●『が』 その少女の美貌を喩えるに足る言葉は、詩的表現に終始するには浮世離れし過ぎており、現実的表現に纏めるには余りに惜しい代物だった。 だが、何時の世にも「浮世離れ」は世界との断絶を示す隠語として用いられることを、我々は知っている。故に、彼女は尋常ではない。だが、その事象が『そんなもの』で済まされるほどに彼女は美しい。 彼女に言い寄るのを止める理由としては、それは余りに希薄な動機なのである。 影から逃げるように必死の形相で彼女の背を、文字通り『影』が追う。淀みなく群がるそれは、一つにして総体であり、総じて分かれ再び群がる不定形。粘性は無い。影に質量はないからだ。 逃げる少女の足を捉えようとしたそれが、巻きつき、引きずろうとし、結果少女から奪ったものは、靴だ。 裸足のままに逃げる少女を遠巻きに眺め、影の背後から更に人影が続く。 少女と似通った体躯、似通った衣装に袖を通した、褐色の肌の青年が。 ●妖怪乳粥よこせ 「で、この子の外見は」 「ウェディングドレスを着たド白人ですね。アザーバイド『スジャータ』。元の世界に戻る手段はどうやら先の映像で脱げた靴が必要とのことですが、生憎と彼女を追って現れた別のアザーバイドに奪われたらしく。彼女を送還させることを最終目標とする以上、あれらを討伐することを第一にしないといけないわけですけど」 「この子は保護して穏便に返したい、と。お前はそういう訳か」 「そりゃ、ほうぼうに喧嘩売りまくってもいい事ありませんからね。できるならそうしたい、というのは偽らざる本音です」 ただでさえ抱えている案件は少なくないのだ、と『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000202)は首を振る。アザーバイド一体の生死で世界全てを敵に回す訳ではなかろうが、穏便な関係を築く事は決して悪いことではない。 「それに、美少女は保護されるために居るのですよ」 「珍しい。お前が気障なこと言うとか」 「気障とは心外な。アザーバイドの少女と聞くと、こう……ほっておけないんですよね。何故か」 癪の虫の据わりどころでも悪いかのような表情で顔をしかめた彼を見て、リベリスタの幾人かは察したように頷いた。特に大きな意味は無いのだろうが。 「兎に角です。『スジャータ』の靴を奪ったアザーバイドは、決して靴だけが目的で彼女を負っているわけじゃない。影型の『シェード・シェイド』、及び人間型の『ダーカー・ブルーム』を撃破するか、撃退するか。どちらにせよ彼女の靴を奪い返すことが前提になります。恐らくは後者が所持しているでしょうし、靴自体の強度は高いから問題ないと思います。追っている理由なんですが」 「うん」 リベリスタが相槌を打ってから、たっぷり数秒夜倉は間を空けた。言いにくいことでもあるかのように。いや、実際の所言いづらい話だったが。 「『スジャータ』と『ダーカー・ブルーム』の痴話喧嘩です」 「は?」 「褐色の恋人なんて嫌だって」 「おいやめろ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:風見鶏 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年04月26日(土)23:13 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● ――こっちに来い、俺の仲間が守ってやる! 「――、~~~~~」 住宅街との接続点に新たに設えられようとしている新しいランドマーク。地域活性化の予兆を感じさせる大型の建設現場に据えられたハロゲンライトの電源に手をかけ、『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)は裸足で駆ける少女、スジャータの意識下へと声を投げかける。共有言語を持たないアザーバイドに大して意思疎通を行おうとするならば、彼らには斯様な手段しか存在しない。