下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






アガシオン。或いは、使い魔の目的。

● アガシオン
 ある遊園地で起きた異変である。広大なチューリップ畑が目玉のこの遊園地は、この時期客で溢れ変える。そんな客達は、しかし皆、顔色が優れない。
 原因は、彼らの肩や頭の上に浮かんでいる奇妙な小人であろう。
 それは、半透明の身体をした小人だった。頭にはターバンを巻いている。下半身はなく、絵巻物で見る幽霊のように透けていた。
 その手には、如雨露を持っている。満面の笑みを浮かべ、半透明の小人は嬉しそうに通行人の肩に取り憑く。
『主様主様。ご命令を』
『なんなりと申し付けてください』
『主様。ご用命を』
 口々に、取り憑いた通行人へ命令を求めるが、しかし返事はない。
 一般人には、彼ら小人の姿は見えていないのだろう。
 そんな半透明の小人が、この遊園地には無数に飛び回っていた。そして、小人に取り憑かれた者は皆、次第に生気を失っていく。
 何かしら、生命力のようなものを奪われているのだろう。
 すでに意識を失っている者も居る。意識を失った者から、小人は
離れどこかへと飛び去って行った。次のターゲットを探しに行ったのだろう。1人に対して、複数の小人が取り憑いている場合もあるようだ。
 生命力を奪った小人は、他の個体より一回りほど大きくなっているように見える。
 彼らは使い魔。生命力を糧に、主の命に従う使い魔だ。アザーバイド
(アガシオン)という。
 アガシオンを、遊園地に解き放った者が居る。

● 従属する存在
「アザーバイド(アガシオン)は、何者かの命令を受けて園内に散らばっているみたい。その何者かは現在不明のまま。アガシオンに取り憑かれ、生命力を奪われたものは、数時間ほどで死に至る」
 淡々と、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は事実を告げる。
 楽しいはずの遊園地での一時は、アガシオンの登場によって一瞬で地獄へと変わってしまう。アザーバイドやエリューションとは、それほどまでに無関係の人間に影響を及ぼす。
「アガシオンの特徴として、まずE能力を持たない者には認知されない。それから、取り憑いた者の命令に従うようにできている。取り憑いている間や命令に従うたびに、宿主から生命力を吸い上げる」
 一般人は、アガシオンを認知できないため、ただ一方的にアガシオンから生命力を奪われるだけとなっているようだ。
 アガシオンの本当の主は、彼らを召還し使役する何者かである。
「アガシオンに出来る命令は、彼らを召還した本当の主の不利益にならないことだけ。主の居場所を聞く、などといった命令には従わないみたい」
 アガシオンに攻撃を仕掛けることは出来るようだが、その場合、宿主の生命力を使って、反撃してくる。
 限界まで生命力を溜め込んだアガシオンは、それを持って主の元へと帰って行くらしい。
「アガシオンは、電気を使った攻撃を得意とする。アガシオンの主がどれほどの力を持っているのかは不明だけど、十分に注意して」
 そういって、イヴはモニターを消す。
 主を失ったアガシオンは、恐らく解放されることになるだろう。
 遊園地の混乱を収束させるには、アガシオンの主を見つけ出す他ない。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年04月17日(木)22:49
おつかれさまです、病み月です。
暖かくなってきましたが、いかがおすごしでしょうか?
行楽シーズン。今回は、春の遊園地が舞台です。
それでは以下詳細。

● 場所
チューリップ公園がメインの遊園地。規模としては小さい。
家族連れやカップル、近所の高齢者がメインの客層。現在、ほとんどの客は意識不明か、混濁状態。そうでなくともまともに歩けないような状態である。
現場に駆けつけた警官や救急隊員も、アガシオンに取り憑かれている。
アガシオンを支配している、本当の主、が遊園地のどこかに存在する。

● ターゲット
アザーバイド(アガシオン)×40
主の命令を受けて「宿主を探し寄生。生命力を奪いながら命令に従う」という行動をとっている半透明の小人。
行動、存在するために宿主の生命力を必要とする。
集めた生命力は、限界まで溜まったら主の元へと持って帰るようだ。
雷を使った攻撃が可能。
基本的には宿主の命令に従うが、主の不利になるような命令には従わないなど、ある程度の制限がある。
一定以上のダメージを受けると、宿主から離れ逃走する。
【従属の雷】→物近単[雷陣][隙]
相手に取り憑き、放電する。
【放電】→神遠範[雷陣][ブレイク][連]
広範囲に向けた放電攻撃。

