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春麗ら、桜の祭り

●はる、うらら
「桜の咲く公園で、今年も桜祭りが行われるんだそうです」
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言って、持っていたパンフレットを皆に見せた。
 たくさんの桜の木が植えられたある公園で毎年一週間ほど、桜祭りと呼ばれる花見のお祭りが開かれるのだそうだ。
「昨年もお誘いさせて頂いたんですが、ちょうどこれから桜が満開になるみたいで」
 いろいろ出店というか屋台みたいなのとかもたくさん出て、すごく賑やかなんですよと少女が説明すると、それを聞いたトニオ・ロッソ (nBNE000267)が笑みを浮かべてみせた。
「楽しそうね~ちなみにどんな屋台が出るのかしら?」
「ええと……ふつうのお祭りとかで見かける屋台なら大体あるみたいですよ?」
 やきそば、たこやき、お好み焼き、わたがし、型抜き、射的、チョコバナナ、りんご飴。
 他にもいろいろ、さまざまな屋台が出るようだ。
「おでんとかラーメンとか、そっち系の屋台も? っていうのもあるみたいです。この季節ですがカキ氷も見かけた気がします」
「それもチャレンジャーね……まあ、楽しそうではあるけど」
 青年がそう言って苦笑しつつも楽しそうに口にすれば、少女は笑顔で応えながら、桜の咲き乱れる公園内もステキですよと言いながら会場となる公園についても話し始めた。

 広い公園内には池や小川もあり、その近くにも桜が植えられている。
 架けられた橋を渡りながら、あるい畔で貸りられるボート等で池の上から桜を眺めることも可能なのだそうだ。
「夜にはライトアップされるみたいで、とっても綺麗なんですよ」
「ロマンティックよね~ステキ♪」
 夜はちょっと寒いかもしれませんけど決められた場所ならカセットコンロ等で鍋とかもOKらしいですとマルガレーテが説明すると、花より団子ってコトワザねとトニオは楽しそうに笑顔で口にした。
「……いろいろありましたし、気分転換とか、息を抜くっていうのも良いんじゃないかって思うんです」
 少女の言葉に青年が、微かにまつげを震わせて頷いてみせる。
 にぎやかに。あるいは穏やかに、楽しく。
「良かったらみなさんも如何でしょうか?」
 マルガレーテはそう言って、プリントを手渡しながらリベリスタ達へと微笑んだ。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年04月15日(火)22:47
●このシナリオはイベントシナリオになります。
イベントシナリオについては本部利用マニュアルなどを御参照下さい。

オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回は桜を見ながら楽しく飲食したり、はしゃいだり、のんびり過ごしたりしませんかというお誘いになります。
場所や雰囲気が気になる方は、宜しければ自分のシナリオ『さくら日和』、『桜祭』等を御参照下さい(タイトル異なりますが、同じお祭りです)


●桜祭り会場
池や小川なども作られた広い公園内に沢山の桜が植えられており、屋台なども沢山出ています。
照明が用意されており夜になると桜がライトアップされます。
火の取り扱い等も許可されているようで鍋等、可能です。

●備考
・多数の方が参加された場合、内容を絞ったプレイングをかける事をお勧めします。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。
・グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。
(タグで括っている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCに話しかける場合、ID等は必要ありません。

マルガレーテは桜を見たりしながら会場をうろついてます。
トニオは花見をしたり屋台を冷やかしたり何か買ったりしながら散策を楽しんでいるようです。
他、ヤミィやシロ、アークの他のリベリスタたちや三高平市に住んでいるアーク協力者の一般の人とかもちょこちょこ参加してます。
御希望の方はそういった参加者と絡む描写をさせて頂きます。
特に何事もなければ、賑わっているという背景描写以外では登場しません。


それでは、興味を持って頂けましたら。
どうぞ宜しくお願いします。

参加NPC
マルガレーテ・マクスウェル (nBNE000216)
 
参加NPC
トニオ・ロッソ (nBNE000267)


■メイン参加者 39人■
アークエンジェインヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
アウトサイドダークナイト
テテロ ミーノ(BNE000011)
ハーフムーンホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
アウトサイドナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
ハーフムーンソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
フライダークホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
ノワールオルールソードミラージュ
ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)
アウトサイドホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ノワールオルールスターサジタリー
天城・櫻霞(BNE000469)
ハイジーニアスデュランダル
新城・拓真(BNE000644)
アウトサイドソードミラージュ
リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
ハイジーニアススターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
ハイジーニアスクロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
アウトサイドスターサジタリー
桐月院・七海(BNE001250)
ハイジーニアスナイトクリーク
神城・涼(BNE001343)
ヴァンパイア覇界闘士
陽渡・守夜(BNE001348)
ハイジーニアスデュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
ギガントフレームクロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
フライダークマグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
アウトサイドスターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
ビーストハーフスターサジタリー
アティリオ・カシミィル(BNE002555)
ジーニアスデュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ギガントフレームクロスイージス
日野原 M 祥子(BNE003389)
フライダークホーリーメイガス
メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)
ビーストハーフレイザータクト
伊呂波 壱和(BNE003773)
ハーフムーンミステラン
テテロ ミミルノ(BNE003881)
フライエンジェマグメイガス
姉小路 幽華(BNE004171)
ギガントフレーム覇界闘士
コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)
フュリエデュランダル
シーヴ・ビルト(BNE004713)
メタルフレームデュランダル
メリッサ・グランツェ(BNE004834)
ビーストハーフアークリベリオン
綴野 明華(BNE004940)
ジーニアスアークリベリオン
逢川・アイカ(BNE004941)
ビーストハーフアークリベリオン
藤代 レイカ(BNE004942)