尤も、言語どころか思考の根幹すら異なっていた場合、この手段は水泡に帰すのが定説となっているが、幸いにして彼女はそうでもなかったようだ。発音こそ異界のものだが、その実おっとりとした調子でこちらへ謝意を交えた期待を寄せているのが理解できた。 彼の姿見を認識していないが故の安心感なのは悲しいところだが。 「やーねー、もう。カレーでも食べて仲良くすればいいのに」 ところで、影継が一定の信頼を以て誘導する先の『本気なんか出すもんじゃない』春津見・小梢(BNE000805)は言動が既にすげぇ方向に向かっているのだけど実際これは大丈夫なのかなって真剣に心配する。 彼女の主張は割と何時も似たようなもので、カレーの布教さえ出来れば人生の八割が勝っていると豪語しかねない人物だ。仏陀にすら断食明けにカレーを振る舞えばと、とんでもない持論を展開し始めた時点でなんかもう色々心配だ。 「全く以って痴話喧嘩とは嘆かわしい」 「そういうのもアークの仕事になるのか……」 アークのいいところは神秘に対して一切の妥協がないところで、悪いところは節操が無いところであるともいう。仕事は選べないので、『月虚』東海道・葵(BNE004950)とアズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)の微妙な絶望感漂う言動に関してはこの上ない愉悦を感じる。もっとだ、もっと呆れろ。 彼らのそんな態度(というかノリというか)は既にスジャータも目ざとく察していたようで、異界の言葉を用いながら此方側の言葉を思考に乗せて返す彼女の態度は、既に警戒感たっぷりだった。すげぇなこの保護対象、最後まで疑念たっぷりで終わりそうだぜ。 ――俺は褐色で影っぽいかも知れんが、彼女らは信用しろ! 『結構な無茶を仰ってるじゃない! 褐色なんだからアレの知り合いなんでしょう! 騙されないわよ!』 文章のシェイプも兼ねて同時通訳で進めます(超個人的なメタ談話) ここまで物分かりの悪いお嬢様だとは、よもや影継も思わなかっただろう。かと言って彼女一人が全部悪いわけでもないが、まあ四の五の言ってる暇もない。周囲の配線を確認済みだった彼は、彼女に追いすがる様にして現れた影へとハロゲンライトを照射する。 夜闇に於いて、影というのはこの上ない隠蔽要素だ。だが、このような形で光を受けた場合、其の姿を激しく露呈させる要因に変化する……沼か池を彷彿とさせる膨大なサイズ感を伴って現れたそれは、光を受けて瞬く間にサイズを縮めていく。だが、成人男性一人分のサイズまで縮んだ所で、其の中からずるりと一人の人影を吐き出した。 驚くべきは、そんな移動方法を採ったアザーバイドなのだが、今更何を言っても無駄無きがするのでどうでもいい。 「褐色の、男の人……いい身体で、顔も悪くない」 唐突な出現ながら、全く気負いすることなく現れた『ダーカー・ブルーム』に視線を向けた『空色の飢獣』スォウ・メモロスト(BNE004952)は、そんな彼を拒絶するスジャータが酷く不可解だった。 見たところ、姿見に欠点らしい欠点はない。確かに恋人一人を捉えるのに……痴話喧嘩の延長として、そんな影を連れ歩く時点で実に重要な部分が欠け落ちている気がするが、問題はそこではない。 恵まれた体躯にこの上ない容姿。スォウが羨むに十分な要素を持っている彼を頑なに拒むスジャータの考えは、彼女には理解できない。 「褐色の人が恋人じゃ何がダメなんだろう?」 彼女には、というか。『アメジスト・ワーク』エフェメラ・ノイン(BNE004345)も同様の疑問を抱えたことを考えると、女性的には割とメジャーな疑問だったのかもしれない。フュリエだから、というわけではないだろう。 彼女らなりの純朴さは、しかし男女の俗なやりとりに関しては関知するに遠いメンタリティではある。あるが、この件はそれ以前の問題であると思う。いや割とマジで。 「犬も喰わないのは夫婦喧嘩だっけ。じゃ痴話喧嘩はなんだろう?」 