●バキューンでズキューン 彼は所謂『殺し屋』と呼ばれる存在である。 神秘の力があれば、一般人の暗殺などいとも容易い。革醒者の場合はそうはいかないが、それでもまぁ不可能ではない。実際に何度も経験している。 今夜もまた、大量の札束と引き替えに一人殺した。「私のこと散々弄んだのよ」とヒステリックな女の元彼氏。一般人。仕事はすぐに終わった。凄くすぐに終わったので、今殺し屋は近くの公園のブランコに腰掛けポーッとしていた。 殺す事に罪悪感とかそういうのは一切ない。仕事だし、需要があるから供給するし、お金だってキッチリ貰う。殺意があったのは殺し屋ではなく依頼主。依頼主が射手ならば彼は銃。引き金を引かれたから弾丸を吐いただけ。 しかしブランコを揺らす殺し屋はメランコリィだった。 孤独。孤独なのである。 家族も友達も恋人も居ない。淡白な関係、人を殺して金を稼ぐ、淡白な日々。 「チューリップ……お前達はいいよなぁ。仲間が居て……」 視線をやった花壇には、並んで咲いたチューリップ。赤白黄色。奇麗だな。見詰めていた。その視線の先で。 もぞり。 チューリップが蠢く。蠢いて蠢いて、大きくなって―― ト モ ダ チ 。 ●友情1000万パワー 「春ですな皆々様! 花粉症の方には辛い季節でしょうが、温かくなって過ごしやすくなってきたものです」 事務椅子をくるんと回し、振り返った『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が集った一同を見渡した。 その傍ら、卓上には小さな植木鉢と一輪のチューリップ。可愛いピンク。つやつやの花弁。 「さて、今回の任務はこの――チューリップが革醒したEビーストを3体ほど討伐していただきますぞ」 言葉と共に展開されるメルクリィの背後モニター。何処にでもありそうな、街中の小さな公園。昼間は子供で賑わうだろう一般的な公共空間。かのエリューションはそこに出没するのだと機械男は言う。 「Eビーストはフェーズ2が1体、フェーズ1が2体。フェーズ2の方が一際大きいので見分けはラクですぞ。 彼等は植物がモトですが、地面からは完全に独立しておりますぞ。球根がコアのようですが、それはかつて葉っぱだった部位が装甲の様になって隙間なく強固に護っております。狙うのは困難でしょうなぁ」 まぁ、コアを攻撃しないと絶対に倒せない、という相手ではないのでコアに拘らないのも戦法の一つかもしれない。 さて。メルクリィが一間を空ける。 ここまでならば極々普通の任務なのであるが。 「ちょっとだけ妙な事が。実は、このEビースト。皆々様が現場に到着した時は覚醒者と遊んでおりますぞ。件の革醒者は金次第でフィクサードにでもリベリスタにでもなる存在、所謂『フリーの殺し屋』でしてな、事情は良く分からないのですが……こう、Eビーストと意気投合してしまったみたいでして」 Eビーストも知能やそういったものはない筈だが、奇跡的に、本能的なサムシングで意気投合したのかもしれない。 例えば、孤独を埋め合う的な……。例えば、覚醒者の想いが革醒の切欠になった可能性とか……。 「兎角、革醒者はEビーストの味方をしますし、Eビーストもその革醒者には手を出しません。オーダーは『Eビーストの殲滅』ですので、彼の対応は皆々様に委ねましょう。決して雑魚ではございませんので、そこはお気を付け下さいね!」 それでは、とメルクリィは説明を締め括る。ニコリとその凶相を笑ませ、リベリスタ達を一望した。 「私はいつもリベリスタの皆々様を応援しとりますぞ。行ってらっしゃいませ、ご武運を~」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年04月05日(土)23:22 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●春ですね はははっアハハハハ。