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ベタなゲームは宜しくない話


「『我は滅びぬ……、貴様ら人間の心に悪がある限り、何度でも蘇るであろう……』、と」
 そこまで書いた所で、シナリオライターの章太郎は夜のオフィスの中で大きく伸びをした。周りを見渡すと、既に周りに人影は無い。とっくの昔にみんな帰宅してしまったのだ。
「大分きつくなってきたな。でもま、後は魔王城が崩れて助けさせるところとエンディングパート。朝にスパートかければ終わるだろ」
 そして、大きなあくび。
 章太郎は若手のライター。現在は今度出る予定の新作ゲーム(R18)のシナリオを執筆している所だ。思っていたよりか筆がのったのは、彼にとって幸運な所であった。
 元々、彼が書きたかったのは別のジャンルのシナリオだった。綿密な調査を元に作ったプロットはその甲斐もあって企画会議に何度か挙げられたものの、内容が些か斬新過ぎた。「売れるかどうか判らない」という理由で却下され、今回のシナリオ――ベタベタな「主人公男性が様々な味方とパーティーを組んで魔王を倒す」という内容で王道ファンタジーものを書くことになった。
 頭にきたものの、前向きだった彼は「ベタなシナリオで素晴らしい成果を出して、次こそは自由にできる立場になろう」と誓い執筆してきた。シナリオの第2稿も脱稿は間も無くだ。――自分でも普段以上のペースで書くことが出来たのは、上の人間への怒りがあったからと思わなくもない。全く皮肉な話だ。
「一服したら仮眠だな。さすがにこれ以上しんどいや」
 睡眠が足りないせいか、独り言も多く章太郎は部屋の外へと出て行く。
 そして、『それ』に気付かなかったのも寝不足で集中力が切れていたためであろう。
 彼の背後に現れた禍々しい気配に気が付かなかったのは……。


 そろそろ初夏と言っても良い4月のある日、『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)を始めとするリベリスタ達は、ブリーフィングルームで事件への対策を相談していた。
「なるほど、要するにちょっと変わったエリューション退治ってことね」
「ゲームが生んだ……エリューション・フォース? たしかにちょっと変わり種ね」
 『龍の巫女』フィティ・フローリー(BNE004826)はやや怪訝な顔を浮かべている。異世界からやって来た彼女にとって、ボトム・チャンネルに降り立って久しいものの、その総てに精通している訳ではない。
 この度現れたのは、現在制作中のゲームのラスボスをモチーフとした戦士級のエリューション・フォースだ。製作者の想念が実体化したものであり、RPGに慣れた者にしてみれば見慣れた姿。闇の衣を身に纏った悪魔――いわゆる魔王の姿をしている。ご丁寧に部下である騎士たちのオマケ付きだ。
「で、たしか弱点があるって話だったよな。えーっと……」
「このゲームの設定に近い相手と戦うと戦闘力が落ちるみたいです。生まれからすると無理もない習性ですね」
 戦い慣れなかった蒼嶺・龍星(BNE004603)に対して、神谷・小鶴(BNE004625)が説明をする。エリューション・フォースは思念が生み出した存在だ。それ故に他のエリューションよりも生まれに縛られやすい傾向がある。
 このエリューションの元となった「ゲームの魔王」は「勇者の一行」に倒される存在だ。それ故に「勇者の一行」、あるいはその姿を模したものが現れれば、自然と力を減じてしまうのだ。
「幸い、資料はあります。これを元にすれば、どうとでもなるでしょう」
 顔色一つ変えずに雪白・桐(BNE000185)は淡々と語る。
 よくよく見ると勇者一行は、「男1人とその他は女性」という構成だ。元が成年向けゲームなので些か仕方ない所か。
「踏み込むのは夜になりそうですね。見た所、入るのは難しくなさそうですし、人もいないようです」
 水無瀬・佳恋(BNE003740)は事件の起きるゲーム会社の資料を確認している。少なくともリベリスタであれば、侵入するのは難しくない。現場にいるのは被害者となるライター本人位のものだが、当人は仮眠ですっかり寝こけている。多少の物音では現れまい。
 リベリスタ達を阻むものは無い。割と思うままに戦うことが出来るはずだ。
「それじゃ、魔王退治と参りましょうか!」
 冗句めかした口調と共に、セレアは仲間達へと笑みを向けるのだった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:NORMAL ■ リクエストシナリオ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年05月16日(金)22:05
リクエスト、ありがとうございます。
8回逃げる、KSK(けー・えす・けー)です。
今回はベタな魔王と戦っていただきます。