アズマ・C・ウィンドリスタ(BNE004944)
ヴァンパイアアークリベリオン
綾小路 姫華(BNE004949)
ヴァンパイアソードミラージュ
東海道・葵(BNE004950)
ジーニアスアークリベリオン
富士宮 駿河(BNE004951)
   

●桜の季節に
「……拓真とこうしているのは、なかなかなかったかもなぁ」
「思いの外。任務では何度も死線をくぐり抜けた仲ですが」
 鷲祐の言葉に笑みを浮かべ、拓真は酒を一口含む。
「皆様、いつもお疲れ様です」
 そう言ってリリは陶器の徳利を、ふたりの杯へと傾けた。
 済まないなと短く口にする拓真に軽く首を振り、微笑んでみせる。
 皆、怪我の多い者たちなので心配しているのも事実だが……
「このところ身をすり減らしてるらしいな」
 杯を手に、鷲祐は問いかけた。
「周りが気にしてならんだろうに……お前はどうしてそんなに戦いたがる?」
「多少すり減らした所で生き方は変えられません」
 やや自嘲気味に拓真は口にした。
 自分は決して強くない。力云々ではなく……心が、だ。
 立ち止まっていると不安になる。
「……困った性分ですが、剣を置く時は死ぬ時だけです」
 それが自分なりのケジメだとも思っている。
(正直、戦士の性分にしちゃ、優しすぎると思うがな)
 鷲祐がそう感じた処で……
「司馬さんは独自の考えをしている気がしますが」
 そのルーツの様なもとは、と。今度は拓真が問いかけた。
「俺は、祖父の影響がありましたし」
「……考え方か。俺が革醒したのは17の頃。その後は家を飛び出して戦ってばかりいた」
 きっとそんな頃の……一人の力を信じることが、大きいのかもしれん。
 言葉を結ぶと、拓真が微かに首肯する。
「……生き方は、簡単には変えられませんね」
 興味深そうに聞いていたリリが、それだけ呟いてから……鍋の方へと気を向けた。

「もち巾着だいぶ伸びてるぞ大丈夫か?」
 鷲祐は表情を少し変えて呼びかけてから、緊張したようすのフォーチュナへと声をかける。
「マルガレーテもこっちで食べるといい。案外悪くないぞ」
「え、ええ。あ、はい」
「おでんと無関係だが煮込んできた豚軟骨の角煮があるぞ。さぁ飯に乗せて食え!」
「炊飯器に白ご飯はたくさん用意して来た。たくさん食べてくれ」
 拓真も相好を崩して声をかけた。
「厚揚げも良い感じに煮えて来ているんじゃないか?」
「からあげもどうぞ、沢山食べて下さい」
 リリも皆に呼びかけてから、大好きな餅巾着へと箸を伸ばす。
(お、おもち、すごくのびます)
「……す、すみませんつい」
 自分で持ってきたのに食べ過ぎてしまったと、少し気恥ずかしくなって。
 リリは鷲祐の用意した品へと箸を向けた。
「角煮美味しい……です」
(あっいけない、これはご飯が進み過ぎます)
 そんな皆の様子を見ていたマルガレーテも、少し緊張した様子で箸を伸ばす。
 一方で……
「わかってないなあ。おでんと言ったら『ちくわぶ』だろ。あれ? 知らない?」
 皆の反応を見た快は、まあ関東以外じゃあマイナーな食材だからねと呟いた。
「拓真はともかくリリさんは無理もないか」
 そう言ってから、ちくわぶについて説明し始める。
「ちくわぶは、初めて見ます」
「小麦粉を練って竹輪状にした練り物でね。くたっとするまで煮てやれば、おでんの出汁に滲みでた総ゆる旨味を吸い込むのさ!」
 興味深そうに見つめるリリにそう説明して、快は旨みを吸い込んだちくわぶを取り分けた。
「不思議な食感、でも美味しい……」
「あとは海老真丈にこんにゃく、はんぺん。里芋なんかもいいかな」
 和風ポトフのおでんにはタブーなんて無い、というのが快の信条である。
「マルガレーテちゃんも一口どうかな?」
「あ、はい。頂きます」
 頷いた少女に笑顔で応えて、幾つかの具を取り皿に乗せて。
「それはそれとして……」
 日本酒は花見に合わせて桃色のうすにごり。
「春には春のお酒を、ね」
 拓真と鷲祐も、其々各々の杯を傾けて。
「春って、何だか嬉しくなりますよね……あっ、おでんの中に花弁が」
 そう言って、リリは目を細めた。
「桜の花弁が落ちてくると、願い事が叶うそうですよ」
「おでんの器に花びら、は初めて聞くよ。酒器に受けて飲むのは風流って、昔から言うけどね」
 良い事がありそうですと呟くリリの言葉に向かってそう言いながら。
 ほら、こんなふうに……と。快が花びらを杯で受ける。
 その光景を眺めながら。
「……風流か。風流、いい楽しみ方だな……」
「……確かに。四季の移り変わりを眺めるだけでも酒の肴になる」
 鷲祐と拓真は呟いて、頭上の桜へと瞳を向けた。


