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ミルメコレオ。或いは、空腹の獣。

● 空腹の怪物
巨大な影が木々をへし折りながら、森を抜ける。
 大きさは、5メートルを超えるだろうか。巨大な身体は鋼のような黒色で、その形は蟻のそれだった。サイズだけでも異常なものだが、なにより奇異なのは
その頭だ。
 金色のたてがみに、鋭い眼光。だらだらと涎を垂らしながら、そいつは吠えた。地響きのような大音声。頭はライオンそのものだった。
 本来なら獣の牙が並んでいるはずの口元だけ、蟻のような形状ではあるが、どちらにしろその外見が化け物じみていることに変わりはない。
 神話に出て来る空腹の怪物、ミルメコレオそのままの姿をしたそいつは、森を抜け、森林公園に現れたのだ。
 その異形を、始めに目の当たりにしたのは、公園で遊んでいた子供達だった。
 ミルメコレオと子供達、両者の動きが止まる。
 ミルメコレオが走りだす、その寸前。
 甲高い悲鳴と共に、子供達が一目散に逃げ出した。
「怪物だ!」「なにあれ!?」「先生に言いに行こう!」「信じてくれるかな?」「食べられちゃう!」
 叫びながら、半狂乱になって逃げて行く子供達を見送り、ミルメコレオはもう一度吠えた。ミルメコレオの爪や口の周りは血で濡れているが、彼の空腹が満たされることはない。
 ライオンの口で食った食物は、蟻の内蔵では吸収できない。
 加えて、彼は少々特殊であった。
 ミルメコレオが空気を吸い込む。それと同時に、なぎ倒された木々や、地面の土が彼の口内に吸い込まれて行く。
 いくら彼の口が巨大でも、到底収まりきれるサイズではない木々が、まるでブラックホールに飲み込まれるようにして、口内へ消えたのだ。
 無限の胃袋を持つ、飢えた怪物。そういう存在なのである。

● 飢えて……
「アザーバイド(ミルメコレオ)は、大層飢えているみたい。子供達を襲わなかったのは、餌として魅力を感じなかったか、追いかける元気がなかったか、或いは単なる気まぐれか……。とにかく、遭遇と同時に飲み込まれなかったことは幸運と言えるでしょうね」
 恐ろしい話だけど……、と『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は続ける。
「相手は食欲だけで動くような怪物で、そのうえ子供達は人を呼びに行ってしまった。これはつまり、そう長い時間を必要とせずにミルメコレオの眼前に、食料が現れることを意味するわ」
 今度こそ、子供達や、子供達の連れて来た者は食われてしまうかもしれない。
 そう考えると、あまりもたもたしている余裕はない。
 迅速に場所を変えるか、現場を封鎖し、ミルメコレオを討伐なり送還なりするしかない。
「ミルメコレオに言葉は通じない。ハイテレパスなどのスキルがあれば別だと思うけど。それから、Dホールはまだ存在しているけど、場所は不明。山の中のどこかでしょうね」
 ミルメコレオを説得できる確率は低いだろう。
 Dホール捜索、誘導の手間を考えると、送還も難しいかもしれない。
 かといって、無理に戦闘を続けると被害が拡大する可能性や、ミルメコレオ逃亡の可能性もある。
「ミルメコレオの生命力は高い。戦闘は長引くことを予想して。BSの回復も早く、攻撃力も高い。反面、素早い行動は不得手」
 上半身はライオン、下半身は蟻という異質な組み合わせから生じるバランスの不具合が、彼の行動を大幅に制限しているようだ。
「方法は任せるけど……、犠牲者が出ないように努めてほしい」
 そういってイヴは、仲間達を異形の怪物の元へと送り出すのだった。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年04月26日(土)23:14
おつかれさまです、病み月です。
皆さん、いかがおすごしですか?
すっかり暖かくなってきました。レジャーシーズン到来です。
怪物と一緒に、森林浴などいかがでしょう?
以下詳細。

