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バビロンの悪魔。或いは、大淫婦襲来。

● 大淫婦
 バスほどもある巨大な獣に乗っていた。7つの首を持つ、トカゲに似た獣だ。体中至る所から、鋭く太い角が突き出していた。
 その背に乗るのは、角に片腕を絡ませた美しい女性だ。真っ赤なドレスは、血臭を漂わせている。整った顔立ちに、美しい銀髪。艶やかな唇は、見るものを魅了せずにはおかない。
 きらびやかな装飾品で全身を飾り、片手に持った金の杯を煽る。ワインに似た、しかし恐らくワインなどではない禍々しい液体が、彼女の喉を滑り落ちて行く。
 街中、それも真昼間の道路の真ん中に現れたその異形。しかし混乱は起きていない。否、起きる暇もなかった。彼女の姿を目にした者は、老若男女問わず彼女に魅了されてしまったからだ。
 彼女の後ろに続いて、人々が列を為す。
 戯れに、彼女は1人の青年を近くへ呼んだ。悦び勇んで青年は彼女の元へと馳せ参じる。彼女はそっと青年の首筋に手を回すと、一瞬でその首を掻き切った。
 溢れ出る血を、杯に注ぐ。急速に血の気が引いていくのを感じながら、もうじき命が尽きるのを感じながら、しかし青年の表情は悦びに溶け切っているではないか。
 引きちぎった首の肉を食み、青年の身体を路上に転がした。
『我はバビロン。何者か知らないけど、見ているのだろう? 我の戯れに付き合うといい』
 バビロンは、空を見上げてそう呟く。口の周りを血で汚してはいるものの、それは見るものの心を捉えて離さない、まるで鎖のような微笑みだ。
『退屈しのぎに、せっかく遊びに来てあげたんだから』
 獣の背で寝転がり、バビロンはくすくすと笑うのだった。

●悪魔の誘い
「私たちの存在に気づいて、その上で喧嘩を売って来ているあたり、質が悪いわ」
 呆れたような、それと同時に困ったような顔をして『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそう呟いた。
 モニターに映ったバビロンの顔は、明らかにこちらを見ている。
「遊び目的、と自分で言っている通り、恐らく遊び感覚でこちらへやって来たのでしょうね。その能力は、E能力を持たない者を強制的に魅了状態にして下僕とすること」
 その結果が、街をほとんど丸ごと乗っ取っての行軍である。どこへ行くでもなく、ただリベリスタ達の到着を待っているのだろう。
 バビロンの乗った獣は見た目からして凶暴そうだ。一歩歩くごとに地面が揺れる。その後ろから、一般人が付いて来る。
 従えた一般人は、すでに100名を超えている。
「人ごみをかき分け、彼女の所に辿り着いて、討伐するなり追い返すなりをする必要があるわ」
 幸い、魅了状態にある者達の動作は鈍く、また一般人以上の力が出せるわけでもないようだ。リベリスタ達相手に、障害物程度の役割しか果たせはしないだろう。
 バビロンにしたって、積極的に彼らを使ってこちらを攻撃するつもりはない。
「こちらをおびき出す餌って所かしら」
 すでに1名、死者が出ている。これ以上の被害は出したくない。
「バビロンは、彼らが巻き添えになろうがなるまいが関係ないのでしょうけど」
 恐らく、一般人ごとリベリスタを攻撃してくるだろう。
 或いは、戦闘が目的ではない可能性もある。
 遊びに来た、と彼女は言った。その遊びが悪意に満ちたものであることは確かだ。
「話し合いだけで解決できるとは思わないけど、それでも一般人を巻き込まないように交渉することくらいはできるかもしれない」
 できればこれ以上被害者を増やしたくはない。
 そう呟いて、イヴは仲間達を送り出した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年04月13日(日)22:13
お疲れさまです。病み月です。
今回は、存在するだけで人々を魅了する悪魔の話です。
悪意に満ちた来客の対処をお願いします。

● 場所
街中。大通りの真ん中を、北へ向かって行軍中。
バビロンの周囲は、常に100名ほどの人ごみに覆われている。
このまま北上すれば港の倉庫街がある。
南へ下れば、田園が広がっている。
東へ進めば、公園と神社の密集した区域がある。
西には大きな湖がある。
人ごみを覗けば、視界、足場に問題はない。