そもそも痴話喧嘩なら付き合っていた経緯があるはずで、きっかけも分からず一方に対してなんぞやと問うことも難しい。果たしてそれにより付きたくない時は何を引き合いに出せばいいのか、『愛情のフェアリー・ローズ』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)は割と真剣に考えたが答えは出なかった。当然である。 スジャータは必死に何事か話しているように見えたが、能動的に意思を伝えているわけではない為かリベリスタ達がどんな会話をしているのか理解できない。 ただ、まあ……ここに恋人の類を持つリベリスタが居たらおそらくは、その会話の様子から理解できたのではないだろうか。 「よくわかんないけど、喧嘩はだめだよっ!」 『……………!!』 「オレの名はアズマ! 姓はウィンドリスタ! アンタにゃ恨みはないが、推して参る!」 呆気にとられた様子から、エフェメラがいち早く立ち直り得物を構える。其の様子に触発されたアズマもまた、手にした得物を握りこみ、まっすぐに前を見据える。相手の意図など理解できないが、今理解できるとしたらただ、目の前の相手を何とかするべきだという義務感、ただそれだけだった。 ● 「みなさん、かいふくはおまかせくださいっ、ですっ!」 影継を筆頭に、各々の役割を理解し布陣を組んだリベリスタ達の後方で、『さぽーたーみならい』テテロ ミミミルノ(BNE004222)が気勢を上げる。 駆け出しのりベリスタを数名、布陣に加えた中での戦闘においては、如何に彼女らを倒れさせずして戦闘を進めるか、如何に優位に立つか、が趨勢を左右する。そういう意味では、彼女の役割は常よりも重大であり、意識して動かなければならないのは事実であった。 ハロゲンライトによりその面積を大きく制限されたとはいえ、影の挙動は光を浴びる前よりもいきいきとしているようにすら感じられた。悪い方には推移してないだろうが、決定的な優位にも立ち得ない。面倒な相手である。 「まっすぐいって、ぶっとばす!」 だが、相手の特性が何だろうが徹底的に対抗して打ち負かすのがアークのリベリスタというもので。愚かしい程にまっすぐにスォウは前進し、思い切りよく斧を振るう。彼女との接触の瞬間に、影は其の姿をすり抜けたように見えたのだが……スォウの気魄が一瞬勝ったか、その一撃を避ける事が出来ず距離を取る。その感覚野の隅に反応するのは誰あろうスジャータであり、その前に立ちはだかるのは小梢の役目。 「カレーの御光を今ここに、ばーりやぐふっ」 どこから取り出したのか、そもそも武器なのか。“大きなカレー皿”を構えてスジャータの前に立ちはだかった彼女は、影の長射程の一撃に腹部を抱えた、俗にいう腹パンの格好だが、アークきっての耐久度は伊達ではないらしい。事も無げに戦場に復帰する其の姿は、ある意味ホラーですらあった。……“制圧型防弾カレールー”がなかったら死んでいた、とはのちの彼女のコメントである。多分。 「悪いな、吹っ飛びな!」 得物を大きく振り上げ、あらん限りの力を込めてアズマは影へと刃を叩きつける。だが、相手もさるもの。そう何度もまとめて攻め手を受けまいと身を捩り、その一撃をするりと抜ける。 続けざま、“ローズワイヤー”を振るう葵が影に肉薄するが、互いの姿が掠め過ぎ、決定打を与えた感覚は無い。当てはしたが、浅い。彼女らの実力ではなく、その特性が厄介だと改めて認識する程度には。 周囲に視線を向ける男――『ダーカー・ブルーム』は、影を弾いて迫ろうとするリベリスタ達に視線を向け、その目的を理解する。そこからの行動は至極早く、手にした異形の杖を地面に叩きつけ、泥人形に命を吹き込む。 瞬く間に葵とスォウの前に駆け、その動きを遮った泥人形の威圧感は未だ駆け出しの段階にある二人に緊張感を与えるには十分すぎる威圧感。気を抜けば、倒れかねないという恐怖は言葉にするのも惜しい程に重い。 力あるリベリスタと戦場を共にしているという安心感。