●殺戮者の巣 廃ビルに小さな影が駆け込んだ。 キキ、キキと喉を鳴らす影は1m前後。人と比べれば小さく、けれどその顔に類似した……従来のネズミと比べれば非常に大きい。 エリューションビーストであるこのネズミは、つい先程まで集団でリベリスタと交戦し、仲間が駆逐される中唯一逃げ出した一匹であった。 文字通りネズミ算式で増える存在、逃げ延びれば再び地上を制圧する機会もあろう……そんな大それた野望を抱え、潜伏先を探す。下水に逃げ込んでしまえばこちらのものだ。自分のホームならば人間など敵ではない! 「キキ、キキキキキ――!」 掃討される仲間を見捨て、必死に逃げ延びたことも忘れ笑うネズミ……ふと、その耳に聞きなれない音が届いた。 歯車、電子、駆動音。そういった音であるとネズミが理解できるはずもなかろうが…… 「――キ?」 間の抜けた音がネズミの喉から零れる。それがネズミの発した最後の音となり、最期に見た光景は―― 周囲の壁から生え出た無数の砲身。銃弾、閃光、その残滓。 ●襲撃者の列 エリューションビースト掃討の任についていたリベリスタたちが廃ビルの前に立つ。逃げたネズミが街に入り込まないよう回り込んだため至急の確保とはいかなかったが、街外れの廃ビルへと追い込むことに成功した。 そして突入――のタイミングで聞こえたビル内の激しい音に足を止めた。ネズミとは比べ物にならない何かがいる…… どうするかとメンバーが顔を見合わせたところでアクセス・ファンタズムに通信が入った。 「ビル内部を破壊するだけの簡単なお仕事デースよMiss.Mr.リベリスタ」 特に他意はないよと『廃テンション↑↑Girl』ロイヤー・東谷山(nBNE000227)が通信映像の中でほがらかな笑みを見せ。 「ネズミ掃討任務は無事シューリョー、最後の一匹は廃ビルの中で蜂の巣デースね。オツカレサマーと言いたいところデースが、このまま別の任務をお願いしマース」 それは当然、廃ビル内のことだろう。 「現在廃ビル内が機械のようなアザーバイドの巣となっていマース。外敵を葬り去ることだけを考えるキリングマシーン。意思の疎通は不可能でショー」 ビルを外側から壊すのは目立ちすぎるし時間がかかる。内部に突入し出現するアザーバイドを倒すしかないが…… 「大量のネズミ退治ということで経験より若さ重視でメンバーを構成しマーシたが、強力な敵と連戦させてしまって……アーでも勢いや機動力としてはいいのカモ?」 ぶつぶつ一人ごちていたロイヤーが胡乱な視線を感じ、ソーリーとウィンクひとつ。 「アザーバイドは数種類存在しマス。特徴を纏めたデータを送信しマスので確認してネ」 アザーバイドの親玉を倒すまで無限に湧く部下マシーン。それら全てが備え付ける、一定距離以上からの攻撃を無効化する強力なバリアー。特筆すべきことはいくつもあるが、なんとかなるよと笑いかけ。 「振り絞れるものは振り絞って、勢いでいくとこは勢い任せ。リベリスタたちの知恵と勇気に期待しマース」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年05月05日(月)23:12 |
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■メイン参加者 4人■ | |||||
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●駆動エレクトロニック 人の寄り付かぬ街外れの廃ビルのフロア。その場に人がいれば、鼻を突く匂いに眉をひそめただろう。焦げた匂いは中央に転がるエリューションビーストの焼死体から発せられていた。 本来ならば夜の静寂が広がる廃ビルのフロアは、異音によって支配される。歯車、電子、駆動音――この地を支配するのは機械の群れ。錆鉄の鈍い輝きが織り成す危険は、全身を穿たれ爆ぜた死体が物語る。 休息の必要もなく臨戦態勢を崩さない防衛者たちは、未だ見えぬ侵入者を待ち受ける。見えずとも、わかるのだ。この廃ビルは彼らの支配地。足を踏み入れた獲物の存在を感知して、鈍鉄の砲身は唸り声を上げた。