● ターゲット
アザーバイド(バビロン)
真っ赤なドレスを着た女性。整った顔立ちに、美しい銀髪。金の杯を片手に、常に微笑んでいる。
彼女を見た者を魅了状態にして、配下に置く能力を持つ。
遊びに来た、らしい。戦闘や殺しが目的ではないが、彼女の遊びは悪意に満ちている。
快楽を求める性質。その為の犠牲は仕方ないと割り切って考えるようだ。
このまま戦いを開始すると、周囲の一般人に被害者が出るだろう。
【大淫婦】→神遠複[魅了][悪運]
不気味な赤い気糸による複数攻撃。
【汚れた杯】→物近複[猛毒][呪い][呪縛]
手にした杯から溢れ出す、禍々しい毒液が対象を襲う。

アザーバイド(赤き竜・レッド)
バスほどもある巨体。7つの首を持つ、トカゲに似た獣。
体中に無数の角が生えている。
【火炎無効】【電撃無効】【冷気無効】【毒無効】の特性を持つ。
攻撃力は高いが、HPは多くないようだ。
【災厄の吐息】→神遠範[ブレイク][圧倒][ノックB]
オーラを収束して、一気に吐き出す攻撃。
【終焉の炎】→神近範[業火][氷結][雷陣]
全身から放たれる禍々しい黒い炎が周囲を飲み込む。

皆さんのご参加、お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ハイジーニアスクロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
メタルイヴクロスイージス
大御堂 彩花(BNE000609)
ハイジーニアスソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)
ジーニアスクロスイージス
シビリズ・ジークベルト(BNE003364)
フライダークホーリーメイガス
宇賀神・遥紀(BNE003750)
ハイジーニアスマグメイガス
六城 雛乃(BNE004267)
フライエンジェホーリーメイガス
レディ ヘル(BNE004562)
ノワールオルールインヤンマスター
赤禰 諭(BNE004571)

●バビロン襲来
 鮮血のように真っ赤な怪物の背に寝転び、優雅に金の杯を煽る美女が居た。魅力的な肢体を惜しげもなく晒し、それと同時に不吉さを内包した雰囲気を醸し出す彼女は(バビロン)という。
 大通りの真ん中を、北へ北へと移動する。老若男女問わず、彼女の姿を見た者は皆、彼女の魅力に魅了され、呆けた顔で後をついていくのだ。
 その途中で、人が死のうが、事故が起ころうが、誰も気にしない。彼ら彼女らの視界に映るのは、ただただ美しいバビロンの姿だけなのだから……。

●大淫婦と赤き竜
 人の波を掻き分けて、バビロンの元へと駆け寄る影がある。バビロンを乗せた赤い竜がその歩みを止めた。竜の背に乗るバビロンは、楽しげな表情を浮かべて自分の方へ迫ってくる人影を見やる。
『へぇ? 珍しい。我の魅了が効いていないみたいね。貴方達? この世界に居る異質な存在は?』
 バビロンが問う。彼女に魅了された者達は皆、まともに思考することもできなくなっているので、彼女の進路を妨げるような動きをすることはない。ただただ彼女と共に進行するだけの、哀れな歩兵と成り果てるのだ。
「戯れで下層世界に遊歴とは暇な事だ。火遊びは程々にせねば、思わぬ火傷を負うもの、その暇潰しは高くつくぞ?」
 バビロンへ剣を突き付け『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)がそう宣言した。『へぇ?』と、興味深そうに問い返すバイロンに対し『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)が詰め寄る。
「もしもこのまま無力な人間を大勢巻き込むような事になればアークを含む国中のリベリスタを敵に回すでしょう。西の湖に場所を移動しましょうよ」
「……そもそも貴女、何が目的です?」
 首を傾げ『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)は問うた。不用意な混乱を招くばかりのバビロンの行動に対し、疑問を抱いているのだ。遊び目的、とは聞いたものの、しかしバビロンの遊びが、具体的にどういった目的で、どのような意味を持つのかは分からない。
『目的ぃ? そんなものは特にないかも。強いて言うなら気紛れかしら? ずっと同じ事、同じ場所にいると飽きて来るでしょう? ちょっと変わった相手と遊んでみたかったのよ』
 そういって、血の注がれた杯を煽る。口の周りを血で汚し、にたりと笑う。美しい顔に似合わぬ、獣じみた笑顔に怖気が走る。バビロンに従う者達からしてみれば、そんな壮絶な笑みさえも魅力的なものに見えるのだろうが。
「一般人か……。ふむ邪魔だな。盾にされても面倒だ。開放してくれぬかなバビロンよ。互いが互いに満足往く為に」
 虚ろな表情の民衆を指さし『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)は言う。落ち着かない様子で鉄扇を弄んでいるのは、闘争が待ち遠しくてならないからか。
『貴方達かしら? 我を監視していたのは。我の配下の解放が目的?』
 どうなの? と、バビロンが聞き返す。一瞬の沈黙の後、『祈鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)が言葉を返した。
「単刀直入に言おう、俺達は貴女の挑発に応じ遊戯に興じに来た者だ。それと、その盃を満たす淫らがましさであれば、禁じられた耽溺に縋る俺など如何だろう」
『色男の誘いとあれば、乗ってみるのも一興だけど……。そうね。遊んであげても構わないけど、貴方達、何か企んでいそうだもの。そちらの第一目的は何?』
「とりあえず一般人は解放してよ。人質がいると本気出せない人が多いからあなた自身もつまんないと思うよ?」
 赤い竜に視線を泳がせながら『六芒星の魔術師』六城 雛乃(BNE004267)がそう言った。バビロンは顎に手を当て、思案する。
バビロンの目的は、遊ぶことだ。彼女の言う遊びとは、闘争、死合いのことを差すのだろう。
 彼女の好奇心を満たし、退屈を凌ぐ相手としてリベリスタ達は不足ない。
 だが……。
『やっぱり、オーディエンスは必要よねぇ?』
 パチン、とバビロンが指を鳴らす。その音に反応し、彼女に従っていた民衆の半分以上が虚ろな表情のまま散って行った。
 残り半分は、バビロンと竜の傍らに控えている。
『遊び相手としては合格。信用に足るかと言われれば、後一歩ね。半数ほど、連れていくわ』
 そういってバビロンは進路を西へと変更した。