下らない動機から始まった諍いの始末という脱力感。それらを一瞬にして吹き飛ばし、自身が培ってきた些細な戦闘経験を総動員してやっと目の前の相手が『危険だ』と理解するに足る状況。 血が沸騰し呼吸が乱れ、意識すらも音もなく手放してしまいかねない状況は、正しく恐怖と呼ぶに相応しいクラスの状況である。 「力づくなのは良くないし、みんなを痛めつけるのも……困るよ……」 だが、勢いづいた泥人形が彼女らに一撃を加えんとした直前、暗中の工事現場を突如として凄まじい密度の悪意が吹き荒れた。上天の月すら霞む凶兆がそれらの『偶然性』に悪意を灯し、その在り方をひっくり返そうとする。 言うまでも無い。アンジェリカによって展開された不幸の象徴は、影も纏めて、強くその勢いを増して吹き荒れる。 「カチカチ凍っちゃえっ!」 それに追随するように放たれたのは、『キィ』と『メァ』を指揮し、零下の空気を従えたエフェメラの一撃。ともすれば味方を巻き込んで致命的な状況に追い込んでしまうその力の脈動は、それを的確に操ることを企図した彼女の意志力により、徹底して対象を絞り込んで傷めつけることを可能としていた。 「吹っ飛ばすだけが芸だと思うなよ!」 泥人形に足を止められた二人の分、働かねばならないのは残されたアズマにほかならない。得物の規模からは想像できない反射速度で影に追随する姿は、実力としてそれに一歩及ばずとも、引き剥がせず、近づけずの状況を作り出していた。 新たにアークが手に入れた力の体現は、彼女の行動に正しく方向性と力を与え、苛烈な戦いを可能とする。 ミミミルノにも、スジャータにも近づけさせない。姿を捉えられぬのなら、弾き返し追いすがる。前に進み、時に退き、血を吐くほどの苛烈な戦闘に身をおきながら、正しく彼女はアークリベリオンとして、その戦いを先導していたのだ。 ときに、この激戦の最中で動きの見えない人物が一人、存在することを記さなければならない。 守りの要が小梢だったとするなら、攻めの要は間違いなく『彼』だったろう、と思うほど印象深いその男はその戦場を睥睨しても見当たらない。 さて、ここに超自然的視力(有り体に言うと幻想殺し)をお持ちの御仁が居ればその様に瞠目したことだろう。スジャータへと向かわんとした影すら、それに気付くことができなかった。 ――恋人を率先して傷つけるのは紳士じゃないぜ? 『無礼な、誰かッ!?』 何処からともなく流れ込んだ声に、弾かれたようにダーカーは杖を構え、後ずさる。だが、その声の主は後ずさった彼の更に後ろから、するりと音もなく顔を出す。 言うまでもなく影継なのだが……戦闘の最中に突如として物質透過で身を隠し、ひたすらに彼の背後に移動するタイミングを伺っていたとするのならその根性と隠密性は大したものである。寧ろ、同じ意の名を持つ影すら欺いたあたりに、その根性が垣間見える。 ――靴を寄越してくれたら、俺達の方でスジャータを帰らせよう 『わからんのか!? あの娘はそう気易い女ではない! 立場を分からせ屈服させなければ理解もせんのだ!』 典型的なDV夫みたいなものを見た気分になり、其の言葉の意味を理解できない女性陣でも何となくクるものを感じていた。あれはアカン男だと、交戦の手を止めてゾッとする程度には。 「じょーかしますですっ!」 だが残念なことに、ミミミルノはそういうものを理解するには幼すぎた。戦闘の流れが滞った時、回復手は使える術数に正比例して選択肢が増える。ここで彼女が選ぶべきは、駈け出しの面々の能力を底上げし、戦況をいち早く此方に傾けることである。 戦闘に余裕が生まれれば、個々人がやるべきこと、やりたいことが見えてくる。それを切り拓くのが彼女の役割でもあるのだ。姉に追いつくには、それも何より重要で。 「全力、全開!」 自信が身を叩いた。ミミミルノの術式が、声援として背中を叩いた気がした。だからスォウは、吐き出した呼気と共に得物を振り上げ、まっすぐに突き進むことが出来る。 アンジェリカの初撃で動きを鈍らせていた泥人形の頭部に、彼女の斧が食らいつく。