パキパキと鳴る歯車が不気味な笑みを連想させ。 もうすぐ、来る。足音、気配、空気の揺らぎ。獲物が近い。砲身を向ける。近い、近い、獲物が―― 「――東側に熱源が2つなのです」 そんな声が奥で響いた。そして、瞬きほどの間を置かず影が躍る。 ――ッ!? 機械……のように見えるこれらはアザーバイドだ。故にある。意思がある。迷い込んだ獲物に舌なめずりするような獰猛さも……それらが牙を剥きだした獣であった時の驚愕も。 砲身が照準を合わせるより早く風が駆け抜けた。暗闇の中を刃が躍る。両断された鈍鉄のそれはあっさりと床に転がって、その衝撃で駆動音が鳴り止んだ。 「ボクでもなんとか壊せた……」 「弱点をつかれた脆さは情報通りですね」 フロアは広い。本来ならば入り口から瞬時に駆け抜け斬り捨てるなど不可能な話。……彼らでなければだ。 「困ったものですね、ネズミを追いかけてロボを相手とは。ですが出来る限りの事はしてみせましょう」 ほっと息を吐く少年の肩を『御峯山』国包 畝傍(BNE004948)が叩き促した。初任務に緊張する仲間に指示を出し、手にした刀はすでに先の敵に向け。 戦場を全力で駆け抜け力を振るう。それらを得手とする彼らこそアークリベリオン。戦場を狭しと躍動する若き力だ。 「はい、よろしくお願いしますっ!」 気負いの中に奮い起こした勇気を見せ付けて『ノットサポーター』テテロ ミスト(BNE004973)が気勢を上げた。その様子に目を細め、柔和な笑みを浮かべる。 自分が戦った分だけ仲間の危険が減るのなら、出来る限りの事はしてみせよう。 ――少なくとも。私が倒れようとも皆が無事でありますように。 呟いて、畝傍が再び身を躍らせる。 「北の壁で2つ、砲撃準備なのです!」 突入前と同じように熱源を感知し、駆動音を拾い……自身は担当である西の壁へと走りながら『星雨』九・亜美(BNE004876)が叫ぶ。その言葉を受け、少女は華奢な肢体を正面へと向けた。手にした細剣を頭上に掲げれば、速射砲台が胡乱げに少女へと照準を合わせ。 「ロボット砲台にも意志があるようですね……貴方達の相手は私です!」 不動を思わせる構え。静は即座に動へと転じ……貫き徹す意思だけが残る。『蜜蜂卿』メリッサ・グランツェ(BNE004834)が細剣を下げた時、すでに機能を停止した2つの砲台が床に転がっていた。 一方亜美は向かう先に敵がまだいないことを確認しながら、何ごとかぶつぶつ口にしている。 「……飛んじゃダメ、ダメなのですよ……」 フライエンジェの亜美が自身の翼に言い聞かせるように自己暗示中。室内で広げた翼は行動阻害どころか的にすら成りえるので仕方ないね。そのまま暗示でぐるぐる回る怪しい瞳で自己ブーストのかかった身体を突き動かす。 「さあ色々いっぱいやるですよ」 リベリオンの2人のように壁から壁へと移動攻撃を届かせれない以上、神秘に精通する彼女は、それを弱点とする敵が現れるこの西側にとどまる必要がある。だからとただ待つつもりもない。吐息を小さく紡げば、鮮やかな光が具現化する。瞬きの間に消えたそれが、メリッサの元に傷と消耗を癒す祝福を届け。 消耗はもう大丈夫かと目で問う亜美に、メリッサが感謝の意を表す。 「連戦とはいえ、まだまだ余力は十分。増えるものがネズミから砲身に変わっただけですから」 再び駆動音。壁から生み出される砲身に、鋭い刃と眼差しを向けて。 ●噛合ギアホイール 北の壁に新たに生え出た砲身は4つ。素早く照準を合わせる砲台に、メリッサは悠然と構えを向けた。防御結界を展開し一定距離外からの攻撃を無効化する砲台が相手では、メリッサの突きは2台を相手取るのが限界のはずだが……その狙いは凍りつかせた表情からは何も読み取れない。 踏み込みは一瞬。体重移動すら確認させずメリッサの高速の突きが瞬く間に砲台を2つ突き刺した。そして、もう2つ。 砲台にとっては有り得ないこと。前方にいた2台はともかく、その後方にいた自分達にまで攻撃の手が届くはずもない。なのに現に、その身に迫る強烈な突き―― 音もなく貫かれその機能を停止した彼らには、何があったかは理解出来なかっただろう。 