ふふふふふ。 夜の公園に響くのは楽しそうな笑い声だった。深夜の公園に中年男性の笑い声が響いているだけでもう案件モノだが、その声の主こと鶴舞・ハラランボスが3体のバケモノチューリップと楽しそう~に遊び戯れているのだから……なんともまぁ。 傍から見たらシュールだ、と『愛情のフェアリー・ローズ』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)は思った。 「でもそれだけ、ハラランボスの孤独が深いっていう事なんだよね、きっと」 「殺し屋も人の子と言う訳ですか、孤独には勝てなかったと。しかしだからといってチューリップと通じ合ってしまうとは神秘的過ぎるでしょうに」 意外とロマンチストな方なのかしら? アンジェリカの言葉に応えた『聖闇の堕天使』七海 紫月(BNE004712)は珍妙なものを見る眼差しを件の光景に向けている。『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)も目をぱちくりさせていた。 一方で、何処かアンニュイに煙草の煙を吐き出したのは『足らずの』晦 烏(BNE002858)。 「おじさんね。鶴舞君の気持ちが判らんでもないのよな」 定年退職後に自分の居場所が無い事に気付くサラリーマンと似た様な系統のメランコリック。おそらくそれだ。仕事人間が我に返った際に陥る職業病ってやつかねぇ、と腕を組んだ烏はしみじみと呟いた。その間にもハラランボスの楽しげな声が響く。回転ジャングルジムでEビーストと一緒にぐるんぐるん回っている。 「神秘害がなければこのまま見守ってたいんだがなぁ」 仕方ないのよね、と『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)。印を結んで人を寄せ付けぬ強固な結界を周囲に展開する――と、それに気が付いたのか、チューリップ達が一斉にリベリスタへ振り返るやギャシャーッと威嚇を行ってきた。ハラランボスもハッと振り返る。 冥府の鎌の黒少女。 アークの生き仏。 WWⅡの亡霊、『魔弾の射手』と謳われた狙撃手の技を持つと噂される三角頭の狙撃手。 戦場を奏でる者。 聞いた事があった――アークだ。リベリスタだ。殺しに来たのか。後ずさる数歩。 そんな彼を呼び止める声があった。実際の音である声ではなく、念波の声だが。 『仲間のいる前なので「口」にはできませんが、御苦労さまです「ご同業」』 ハイテレパスの声の主は、唇を一文字に結んだままハラランボスをじっと見詰める『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)。 『寂しさを紛らしたいのならわたしが友達になるのでは如何か。何なら一夜の伽の友でもいい、わたしがあなたの趣味に合うかは自信がありませんが』 「冗句は止してくれ。俺は肉体関係が欲しいんじゃない」 『純情なんですね』 「だといいな。世の中、女が欲しいなら金を使えばどうとでもなる」 『まぁそれはさておき、アークから頂いた情報からあなたは仕事と自分に誠実な方だと信じております、冷静なご判断を』 「やはりアークなのか。……じっとしてろ、って事なのかい?」 『話が早くて助かります。敵に回るのなら手加減は出来ません。こちらも仕事なので。ご同業ってバラしちゃったのであなたの身柄をアークに渡したくないんですよね。なので無傷でお帰りいただくか、口を封じさせていただくか』 「脅しか……リベリスタってのは物騒なんだな」 『ええ、まぁ、そうですね。……どうか冷静なご判断を』 「俺は冷静だよ、多分な」 尤も、彼の『友達』はそうもいかないようだが。獰猛な唸り声。二体のチューリップ嬢、そして一際大きなチューリップ姫がリベリスタ達に襲い掛かって来る。