● 場所
森林公園、及び森林地帯。
子供達の遊び場となっているため、ミルメコレオと子供達はすでに遭遇してしまっている。
公園は広く、木製の遊具なども多い。
森林地帯は、ミルメコレオの通った道なりに、木がなぎ倒されている。
森林のどこかにDホールがあるようだ。


● ターゲット
アザーバイド(ミルメコレオ)
上半身はライオン。下半身、口もとは蟻という異形の怪物。
鼻が良く、気配察知に優れる。
素早さが低く、生命力が高いという特徴を持つ。BSが効きにくい。
非常に飢えているようで、その飢えが満たされることは恐らくないだろう。
吸引力の高いブラックホールのような口と胃を備えている。
言葉は話せない。
【ブラックホール】→神遠範[悪運][呪縛]
範囲内の対象を、見境なく吸い込む。
【獅子の鬣】→神遠複[雷陣][ノックB]
たてがみから放たれる雷による攻撃。
【蟻の顎】→物近単[圧倒][致命][ブレイク]
鋭く、力強い顎で対象を噛み砕く。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ギガントフレームプロアデプト
鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)
ジーニアスインヤンマスター
赤司・侠治(BNE004282)
ノワールオルールインヤンマスター
赤禰 諭(BNE004571)
フライエンジェインヤンマスター
エイプリル・バリントン(BNE004611)
ハイジーニアスソードミラージュ
中山 真咲(BNE004687)
ジーニアスアークリベリオン
アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)
ジーニアスアークリベリオン
国包 畝傍(BNE004948)
フュリエアークリベリオン
スォウ・メモロスト(BNE004952)

●獅子の咆哮
 ゴロゴロと、それはまるで地上で鳴り響く雷鳴のようだ。
 雄々しいたてがみを靡かせて、獅子は吼える。しかしその顎は、大きな鋏の形状をしている。蟻や昆虫のそれだった。咥内には、闇が渦を巻いている。
 太く逞しい前肢。しかし顎と同様、腰から下は蟻だ。
 獅子と蟻とを合成したかのような外見。神話に出て来る怪物と同様の姿をしている。
 故に、ミルメコレオ。
 アザ―バイドと呼ばれる異世界からの来訪者だった。

●悪食な蟻
 公園の奥でミルメコレオが唸る。ぎろり、と血走った目を公園の入口へと向ける。入口付近に現れた8人の人影を、餌と定めたようで、地面に横たわっていた体をゆっくりと起こす。
 しゅるる、とミルメコレオの身体に気糸が巻きつく。ギシ、とミルメコレオの動きが止まるが、それも一瞬だ。力づくで糸を引き千切って、立ち上がった。
「バッドステータスが効きにくい? 効くまで撃ち込んでやればよろしい」
 そう呟いて、『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)は再度気糸を射出する。
「すまんが20秒稼いでくれ。成果は約束する」
 公園の入口で、じっと目を閉じる『凡夫』赤司・侠治(BNE004282)。彼を中心に、周囲の空間を外界と遮断すべく陣地の作成を急ぐ。
 それと同時に、『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)が結界を展開する。万が一にも、ミルメコレオのターゲットが、迷い込んだ一般人に向くわけにはいかない。 
 大口開けたミルメコレオが、周囲の遊具を手当たり次第に吸い込んでいる。まるでブラックホールだ。
「悪食ですね。手当たり次第口にして節操のない」
 やれやれと言う風に、諭は小さな溜め息を零す。
「侠治さんが狙われないように、庇わないとね」
 とん、と軽い足音をたててエイプリル・バリントン(BNE004611)が侠治の前に飛び出した。
 結界の展開と、陣地の作成を試みるが、その完成を待ってくれるミルメコレオではなかった。
 ドスンと鈍い音をたて、一歩前に足を踏み出す。
 それを迎え撃つべく、真っ先に飛び出したのは『アクスミラージュ』中山 真咲(BNE004687)であった。
「ライオンの怪物! かっこいい! けど、悪いけど倒させてもらうね。イタダキマス」
 真咲は剣を一閃させる。真空の刃がミルメコレオを襲う。ザクン、と鋭い音がしてミルメコレオの前肢に血が滲んだ。
 真空の刃に次いで、アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)が前に飛び出した。
「ほらほら、ここに肉があるぞ? ほら、こっちだっ!」
 ミルメコレオの視線が、アズマに向いたその瞬間。
 一瞬の隙をついて『御峯山』国包 畝傍(BNE004948)と『空色の飢獣』スォウ・メモロスト(BNE004952)が全力疾走でミルメコレオの眼前に迫る。
 蟻の顎が2人を襲う。
「誰かを救う為の力は、誰かを殺すためにあるのではない……」
「まっすぐいって、ぶっとばす!」
 ミルメコレオが口を開くが、それより速く2人の拳がミルメコレオの喉と眉間を捉えた。
 空気が震え、次いで鋭い衝撃がミルメコレオの身体を貫いた。ふわり、とその巨体が浮いた次の瞬間には、ミルメコレオは大きく後方へと弾き飛ばされていたのだった。

