● 「『我は滅びぬ……、貴様ら人間の心に悪がある限り、何度でも蘇るであろう……』、と」 そこまで書いた所で、シナリオライターの章太郎は夜のオフィスの中で大きく伸びをした。周りを見渡すと、既に周りに人影は無い。とっくの昔にみんな帰宅してしまったのだ。 「大分きつくなってきたな。でもま、後は魔王城が崩れて助けさせるところとエンディングパート。朝にスパートかければ終わるだろ」 そして、大きなあくび。 章太郎は若手のライター。現在は今度出る予定の新作ゲーム(R18)のシナリオを執筆している所だ。思っていたよりか筆がのったのは、彼にとって幸運な所であった。 元々、彼が書きたかったのは別のジャンルのシナリオだった。綿密な調査を元に作ったプロットはその甲斐もあって企画会議に何度か挙げられたものの、内容が些か斬新過ぎた。「売れるかどうか判らない」という理由で却下され、今回のシナリオ――ベタベタな「主人公男性が様々な味方とパーティーを組んで魔王を倒す」という内容で王道ファンタジーものを書くことになった。 頭にきたものの、前向きだった彼は「ベタなシナリオで素晴らしい成果を出して、次こそは自由にできる立場になろう」と誓い執筆してきた。シナリオの第2稿も脱稿は間も無くだ。――自分でも普段以上のペースで書くことが出来たのは、上の人間への怒りがあったからと思わなくもない。全く皮肉な話だ。 「一服したら仮眠だな。さすがにこれ以上しんどいや」 睡眠が足りないせいか、独り言も多く章太郎は部屋の外へと出て行く。 そして、『それ』に気付かなかったのも寝不足で集中力が切れていたためであろう。 彼の背後に現れた禍々しい気配に気が付かなかったのは……。 ● そろそろ初夏と言っても良い4月のある日、『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)を始めとするリベリスタ達は、ブリーフィングルームで事件への対策を相談していた。 「なるほど、要するにちょっと変わったエリューション退治ってことね」 「ゲームが生んだ……エリューション・フォース? たしかにちょっと変わり種ね」 『龍の巫女』フィティ・フローリー(BNE004826)はやや怪訝な顔を浮かべている。異世界からやって来た彼女にとって、ボトム・チャンネルに降り立って久しいものの、その総てに精通している訳ではない。 この度現れたのは、現在制作中のゲームのラスボスをモチーフとした戦士級のエリューション・フォースだ。製作者の想念が実体化したものであり、RPGに慣れた者にしてみれば見慣れた姿。闇の衣を身に纏った悪魔――いわゆる魔王の姿をしている。ご丁寧に部下である騎士たちのオマケ付きだ。 「で、たしか弱点があるって話だったよな。えーっと……」 「このゲームの設定に近い相手と戦うと戦闘力が落ちるみたいです。生まれからすると無理もない習性ですね」 戦い慣れなかった蒼嶺・龍星(BNE004603)に対して、神谷・小鶴(BNE004625)が説明をする。エリューション・フォースは思念が生み出した存在だ。それ故に他のエリューションよりも生まれに縛られやすい傾向がある。 このエリューションの元となった「ゲームの魔王」は「勇者の一行」に倒される存在だ。それ故に「勇者の一行」、あるいはその姿を模したものが現れれば、自然と力を減じてしまうのだ。 「幸い、資料はあります。これを元にすれば、どうとでもなるでしょう」 顔色一つ変えずに雪白・桐(BNE000185)は淡々と語る。 よくよく見ると勇者一行は、「男1人とその他は女性」という構成だ。元が成年向けゲームなので些か仕方ない所か。 「踏み込むのは夜になりそうですね。見た所、入るのは難しくなさそうですし、人もいないようです」 水無瀬・佳恋(BNE003740)は事件の起きるゲーム会社の資料を確認している。少なくともリベリスタであれば、侵入するのは難しくない。現場にいるのは被害者となるライター本人位のものだが、当人は仮眠ですっかり寝こけている。多少の物音では現れまい。 リベリスタ達を阻むものは無い。割と思うままに戦うことが出来るはずだ。 「それじゃ、魔王退治と参りましょうか!」 冗句めかした口調と共に、セレアは仲間達へと笑みを向けるのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ リクエストシナリオ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年05月16日(金)22:05 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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