、一般人への配慮は必要ありません」 他の事は考えず、E・ゴーレムとの戦いに全力を尽くす事が出来るだろう。 「どうか充分にお気をつけて。御武運、お祈りしております」 マルガレーテはそう言って、リベリスタ達を送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年05月17日(土)22:24 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●戦いの水面(みなも)へ 「さて、今回の相手は軍艦ですか」 そう呟いたのは『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)だった。 (本物よりは小さいようですが、兵器は兵器) 「油断して怪我しない様、注意しませんとな」 九十九が口にすれば、その言葉に『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)が軽く頷いて見せる。 (守るべき、と言うか判らないけど……) 頷いてから彼女は、暫し……今回戦う事になるエリューションへと想いを馳せた。 (本来の拠点を失った戦艦って言うと、何というか哀愁とかロマンの世界よね) 「そもそも大艦巨砲主義そのものが一種のロマンだと思うし、あたし好きだけど」 ただの感傷というのは自覚しているものの……決して悪いとは思わない気持ちを、少しの間だけ味わってから。 セレアは心の内で何かを切り替える。 「前に、この手のエリューションを研究している場所は破壊しましたが……残党というか、残滓というか、そんな感じみたいですね」 以前に自分が参加したとある任務の事を思い出しながら、『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)は口にした。 「補給などはないでしょうから、倒せばそれで終わり、ではありますが」 (慢心せずにきちんと片付けましょう……という感じ、でしょうか?) エリューションを放置するわけにはいかない。 現時点で十分に危険な存在だ。 更にフェーズが進むようなことになれば、例えば水地から移動する手段などを手に入れたりすれば……確実に多くの被害が出ることになるだろう。 「それにしても、中途半端に未完成の状態で放置していたなんて傍迷惑な話ですわ」 『残念系没落貴族』綾小路 姫華(BNE004949)は誰に言うでもなく呟いた。 (兵器として使う予定だったのでしたら、それ相応の処分……破壊なり封印なりするべきではないかしら?) 「何を思って放置していたのかはわかりませんが、時代遅れの兵器が人々に危害を加えぬよう、私(わたくし)達で見事破壊してみせますわ!」 そう言い放った後で、彼女は少し首を傾げてみせる。 「ところで、超超弩級とのことですが……4~5mの割に大層な表現ですわね」 (軍艦に似た形状ということですし、デザイン等で元となった戦艦がそのように呼ばれていたのかしら?) 疑問に思ってそう問い掛けた彼女に、幾人かが簡単に説明した。 「さて、連装砲ちゃんことアームキャノンのお披露目です」 『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)も説明を終えると、己の装備をアクセスファンタズムから取り出して確認する。 「ホラー全開じゃなくてメカ成分たっぷりの敵でよかった」 (とか考えてしまう辺り、僕も非常識に毒されてきたのでしょうか?) そんな事を考えつつ如月・真人(BNE003358)は、皆と共に慎重に貯水池へと近づいてゆく。 「まさか戦艦級と相対することになるとは思いもしなかったぜ……」 水の上に浮かぶE・ゴーレムの姿を遠目に眺めながら、アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)は呟いた。 本来の戦艦に比べれば遥かに小さいとはいえ、敵はリベリスタ達の倍以上の大きさを持ち、その外見に相応しい戦闘力を保持している。 (だが、大きさに怯んでいるわけにもいかないしな) 「全力で当たらせてもらうぜ!」 自身に気合を入れるように、アズマは強い調子で口にする。 同じように……水上の艦を眺めながら。 (実験体として作られて。未完成のまま破棄されて) 「わたしとおんなじ……だね。そう、おんなじ」 『トライアル・ウィッチ』シエナ・ローリエ(BNE004839)は、小さな声で呟いた。 (研究所で魔女として作られて……途中で放り出されたわたし、と、おんなじ) 「自由になったら、何をしたらいいんだろうね、わたし達」 その瞳をゴーレムに向けたまま……少女は問いかけるように、口にした。 「あなたも……探してる?」 ●鋼の激突 「どのような地形であれ、私の歩みを妨げることなどできませんわ」 魂を燃やし闘気を身に纏いながら、姫華はエリューションへと距離を詰める。 「干渉領域、因子算定――calculation」 シエナは詠唱と共に複数の魔方陣を周囲へと展開し、自身の魔力を上昇させた。 九十九は己の武器に月の女神の加護を施し、アズマも闘気を纏いながら小夜の援護を待つ。 小夜は全員を範囲に収めるようにして力を解放すると、仲間たちに翼の加護を施した。 その姿を視界の隅に収めながら、真人も力を用いて周囲の魔力を取り込み始める。 ある程度まで近づくと、リベリスタ達はそこから一気に敵の射程内へと侵入した。 自身の力と施された翼の加護を用いて、水面を駆けるように低く翔けるようにして、姫華はE・ゴーレムへと距離を詰める。 そのまま彼女は勢いを殺さず、カルディアを手に戦艦へと突撃した。 狙うのは敵の武装である。 (効果があるかわかりませんが、試さない手はありませんわ) その結果として攻撃は当たらなかったり本体にダメージが行かなくなるというのであれば問題だが、そうでなければ損は無いのだ。 (戦術は兎も角、心情的にはあちらが大艦巨砲主義なら、こちらも火力で対応したいわね) 「少なくとも絡め手とかよりは」 接近する前衛陣を眺めながら呟くと、セレアは圧倒的な速度で魔法術式を組み上げた。 「さて、行くわよ……Feuer(フォイアー)!!」 本来の魔導の行使に必要な時は……今の彼女には必要ない。 詠唱は即座に空間に干渉し、事象を捻じ曲げ存在しない存在を召し出した。 天より来訪した星の欠片が、目に捉え切れぬほどの速さで地に吸い寄せられるようにして……巨大な戦艦へと突き刺さる。 水面は爆発でも起きたかのように乱れ、大きな波が湖上を駆けた。 それでも、船体を大きく揺らしながらも、E・ゴーレムは沈まない。 その体から放たれる攻撃に対するために……小夜も力を用いて周囲の魔力を取り込み始めた。 「兵器として生み出された以上、そなたも戦いたかったのであろう」 (本懐を全うせず朽ち行くことなど許せなかったのだな) 「良いぞ、ならば全力でかかって来い」 姫華と同じように距離を詰めながら、アズマは戦艦型E・ゴーレムへと呼びかけた。 (そして、戦いの中で沈み行くがいい!) 「オレの名はアズマ、姓はウィンドリスタ。いざ、推して参るッ!」 敵の巨大さを逆に活かして味方を巻き込まぬようにと狙いを定めたアズマは、そのまま周囲の空間諸共薙ぎ払う斬撃を、ゴーレムに向け連続で繰り出してゆく。 セレアの攻撃を確認した九十九も、前衛として行動を開始していた。 動きを鈍らせぬようにと水面近くを低空飛行しながら、彼は銃口をE・ゴーレムへと向ける。 姫華やアズマのように全力で移動しての攻撃は出来ないが、彼には射程という武器があった。 移動距離が異なる事で、自然と距離は開く形になる。 それは、九十九の目的と合致していた。 纏めて狙われにくいように距離を取りたいというのが、彼の考えである。 散開するように移動しながら、九十九は魔力銃の狙いを定めた。 針穴すら通すような精確な動きで狙いを定められた銃口から、魔力によって強化された弾丸が放たれる。 それは予め定められていたかのように空を翔け、鋼鉄の軍艦に突き刺さった。 E・ゴーレムはそれらの攻撃にも耐え、反撃を行う態勢を整えようとしているように見える。 だが、現時点では味方への被害は無い。 それを確認した真人は、味方の消耗を軽減すべくセレアに自身の力を分け与えた。 その真人の側で、シエナは己の魔力によって大鎌を創り上げる。 「構成展開、型式、灰空の月鎌――composition」 黒い大鎌に収穫の呪い(まじない)の印が刻まれると、彼女はその刃を艦へと向けた。 「見て……これが開発された、わたしの習性、だよ」 そう彼女が呟いた次の瞬間、大鎌は目標へと達し、ゴーレムの船体に重く鋭い斬撃を繰り出す。 (さて、物理耐久性能は見た目通り高いようですが) 「そういう奴の防御をぶち抜くことにかけては、多少の自負がございます」 シエナと並ぶように立ち位置を取ると、あばたは左腕に装着した小型のキャノン『アインシュタイン』をE・ゴーレムへと向けた。 