●目的
 ・エリューションフォースの撃破

●戦場
 とあるゲーム会社のオフィスです。エリューションは一旦ビルの屋上に移動しているので、そこを攻撃します。
 足場や灯りに不自由はありません。

●Eフォース
 ・『魔王』
  巨大な黒い影のような形をしたEフォース。フェイズは2。1体います。
  ゲームの展開に沿った流れには従おうとするという習性を持つ。
  能力は下記。
  1.凍てつくような波動 神遠範 ブレイク、威力は低め
  2.衝撃波 物遠複 ノックB、ショック
  3.崩し無効

 ・魔界騎士
  黒い鎧に身を包んだEフォース。フェイズは1。数は10体います。
  ゲームの展開に沿った流れには従おうとするという習性を持つ。
  能力は下記。
  1.斬撃 物単近 出血

●特殊ルール
 ゲームの設定にあわせて、勇者(男性)+女性陣、というパーティーで挑むとエリューション達は弱体化します。コスプレ等を行ったり、それっぽい台詞回しを行う必要があります。
 生物学的な性別はあまり関係無いので、その辺はお好きなように。
 また、「ゲームの設定」に関してはお好きに決めていただいて構いません。フォーチュナよりシナリオの内容は渡されて手元に資料はあると思ってください。
参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
ハイジーニアスデュランダル
雪白 桐(BNE000185)
ノワールオルールマグメイガス
セレア・アレイン(BNE003170)
ギガントフレームデュランダル
水無瀬・佳恋(BNE003740)
ジーニアス覇界闘士
★MVP
蒼嶺 龍星(BNE004603)
ジーニアスインヤンマスター
神谷 小鶴(BNE004625)
ハイフュリエソードミラージュ
フィティ・フローリー(BNE004826)


「こんばんは、魔法使いです! マグメってファンタジーの魔法使いそのままっぽい戦い方できるから楽でいいわよね!」
 深夜の公道で『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)は、魔女の衣装でくるりと身を翻す。金色のツインテールが風に舞い、マントがふわっと浮き上がる。
 この光景を見た者は何と思うのであろう。
 6人の男女(あえてこう言おう)が夜の街の中、ファンタジーRPGから出てきたような格好でうろついているのだから。
 正統派ヒロインな女剣士、貧乳女魔法使い、凛とした女騎士、色っぽい踊り子、ボンテージファッションの女悪魔とより取り見取りだ。
 9割9分の人間が何かしら頭で理屈をこじつけて、見なかった振りをすることだろう。残りの1分は神秘関連の人間だと判断し、相応の対応を取ってくるはずだ。
「さてさて、ゲームの魔王だって? そりゃ、倒すしかないよな! 勇者として!」
 どこか硬い口調で皆を促すのは蒼嶺・龍星(BNE004603)。まさしく天国のような状況であるわけだが、山籠もり修業が長かった彼は女性に対しての免疫が無い。ドギマギしてしまうのも致し方ないだろう。
 そこ代われという言葉をぐっと飲み込んで説明すると、彼女らも好き好んでこのような格好をしている訳ではない。全ては世界を崩界から防ぐため。エリューションを倒すために、確実な手段を取っているからだ。や、彼女ら間違いなく楽しんでいると思いますけど。
 まぁ、「彼女ら」で一括りに出来ない人もコスプレ勢の中に紛れている訳ですが……。
「え? もう1人男がいるって? いや、居ないだろ? どう見ても周囲は美少女揃いじゃないか! この中に男性が居る訳ないじゃないか!」
「……私が女性役しかもヒロイン枠とか何の嫌がらせかと」
 ことさらに強調する龍星の横で、雪白・桐(BNE000185)はふぅっとため息をつく。
 龍星は自分がヒロイン役をやらされたくないから必死で否定するが、桐はれっきとした男だ。国内神秘業界に詳しいものに聞いてみれば、悔し涙と共に肯定してくれるのではないかと思われる。多分、言われなきゃ気が付かなかった。
 そして、桐は真意を悟らせず無表情のままで周囲を見渡す。辺りは千紫万紅、様々なタイプの美女が並んでいる。
「こんなに美人処が揃っているというのに……あ、でも皆性格に難はありますが」
 閉月羞花と言えば聞こえは良いが、多分月は逃げ出しただけだろう。
 この手のゲームで一癖二癖あるヒロインが揃うのもお約束であるが、まぁそんな女性が揃っているのも事実ではある。
「どうしたの? 暗い顔してちゃダメダメよ?」
「お姉さま、やり過ぎはいけませんよ」
 踊り子姿の神谷・小鶴(BNE004625)が桐に抱き付く。
 彼女扮するキャラクターは、桐の扮するヒロインの実の姉。作中においても、ヒロインに百合っ気たっぷりに迫るシーンがあるとかないとか。そこにかこつけて、絡んでみたりしている訳だ。
 とは言え、
(ほら、ライトで最終的なゲーム進行の邪魔にならない程度な百合成分も需要あると思うの?)
 と心の中で言い訳している辺り、何のかんので状況を楽しんでいるのは間違いない。
 その一方で、『龍の巫女』フィティ・フローリー(BNE004826)と水無瀬・佳恋(BNE003740)の表情は暗い。
 フィティは肌を青白く染めて、付け角に翼という、いわゆる悪魔のような姿でどこかもじもじとしている。ボトム・チャンネルを訪れて久しいし、この世界の常識だって十分に身に付けている。とは言え、恋愛の経験などは無い。上手く演じられるかは不安なのだ。
「女優の知り合いには『手を握られたら顔を赤くするの』なんて言われたけど、上手にできるかな……?」
 バックストーリーを確認したり、演技を確認したりとやるべきことは色々あるのだ。
「リベリスタとして仕事をするのに、よもや、このようなことを経験しようとは……」
 佳恋の方はやや重傷。
 アレインから資料としてゲームを紹介されるまでは良かったが、割と有名なトラウマゲーム。欝エンドの嵐に心はダウン寸前だ。
 しかし、いつまでも凹んでいる訳にはいられない。戦いの場になれば気を切り替えることが出来るのが一流のリベリスタと言うものだ。
「いえ、今回、私達がやるのはそういう話ではないのですね。事前に教えていただいた台詞だけ、できるだけ自然に使うように頑張ろうと思います」
「そうね。それっぽい動きも大切だけど、敵はエリューション。戦闘もきちんとね」
 フィティも決意を固める。
 その時奇しくも、予定されていた襲撃時間が訪れる。
 顔を見合わせるリベリスタ達。
「さぁ、世界を救おうじゃないか!」
 そして、剣ならぬ拳を構えた勇者、龍星の号令一下。リベリスタ達は、いや勇者一行は魔王の元へと向かうのだった。