「鉄仮面を外して微笑んで魅了勝負でも仕掛けたらどうですか? 滑稽な笑いの一つでも取れるかも知れませんよ。ああ、それとも不気味な見るものを凍らせる笑顔になるのか。どちらにせよ、あんな胡散臭い微笑みよりも鉄仮面の方がマシですね」
 バビロンの後に続いて移動しながら、『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)は言う。彼の語りかけた相手は諭の隣を歩く『Seraph』レディ ヘル(BNE004562)だ。ハイテレパスを用いてレディは諭に言葉を返す。
『“私”も“お前”もフェイトに魅入られし者。アレとは違う。それが全て。例え…この世界全てを魅了しようと、排除する』
「………そうですか」
 残念、と実に興味無さそうに諭は呟いた。
 鉄仮面に覆われたレディの素顔に関して、何か思う所があったのかもしれない。
 そうこうしているうちに、バビロンと8人は西の湖に到着した。元は城の庭だったのだろう大きな湖だ。橋が渡され、市民達の憩いの場として解放されている。
『邪魔ね』
 バビロンが指を鳴らす。彼女を視界に捉えた市民達が、一斉に湖から離れていく。
 湖畔に残ったのは、バビロンと赤い竜、リベリスタ、そして数十名のオーディエンス達だけ。
『ところで我は、汚れるのが嫌いなの。だから、こうしましょう』
 バビロンは、竜の背から降りるとオーディエンス達と一緒に後ろへ下がる。リベリスタ達の正面には、赤い竜だけが残された。
『我は観客。血に濡れた舞踊の主賓。戦うのはその竜と貴方達。我の配下は強いわよ? これで良いでしょ?』
 支配下に置かれた一般人の1人の首に爪を突きつけ、バビロンは言った。
 一般人の安全を第一として行動するリベリスタ達にはそれを断ることはできない。第一目的である民衆の安全を確保するためには、バビロンの定めたルールに乗るしかないのである。
 とはいえ、だ。
「赤き竜を倒し終えるまではバビロンには不用意に近寄らないように、って考えてたからこれはこれで、好都合?」
 と、雛乃は言う。
 なにはともあれ、一般人の身の安全は、当面の間保障されたとみて間違いないだろう。

 金の杯を片手に、バビロンは頬笑み、闘争を眺める。
 安全な位置から、血で血を洗う戦いを……。大昔に行われた剣闘士の戦いや、御前試合のようでもある。
『さぁ、やっておしまいなさい!』
 楽しげに叫ぶ。その直後、だ。
 竜の吐き出したオーラの束が、リベリスタ達を薙ぎ払った。