●春、うらら
「お花見だし、春だし……って言う事で。お口に合えばいいのだけれど」
 並んで座った桜の木の下で、シュスタイナは壱和に桜餅を差し出す。
 壱和が差し出すのは温かい緑茶だ。
「桜餅の甘さが、心にしみますね」
「葉っぱの塩加減が好きなのよ」
「ほっとします」
「壱和さんのお茶が、甘さを上手く緩和してくれるわね」
 そう言って桜を見上げてから、シュスタイナは壱和へと瞳を向けた。
「この前一緒に観たのは梅で、もう桜なのね。次は紫陽花でも見に行く?」
「行きたいです! 紫陽花は、雨上がりだと水滴が綺麗に映えるのですよね」
 嬉しそうな壱和の声に、シュスタイナも柔らかな言葉で応える。
「季節が変わるのを一緒に過ごせるのって嬉しいわよね」
「一緒に過ごせるのは嬉しいです。四季折々。色んなことを一緒に体験できますしね」
 身体も心も暖かくなる、春のひと時。
「ん。でも、ぽかぽか陽気って眠くなるわね……」
 呟いてこっそり欠伸をしたシュスタイナ呼びかけると、壱和は自分の膝をポンポンとたたいた。
「ボクしか見ていないですから。それに、寝転んで見上げる桜も綺麗ですよ」
「この前膝枕したけど、逆はその。恥ずかしいから……」
「シュスカさんにも同じ景色を見てもらいたくて。ほら、きっと素敵な夢が見れますよ」
 そう促された彼女は、その言葉に甘えて。
「素敵な夢、一緒に見られるかしら?」
 少女の言葉に微笑みを返して。
 壱和はシュスタイナが風邪をひかぬようにと、自分の上着を彼女にかけた。


●一緒の時間
「去年は夜桜を見たけれども、昼間の桜もやっぱりいいものだよな」
「この髪飾り貰ってから1年になるんだね。季節が一巡りしたね」
 桜の咲く道を手をつないでのんびりと歩きながら、涼とアリステアは言葉を交わす。
(桜に特別なものを感じるのは日本人だからかな?)
「こうやって桜を眺めてると穏やかな気分になるよね」
「物心ついた時には日本にいたからかな? 桜への特別な気持ち、何となく分かるよ」
 涼の言葉にそう返して、一緒に歩きながら……アリステアは、涼の言った時の事を思い返した。
「夜桜と言えば、あの時初めて手を繋いだんだよ。今では大分慣れたけど、すっごく緊張した覚え……が……」
 あの頃と比べると……今はずっと、気持ちが落ち着いて、安らいでいるような……そんな気がして……
 でも、次の瞬間。
「しかし、こういうゆっくりとしたデートみたいなのも悪くないよね。もっとデートらしくラブラブしてみる?」
 涼はそう言って……考え込むかのように少し間を置いてから、口にした。
「例えば腕に抱きついてみるとか」
 さらっと言われた言葉に、アリステアの心臓が跳ねる。
 不意打ちで。でも……
「……こう?」
 両手できゅっと抱き締めながらそっと見上げると、そこにあるのは優しい笑顔。
(涼が笑ってくれると、私もほっこりするの)
「……花見よりいちゃつくダシにしてるみたいだけど、ま、偶にはこういうのも良いんじゃない?」
 照れを隠すように、ちょっと冗談めかして口にした青年に微笑みを返して。
(手を繋いだ時より距離が近くて、ちょっとどきどきするけど)
「大好きな人の温かさを感じながら、大好きな桜を見られるのって、幸せだね」
 少女は想いを形にして、それを自分の大切な人に向けて……静かに紡いだ。


●巡り来る季節
 桜の季節は、大好きだ。
 たくさん咲いた花も、風に舞う花びらも、きれいで好きだ。
「今年もまた、一緒に花見ができたな」
「今年も素敵な淡いピンク色なのです」
 そあらは雷音の言葉に笑顔でそう言った。
「1年前と変わらず4人で桜を見れたのはとてもうれしいのです」
 マルガレーテやヤミィへと視線を移しながら呟く。
 生まれた年も場所もぜんぜん違うのに、こうやって仲良くなれたのがうれしい。
「三高平にきてよかったっておもうですよ」
 その言葉に今度は雷音が、笑顔で応えた。
 今日の為にとお弁当はふたりで作ったのである。
 美味しいもので一杯にしよう。
 そんな想いを込めて作った料理を、そあらと一緒に桜の下で広げてみせる。
「らいよんちゃんの卵焼きとってもおいしそうなのです」
「今回の卵焼きは自信作だぞ。ぜひ食べて欲しい」
「あたしもおにぎりをもってきたですよ」
 笑顔でそう言ってから、そあらはちょっと困った顔をした。
「梅、おかか、鮭、たらこ、いろいろなのがあるですが……にぎったらどれがどれだかわかんなくなっちゃったのです(´・ω・`)」
「それは……困りましたね?」
「でも、分からないのも面白そうですよ」
 本当に考え込んでいる様子のマルガレーテに対して、ヤミィの方は少し楽しそうに口にする。
「春の空気は心機一転する気分だな」
 そんな光景を、微笑ましく眺めてから。
「そうだ、マルガレーテは高校1年生だな」
 おめでとうと声をかければ、少女は照れたようすで、ありがとうございますと礼を言った。
「マルガレーテさん、もう高校生ですか。月日が流れるのは早いのです」
「ヤミィはそういえば、年齢を知らなかったけれどいくつなんだろうか?」
「ヤミィさんは……あ、あたしもわかんなかったです」
(気にしてなかったですねぇ……もしかしてあたしが一番のおねいさん?)
「私は確か……マルコちゃんより2つお姉さんですね? 課程は修めてるんで、学校には行ってませんけど」
 気軽に笑顔で説明する少女の話を聞きながら……雷音は彼女と出会ったころの事を思い返した。
 年齢もきにしない友達関係。それはきっととても幸せで……
(彼女の本名も、彼女が教えてくれるまではとっておきたいのだ)
 口には出さず、友達の言葉に笑顔で頷いて。
 雷音は皆と共に……桜空の下で、語り合った。
 また来年もという想いを、抱きながら。