「退路無しの貴殿には最早我らを全滅させる以外に策は無い」 弾薬の備えは十分ですか? ダメコンの準備は整っていますか? 索敵は完了していますか? 「まあ、お構いなしに攻撃しちゃいますけどね!」 小型とは言え十分な大きさと重量を持つ砲弾が、砲身の内で出撃を待つように待機する。 まるで精密機器のような動きで砲口を戦艦へと合わせると、彼女はその動きとは裏腹の荒々しい声を口から発した。 「仰角零、零距離射撃、撃てぇッ!」 直後、水平に構えられた彼女のアインシュタインから轟音と共に砲弾が発射される。 放たれた砲弾は次の瞬間、戦艦の艦橋付近へと着弾した。 それらの攻撃を耐え抜きながら、戦艦は甲板上に備え付けられた銃砲をリベリスタ達へと向ける。 主砲は遠距離攻撃班へ、副砲は近接戦を試みる者たちへとそれぞれ向けられ、機銃は射程内の全ての対象を迎撃すべく動き…… 水上とその周辺の岸辺に鋼鉄の嵐が吹き荒れた。 もっとも、リベリスタ達の側も怯む様子はカケラも見せず、攻撃を続けるべく態勢を整える。 力と力のぶつかり合いは、まだ……始まったばかりだった。 ●陸上と、水上と 前衛も後衛も回復も何もない相手である以上、必要なのは細かい戦略より安定して勝てる態勢だろうというのが、セレアの考えである。 (はてさて、一度に三度攻撃してくる相手への対応として、あたし達の火力は足りるのかしら?) 「相手の火力は馬鹿にできないし、連続で受けたらあたしなんてすぐ戦闘不能よ」 少なくとも単体レベルでの頑丈さでは、相手に圧倒的に分があるのだ。 単体同士の削り合いに持ち込まれないように、回復を受けつつ皆でじわじわ削る持久戦へと持ち込めるように。 集中攻撃を受けそうならば一旦後退する事も視野に入れつつ、セレアは再び魔力を空へと放ち、天よりの鉄槌を召喚する。 一方のシエナはというと、できれば自分が狙われるようにと考えながらE・ゴーレムへの攻撃を行っていた。 主砲が自分に向けられれば、少なくとも射程内にいる誰かが主砲、副砲、機銃による集中攻撃を受けずに済むのだ。 それに、自分より攻撃力の高い者から攻撃を逸らす事もできる。 (だから的になりたい、の) もっとも、自分には敵の攻撃を誘引するような技術は無い。 できるのは、一撃一撃訴えかけること、だけ。 「ねぇ……きて?」 (おんなじ迷子。行先を探すわたし達、だから) 「もっとぶつけ合おう? 何かを探して……闇雲に撃ち合おう?」 語り掛けるように言葉を紡ぎながら、シエナは魔力によって創り上げた大鎌を再び戦艦型へと向ける。 あばたも同程度の距離を維持しつつ、消耗を抑えた精密射撃と自身の最凶の攻撃を交互に行いながら目標の様子を窺っていた。 永久炉は高いエネルギーを生み出す事ができるが、彼女の扱う最も強力な攻撃はその永久炉を以てしてもエネルギーが枯渇しかねないほどの消費を生み出す技である。 それでも、敵を撃破する為に消耗を厭わず……あばたはシエナと共に長射程の攻撃をE・ゴーレムへと叩き込む。 そして、攻撃を行う遠距離班の仲間たちを守るべく、真人は癒しの力を揮っていた。 理想は常に万全の状態を維持する事。 回復の超過は気にせず周囲の魔力やエネルギーを取り込みながら、真人は癒しの力を揮う。 実際に消耗を気にしないだけの力を生み出せるように、彼は充分な準備を整えてもいたのだ。 セレアが機銃の掃射に巻き込まれることはあっても、それ以外の者たちは主砲以外で狙われる事のない状況である為、彼の使う回復は単体を目標としたものであることが多かった。 詠唱によって大いなる存在に呼びかける事で癒しの微風を生み出しながら、真人は状況を見て聖神の息吹を具現化させる。 その上で彼は、接近戦を挑む前衛たちのへの援護も行っていた。 単体の攻撃力では劣ってはいるものの、副砲と機銃による近距離班への攻撃は総合火力という点では主砲を大きく上回っていたのである。 ●力と、力 蓄積したダメージによって前衛たちが追い込まれる、いう事態は発生していなかった。 単純に言えば、複数を狙えるといっても個人が受けるのは副砲と機銃からの一射ずつである。 それを完全に回復させるほどの圧倒的な癒しの力を、小夜は修練によって習得していたのだ。 もっともそれだけに、消耗の方も随一だった。 技術的にはもちろんだが、費やす力の方も……未熟な者であれば一度使えば限界に至るほどの力を消費する。 それが、デウス・エクス・マキナ。 