 禍々しいオーラを、まるで光線のよう吐き出す赤竜の眼前に、アラストールが斬り込んだ。全身を覆っていた燐光は、すでに竜の吐息によって打ち消されている。皮膚は焼け、血が体中にこびり付いていた。
 雷を帯びた剣がまっすぐ竜へと振り降ろされた。
「城壁の如く戦火を防ぎ、災禍を払う。揺るぎなく不動に戦う故に騎士である」
 自らを鼓舞するように鋼の意思を謳うアラストール。竜の首が一斉にアラストールへ襲い掛かった。その首のうち1つに、アラストールの剣が突き刺さった。首を切り落とす寸前、別の首に跳ね飛ばされ、アラストールは地面を転がった。
 アラストールへの追撃を、彩花はその身を挺して防ぐ。鉄甲に竜の牙が、深々と突き刺さり、血が流れる。その血を啜り、竜は吠えた。
「私が積極的に盾になります……。無論、そちらも」
 ちら、と彩花の視線がバビロンへと移る。彩花とバビロンの視線が交差した。彩花の視線に気付いたバビロンが、優雅に手を振ってくる。僅かに舌打ちを零して、彩花は竜の鼻先を殴りつけた。
 竜の角がへし折れる。その角を足場に、リセリアが飛んだ。
「貴女の遊びに付き合うのは構いませんが……」
 リセリアの剣が閃いた。太陽光を反射し、キラキラと輝く無数の剣の軌跡が竜の首を切り飛ばす。見る者を魅了する魔性の剣技が、残る6つの首を引き付けた。
 吐き出された業火が、空中のリセリアを包む。皮膚の焦げる匂いと、リセリアの悲鳴。炎に包まれたリセリアを、しかし遥紀が助け出す。
 リセリアを抱きかかえたまま湖に飛び込み、即座に炎を消した。飛び回る遥紀を追って竜は炎を吐きだしたが、届かない。
「世界に伝わる伝承は、気まぐれなアザーバイドの来訪も多く影響しているのだろうな、と納得出来る光景ではあるな」
 炎を吐き、破壊と災厄を撒き散らす赤い竜は、神話に出て来る怪物の姿と合致する。
 遥紀は、溜め息を1つ零し翼を大きくはためかせた。飛び散った燐光が、傷ついた仲間達を癒す。赤い竜の猛攻に圧倒され、押されていた仲間達が体勢を立て直した。
「七つの頭に無数の角の赤き竜といえば思い出すのはヨハネの黙示録だね。人類の滅亡と世界の終末に至る時現れるとされるんだよ~」
 雛乃の詠唱が終わると同時、竜の頭上に巨大な魔方陣が出現した。瞬間、視界が真白く染まる。魔方陣から降り注ぐ流星群が、竜を撃ち抜いた。角が折れ、竜の全身が血に染まる。
 流星にまぎれ、シビリズが竜の眼前へと迫った。
「潰す。将を射るのならばまずは馬から――否、竜ではあるが、ね。まぁよいそう言う事だ。潰れよ」
 放電と共に鉄扇が振り降ろされた。落雷のようなその一撃が、竜の首を吹き飛ばす。ここまでの戦闘によって、合計4つの首が既に息絶えているようだ。
 半数以上が息絶えても、なお戦い続けるその生命力はさすが怪物と言う所か。
 3つの首が、禍々しいオーラを吐きだした。オーラは収束し、光線が放たれる。
 前線のメンバーは素早く回避。後衛に控えていた雛乃と諭は、しかし回避が遅れ間に合わないだろう。雛乃は術の発動直後、諭は発動寸前だったことが原因だろうか。
 光線の前にレディが飛び出す。
 剣を地面に突き立てて、盾を眼前に翳す。レディは全力を以て仲間を庇う。
『下界に良く来る…不浄なる者よ。もはや慈悲も安息も与えぬ。完全に滅し、ボトムへ訪れる事は死であると外界の者へ啓蒙してくれる』
 地面が抉れ、レディの腕は焼け焦げた。盾や仮面が焼けるが、彼女は引かない。片膝をついたレディだが、よろよろと立ち上がった。もう1度、続けざまに放たれた光線を受け止めるためだ。
『…………』
 剣を放り捨て、両手で盾を掴む。ギシ、とレディの全身が軋む。激痛が彼女を襲っているはずだが、仮面に隠された彼女の表情などは分からないまま。
 服が、皮膚が焼ける。流れる血すらも蒸発し、鉄の臭いが周囲に漂う。
 ぶん、と盾を頭上に振りあげた。光線の軌道がズレて、地面を抉る。
「良い的ですね。大きく脆く撃てば当たる良い標的です」
 直後、轟音が鳴り響く。諭と、彼の召喚した影人たちによる一斉掃射によるものだ。直後、無数の砲弾が、竜を撃ち抜いた。