●仲間たちと
「またこの祭りを迎えられた事にカンパーイッ!」
 そう言ってツァインは、元気な笑い声を響かせた。
 今回はお酒が飲めるのだ!
「アレから一年経ったのかー……皆なんか変わったと思うところあるかー?」
 この一年を振り返って、青年は皆に問いかける。
「俺は遠慮が無くなったというか……あまり皆に気を使わない感じになったかな……?」
 悪く言うと無遠慮になったというか適当になったというか……
 そう言ってからツァインは、再びカッカッカッと元気に笑った。
「ここ一年で、周りの状況も大きく変わった気がするな」
 MGKにも入団したしなと、義弘もこれまでを振り返る。
「この一年で変わった事……? どうかな、あたしもどこか変わったかな」
(ひろさんの好みに合わせて和菓子をよく作るようになった、とか?)
 そんな事を考えながら、祥子は皆を見回した。
(ツァインさんはお酒が飲めるお年頃になったし、大人の階段登ってるわね)
「ひろさんは前よりちょっと、更にまっちょになった? 七さんは……髪が伸びたんじゃない?」
「変わったことですか……一時期すごい濁り酒が美味しかった時期が……そうじゃない」
 呟いて……七海は少し、間を置いた。
 時間が経って考え方が変わってきたのか、気持ちの整理ができてきたのか……
「『約束』を守ろうかなと最近思ってます」
 裏に金糸で小さく縫い取りのある黒のチョーカーの感触を確かめるようにしながら……青年は言葉を締め括る。

「まぁまぁ真面目な話はこれくらいにして騒ごうぜー!」
 ツァインはそう言って、皆の差し入れや買ってきたものを見回した。
 七海は日本酒と、酒の肴にとナッツ類とカツオのタタキを持参してきた。
 祥子はいつもの通りにと、お弁当を用意してきている。
 おにぎりとピリ辛の唐揚げ、卵焼き。
 お酒のつまみになりそうなおかずも、他に幾つも詰められている。
「仕事先で買ってきたものだがな」
 義弘がそう言って出したのは桜餅だった。
 他には缶ビールも人数分、用意してきている。
 料理はもちろん既に、ビニールシートの上へと広げられていた。
「さてしかし、何に乾杯したものかな、祥子」
 陽気にそういう彼に笑顔で応えて、祥子はコップをそっと触れさせ合う。
「去年もここでみんなとお花見したわね」
 呟きながら、彼女はその時の光景を思い返した。
 去年はもっと大勢だったけど、今年は少人数でのんびりと。
「みんなお酒飲めるし大人のお花見ね」
「仲間と桜と宴会だ」
 四月は花見で酒が飲めると、どこかの誰かが言っていた。
「ならば桜を眺めながら、皆と酒を楽しもう」
 呟いて義弘も、冷えたビールを喉の奥へと流し込む。
「一番! 真白イヴちゃんの物真似いきます!」
 陽気に宣言すると、ツァインは一瞬で早着替えしてフォーチュナの声真似をして喋りだした。
「……智親は変人だけど……ちょっとすごい……」
 直後、近くで偶然目撃したリベリスタたちから苦情が入る。
「あ、やめて下さいっ、物を投げないで下さい! 生まれてきてごめんなさいッ!」
 言いながらも何か楽しそうなツァインの器に、ちゃんぽんには気を付けてと忠告しながら、七海が酒を注いだ。
 今回は酔い潰れない様に、ペースを守って静かに飲もう。
 そう自分に言い聞かせる。
 前回は迷惑をかけてしまったという思いがあるのだ。
「しっかりしておきませんとね」
 小さく呟いてから、視線を動かす。
(祭さんと日野原さんは……こう、二人きりにした方がいいのか迷います)
 青年の視線の先では、義弘と祥子が話をしながらコップを傾け、料理をつついている。
「こうして祥子や友人達と一緒にいられるなら、悪くないよな」
(そして……)
「桜を眺めて楽しむこの時間を大切にしていきたいもんだな」
 そう口にしながら見上げる義弘に、祥子は頷いて同意を示した。
(桜は去年と同じでキレイ)
 すぐに散ってはしまうだろうけど……きっと……
 同じように、見上げられるように。
 そんな祈りを抱きながら、祥子は静かに呟いた。

「きっと来年も変わらずにキレイに咲くわね」


●お花見まんきつ
「わっほい! ことしもおはなみ(しながらおしょくじ)のきせつ!!」
 花見をする人々でにぎわう公園内でミーノが元気に宣言する。
 カッコの部分は口にしていないが、もちろんリュミエールにはその部分が聞こえていた。
 桜をみるための祭りである。
(だがここにいるピンクの生物は食べ物にイクダロウ)
 そう考えている間にも、ミーノは桜から周囲の屋台へと意識を向けてゆく。
 その辺の出店などに関しては、リュミエールは既にチェックを終えていた。
 別に超高速で見て回ったとかではなく、予想してあらかじめ確認しておいたのである。
(効率よくまわってのんびり食べながら花見をしたいモノダ)
「ソース類で確実に頬を汚すだろうフイテヤラナイトイケナイ」
 呟きつつ、ウェットティッシュとかも持参して、彼女はミーノの後を追う。
「おいしそうなにおいっ!」
 嬉しそうに、笑顔で屋台を回り色々と買っては食べる彼女に、適度に助言して進路を調整したりしながら……リュミエールも屋台やら出店やらを回っていく。
 そうやってしばらく屋台を回って満足したところで、彼女はミーノに膝を貸した。
「ほふ~ことしもおはなみをたんの~したの~」
 大満足という感じでおなか一杯のミーノは、すぐに夢見心地になる。
 ミーノが寒くないようにと、九尾のしっぽを伸ばしてから。
 リュミエールはのんびりと、頭上で咲き誇る花々へと視線を向けた。