 屋上に現れたリベリスタ達が目にしたものは、現世に降臨した『魔王』の姿だった。
 ベタ、と呼ばれればそれまでかも知れない。しかし、丁寧にイメージされたそのエリューションから発せられる威厳は、紛れもなく魔王――ラスボスにふさわしいものだった。
「魔王、お前が全ての戦いの元凶。だから、あたしは戦う。彼と未来を見たいから!」
 しかし、フィティは臆すことも無くエリューションに向かって啖呵を切った。
 人間と魔族の戦争でどちらに付くのかを決められなかった娘、というのが彼女の役どころ。勇者の説得で魔王を倒して戦いを終わらせるために戦うという設定だ。恋愛を知らない彼女は、その心中まで想像して演じることは出来ない。それでも、彼女なりに戦いの中で見てきたものはある。
「よく来たな、勇者たちよ。だが、それもここまで。愛などというものが虚しい戯言だということを知り、絶望しながら冥府へ落ちるが良い」
 エリューションがスッと腕を振るうと、取り巻きのエリューション達が一斉に槍を向けてくる。
「世界のためにぶっ潰してあげるわ。べ、別に勇者なんかどうなってもいいんだけど!」
 対するセレアはべったべたなツンデレ台詞と共に薄い胸を張っている。あざといすら軽く通り越した流れだが、彼女のエロゲ観はそのようなもの。まぁそもそも、この話を生み出した想念自体が「ベタなストーリー」であった訳で。
『あの女、まな板だよな』
『まな板にしようぜ』
「ムキー! そこ、黙りなさい!」
 敵方のエリューション達が茶々を入れてくる。オーバーアクション気味に叫び返すセレア。エリューション達はある意味でリベリスタ達以上にゲームの設定に縛られた存在だ。それが吹きこぼれでもしたのだろう。とかく難儀な生き物である。
 それを尻目に、佳恋もまたエリューションに臆することなく彼らの前に出る。破壊の神の如き戦気が覆う彼女は、たしかに女騎士の役にはまっていた。手持ちの防具を改造して中世の鎖帷子を模した作りにしていた訳だが、その姿は本物以上に本物だ。
「平和のため、そして貴方のために、私は戦います」
「私のことを救ってくれたあなたのためだものね」
 「セクシーで積極的だけど心の闇を抱えている」という役割を演じる小鶴も蠱惑的に笑って見せる。自分の心の闇を払ってくれた主人公に惚れているというキャラクターを、彼女は艶然と演じた。
 その様に龍星はこの流れが演技であることも忘れて、一瞬顔を赤らめてしまう。これも役割を演じた結果であるのなら大したものなのだが、残念ながらこれは違う。
「行きましょう? それとも、ここまで来て怖気づきましたか?」
 桐が演じるのはただ待つだけのヒロインではない。
 背中を預け合って、憎まれ口を叩いてしまうようなタイプだ。
 その言葉に咳払いで気を取り直す龍星。
「こっちは任せて」
 桐は短く言うと、大剣を手に敵の群れの中へと切り込んでいく。場にもふさわしく、敵の特性にも合致した上手い動きだ。これからの戦いにも不安は無い。
 ただ、龍星が何かに目覚めないかだけが心配である。