 ゴロゴロと地面を転がって、ミルメコレオはその動きを止めた。
 ゆっくりと身を起こすミルメコレオからは、数発攻撃を受けたことによるダメージなど窺えない。
 たてがみを振って、汚れを払う。
 いらついているのか、落ち着きなく前脚で地面を引っ掻いているのが分かる。その度に、地面に深い爪跡が刻まれる。
 ギシ、と何かが軋む音がする。
 ミルメコレオが、顎を限界まで開くと、咥内に広がるブラックホールが、じわりと口から溢れて見えた。途端、ブラックホールめがけて周囲の空間ごと、リベリスタ達は引き寄せられる。
 強烈な吸引力に、諭の召喚した影人が数体囚われ、ミルメコレオの咥内に消えた。
 動きの鈍いハンターなど、ハンターとしては致命的な欠点だ。
 しかし、ミルメコレオにとっては、自身の動きの鈍さなど餌を捉えることに対して、なんらハンデにはならないのである。
 自分が餌の元まで移動せずとも、ブラックホールによる吸引が、餌を自分の口まで引っ張って来てくれるからだ。
 ふわり、と。
 あばたの身体が浮いた。

「うわっ……!?」
 吸い寄せられたあばたの胴に、ミルメコレオが喰らい付いた。ギシ、と骨の軋む音がする。咄嗟に腕を間に挟んで、牙を防いだが、それもいつまで保つだろうか。機械の腕が悲鳴をあげる。
 血走った目が、あばたを見据える。 
 そのまま、あばたの腕を噛み砕こうと、ミルメコレオは顎に力を込めた。
 瞬間、ミルメコレオのバランスが崩れる。前肢に気糸が巻きついたのだ。顎に込められていた力が緩む。その隙にアズマの腕が、あばたの肩を掴んで、ミルメコレオの顎から引っ張り出す。
「オレ達の動きについてこれるかっ!」
 ミルメコレオは前脚を糸に縛られたまま、首を伸ばしてあばたを追うが、真咲の斧がそれを阻んだ。
「ほらこっち、キミの相手はボク達だよ!」
 叩きつけるような斧の一撃が、ミルメコレオを襲う。ミルメコレオは牙でそれを受け止めると、ぐるる、と唸る。たてがみが僅かに光っているのは、帯電しているからだろう。
 遠ざかるあばたとアズマ。正面に位置する真咲。接近してくる、畝傍とスォウを視界に捉え、ミルメコレオは眩い閃光と共に、雷撃を放った。