●賑やかな風景
(春と言ったら桜、桜と言ったら花見っ!)
「葵、お祭り行こうぜ、お祭りっ!」
「花見ですかそんな風習はありませんが……それにお祭りですか?」
 駿河の言葉に少し間をおいてから、葵は何とも言えない視線を少年に向けた。
「……その様な物が好きとはやはり坊ちゃまも子供であらせられますね」
「って、何突然言い出してんだコイツみたいな目で見るの止めろよっ!? 地味に傷つくだろ!」
「……いいえ、何もございません。坊ちゃまのメイド、葵は付き添わせて頂きます」
 そんなやり取りの後、駿河は葵を連れ立って祭り会場を見て回った。
「んー、桜祭りってやっぱイイモンだよな。何たって祭りと桜だぜ?」
 駿河がそう口にすれば、葵は静かに同意を返す。
「桜が好きとは坊ちゃまでも風流な物はお分かりになるのですね」
「綺麗だし賑やかだし、見てるだけで飽きねーよな!」
「ええ、桜はとても素敵です……偶になら騒がしいのも宜しいですね」
 話もしながらしばらく歩いたところで、ふたりは複数の屋台が並ぶ一画へとたどり着く。
「っと、屋台出てんだし何か食べねーか?」
「屋台でございますか? 坊ちゃま余り食べ過ぎてはいけませんよ」
「葵は何か食べたいとかあったらちゃんと言えよ」
 生返事を返しながら屋台を眺めつつ、駿河は付け加えた。
「じゃねーと、成長するものも成長しな……え、何だよその目は」
「……どうやら淑女の気持ちを余り理解なさらない模様」
「お、俺何かまた変な事言ったりしたかっ!?」
「だからこそ貴方には躾が必要なのですよ、坊ちゃま」
 それから少しの間を置いて……適当に散策したのちに、葵はあの辺りの桜が見頃ではと指さした。
 頷いて腰を下ろし、屋台で買ったものを食べながら……駿河が口にする。
「……アレだ。また遊びに行こうぜ?」
 その言葉に、また少し間を置いてから……葵はいつものと変わらぬ調子で答えた。
「ええ、偶に、偶になら」


●ふたりで一緒に
(聞くところによると幽華さんは料理初心者とのこと)
「不慣れな人でも作りやすいお鍋にしましょう」
「今日はお鍋の作り方を教えてもらうのです」
(料理は初心者ですし、しっかり教えてもらいませんと)
 公園の中、小川の近くに、アティリオと幽華の姿はあった。
 アティリオは幽華に料理を教える。
 幽華はアティリオに料理を教わる。
 それが、今回ここに2人が一緒にいる理由である。
「公園の小川近くで幽華さんと料理タイムでありますよ! ……あ、ネギは苦手じゃないでありましょうか?」
「え? ネギですか? ええ、大丈夫ですよ」
 アティリオの問いかけに幽華がそう答えてから、間もなく料理が開始される。
「野菜の切り方と言っても色々あるんですねー……」
 アティリオにレクチャーを受けながら包丁を動かしていた幽華は、具を鍋に入れ終えると……そこでふっと考え込んでから、少年にたずねた。
「えーと、そう言えばお鍋ってこう、何か隠し味と言うかそういうのがいるのでしょうか?」
「えっ、隠し味でありますか? 確かに鍋にも隠し味はありま……」
「でしたらこれでも……」
「……Σわー! それはさすがに闇鍋になってしまいます!?」
「え? これ駄目なんですか?」
 ゼリーのような何かを入れようとした幽華を、慌てた様子でアティリオが止める。
 そんなハプニングがあったりしたものの、それ以降は順調に進み……ふたりの鍋は完成した。
「何とかできました!」
 そう言って、ちょっと安心した様子の幽華に向かって。
 アティリオは器に盛った具の一つをレンゲに乗せてふーふーし、それを笑顔で幽華に差し出す。
「料理の一口目は、一番頑張った人へのごほうびでありますよ!」
「ふえ? わたしが? え、あの、ありがとうございます」
(頑張った人だなんて、なんだかちょっと照れくさいですね)
 ちょっと気恥ずかしさも感じつつも嬉しそうに、幽華は最初の一口を味わって……
「そういえば幽華さんのご出身は日本でありましょうか」
「わたしですか? ええ、日本ですよ」
「自分は子供の頃しか過ごせなかった場所ですが、ギリシャであります♪」
「ギリシャですか……いいですね」
 一緒に作った鍋が距離を縮めたのか……ふたりは一緒に鍋を食べながら、他愛無い話に花を咲かせた。