●災厄
「遊んで満足しましたか? ああ、不満足でもお代は頂きましょう。別に何もせずとも結構です。塵も残さず弾け散りなさい」
 立て続けに弾丸を放つ。弾幕、と呼ぶにふさわしい有様だ。
「折角こんな辺鄙な世界までやってきてヌルゲーはやりたくないだろうし」
 遠慮なくいくよ、と諭と共に後方支援を担当する雛乃の術が発動。再度降り注ぐ流星群が、砲弾と共に和かな湖畔を戦火で包む。
 進退極まった赤竜は、首を低くし猛攻を凌ぐ。
「戦場に於いて迷う事はない。躊躇えば仲間が死ぬだけ。貴方の行動に敬意を表します」
 その隙に、遥紀はレディに駆け寄り、その体を抱き起こす。淡い燐光がレディを包み込み、焼け焦げ、傷だらけになった彼女の身体を癒していく。
 自らの身を盾に、迷いなく攻撃の前に飛び出したのだ。レディは既に満身創痍。かろうじて意識を保っている、という状態だった。
 レディだけではない。遥紀の回復術は、仲間全員の傷を癒す。
 反撃の準備は、整った。
 
「私はここからだ! 死神と踊る、この先からの感覚こそが至上だよ!! さぁ――遊ぼうかッ!!」
 砲弾と、流星が止んだ。それと同時にシビリズは竜へと襲い掛かる。火を吐き、牙を剥き、暴れ狂う竜の首とシビリズは打ち合う。血を吐き、割れた額から流れる血で顔面を汚しながらも、シビリズの顔には愉悦に満ちた笑みが浮いていた。シビリズの鉄扇が、放電と共に竜の頭を叩きつぶした。
「ぐ……。血を流し過ぎたか」
 その場に膝をつくシビリズへ、残る2本の首が迫る。
 その片方を、彩花が受け止めた。
 もう片方の首へリセリアが跳び乗る。リセリアの剣が一閃。竜の首を切り落とし、溢れた血が地面を汚す。
「油断はできませんね」
 竜の首に続いて、リセリアの身体も地面に落ちた。見ると、彼女の脇腹から大量の血が溢れている。竜の牙にやられたのだろう。
 だが、残る首は1つ。
「私の実力、とくと御覧なさい!」
 大きく開いた竜の口に、彩花は両手を突っ込んだ。上顎と下顎を掴み、大きく開く。このまま引き裂いてしまうのではないか、という力の入れようだ。彩花の手に食い込んだ竜の牙が血で赤く染まる。
 喉の奥に、禍々しいオーラが収束するのが見える。
 それが放たれるよりも早く。
「我が剣は………千の雷に通ず」
 放電。空気の震える音。視界が真白く染まる。振り降ろされたのはアラストールの剣だ。ざくん、と小気味のいい音がする。
 切断された竜の首が、地面に転がる。
 喉の奥に集まっていたオーラが四散し、竜の身体は火に包まれた。7つの首を持つ災厄の竜は、息絶えた。
 その直後。
『素晴らしいわっ!!』
 賞賛の言葉を叫び、拍手を打ち鳴らし、バビロンがこちらへ歩いてくる。

 バビロンの襲来に身構えるリベリスタ達。だが、バビロンには戦意がないようで嬉しそうに拍手を続けるだけ。
 見ると、彼女が集めていた一般人達は虚ろな目をしたまま何処かへ去っていく所だった。
『さて、今度は我と……と、言いたいところだけど』
 満身創痍、ね。
 とバビロンは言う。
『帰るわ。我がこの世界に留まることに不都合があるのでしょうし。いいものを見せてもらったお礼に、帰ってあげる』
 またね、といい残し。
 バビロンは、Dホールのある方向へと歩き去っていくのだった。
『日に日に、ボトムへ訪れる崩界因子のグレードが上がっている……審判の日は近いか』
 バビロンを見送り、レディは1人、そう呟いた。



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様です。
赤い竜が倒れたのを見て、バビロンは満足したようです。
再来訪の可能性はありますが、依頼は成功です。

お疲れ様でした。
一般人の救助にこだわったプレイング、ありがとうございます。
それではそろそろ失礼します。
縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。

この度はご参加、ありがとうございました。