一番最初に動いたのはチューリップ姫だ。鞭の様にしなる葉を振り回し、アンジェリカとフツを強かに打ち据える。 「「!!」」 咄嗟に武器を構えて防御しようとしたものの、凄まじい勢い。弾き飛ばされる。それに続けと言わんばかりにチューリップ嬢が刃状の花弁を撒き散らしてリベリスタ達に攻撃してきた。 散る鮮血。肌の裂ける感触――されど紫月は妖艶不敵に微笑むのだ。それがカッコイイと思っているからだ。 「真の『戦場の華』はどちらが相応しいか――勝負と参りましょう。いざ、光と混沌の翼をここに!」 おほほほほ。高笑う紫月が片手を天に掲げれば、皆の背に生まれる神秘の翼。能力の底上げは勿論だが、カッコ良さもバッチリプラス。抜け目ない。因みにもう片方の手で近くに居たあばたのお腹(腹筋バッキバキでモナカアイスの如し)をもふもふナデナデさすさすスリスリもみしだいている。 「それにしてもあばた様の、この見事な腹筋……嗚呼、素晴らしいですわぁ!」 「……」 あばたは真顔である。まぁ、これで紫月のモチベーションとかがマシマシになって任務がジャンジャカ円滑に進むなら良しとしよう。 「ええと。そろそろいいですかね? 敵の範囲攻撃に巻き込まれてしまったら元の子のクソもミソも無いので。同士討ちとか笑えませんし」 「続きは後のお楽しみ、ですね。合点了解ですわ!」 紫月は最後にあばたぽんぽんをもふっとして、散開。 普段は子供達が平和に遊んでいるのだろう公園をフルメタルの小さな女が銃器を両手に駆けている。傍から見ればこんな化け物、きっと石を投げられるほどシュールに違いないと思いながら。あばたは怪銃シュレーディンガーとマクスウェルをチューリップ姫へ――憎き『神秘』へと向けた。支配の指にて引き金を引く。鉄の眼光は獲物を逃がさない。罠網の弾丸がチューリップ姫を絡め捕り、縫い止める。 「良ぉし」 烏は好機を逃さない。二五式・真改をチューリップ達に向ける。複数の標的を同時に捕捉。そして鼓膜を劈くほどに銃声が響いたのは複数の銃声がほぼ一度に轟いたからだ。正に神速。 その銃声の残滓が響き終る前に、アンジェリカも動き始めていた。先ほどチューリップ姫の葉の一撃を受けた場所からは赤い血が滲んでいるが、戦えないほどの傷ではない。小さな両手で握る巨鎌La regina infernale、その蝙蝠羽根の刃に刻まれた冥界の女王に祈りを込めれば、血色の光が戦場を遍く照らし出す。チューリップ達を焼いてゆく。特にあばたの罠弾に捕らわれていたチューリップ姫には大きな効果を齎した。 「君達の相手はボク達だよ」 敵を見据えるアンジェリカの、赤い瞳。その視界の端、ハラランボスは困惑していた。先ほどからリベリスタが『敢えて』自分を攻撃対象にしていないからだ。それに加えて先ほどのあばたの言葉。リベリスタはEビーストを討つ気だが、自分に手を出すつもりはないらしいと理解する。 だけども、だ――リベリスタの苛烈な攻撃に悲鳴を上げる友達(チューリップ)を見ると、居た堪れない気持ちになる。分かってる、リベリスタの仕事とか崩界の危険性とかそういうのは分かってる、けれども、けれどもけれども。トモダチ。 「や、やめろぉおおーーーー!!」 思わず。感情的に。そんな言葉が似合う行動だった。構えた仕込み銃から放つハニーコムガトリング。そしてステップ・キル。躱した者へは跳弾が襲い掛かる。 烏は後学の為にとそれを見た。見た結果。ハラランボスは精密スナイパーというより立ち回り重視の前衛銃士。跳弾によって射撃の精密さを補っている。当て損ねるってのは余り無いんだが、と烏が自分自身を思った通り、ちょっと烏には『水が合わない』ようだった。 「いててっ……お前の気持ちも分かるけど、止める訳にはいかないんだ」 一方で、弾丸に穿たれる痛みに顔を顰めつ、フツは印を結ぶ。緋は火。緋は朱。招来するは深緋の雀。 