●新しい景色
「ボート! すっげェ! コレ乗ってみたかったンだよなァ」
「うわわ、揺れちゃうから気をつけてねっ」
「よし、漕ぐのは任せろッ! やったコトねェけどきっと楽勝だぜッ」
「あっち言ってみよーって、そっちじゃないよっ! あっちあっち!」
 池に浮かんだボートの上から、コヨーテと壱也の元気な声が響く。
 ボートの上から花見がしてみたい!
 そんなこんなでボートに乗り込んだ2人だったが、ボートを漕ぐコヨーテが力任せにオールを動かすため、その場で回ったり違う方向に進んでしまったりして、一向に目的地に向かえなかった。
 漕いでいるコヨーテも、目的地に向かう事より漕ぐ事そのものが楽しくなってきて向きを気にしなかったので尚の事である。
 もっとも壱也の方も途中から面白くなってきて、コヨーテと一緒にボートの彷徨を楽しんでいた。
 しばらくそうやって遊んだあとで。
「ボート漕いで腹減ったし……昼メシにすっかッ」
「そうだね、あれだけ動けばおなかもすいちゃう」
 コヨーテの言葉に頷いて。
「ってことでジャジャーン! おにぎり作ってきました!」
 まあ握ってきただけだけどね、と言いながら壱也は用意してきたおにぎりの包みを広げる。
「おッ、おにぎり! やったァ、食うッ!」
「桜の中で食べるご飯はおいしいねっ」
「……うん、うめェッ! いちやがガンバったからうまさアップだなッ! 桜も、もっとキレーに見えるぜ!」
 そう言いながら、コヨーテは周りを見回した。
「すげェなァ、池の水に桜が映って……全部ピンクで、桜の中にいるみてェ」
「ほんとだね、桜の中にいるみたい。どこ見ても桜ってすごいよね!」
「なんか得した気分だなッ!」
「贅沢だね!」
 壱也が相槌を打つと、コヨーテは楽しそうに笑った。
 秋は紅葉を見たし、冬は真っ白な雪を見た。
「いちやといると、いつもキレイな色いっぱいだなッ! へへッ、すっげェ楽しいぜッ」
「わたしもコヨーテくんといると色んなもの見て食べれて楽しいよっ」
「いつもありがとなァ」
「こちらこそありがとう! なんか改めて言われると照れるね!」
 実際、ちょっと照れくさくて。
「よぉし、あっちまで行こう! って、また逆だよー!」
 元気にボートを漕ぎだしたコヨーテに、少し慌てて、でも楽しげに。
 壱也は大きな声で呼びかけた。


●桜の公園
「……困りましたわ」
 にぎわう公園を眺めながら、姫華は呟いた。
 季節は春。平地でも食糧になる植物が多く見かけられる時期である。
(この辺りに、広い公園があると知って出向いてみたのですが……)
「今は桜祭りということで、屋台が立ち並んでますわね……」
 この環境の中で(食事の為の)土筆採集を行うというのは気が引ける。
(ですが今日は土筆をメインにするつもりでしたから、他に用意はありませんし……今から他の場所に行くのも……)
 悩んだ末に姫華は今晩の食事を諦め、改めて別の場所へ行くという事で、明日以降の予定を決定した。
 一日二日、食事を抜く等というのは、別段初めての事ではない。
(そうと決まれば、私も桜を楽しませてもらうことにしましょう)
「運が良ければ、お花見弁当のご相伴に……いえ、騎士たる者、そんな真似できませんわ……!!」
 自分に言い聞かせるように口にして、リベリスタの少女はかぶりを振る。
 そんな人物もいる一方で、屋台で焼きそばとコーラを買って一人でのんびりと花見を楽しむ、守夜のような人物もいる。
 そして、いろいろ考えながら園内を見て回る人物もいる。
「あたし、どちらかっていうと……」
(どちらかも何も、アークでリベリスタとしての基礎講習を終えて、住み始めたのが数日前だから……)
「お祭りを楽しむっていうよりは、アークにどんな人が居るのか見て回る、ってのがやっておきたいことなのよね」
 にぎわう公園の中で、祭りを楽しむリベリスタや職員たちを眺めながら、レイカは呟いた。
(実際は話してみたり一緒に仕事しないと判らないことのほうが多いにせよ、やっぱり顔を知っておきたいかなー)
 そう考えた彼女は公園内を巡りながら、みなの様子を観察する。
(あ、手弁当っていうのも変だけど、飲み物やお酒はいくつか用意して配って周るのもアリかも)
 仕事柄そういうのには慣れている。
(反応を見るっていうと何か企んでるっぽいけど……)
「話すきっかけとかになったらいいなぁ、なんて」
 とりあえず、と考えて……レイカはアクセスファンタズムを取り出す。

「祭りに来るなんて久しぶりっすねー」
(去年も祭りやってたのは知ってたんすけど、ちょいと色々あったばっかだったんで行く気分にはなれませんでしたし)
「しかしまー、それはもういいっす」
 誰かに言い聞かせでもするかのようにアイカは呟いた。
(昨日より明日っつーか、リベリスタ業のこと)
「学校とは別で交友関係も広げていかなきゃですし大変っすねー……」
 そんな訳で彼女は食べ物の屋台を冷やかして遊びつつ、本部で見たことのある人物に声をかけてみた。
「こんちわっす。マルガレーテちゃんでしたっけ?」
 この春からリベリスタ始める逢川アイカっす。
 そう挨拶すれば、フォーチュナの少女は丁寧にあいさつを返してきた。
「世話になると思いますがよろしくですよ」
「はい、私の方こそ宜しくお願いします」
 そう言って頭を下げる彼女に向かって。
「……あー……たしか同い年っすよね?」
 少し迷いはしたものの、それを振り切るようにして……アイカはマルガレーテへと言葉を続けた。
「あたし今すげー暇なんですが……良けりゃご一緒いいすか?」