アザーバイド(主)
アガシオンを召還し、生命力を集めさせている何者か。
正体、目的、居場所など不明である。


皆さんのご参加、お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ノワールオルールソードミラージュ
ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)
メタルイヴクロスイージス
大御堂 彩花(BNE000609)
ジーニアスマグメイガス
百舌鳥 付喪(BNE002443)
ハイジーニアスマグメイガス
六城 雛乃(BNE004267)
ハイフュリエミステラン
エフェメラ・ノイン(BNE004345)
ノワールオルールインヤンマスター
赤禰 諭(BNE004571)
アウトサイドソードミラージュ
紅涙・真珠郎(BNE004921)
ジーニアスアークリベリオン
アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)

●使い魔
 チューリップの花が揺れる。うららかな春の日差しに包まれた、気持ちのいい昼下がり。
 ここはチューリップ公園を中心とした、小さな遊園地だ。
 そして地面には、数十名からなる人間たちが、折り重なるようにして倒れていた。
 それらの傍らには、半透明の小人が浮かんでいる。倒れた者達から、エネルギーを奪い取っているらしい。
『命令をください』
『ご命令を。なにか命令を』
 笑顔を浮かべながら、小人(アガシオン)が口ぐちに騒ぎ立てるが、意識が朦朧としている者達にはその声は届かない。否、元より彼らにアガシオンの姿は見えていない。
 自分達が何者に取り憑かれたのも知らないまま、ただただエネルギーを奪われ続けている。
 悲惨なその有様を見て……。
「なんだろう、これ……? 植物……でもないよね、なんだろ。すごく気味悪い……このままになんか、できないよ」
 冷や汗が頬を伝う。それを拭い『アメジスト・ワーク』エフェメラ・ノイン(BNE004345)は、そう呟いた。

●命を吸って
 アガシオンの飛び回る遊園地内に、リベリスタ達は散開した。アガシオンを操っている召喚主がどこかに居る筈だ。それを見つけ出し、止める事が目的となる。
「自分は姿を隠し、一般人から生命力を集める……。どんな目的でこんなことしてるかわからないけど、害をなすアザーバイドは退治しないといけないわね」
 倒れ伏した一般人を一瞥し、『そらせん』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)は唸り声をあげる。
「1人1人助けている余裕は無さそうね……」
 忌々しげにそう呟いて、ソラは再びアガシオンの主を探し始めた。

「遊園地にしてはタチの悪い遊びが流行っているようですね」
 倒れ伏し、今にも息絶えそうな客を助け起こしながらそう呟いたのは『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)だった。
「貴女、意識はありますか? あるのなら、アガシオンに『目の前の女性に宿主を変更』と命令してください!」
 辛うじて意識を保っていた女性に向け、彩花は言う。苦しげに、彩花の言葉を復唱する女性。途端、彩花の肩の上にアガシオンが移動する。
 ガクン、と彩花の身体を強烈な疲労が襲う。
 急速に生命力を奪われていくのを感じながら、彩花はまた、別の者を助けに向かう。

 他の個体よりも、一回りほど大きなアガシオンを発見し『イエローナイト』百舌鳥 付喪(BNE002443)はそれを追跡している最中だった。
「同じ年寄りとして。放置するのは嫌なんだけど」
 倒れた老人を一瞥し、溜め息を零す。
 第一目的は、アガシオンの主を見つけ出す事。
 そう考え、追跡と捜索を優先せざるを得ない。もっとも、リベリスタ全員がそう考えているわけでもないようだが……。
「ぼっちな思い出で悲しい気持ちになる前にお仕事片付けてさっさと帰るよ」
 ふよふよと浮遊していたアガシオンの身体を、魔弾が射抜く。
 魔弾を放ったのは『六芒星の魔術師』六城 雛乃(BNE004267)だ。遊園地にいい思い出がないのだろう。何事か、独り言をぼやきつつ、宿主のいないアガシオンを攻撃している。
 宿主のいないアガシオンを消していけば、被害にあう者も減るだろう。
 それぞれのやり方で、リベリスタ達は主を探す。

 遊園地の入場ゲートに腰かけて『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)は溜め息を吐いた。
「まったく馬鹿馬鹿しいですね。養蜂ですか? 手下を使って好き勝手、ひとり肥え太って豚以下ですね」
 結界を展開し、これ以上遊園地に人が近づかないように予防線を張る。それと同時に、ファミリア―で鳥を支配し、上空から園内を捜索していた。
「テーマパークが台無しですね。陽気の代わりに陰気を振りまく気なのか」
 地図を眺めながら、諭は再度、溜め息を零した。