「これぞ焦燥院が最秘奥――」 朱雀招来。擬似的に創り出された赤い聖鳥が戦場を羽ばたき渦巻いた。燃え盛るは、紅より深き緋。全てを焼き清める浄化の炎。 やはりそれはチューリップだけを狙い、ハラランボスは傷付けない。そんな彼に、烏は銃声を休めずに声をかけた。 「友達が欲しいなら、アークに来たらどうかねぇ? 今ここで敵対しても意味はないし、お前さん中々に良い腕してるしフリーだし、アークってば社会不適格者の集まりでもあるわけで、朱に交われば馬が合うともいうもんな。 ……それにアークの中にも友達少ない奴が多いもんでさ。アークに来てくれてそういう奴らとも友達になってくれるとおじさん嬉しいね」 『裏稼業は確かに孤独ですがコネと情報網はある意味表稼業より大事。現場でご一緒は出来なくとも「仲良くやる」方法はあるはずです』 烏に続いてあばたが、再度ハラランボスの脳内に語りかけた。うぅ、と奥歯を噛む殺し屋からは敵意も悪意も感じられない。それ以上リベリスタを攻撃しようとしてくる気配は見られない。その態度は『どうか迷っている間にカタを付けてくれ、そうすれば踏ん切りがつく様な気がするから』と受け取る事もできた。 捕縛を引き裂き、その勢いのままミリィの身体を食い千切ったチューリップ姫が金切り声をあげる。ハラランボスに攻撃せず、リベリスタに敵意を向ける。そんな花を、アンジェリカは真っ向から見澄まして。 「あの人の孤独を癒してくれた、君達は優しい花なんだね。それでも、ボク達は君達を倒さないといけないんだ」 エリューションである以上は放っておく訳にはいかない。たとえチューリップの『友達』に恨まれ憎まれたとしても、許しは請わない。後悔もしない。それはきっと、殺し屋とチューリップに失礼になるからだ。だからアンジェリカは最大の敬意を抱く。この優しい花達に。 「ボクの力、全部を出し切るよ」 振るわれたチューリップ姫の葉ウィップを跳躍して躱し、そのままアンジェリカは滑り台を足場に飛び出し宙を舞った。 嗚呼、プロセルビナよ、冥界の女王よ、死と再生を統べる者よ。少女は祈る。願わくば、この優しき花達が、孤独な男の孤独を癒す存在に生まれ変わりますように。 刈り取った魂の幸福な転生。光と共に、落下と共に、巨鎌の五重斬撃がチューリップ姫を致命的に切り裂いた。どれほど装甲が強固であれどこの『必殺』の前には紙と同じ。切り裂かれた花弁がはらはらと舞い散った。黒髪を靡かせたアンジェリカの着地。残るは、二体のチューリップ嬢。 チューリップ姫の魅了爆弾は紫月がすぐさま治癒魔法によって打ち消したり、個々で警戒したりとした為に大きな被害になる事はなかった。ハラランボスへのアプローチも成功したようで、彼が攻撃をしてくる気配も無い。戦況はリベリスタの圧倒的優位。 「勝利への道は見えましたわ。さぁ、終焉へのカウントダウンを始めましょう!」 紫月が激励の言葉と共に施す大いなる治癒。それは戦いが始まった時からリベリスタ達を治し癒し励まし続け、戦線を強力に支えていた。ほーほほほと響かせる笑い声とカッコイイポーズと共に溢れ出す光と輝き。光と闇という対極の力の融合が混沌のうにゃむにゃ。なのである。威風堂々。 「さって、残党狩りと行きましょうか」 文字通り消化試合ですね、と続けながらあばたの双銃がチューリップ嬢に向く。花弁カッターが肌を身体を容赦なく切り裂いてくるが、それっぽっちじゃ彼女の銃口は怯まない。垂れた血が目に入ろうと目蓋を閉じない。どんな相手であろうと何であろうと天地がひっくり返っても仕事は仕事、お仕事だ。手抜きしない。それがビジネス。お仕事だ。 BLAM BLAM.銃が火を噴く。正確無比。螺旋を描いて唸り飛ぶ弾丸がチューリップ嬢の花を茎を葉を穿ち穿つ。吹き飛ばす。 「どんなもんですかね」 「ン。そろそろ狙えそうな気はせんでもないなぁ」 硝煙と紫煙。