●夜桜の下で
「約束通り今年も櫻霞様と一緒にお花見ですね。賑やかなお花見も良いものですわ」
 そう言って櫻子が、花が咲いたような笑顔を浮かべてみせる。
「きちんと約束が果たせたようで何より」
 青年はそう言って、穏やかな笑みを返した。
 桜は満開になるのも散るのもあっという間だ。
 今のうちに楽しんでおくべきだろう。
 屋台で買ってきた食べ物を手に、明かりに照らされた桜の傍に歩み寄ると……櫻子は満面の笑みで日本酒とお猪口を二つ取り出した。
「景色が桜色で綺麗ですぅ♪」
「満開ともなると流石に圧巻だな」
「お花見ですから、お酒も持ってきましたの~」
「酒は良いが飲みすぎるなよ、ただでさえ弱いんだ」
 忠告しつつ櫻霞は猪口を受け取った。
 櫻子は嬉しそうに、その猪口へと酒を注ぐ。
「花を愛でるのも良いが、最近は大きな黒猫の世話で忙しい」
 他愛無い雑談をするようにしながら、例え話をするように……櫻霞は櫻子の言葉に対して、丁寧に返事を重ねていった。
「不思議と好いてくれるだけ、答えようとも思えるものだ」
 そんな彼に対して櫻子は……話の内容に不思議そうにしつつも、一生懸命にという感じで言葉を続けてゆく。
「そういえば……櫻霞様はお花見は好きですの?」
 ふと思い当ったという感じで、小首をかしげながら櫻子は櫻霞にたずねた。
「多分、桜の花は好きだと思いますけれど~……」
 そういった彼女に対して。
「無論桜は好きだぞ。花も……お前もな」
 青年はさり気無く買っておいたりんご飴を手渡しながら、優しく囁く。
「は、はぅ……さ、櫻子も大好きですぅ……」
 真っ赤になりながら、りんご飴を受け取った櫻子は、おろおろした様子で猪口一杯を飲み干すと、櫻霞に擦り寄って尻尾を揺らし始めた。
「櫻霞様が暖かい……お花見が終わるまでこうしていたいですぅ……」
「春先とはいえまだ冷える、着ておけ」
 嬉しそうな彼女を気遣うように、そう言葉をかけてから……
 櫻霞は寒くないようにと自身の上着を櫻子に掛けると、微かに目を細め、彼女の頭を優しくなでた。


●あの花見
 時は少し、遡る。
「花見をしよう」
 そんな訳で、風斗は目についた連中に声をかけ、一席設けた。
 難しいことは考えない。
 綺麗な桜を見ながら、みんなで楽しく騒ごう。
 それで良いのだ。それだけで、良いのだ。
(日常が楽しいからこそ、辛い状況にも耐えられるんだから)
 取りあえずお茶やらジュースやらと、飲み物はたくさん用意した。
 飛び入りがきても大丈夫なようにと紙コップ等も多めに用意する。
 その風斗に前に、夏栖斗は持ってきたお菓子を一本、差し出して見せた。
 様々な種類の味付けがされた、けっこう有名な駄菓子である。
 それを彼の目の前で、笑顔で。超笑顔で、勢いよく折ってみせる。
「なんだよ! なにか思うことでもあるのかよ! 風斗君!」
 それに対して青年が、何か反応を返す前に。
「はいはーい、みんな楽しくやってる?」
 差し入れにジンギスカン(生)を持ったソラが、そう言って現れ、風斗の設けた一角に腰を下ろした。
「え? ほら、北の方ではこれが普通とか聞いたから」
 ふたりの視線に気づいたのか、そう言って不思議そうに差し入れを主催に手渡す。
「飛び入り参加きぼーです!!」
 明華はそう言って元気に宣言すると、差し入れを風斗に手渡した。
「伝説の三高平学園高等部卒業生・楠神風斗先輩とご一緒できるとは!」
(こーいうところにはネタがゴロゴロしてるって相場が決まってるよね)
 絶対何か面白いことが起こる! 私はそう確信している!
「先輩の数々の噂は責任を持って広め続けますから安心してください! あ、これコンビニで買ってきた謎のお菓子と考えたヤツ出て来い! って感じのジュースです。チャレンジしてみませんか?」
 すごい勢いの自己紹介と仕掛けに、適度にツッコミを入れた風斗に向かって……メイはデザートとして持ってきた、さくらんぼの一部を手渡した。
 チョイスの理由は、桜見ながらさくらんぼって言う、語呂あわせからである。
 全部を渡さなかったのは、披露する芸で必要だからだ。
 一石二鳥でお小遣いにやさしい……スーパーで安売りしていた、真っ赤で美味しそうな、さくらんぼ。
「うおお、色んな食べ物があるなぁ!」
 皆の差し入れを眺めつつ、木蓮も手土産として持参したモルまんじゅうを差し出した。
「モルの顔の形をしたまんじゅうなんだ、似てるだろ?」
 そう言って1つを手に取って皆に見せる。
 ここまで、どちらかというとお茶菓子が多かった(ジンギスカン生は除く)レパートリーのバランスを取るかのように……うさぎが持参したのは、大量の海苔巻きだった。
「あと、味の濃い物ばかりじゃ胃もたれ起こしますよ。野菜食べなさい野菜」
 そう言って、たくさん持ってきたスティック野菜も、おかん調子で皆に示す。
「飲んで食べて騒いで、全力で楽しまなきゃね。あー……でも未成年の飲酒は無し、そして周りに迷惑を掛けないように」
 教師という職業上というべきか、ソラが皆に注意した。
「責任取らされるのは私になりそうだから……面倒は御免よ」
「私が酔って暴れるとか言うのも無いんだからね、絶対に無いんだからね!」と彼女が前振りしたところで。