 真横からの落雷、とでも言うべきか。
 一瞬、何が起きたか分からなかった。まっすぐミルメコレオに向けて駆けていた筈なのに、気付いたら目の前に地面が見えていた。
 雷撃を浴びたのだと、スォウは理解する。
 だが……。
「神話の獣であれば、何も食う事が出来ないのでしょうが……さて。私の目の前のあなたはどうなのでしょうか」
 誰かがスォウの背を押した。頬を黒く焦がした畝傍である。
 スォウの背を力一杯、まるで投げつけるようにミルメコレオの方へと押し出したのだ。
 衝撃がスォウの身体を突き抜ける。地面に向かって倒れていた体の進路が、強制的に変更させられる。
 その瞬間、自分がまるで一本の矢になったように感じていた。
「足元、注意!」
 滑り込むようにミルメコレオの真横に駆け込むと、そのまま手にした斧を一閃させる。前肢を切断することには失敗したが、後ろ脚を2本、見事に切断してみせた。
 宙を舞う、太い蟻の脚。ミルメコレオが悲鳴をあげる。
「よし」
 と、畝傍はそう呟いた。

 間近で雷撃を浴びた真咲の身体が、ぐらりと大きく傾いた。
「おっと……あんまり無理するなよ?こんなやつに食われるなんてごめんだからな!」
 地面に倒れるその寸前、誰かの声が聞こえた気がする。
 次の瞬間には、体から失われていた生命力が回復するのが分かった。
 声の主は、そして生命力を分け与えてくれた者はアズマである。
 ダメージの大きかったあばたと真咲に、自身の生命力を分け与えてくれたようだ。感謝の言葉を述べるより先に、真咲は斧を振りあげた。
「おっと、危ない」
 ミルメコレオの首元に、斧での一撃を叩きこみ、真咲は素早く後退する。
 ミルメコレオが大口を開けて、ブラックホールのような咥内を晒したからだ……。

 ブラックホールから逃れるべく、皆一斉に後退する中、エイプリルだけが弾かれたように前へ飛び出していた。
 全身にオーラを纏い、自身の身体能力を強化しているらしい。ミルメコレオの眼前に辿り着くと、力一杯、その眉間を叩く。顎が閉じ、ブラックホールの展開が中止された。
「残念ながら君の餓えを満たすモノはこの世界に無いよ!」
 振り抜かれたミルメコレオの爪が、エイプリルの肩から胸にかけてを切り裂いた。飛び散る鮮血を浴びたミルメコレオのたてがみが赤く染まる。
 一瞬怯んだエイプリル目がけ、ミルメコレオが飛びかかった。前脚だけで地面を蹴って、投げ出すように体を浮かせたのだ。
牙を剥き、襲い掛かるミルメコレオだが、その瞬間ミルメコレオの右目に何かが突き刺さった。
 ミルメコレオは悲鳴をあげて、地面に倒れ込む。いつの間にか、ミルメコレオを取り囲むように無数の鳥が展開していた。
「陣地の作成は済んでいるよ。私も君らの頑張りに礼を以って応えねばな!」
 無数の鳥は、侠治の式符が変じたものだ。彼の指示に従って、鳥達は一斉にミルメコレオに襲いかかった。片目と片側の後ろ脚を失ったミルメコレオは、まともに動く事は出来ない。回避できない、とそう悟ったのか、ミルメコレオは再度たてがみに雷を貯めて、鳥の群れに向けそれを放った。
 閃光と、地面が揺れるほどの振動、雷撃が暴れまわる。
 鳥の群れは、ミルメコレオに命中する前に全て焼き消されてしまった。
 しかし……。
「これでいい」
 と、侠治は笑う。
「本日のお勧め、砲弾の盛り合わせです。ああ、御代はお気にせずに食べ放題ミンチになるまでお代わりは十分です。さっさと砕けて地面の染みに成り果てなさい」
 いつの間にか、ミルメコレオを囲むようにして重火器を掲げた影人たちが展開していた。諭の合図1つで、影人達は一斉に砲弾を放った。
 四方八方から、ミルメコレオに襲いかかる弾丸の嵐。
舞い散る土煙りの中に、ミルメコレオの姿が消えた。
 その様子を遠目に見ながら、エイプリルは小首を傾げた。
「たしか、聖書においてミルメコレオは物事に二股をかけてはならないという戒めの象徴だったかな」
 日曜のミサはさぼりがちだったらしい。
 言い伝えの怪物を思いながら、彼女は鉄扇を取り出し防御の構えをとった。