「お見事です、国包様」 構えを解き振り向いた先で、表情を動かさないメリッサとは正反対に柔らかな笑みで畝傍が応える。 「上手くいってよかったですよ」 畝傍が気を練り上げ収束させた衝撃波。神秘の爆風を伴うそれは、防衛結界に阻まれ威力こそ殺された。だが、その衝撃を無効化する力は結界にはない。メリッサが突進したのではない、砲台自身が衝撃波によってメリッサへと押し出されたのだ。 相対したわずかな時間で読み取り試す。その機転を見せ付けて畝傍が微笑んだ。 もっとも東の壁の敵とタイミングが重なればこの手は使えない。状況ごとの機転と能力が試されるこの戦場で楽観視は出来ないが…… 「北の壁はお任せを」 他の壁を仲間に託し、北の死守を少女は口にする。 「構え、突く。単調な動きでも速さを極めれば、千本の槍には程遠くとも、蜂の大群程度にはなりえましょう」 鍛え抜いたのは突き貫くただその一点。その剣の一刺しが敵を葬りさる。その一振りが敵を断つたびに、傷つく仲間を護る瞬きとなって―― その小さな背に、大きな意思を感じて畝傍が目を細めた。 2つの砲身に神秘の蒼光が宿る。その光は切り裂かれ崩れ落ちた砲身から容易く霧散したが――あくまで一方のみ。白銀の長剣で砲身を横薙ぎにした体勢のまま畝傍が仲間に注意を促す。 「――っ!」 畝傍に続き砲台を破壊せんと飛び出していたミストが慌てて防御を固める。ついで、その身を包む青い閃光。神秘の攻撃を苦手とするミストには手痛い一撃。痛みに耐えながら振ろうとした斧は動かない。その手が、動かない。 「ミストくん、無理はなさらぬように」 光線によって氷結したミストに代わり畝傍が続けて砲台を斬り捨てる。砲台より後手となるミストは、その特殊な光線によって動きを封じられていた。力を振るえない悔しさに歯噛みする。 (速攻で決めなければ、数の暴力で追い詰められていくかもしれないのに……) 敵の数は多くなお増え続け。倒しきれなければその人数差に圧倒されるだろう。ならばこそ、まさにリベリオンのボクに与えられた試練だというのに…… 「立ち位置に注意を」 声のした方向に目を向ければ、北の敵を破砕するメリッサの背中が映る。敵より先に動けぬなら、敵の攻撃を最大限生かさせぬようにと口にした。 「……はいっ!」 畝傍と距離を取る。2人ともが動きを制限される事態を避け、自分の力を思い浮かべていく。 やれないことがある。同時に、やれることがある。自分の最大の武器は、危険を察知する獣の特性。位置を探れ、連携しろ。仲間と合わせ、やれることを増やしていけ。無力と微力は違う。譲れぬ矜持を奮い起こせ! 身を衝き動かす熱がその体力を増幅させている。故にそう簡単には倒れない。その稼いだ時間を、無駄にしない。 「まだまだ実力不足、知恵を絞って切り抜けなきゃっ」 気を吐き出してミストが咆える。 錆び付いた歯車が噛み合う耳障りな音。巨大な砲台は特に大きな音をたて、特に大きな威力を備えた砲撃を開始する――その砲身に神秘の矢が飛び込んだなら、内側からの衝撃に頑丈な見た目を裏切ってあっさり瓦解してしまったのだが。 ぐっと拳を握り弓を下ろした亜美が次の敵の出現を探る。音を拾い熱を探知して出現を読むことが亜美の役目。 「お仕事です、お仕事するです。鼠狩りだと思ったらロボ退治……砲台はロボです?」 「ロボです」 疑問を浮かべる亜美ににっこりと音をたてて返事が返る。振り返った亜美が言葉の主に口を開き。 「あ、国包さん。ボク、回復は1人にしか出来ないので皆への回復をお願いしたいのです」 出来ない事をお願いするのは大事なのですと胸を張り、異世界の祝福を具現化させた。戦場を駆け回り力を振るう、畝傍の少なくない消耗が纏わりつく光に癒されて。 「心得ました」 頷き畝傍が回復した力の一部を注げば、気を練り溢れ出た生命力が室内を満たす。数の多い北からの速射、東からの神秘の光線。徐々に重なっていた仲間たちの傷を塞いでいった。 各方面から声が上がる。特に傷の深いミストが、軽くなった腕を振って斧を握り直した。 