「適度に人が集まる箇所で使い魔を使って目的のブツを回収。自分は身を隠しての、高みの見物とな。良い身分じゃの。まぁ、羨ましいとは思わんが。面倒事が、より面倒にならん様、さっさと潰すとするかの」
「オレの初陣はアザーバイドか……。結構、被害状況もヤバい、んだよなこれ……! クソっ、ビビッてられるか……やるっきゃない!」
「そうビクビクせんでも……」
 咥え煙草で園内を歩き回る紅涙・真珠郎(BNE004921)と、緊張した面持ちのアズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)は、メリーゴーランドの正面で遭遇した。
 互いに情報を交換し、現状捜査に進展はないことを確認した。
 再度別れて、捜索に戻ろうとした、その時だ……。
「「あ……」」
 2人の声が重なる。
 2人の真横を、明らかに他の個体よりも巨大なアガシオンが飛んでいったからだ……。

「臭いで追えりゃ楽でいいのじゃがの」
 巨大アガシオンの後を追いかけながら、真珠郎は言う。太刀に手をかけてはいるが、アガシオンの主を探すという目的がある以上、不用意に攻撃をしかけるわけにはいかない。
 生命エネルギーを限界まで集めたアガシオンは、召喚主の所へ戻って行くという。巨大なアガシオンは、すでに結構な量のエネルギーを集めている筈だ。もしかすると、主の元へ戻って行く最中かもしれない。
「っ……こっちに来るんじゃねぇっ!」
 真珠郎の背後で、アズマが叫んだ。振りかえった真珠郎が目にしたのは、こちらへ向かって一目散に飛んでくる、数体のアガシオンの姿だった。
 アズマは素早く拳を放つ。衝撃波と共に、アガシオンが背後に飛んだ。
 しかし、その隙にアズマの肩に別のアガシオンが止まる。生命力を奪われる感覚。それと同時に、アガシオンが全身から雷を放った。
「う、っぎ!?」
 全身を駆け抜けるビリビリとした衝撃。奪い取った生命力を使って、アガシオンは行動しているのだろう。
「あぁ、宿主に選ばれたということか……」
 刀を一閃。アガシオンを牽制しながら、真珠郎は後退する。
 正面からアガシオンと戦おうとしているアズマの首根っこを掴んで、巨大アガシオンの追跡を優先するようだ。
 巨大アガシオンは、どうやら遊園地の中央、チューリップ畑の方へと向かって行っているらしい。

 チューリップ畑の中央で、その男は地面に寝そべって空を見上げていた。顔色は悪く、目の下には濃い隈が浮いていた。黒いコートを着ているが、ぼろぼろだ。
 胸に下げたペンダントは、魔方陣の形をしている。
 そんな彼の元に、巨大なアガシオンが迫る。
 その数2体。宿主から生命力を奪い取り、主の元へと帰って来たのだ。
 そんな使い魔を迎えるべく、彼はゆっくり花壇の中から起き上がった。

「貴方がアガシオンの主ですか?」
 アガシオンの主と、彩花の視線が交差した。疲労が限界に近いのか、彩花は肩を大きく上下させ、荒い呼吸を繰り返す。
 彼女から生命力を吸い取り、成長したアガシオンが主の元へと帰還。彩花はそれを追ってきたのだ。彩花だけではない。
「貴方が主ってやつなのね・・・今の行為を続けるなら問答無用で退治させてもらうしかないわね」
 途中で合流したソラも一緒だった。他のメンバーにも、既に連絡済みだ。
『……何者だ?』
 と、主は問う。アガシオンを一瞥し、彩花とソラに視線を移す。
 そしてゆっくりと、反対方向に視線を向けた。
『仲間か』
 彩花とソラとは反対側に到着したのは、真珠郎とアズマである。
 たっぷりと力を貯め込んだ、巨大アガシオンが2体。しかし、それと一緒に厄介な者まで連れて来てしまったようだ、と主は思案する。
 時間をかけて、多くの生命力を貰いうけようと考えていたのだが、そうはいかないだろう。
『アガシオンよ……。我の元へ』
 ペンダントを握りしめ、主は唱える。
 次の瞬間、2体のアガシオンはまるで吸い込まれるようにして、主の持つペンダントの中へと消えていった。