「参加者にはひとつ、何か芸をやってもらう!」
 立ち上がった風斗が宣言した。
「親睦を深めるためだ。例外はないぞ!」
「おっと、まさかの一発芸要求!!」
 合いの手を入れた明華に頷いて皆を見回す風斗と同じように、シーヴも興味深そうに皆を見回す。
「芸ってなにするんだろう?」
 心地良い陽気で桜もきれいだからと歩いていた彼女は、面白そうだからという理由で、メリッサと一緒に参加したのだ。
 偶然ぽい感じもあるが、メリッサの方は風斗が花見をすると知って参加したのである。
 もっとも、彼女としては芸という部分には難しいものを感じていた。
「一芸、ですか……」
 自分には剣しかないが、先輩にお見せ出来るような技量のものではない。
(紅茶を振る舞うくらいなら……)
 彼女が悩んでいるうちに、他の者たちは次々と芸を披露し始めた。
「一発芸ねぇ……早飲みでもやりましょうか」
 こういう時に備えて鍛えているのよと言いながら、ソラが早速スキルを使用する。
「お花見だよ。宴会だよ。とにかく食べて騒いで遊ぶんだよ」
 お酌とかしていたメイは自分の番になるといろんな器用さを活かして、さくらんぼの茎を舌で結ぶという物を披露してみせた。
 これが出来るとテクニシャンだという話を聞いているけれど、それがどんな意味で言われているのかを、勿論メイは知らない。
 みなが色々と順に出し物をする中で、夏栖斗はオーソドックスに手品を披露することにした。
(あの指が移動する的な、子供だましのあの手品で!)
 ブーイングは甘んじてうけよう! きっとミミルノあたりが喜んでくれるはず!
 そんな感じで始めた彼の出し物で実際、幾人かは驚きの声を上げる。
「んん、こえがおくれてきこえるようなきがする……どうですか! かなーり上手くできたと思うんですけど。え? 何? 全然伝わらない? そんな馬鹿な!!」
 明華の腹話術っぽい何かにも、大きな声をあげて。
 皆の芸を楽しみつつも……ミミルノは、こしたんたんと機会を窺っていた。
(ミミルノのこんかいのもくひょーはっこ!! ふーとをうめるっ!)
 さくらのはなびらでうめるっ! ひたすらうめるっ!
 埋めるための桜は、散った花びらを集めて用意してある。
「いっぱいばさーっとしてな!」
 そう言って協力してくれた木蓮ほか、幾人かの助力があったおかげで、埋めるための花びら集めにはそれほど時間はかからなかった。
 それを隠し、ひたすら隙を窺って……
 風斗が拍手をしている時をねらって、ミミルノは後ろからバサー!! っと青年に桜の花びらをかける。
「にふふふ~これではーれむまじんはたいじしたのだっ!」
 満足そうに言った彼女は、そのままぴゅーん! と勢いよく駆けていった。
 それに拍手してから木蓮が、芸として「モクレーンミキサー」を披露する。
 若い方々に分かり易く説明すると、対象に突進して角で巻き上げるという技だ。
「暴れ牛もびっくりなくらい雄々しくカッコよくやるぜ!」
 技を受ける役として人形も用意してきたが、協力者がいるなら協力してもらおうと木蓮は思っていた。
 もちろんその場合は相手が怪我をしないように、ソフトな感じに対応しようと考えている。
 技を繰り出すうえで重要な事だ。
「私は何しよう……あっ、銃で林檎を剥くのですっ」
 そう言ってシーヴが林檎真上に放り投げて、力を籠めた魔導銃を向けたものの……
「ひゃぁ、背中にっ、ちべたいっ><」
 リンゴだったものが落下してきて、シーヴは残念そうな呟きを漏らす。
 みなが様々な芸を披露する、そんな中で……うさぎが選んだのは、怪盗スキルまで使った(無駄に)本格的な物真似だった。
「……!? うさぎのそれは物まね、なの、か? すっげぇクオリティだ……!」
 木蓮がそう称賛する、というか……ぶっちゃけ一般人だとほぼ見抜けない本物そのままの恰好をして。
「ちちむねふとももー!」
 うさぎが変装(変身)した風斗はそう叫んでから夏栖斗の姿へと変わり、今度は風斗に色っぽく抱き付く。
「え、風評被害? 肖像権? 何ですかそれ。惣菜?」
 そんな事を言いながら元の姿に戻ったうさぎに向かって。
「ごめんごめん! よろけちゃったい><」
 軽くぶつかった夏栖斗が、うさぎを風斗の方へとよろめかせた。
 ついさっきとは違って死ぬほど動揺したうさぎの様子に全く気付かない様子で、別の芸に拍手を送った風斗は、それでは自分は芸として重量挙げを宣言する。
 荷代わりにと重そうな人を探したものの大きな違いはなさそうと考えて、風斗は取りあえずという感じで近くにいた夏栖斗とうさぎを捉まえて担ぎ上げた。

「せっかくですし、ティータイムと行きましょう」
 皆が一通り芸を披露したところで、メリッサはそう言って、湯を沸かしミルクティーの準備を始める。
「あ、メリッサおねーさんの紅茶入れるの綺麗っ、おいしそうっ!」
 飲みたいのですよーと、シーヴが目をキラキラさせた。
 水と茶葉は十分に用意してあるからと、メリッサはシーヴと風斗に最初に……そして他のみなにも順に紅茶を配っていく。
「お気に召したら幸いです」
 改めて、これからよろしくお願いしますと風斗に挨拶して……
「どれもこれも春のいい思い出だぜ」
 皆の姿や桜を写真に収めながら、木蓮が呟いた。
「こういうふうに桜をみてみんなではしゃぐのは楽しいよな!」
「……そうですね。こういう馬鹿騒ぎは楽しいです……本当に」
 夏栖斗の言葉に、うさぎが相槌を打つ。
「また来年もこんなふうにみんなでいれたらいいな」
「ええ、きっと来年も皆でまたこうやって騒ぎましょう」
 続いた夏栖斗の言葉に、再び頷いて。
 うさぎは……呼びかけた。

 約束です。
 絶対ですよ?



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
御参加、ありがとうございました。
みなさまが心地良いと感じられる時を過ごせたのでしたら、嬉しいです。

それでは、また御縁ありましたら……
来年の春も皆様とお会いできることを、祈って。