「次はアッチから来そうです! 注意なのです!」 もっとも息つく暇もない。わずかな音を拾って亜美が叫べば、東の壁から突き出す砲身。ミストがため息を吐く間も惜しんで飛び出した! 「どんな時でも突き進む! でも無謀な特攻じゃないっ!」 この突撃の結果が、仲間が傷つく運命を妨げるなら、その先にあるもののためにいくらでも! その背に祝福を届け、亜美が周囲を見渡す。激化する戦場、傷の増えていく仲間たち。 「あひる隊長、不安だけど……うー、頑張るです!」 回復支援に備え、異世界の妖精と精神を接触させて。 ●熱冷ラジエーター 確かな手応え、続く爆音。衝撃がミストの身を焦がす。傷つきながらも砲台を破壊し終えた彼の耳に、再度響く駆動音。確率で出現する以上、害意は連なることもある。 「くっ!」 急ぎ斧を振るう。だがそれより早く固定された砲身、ミストの身体を蒼の閃光が貫いた。 「わあ! 大変なのです!」 亜美が慌てて具現化させた異世界の祝福がミストを包む。だが戦闘を継続できる限界ラインを越えた身体は地に倒れ――伏すのを、必死に堪える。 「……まだ。ここで倒れたら数の差で押し切られてしまう……」 熱意は未だ体内を焦がし、運命を燃やして顔を上げた。追いつくように身体に纏わりつく祝福が傷を癒して。 「こ、のぉ!」 必死に振り抜いた斧が敵を四散させた。新手に目をやれば、そちらはすでに切り刻まれ。 「下がって! 傷が癒えるまでは任せてください」 砲台を斬り捨てて畝傍が指示を飛ばす。意識を失い生命エネルギーの増幅も途切れた現状、このまま戦闘継続しても敵のリーダーの登場まで持たないだろう。 「しばらくお願いします!」 素直に口にしてミストが安全地帯の入り口へと走る。自分は未熟だ。無理をせず回復を待つ方が、結果的に敵と長く相対できるだろう。悔しさを燃やして、体内に熱を灯しながら―― 「アザーバイドのリーダー出現までそう時間はありません。持たせますよ」 「合点承知! いのちだいじになのですよ!」 畝傍の言葉に亜美が応じる。互いに編み上げた癒しの意思、目標は全員無事に帰る事なのですよと口にして。 吐息が時間を刻んでいる。呼気に合わせて足音が響けば、ついで機能を停止した機械の残骸に床に転がった。 剣先が揺らぐ。細剣だけを見れば間合いを一瞬で無とするその踏み込みに反応できず絶命し、踏み込みに気を取られれば剣先はすでに身を貫いているだろう。愚直なまでに自分の戦闘スタイルを極めてきたメリッサの、その突きを見切るのは容易ではない。 「……時間がありません」 それでも。次々に生み出され溜まっていく敵の波に、メリッサが顎を引き目を閉じた。息を整え、顔の前に細剣を構え。 「メリッサさん、焦らないで――」 入り口で呼吸を整えるミストが叫ぼうとして――連続する剣閃に目を奪われた。踏み抜いた音を置き去りに、斬り捨てたという結果だけが後に残る。2つ貫き更に2つ。舞い躍った風が残骸を蹴散らして。 「すごい……」 ほぅと息を吐くミストを振り返らず、道を選び歩んだだけとメリッサが北に残る敵の掃討を始める。 「構え、突く。それが私の剣技、その全てです」 自分で選び繰り返してきたこと。故に、身についた技は彼女を裏切らない。彼女が出来ること――彼女の意思は、力は、自信と共に確かに宿る。 リーダーが出現するまで敵を残すわけにはいかない。再び自身の大技を繰り出さんとし……わずかに身じろいで、横目で亜美を見た。 「あー……大技使いすぎて消耗しちゃったのです?」 気力を癒す祝福を注ぎながらの亜美の言葉に、素直にこくんと頷いていたり。 カツッと小さな音。小さなヒビから亀裂が走る。瓦解は一瞬、神秘を込めた一矢は砕けた機械と共に地に落ちた。ふーと息を吐く亜美の身体にも傷が目立ち始めてきたことが、この戦場で短くない時間が経過した証拠だろう。 3分に満たない時間でも、命を削りあう戦いの中では十分に長い。その疲労は治癒だけでどうにかなるものでもないが……フロアを染める生命の光が安堵をもたらすのも事実だ。 振り返りお礼をしようとした亜美がびくりと身を震わせた。