 轟音、衝撃、砲弾がアガシオンを撃ち脱いた。
 諭は冷静に、生命力を求めて迫るアガシオンを迎撃し続ける。
「命令などありません。役立たずの玩具はさっさと死ぬのがお似合いです」
 命令を求めて接近してくるアガシオンに向かって、諭は冷たくそう吐き捨てた。
 諭の周囲には、アガシオンが無数に集まっている。影人を召喚し、迎撃の補助をさせているが、そろそろ面倒になってきた。
 さて、どうしようか、と思い始めた、その時だ。
 アガシオン達が、一斉に方向転換し、どこかへと飛んでいったのは。

 ペンダントを通じて、アガシオンが主の体内へと侵入していく。彼の身体を蝕む病魔を殺し、失われた生命力を補填していく。
 これこそが、彼の目的。
 自分の身体を蝕む病を治療する方法が、他者の生命力を集めたアガシオンを吸収する、というものだったのである。その為に、彼は別の世界へと渡って来たのだ。
 彼の住んでいた世界では、アガシオンを召喚できないと知ったから。
 だが、誤算があった。
 アガシオンとの同化が進むに従って、彼の意識は曖昧になっていく。病は治ったのだろう。
 代償は、自我を失うことだった。その事を、遅まきながら彼は知る。
 それと同時に、主の身体はアガシオンと完全に同化。半透明に透け、集めた生命エネルギーが肉体を破壊、主の身体はアガシオンのそれへと変化していくではないか。
 巨大な。
 5メートルを超えるほどの、巨大なアガシオンがその場に現れた。
「これが目的っ!?」
 そう叫んだのはエフェメラだ。主発見の報を受け、現場に急行してきたのだろう。矢を番えた弓を構え、鋭い視線をアガシオンと同化した主へと向ける。
「強そう……けど……だからって逃げるわけにも行かないんだよっ! ボクたちはリベリスタで、ボクは勇気をもらったフュリエなんだからっ!」
 エフェメラは、天に向かって矢を放つ。矢を中心に魔方陣が展開され、そこから無数の火炎弾が降り注いだ。アガシオンが放電するよりも速く、その身を火炎弾が貫いていった。

 主と同化した巨大アガシオンの元へ、遊園地内に散っていた他のアガシオンが集まってくる。アガシオンの胸にかけられたペンダントの中へ、次々に吸い込まれていくではないか。
 その度に生命エネルギーは蓄積され、アガシオンの身体も大きくなっていく。
 すでに、8メートルを超えただろうか。
「こんなになったら、目的を聞くどころじゃないね……まぁ、目的って言ってもどうせロクでもなさそうだけどね」
 杖を地面に突き立てて、雛乃はそっと目を閉じた。
 雛乃を中心とし、地面に巨大な魔方陣が描かれる。雛乃の集中に応じて、陣に魔力が蓄積。
 そして、蓄積された魔力は一気に炎と化して噴き出した。
「せっかく集まって来てるところ悪いけど、全体攻撃で消させてもらうよ」
 燃えさかる炎に巻かれ、主の元へ帰って来たアガシオン達が次々に消滅していく。それを見て、雛乃はよし、と拳を握った。
 そんな彼女の背後に、2体のアガシオンが迫る。
 そのうち1体が、擦れ違い様に放電。雛乃の身体が大きく震えた。
 巨大アガシオンの手が、倒れた雛乃に迫る。
 雛乃を庇うように、付喪が前に飛び出した。
「使い魔を解放して降伏するなら捕縛で済ませても良いんだよ? どうしてもやるってんなら、私も容赦しないけどね」
 手にした魔導書から、眩い閃光が走る。空中を駆け抜ける雷が、巨大アガシオンの腕と、ペンダントへと集まって来ている、小さなアガシオンを貫いた。
 遊園地内に散っていたアガシオンが、次々とこの場に集まって来ている。ペンダントにアガシオンが吸い込まれる度に、主アガシオンの身体は大きくなっていく。
エフェメラ、雛乃、付喪はそれを撃ち落とす作業に集中することにしたのだった。
 
●アガシオンと化した男
 ソラは、戦闘範囲内に倒れた一般人たちを、助け起こしてその場から逃がす。
 意識のある者達も、危険を感じたのか、ふらつく体に鞭打ってソラに続いてその場から離れ始めた。
「まったく、こんな場所で……。動ける人は付いてきて」
 動けない者が大半だ。周囲はすでに、仲間達とアガシオンの戦いによって散々な有様だ。ここはすでに遊園地ではない。戦場である。
 アガシオンの相手は仲間達に任せ、彼女は一般人の安全を確保することを優先するのであった。