 一斉にかかってくるエリューションの騎士たち。
 リベリスタ達も応戦をして、剣戟が激しく響き渡る。
「させるかよ!」
 数に勝る相手を抑えるように、龍星が立ち塞がる。命を賭してヒロインを庇うのは勇者の特権であり、男の子の責務だ。好感度も上がるし、大変重要な役割なんである。
 しかし、そんな龍星をセレアは決意の表情で止める。
 勇者の一撃こそ魔王を倒せる唯一の武器なのだ。割と他のアタッカーがさらっと持って行ってしまうことはあるが、それでも勇者が戦うということが大事であり、お約束なのだ。
「ここはあたし達に任せて魔王をぶっ倒してきなさい!」
「……解った。だが、皆で生きて帰るんだからな! 死ぬなよ!?」
 一度は言ってみたい台詞の上位ランカーを応酬するセレアと龍星。
 仲間の言葉に龍星は一気にエリューションへと突き進む。その際に取り巻きのエリューションの動きが鈍ったのは気のせいではないだろう。この手の展開に弱い連中なんである。ゲームの選択肢にもそういうのあったし。
 そして、残ったメンバーに取り巻きが襲い掛かって来るより早く、セレアは呪文を完成させた。
「天よ地よ、火よ水よ……我に力を与えたまえ! マレウス・ステルラ!!」
 大仰な詠唱と共に鉄槌の星が降り注ぐ。
 如何なるものをも破壊する極大の魔術だ。設定上では「ラストダンジョンに出てくる敵」のエリューションもそうそう太刀打ちできるものではない。
 それを皮切りにリベリスタ達は、取り巻きのエリューション達に斬りかかる。
 両の短剣で素早く空を切り裂くフィティ。
「つくづく退屈させない世界ね」
 彼女が斬り付けるのは何も無い空間ではない。『時』そのものだ。
 その凄まじい速度は『時』すら斬り、氷刃の霧を生み出す。霧はまるで氷の龍のようにエリューション達を呑み込み、凍らせていく。
 「ゲーム」のノリでやっていても、その効果は格別だ。先手BSマジゴッド。
「たしかに。戦闘も割と真面目にしないとね?」
 派手に舞いながら小鶴が呼ぶのは氷の雨。
 氷の嵐は止むことなくエリューション達を責め立てる。その中にあって、中心にいる踊り子がどこか寂しさを感じさせるのは気のせいか。リベリスタに必要なのは演技力と言う話もあながち間違っていないってもんだ。
「はいは~い。勇者様もしっかりしないと、その子寝取っちゃいますよ♪」
 小鶴は色っぽく笑う。
 相手の反応を見て楽しんでいるのかも知れない。問題はどちらの反応をか、という所であるが。
 龍星はコホコホとわざとらしく咳き込むと、「魔王」に向けて炎の拳を叩き込む。そう言う意味でも勇者の素質はたっぷりである。
 一方、視線を向けられた桐の反応はと言うと軽く頷くだけで簡単なものだ。もっとも、彼なりには返しているのかも知れないが。ともあれそのまま、桐は大きく大剣を振り回す。巻き起こした烈風はエリューション達をみるみる吹き飛ばして行くのだった。
「ハッ!」
 そして、佳恋が殲滅の闘気を込めた白い長剣を振り下ろすと、リベリスタ達を取り囲んでいたエリューション達は全て消え去る。
「ふはははははは。なるほど、たしかに今までの部下共が敵わなかったのも無理も無い。だが、愛の力など我が前では無意味」
 ベタベタな台詞と共に、高笑いを上げるエリューション。
 恋愛が絡んだゲームだとその辺に言及しなくてはいけないのが、この手の生き物の性である。でもまぁ、そこで照れがあっては彼の商売は成立しない訳で。
 そう、彼も棒立ちで高笑いしているだけが能の生き物ではない。リベリスタ達の攻撃の勢いに気付き、凍てつくような波動で加護を打ち消しにかかってくる。ボス戦だとルーチンの変更を行う奴はまま見受けられる。ものによってはゲーム機の中に悪魔が住んでいるとしか思えないような代物もある訳だが、閑話休題。
 しかし、そんなことはリベリスタ達だって百も承知。