●飢えた獣
 土煙りの漂う中、暫しの静寂が訪れる。
 しかしそれも、一瞬の事。土煙りを破って撒き散らされた雷撃が、周囲に展開していた影人を撃ち抜いた。影人だけではない。ミルメコレオと距離を詰めていた、他のリベリスタ達も雷撃に打たれて、その場に膝を突く。
 ゆらり、と煙が揺らめいた。
 次の瞬間、煙は一瞬でミルメコレオの咥内に吸い込まれていった。ブラックホール。動きの止まっていたリベリスタ達も、一斉にミルメコレオの元へと引き寄せられる。
 先の一斉砲火が効いたのか、ミルメコレオの身体は既にボロボロだった。まともに動く事もできないのだろう。前肢で上半身を起こしてはいるが、足元は不安定でおぼつかない。
 だからこそ、恐ろしい。
 手負いの獣ほど厄介なものは、他にないのだから。

 ふわり、と真咲の身体が浮いた。
 ミルメコレオに吸い寄せられているようだ。鋭い牙と、底の知れない真っ黒な咥内がすぐそこに迫る。冷や汗を零し、襲い来るであろう痛みに備えて、目を閉じる。
 だが……。
「誰かを救うための力を……」
 そう呟いたのは、畝傍である。ミルメコレオの咥内に、アームガードに覆われた自身の拳を叩きこむ。一瞬、ブラックホールの吸引が途切れた。
 畝傍と同時に駆けて来たのか、スォウの斧が旋回。ミルメコレオの首元を打った。厚いたてがみに覆われた首に、傷を付けることは叶わなかったようだが、ミルメコレオを後ろへ大きく弾き飛ばすことには成功した。
「こっちは、行き止まり!」
「……待っててね、あとでまた遊んであげるから!」
 追撃を加えるべきか、それとも後退するべきか。
 一瞬躊躇した末、真咲は一度撤退することにした。

 地面に数度叩きつけられながら、ミルメコレオはたてがみに雷を貯める。
 視界は定まらないが、めちゃくちゃにその雷を解き放とうとした瞬間、ミルメコレオの身体になにかが纏わり付いた。
 無数の黒い人影。諭の召喚した影人だ。
 影人の隙間から、鳥の群れが襲いかかる。こちらを召喚したのは、侠治だった。
 雷撃をその身で受け止め、影人と鳥は焼き消される。力強い前肢で地面を捉え、ミルメコレオは大きく前に飛ぼうとその身を浮かせた。
 だが、しかし。
 ミルメコレオの右足を、一羽の鴉が撃ち抜いた。
 ミルメコレオの左足には、気糸が巻きついている。
 エイプリルとあばたが、ミルメコレオの動きを止めた。
「それじゃあ、思いっきり斬り刻むよ! ボクに美味しく食べられちゃってね!」
 動きの止まったミルメコレオに、真咲が飛び付き斧を振るう。
 血の滴を撒き散らしながら、ミルメコレオは真咲の胴に喰らい付いた。ギシ、と鈍い音が鳴る。真咲の骨が軋んだ音だ。罅くらいは入ったかもしれない。
「これで終わりだ! もう腹が減ることはなくなるぜ」
 ミルメコレオが、真咲に喰らい付く顎に力を込めた、その瞬間。
 ミルメコレオの脳天目がけ、刀による一撃が叩きこまれた。
 刀の主はアズマであった。
 一瞬、ミルメコレオはアズマを睨み……。
 そして……。
 そして、がくり、とその場に倒れた。

 ミルメコレオは、地面に横たわったまま何度も口を開閉する。
 何かを喰らおうとしているのだろうが、すでに動く力すら残っていない。
 空腹感に苛まれたまま、ミルメコレオはこの世を去っていくのだろう。ごぽり、と血の泡を吐きだして、そのまま永遠に動きを止めたのだった。




■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。空腹に苛まれた獣の討伐、完了です。
ミルメコレオ討伐依頼は、無事終了です。
いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけたなら幸いです。
それではそろそろ失礼します。

縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。