烏の肺を満たすのはいつもの戦場の香り。あばたの言葉に応えながら射手は標的をじっと見詰める。話しているのはチューリップ達のコアについてだ。 「オッケイ。んじゃちょっと、手荒だが引っ剥がしてみるよ!」 フツがアンジェリカへアイコンタクトを送った。水平に構えた鎌でチューリップの噛み付きを防御していた少女がこくりと頷く。 二人は同時に精神を練り上げる。繰り出すのは、赤い色。赤い紅い赤い赫い、赤い色。嘶く朱雀が、不吉な滅びの紅き月光の中を飛翔した。劫火の飛翔。紅蓮の夜。鮮烈に、そして強烈に、世界が赤く染まり切る。 焼いて、灼いて。異形達の鋭い悲鳴。ボロボロと剥がれる装甲。 その間隙。 僅かなれど、射手は見逃さない。 「――見えればこっちのもんさね」 言葉の頃には、烏は二五式・真改の引き金を引いていた。弾丸、二つ。それらは真っ直ぐ、まるで吸い込まれる様に――チューリップ嬢達の装甲の隙間を縫い、そのコアたる球根へ。直撃。 チューリップ嬢達が大きく仰け反った。そして、倒れこむ。 やったか――否。一体だけ、僅かに、蠢いた葉。擡げた花弁。 紫月は、尚も戦おうとするチューリップにそっと微笑んだ。その白い掌を向けながら。 「おやすみなさい、光と闇に抱かれてお眠りなさいな」 闇で紡いだ、閃光一閃。終わりの一撃。 ●ちゅーりっぷりっぷ チューリップの亡骸の傍にしゃがみこみ、ハラランボスはションボリの極みだった。フェイト無きエリューションがこの世に害を成す事は分かっているし、リベリスタのやるべき事も理解している。それでも、だ。ションボリなのだ。 その背を、そしてチューリップを見守りつ、アンジェリカは歌を紡ぐ。鎮魂歌。ただ一滴、密やかに涙。散った花の、魂の安寧を願って。 フツはハラランボスの傍らにしゃがみこむ。 「オレはフツ、アークの焦燥院フツだ。なァ、殺し屋やるのやめてさ、これからはリベリスタとして生きるってのはどうよ。お前さんの腕なら大歓迎だぜ」 「……。NOって言ったら殺すのか」 「いや、そんな事しないよ」 敵視こそされていないものの、ハラランボスはどうも今はそんな気持ちじゃないらしい。 その意思を紫月は否定したりはしない。彼の傍にて、言葉をかける。 「貴方はなぜチューリップなどに……」 「……。普通に考えれば変だよな。チューリップに、しかもエリューションに」 それでも惹かれる何かがあったのだろう事は、ハラランボスのションボリ具合を見れば明らかだ。それを慰める様に紫月は仄かに笑い、 「知ってます? チューリップの花言葉、博愛や恋の宣言なのですよ? ふふ、一時の寂しさに惑わされましたか?」 「そうかもしれないな……いや、そうなんだろう。すまなかった、迷惑をかけた。ありがとう」 「どういたしまして。しかし、わたくしに恋心なんて向けられても困りますわよ? だって各色の花言葉は実らぬ恋、失恋ですもの……ふふっ」 微笑む紫月につられるように、ハラランボスもちょっとだけ笑った。どん底からは多少立ち直ったらしい。 「どうあれ、この後呑みにでも行くか」 そんな肩に、烏はポンと手を置いて。 「あれだ、色々と溜まっている鬱憤もあるだろうし、酒でも酌み交わしながら色々と聞かせて貰うさ」 今日はおじさんおごるんでね。そう言うと、上げられたハラランボスの顔。 「……何でそんなに親切にしてくれるんだ」 「そうさなぁ。友達だからかな」 「友達……」 「そうそう、友達」 「リベリスタにならなきゃ友達にならんぞというアレか」 「そういうのは本当の友達とは言わんよ。ささ、続きは呑みながらでも」 そんなこんなで、二人の射手が夜の街に消えてゆく。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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