 攻略本があるからって訳じゃない。元より、「世界を護る勇者」なのだ。この程度の攻撃で引っ込んでやる程、彼らもお人好しじゃない。
 小鶴が清楚な印象を与える踊りから、天に祈りを捧げるような仕草を行う。
 すると、辺り一面に小さな翼が降り注いでいく。
「ム……これは……!?」
「白い翼を背負った正義の戦士が魔王にトドメを刺す、とか絵になるから『それっぽい』演出になりそうでしょう?」
 エリューションが周囲の変化に気付く。小鶴が我が意を得たりとほくそ笑む。
 この場において最も有効なのは、「物語におけるベタな展開の空気」を作ること。言ってしまえば、「勝ちフラグを立てる」という奴だ。
 小鶴は今、それを為した。
 慌てて衝撃波を放つエリューションだが、それは最早リベリスタ達の勝利を加速する役しか果たさない。
 その炸裂を華麗に躱しながら、フィティは夜の闇の中を翔ける。彼女の神秘的な美しさも相俟って、魔族の娘が戦う姿そのものだ。そして、エリューションに肉薄すると、双剣から無数の突きを繰り出す。
 光の飛沫が舞い散り、エリューションは攻撃の狙いを定めることすらままならない。
 そこに向かって真っすぐ白鳥の羽根を思わせる剣を振り下ろすのは佳恋だ。その一撃は美しくもあり、同時に何者をも畏怖させる破壊の一撃。
 思えば何を悩む必要も無かった。古今東西を問わず、戦士の在り方など変わりはしないのだから。
 たまらず吹き飛ばされるエリューションを待ち受けていたのは桐だ。使い慣れた得物の調子を確かめるように軽く素振りをすると、タイミングを計るようにして柄を絞る。
 無造作に振ったように見える刃がインパクトする瞬間、桐の限界を超えた力が解き放たれる。
「ば、馬鹿な……この私が……」
「ベタベタね、それも悪くは無いけど……決めちゃって!」
 あまりの威力に動きを止めるエリューションに向かって、セレアは星の雨を降らせる。
 遠慮会釈の無い大盤振る舞いだ。並みの術師なら長い詠唱を要する呪文だが、彼女は一瞬で完成させてしまう。
 そして、衝撃の煙が晴れた時、エリューションの前には掌に神気を蓄える龍星の姿があった。
「君が……君達が! 俺に力をくれる。
 だから俺は……絶対に負けないんだァァァァァァァッ!」
 龍星の手がエリューションを掴むと同時に、破壊的な気がエリューションの全身を巡って行く。これに耐える耐久力は最早エリューションには残っておらず、爆発四散する。
 そして、気の放出を終えた龍星は仲間達に向かって微笑んだ。


 戦いの後始末が付いた所で、ようやく龍星は一息ついた。
 エリューションと戦うのだって初めてな訳ではない。ただ、この状況は女慣れしていない彼にとっては負担が大きかった。
 そんな姿を見て、セレアは悪戯っぽく笑う。
「あ、蒼嶺君と雪白さんの名前でホテル予約しといたから!」
「ハッ!? 何だそれ!?」
「お城のようなホテルよね。疲れてるでしょうし、ゆっくり休んでくるといいわ」
 小鶴も追随して笑いをこらえながら、とんと肩を押す。
 戸惑う龍星だが、その腕を桐がそっと取る。
「早くいきましょう?」
 そして、スタスタと腕を引いて歩き始める。
(普段着に着替えるのにちょうどいいですね)
 桐はそんなことを思っている訳だが、そのようなことは誰にも聞こえない。
 夜空に龍星の悲鳴が木霊するのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『ベタなゲームは宜しくない話』のリクエスト及び参加、ありがとうございました。
皆様の発注とプレイングの結果、このような物語と相成りました。
お気に召していただけたのなら幸いです。

MVPはオチを持って行った蒼嶺・龍星様に。
いや、良い主人公っぷりでした。

それでは、今後もご縁がありましたら、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!