『全ての救い』とまで称される奇跡の技である。 その力を小夜は惜しげもなく使う事で、前衛たちを十全の状態に保っていた。 危険な状態の者がいれば直ちに力を揮い、みなが戦える状態であっても待機して、癒しが必要かどうかを見極める。 戦艦の砲撃と機銃掃射は前衛たちを傷付けはしたが、打ち倒すには至らなかった。 もっともそれも、前衛たちに攻撃に耐えるだけの充分な実力があったからこそである。 未熟な者であれば、そもそも副砲の一撃だけで昏倒していた事だろう。 「ちっ……なんて硬さだ。さすがは戦艦級だけはあるな」 戦いながらゴーレムの動きに注意していたアズマは、敵の動きや戦闘力が変化し難いこと、異常を受けてもすぐに回復する事などを確認すると、戦い方を変化させた。 「力尽くでこじ開けさせてもらうぜ!」 気迫の声と共に力を瞬間的に滾らせ、鍔迫り合いのような姿勢から膂力でE・ゴーレムを揺るがせる。 同じように力攻めによる刺突を繰り出しながら、姫華は自分の立ち位置に注意していた。 彼女は前衛として十分な耐久力を持ってはいたが、敵の攻撃は回復が途切れれば数十秒で打ち倒されるほどに強力である。 癒し手である小夜か、真人から常に回復を受けられるように。 戦艦に視界を妨げるような構造物があるようなら、それらを破壊するように。 意識しながら、姫華はカルディアを振るって戦艦型に痛撃を加えてゆく。 (1隻だけと言うのは、少し寂しい姿ではあります) 「まあ、だからと言って、一切の容赦をするつもりは有りませんけど……」 戦いの最中ではあっても、孤独な戦士にそんな想いを抱きながら……九十九は魔銃をゴーレムへと向けた。 「せめて兵器としての本分を全うして、スクラップにして差し上げますな」 呟きに続くように銃弾が放たれ、鋼鉄の船体にまた1つ、穴が穿たれる。 リベリスタ達の攻撃によって艦橋の一部は崩落し、船体に幾つもの激しい損傷を受けながら……ゴーレムは砲塔を旋回させ、機銃から銃弾を放ち続けた。 「倒せそうに見えても気を抜かず、最後までしっかり行きましょう」 (史実を見ても戦艦って割と「しぶとい」ことも多いので……) 「実際の戦艦とは別物だとしても、です」 回復を行いつつ敵の様子を窺いながら、小夜が皆に警戒の声を掛ける。 「残念ながら中破や大破では勘弁して差し上げられません」 砲弾を艦橋に命中させた直後、あばたは素早く次弾を装填し、連続で攻撃を戦艦へと叩き込んだ。 「沈没だけは必ずしてもらいます」 新たな損傷によって船体が大きく裂け、そこから水が流れ込み始める。 それでも砲塔は火を噴き、直撃を受けたシエナへと癒しが飛んだ。 姫華の突撃によって更に1つ、船体に大きな歪みが生じる。 そして……力を再び蓄えた、セレアの召喚した星の欠片の直撃を受けて。 戦艦は力を失い……渦を巻くようにしてその姿を水底へと沈めていった。 ●終戦の後に 沈没を見届けたセレアは、すぐに周囲にフィクサードがいないかと調査を行った。 研究を行っていた者たちが今回の事態に気付き、データ等を得ようとする可能性もあるのだ。 一般人の立ち入りは禁じているが、能力を持つ者が侵入してくる可能性が無いとは言い切れない。 「後顧の憂いを断つの、大切よ?」 そう言って仲間たちと共に、彼女は手早く周囲を確認した。 幸いと言うべきか……発見した場合の捕縛手段も準備してはいたものの、そういった者たちの存在は確認できず調査は完了する。 九十九の方はというと、E・ゴーレムの事に関して何か手掛かりは無いかと考えたものの……船体は幾つかに砕けた状態で水没してしまっている為、すぐに調査するのは難しかった。 もっとも池の水深は決して深くは無い以上、アークの方で回収しての調査は可能だろう。 小夜の話からすると、以前に破壊した付近に存在した研究施設の物である可能性は高いが……確定するまでは用心しておいた方が良いかもしれない。 とは言え、当座の危険は去ったと言えた。 E・ゴーレムは8人の手によって撃破されたのである。 信じられないほどの激しい戦いが行われた貯水池は、岸辺が荒れ周囲の地面や草木が水を被ってはいるものの……行われた戦いの激しさと比べれば、その変化はあまりに些細なものだった。 荒れ狂った池には、今は小さな波が残るのみである。 何事もないことを確認すると、リベリスタ達は……日常を取り戻した貯水池を後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|