ぎりぎりと音をあげて食い込んだそれは、頭を切り落とすことこそ敵わずとも、其の首を叩き折るほどの膂力を開放する。 戦闘の感触が生々しく意識を叩く。他者へ向けた破壊力がそのまま、自信の華奢な身を苛むことを知っていても、戦場の興奮はその足を前へ向けさせるのだ。 葵もまた、眼前の泥人形へとワイヤーを向ける。感触は固く、気を抜けば自らの指ごと引きちぎってしまうのではないかと錯覚するほど。だが、物理的常識は神秘存在には到底追いつかない。研鑽した技術、その微細な調整が直接的なダメージとして泥人形を苛み、徐々に彼女の優位へと傾けていく。ワイヤーを振り上げ、高く掲げた両腕をそのままに、彼女は自らの身を放り出すようにして泥人形へ食らいつく。それを人形たらしめる神秘エネルギーを引きずり出し、自らのものとする吸血鬼の髄の業。 数多の革醒者が通った道を沿うように、吸い上げたエネルギーを開放するようにして蹴り飛ばした泥人形へと、振り下ろされたワイヤーが襲いかかる。 ――恋人の暴言で腹が立つのは分かるが、女なんてそんなもんだろ! それで手をあげたら全部俺ら男が悪くなるんだから落ち着こうぜ、な? 『貴君は……貴君は何も分かっておらぬのだ……!』 『何よ野郎二人で盛り上がっちゃって、やっぱりアンタ褐色なんじゃない!』 …………はい。 つい数行前まで純戦だったのにいきなりこちらです。(メタ発言) 泥人形は四体くらいまで出現数が確認されましたが、ダーカーの傍らで必死に説得を試みる影継に耳を傾ける形で戦闘どころではありませんでした、というやつです。 何時の間にか『貴君』とかすげぇ意思疎通できてるんだけどなんなのこの人。「なんで俺がリア充の再構築の手伝いしてるんだろう」って雰囲気が感じられるのに超必死。見ていて涙がこぼれてくるよなんなの。 あとスジャータ。何が酷いってこの発言が酷い。やっぱ悪いのこいつなんじゃねえかって、聞こえてるなら思うだろう。大体みんな。 「ところで、スジャータは何で褐色の肌が嫌いなのかな? ボクはチョコレートみたいで好きなんだけどな」 「褐色? うん、カレーは美味しいよね! 肌? 男? いやそれはどうでもいい。すべてはカレーなのだ」 言葉が通じないのはなんのその、小梢とアンジェリカが口々に褐色とはなんぞや、好き嫌いとは一体なにかという哲学に挑戦している気がするのだが、彼女ら褐色って話題の主体に好物持ちだした時点で言葉よりも分厚い壁を自分から作りに行くチャレンジプレイをおっ始めているのですがこれはなんだろう。人形が動き出すからやめろよ。 『そもそもアンタもアンタよ! なんでいきなりそんな肌になってんのよ!』 「……ん?」 『逞しいのがこうとか言い出した貴様が! 装いを変えた私を唐突に、露骨に嫌いだしたのだろうが!』 何処と無く雲行きが怪しくなってきた所を、輝く笑顔で見守るのはエフェメラである。上位世界出身だから彼らの言葉が分かります、というチートは無いが、雰囲気があからさまに痴話喧嘩し始めているのでもうこの楽しい空気が嬉しいのだろう。 尋常じゃない笑顔でことの成り行きを見守っている。 取り敢えず何か、このままだと終わらない気がするのだが、その拮抗を誰か止め、 ぱぁん。 唐突に放たれた乾いた音が、戦場に静寂をもたらす。音の発生源はダーカーの頬と葵の平手。いつの間にか収束した戦闘を理解して、いち早く彼に近付いていたようである。 「好きな女を泣かすのは男とは言わないのです」 メイドらしく『躾』に終始し、言葉が通じぬなど何のそのといった様子で踵を返す様子に一同、声もない。 ――夫婦喧嘩は犬も食わねえぜ、二人して帰ろうか、な? 何処と無く哀愁の漂う影継の説得が、この事態に幕を引いたことは言うまでもないが。 何というかその、彼のフォローが出来る男が居なくてほぼ女性っていうこのリベリスタの布陣は本当に、悲惨だ。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|