フロアの中央、床から抜け出るように突き出す異形。他の機械とは一線を画する存在であると一目でわかる。わかってしまう。 「わ、わわ。あ、あひる隊長~」 仲間との間を隔てるアザーバイドリーダーの出現。体勢を整える前に襲われたらと不安に思ったが、完全に抜け出るまでにもう少しあるようだ。 その間に北側で破砕音が続く。壊れた機械が地に転がったと同時に身を翻し、メリッサがリーダーに細剣を突きつけて。 「やっとお出ましですね」 「これを倒せなくては、意味がありません」 同様に、生命の光を満たし終えた畝傍もまた前に出る。長い戦い、傷は深く消耗は激しい。誰の身にも余力と言えるほどの力はない。手数も限られ手下を倒しながらの討伐は絶望的。 ならば…… 「攻めるしか道を切り開く方法はありません!」 それぞれが獲物を構え、中央へと飛び出した。 ●分解オーバーヒート 巨大な砲身を掻い潜るように懐へ。ここに来てもメリッサがやるべきことは変わらない。構え、突く。ただその一撃に、自身の全てを載せて。 「――フッ!」 呼気が舞い上がる。抉り貫き、先へと拡散する力の衝撃を一点へと纏め上げ。そのまま突き上げたなら、かかる重心に地を強く踏み抜いた。 照準が外れ鋼鉄の砲台がわずかに浮き上がる。宙で合わせようとするそれが、迫る白銀の輝きに染まった。映し出されたルーン文字が、赤く赤く描かれて。 業炎を伴う剣技が宙で避けえぬ砲身を斬り裂いた。身体全体を使った突進に、畝傍の身こそ炎の具現と思わせて。 2人の剣士が叩き込む最高の一撃に砲台がガタガタと怒りの音を噛み鳴らす。それに呼応するように、周囲の壁から中央へと掃射が開始された。 防衛結界に阻まれ仲間に害を与えない。それ故の遠慮ない砲撃に身を削られるも、足は止めない! 時間が敵の数を増やす以上、持久戦は最早ない。周囲の砲撃に削りきられる前に打ち倒す。魔弓を番え―― 「全力でー打ち抜くです!」 亜美の追撃がアザーバイドの崩壊を早めた。 「あと少しです、行きますよ!」 仲間を鼓舞し先陣を駆けるメリッサが砲撃を避けて剣を刺す。 だが隙のない弾幕に致命傷はまだ遠く、仲間たちの消耗は早い。 「きゃぅっ!」 蒼の光線に砲撃が混ざれば、亜美の身体が衝撃で吹き飛んだ。強力なコンビネーションに地に伏す身体を、運命が支えて。 「うーまだまだ! まだまだなのです!」 気合の一声で敵を貫く。畝傍の放つ生命の波が傷ついた身体を癒すが、もはや時間はない。 ――これで決めなくては―― 最高の一撃を決める。そのための隙を得られれば……メリッサの視界に、それが映った。 身軽な身体で宙を蹴る。全身の熱量を、躍動を込めて、手にした斧に渾身の力を載せて。 「……リベリオンは! 前進の中に活路を見出す事が出来るんだっ!」 ミストの全力がアザーバイドの砲身を叩き落す。体勢を崩し、歯車が耳障りな音をたてる。折れ曲がった砲身を怒りのままにミストを叩きつければ、力を失った身体が地に転がった。 それで十分。今できることをと満足に笑ってミストは目を閉じる。あとは、信じる仲間がやってくれる。 「感謝を」 ミストの意を受け、メリッサが踏み込んだ。この隙を、最大に生かす技がその身にある。 ――今ばかりは、この尽きることのない力に感謝しましょう。この身を削りきっても、私は倒れない。 「砕けなさいッ!」 一際高い音が、戦いの終焉を表した。 「終わりましたね……いたたっ」 リーダーの消滅は手下の消滅でもあったのだろう。アザーバイドのいなくなった廃ビルで、横たわるミストに差し伸べられた手。 「立てますか?」 メリッサに腕を取られ、必死に苦痛を隠してミストが微笑んだ。 「お疲れさまでしたなのです、チョコと飴ちゃんあるですよ♪」 あひる隊長を取り出して、ころころとお菓子を並べていく亜美に畝傍はにっこりと微笑んで。 「ちなみに私は、ういろーが好きです。さくらの」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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