「オレの名はアズマ、姓はウィンドリスタ!いざ、推して参る!」
 防御を考えない全力疾走。アズマが地面を蹴って、アガシオンの元へと飛んだ。アガシオンの放った雷が、アズマの身体を貫くが、アズマは止まらない。
 アガシオンに肉薄し、大上段に振りあげた刀を全力で叩きつける。衝撃波が吹き荒れ、アガシオンの身体を背後へと弾き飛ばした。
 すでに、召喚主であった男の自我は失われているのだろう。獣じみた形相で、アガシオンは吼える。
 アガシオンの全身から、雷が飛び散った。

 おっと、と一言。
 真珠郎は、雷を回避しその場にしゃがみこむ。
 片手に刀を、もう片手にはジャックナイフを構えて、地を這うように駆け抜ける。雷に打たれたのか、真珠郎の身体は火傷だらけだ。
 アガシオンの真下に潜り込んだ真珠郎は、素早く2刀を振り抜いた。キラキラと、光を反射させながら、一気に連続攻撃を叩きこむ。見る者が見れば、その芸術的な剣技に魅了されていたかもしれない。
 アガシオンが真珠郎の位置を特定したが、時すでに遅い。アガシオンの下半身は、すでにずたずたに切り裂かれていた。
『が……。俺の……邪、魔、を……』
 僅かに残った召喚主の意思か。擦れた声で、アガシオンは言う。
「黙れ。聞いたところで、この手の連中に好みの奴がいたためしが無いんでの。時間の無駄じゃ」
 アガシオンの言葉を遮って、真珠郎はそう吐き捨てた。
 手首を翻し、再度アガシオンに斬りつけようとしたその時。
 アガシオンの全身から、凄まじいまでの電撃が放出された。

「これでは近づけない……」
 拳を握り、唸るのは彩花だ。他の遠距離攻撃を持つ仲間達も、アガシオンに攻撃対象を移し変えたが、雷のせいで、効いているのか分からない。
 こちらに飛んでくる雷撃を、相殺するので精一杯だ。
 その直後。
 放電の隙間を縫って、アガシオンの拳が突き出された。

 雷を纏い、拳のラッシュがリベリスタ達に迫る。雷に阻まれ、アガシオンからこちらの様子は見えていないのだろう。狙いはめちゃくちゃだ。
 それ故に、軌道が予測できずにリベリスタ達もアガシオンに近づけないでいる。
 進退極まる、とはこのことか。
 始めにしびれを切らしたのは、彩花だった。彼女の片腕は鮮烈な輝きに包まれている。ここまで集中を重ね、限界まで力を貯め込んだ拳を、アガシオンに叩きこむために、彼女は駆け出した。
 そんな彩花の頭上を、炎の鳥が飛び越していった。
「別にすべて燃やして消し炭なら大差はないでしょう? 朱雀招来で綺麗さっぱり消し飛ばしましょうか」
 アガシオンから放たれる雷を、炎の鳥が焼き尽くす。
 そのまま、アガシオンの元へ。炎の鳥、朱雀を放ったのはたった今現場に辿り着いた諭である。雷に削られ、朱雀は次第に小さくなっていく。
 朱雀が消える、その直前、アガシオンの放つ雷の壁に、小さな穴をあけたのだった。

 諭の開いた雷の隙間に、彩花は頭から飛び込んだ。輝く拳を大きく振りあげて、憤りを込めたそれを、アガシオンの胸元、召喚主のペンダントへと叩き付けた。
 ガキン、と何かが砕ける音がする。
「これが私の、実力です!」
 魔方陣の刻まれたペンダントが砕け散る。ペンダントに集まっていた力が散って行くと同時に、アガシオンの身体が透けて消えていく。
 召喚主が死んだのだろう。呼び出された使い魔は、元の場所へと還るだけ。
 アガシオンが消え去った後、地面に横たわるのは真っ黒に焦げた1人の男の死体であった。
「あとは……要救助な一般人の人達がいたら救急隊員さんにお任せすればいいのかな?」
 遊園地には、生命力を奪われた一般人が倒れている。
 雛乃は一言そう呟いて、召喚主の死体に布を一枚、被せてやった。



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様です。
アガシオンを使って、自分の病気を治そうとしていた男の願いは自身がアガシオンと同化することで叶えられました。
男は死んで、アガシオンは送還されました。依頼は成功です。

この度は、ご参加ありがとうございました。
縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。