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剣禅一如修行列伝

●剣禅一如
 境内にある大きな巨石が真二つに割れていた。周りの木々があまりの衝撃の強さに根こそぎなぎ倒されている。地面には踏み込んだ足跡がしっかりと残されていた。
「この一撃を放った奴は只者ではあるまい」
 真田菊之助翁は無残にも砕かれた巨石を見て思わず呟いた。傍らにいる弟子の蒼乃宮静馬も境内に残された爪痕を鋭く睨みつけている。
 京都の山奥にある神社の奥の宮でエリューション化した御神木や御神石が発見されたと知らされて二人は山奥にやってきた。
 噂では誠を掲げるフィクサード組織の『新選組』の局長と陶芸家を名乗る謎の大男がつい最近までこの辺りに潜伏して剣術の修行を行っていたという。
 境内には至る所に凄まじい破壊力で潰された巨石の欠片や大木やクモの巣状になった地割れなどが散乱していた。元フィクサードで現在はリベリスタをしている実力者の真田たちも思わずしり込みするような惨状だった。
「一足遅かったか……だが、果たしてそれでよかったのかもしれない」
 静馬は冷静に物事を考えた。仮に彼らに遭遇したとして戦って勝てる相手だったかというとこの状況を見るなりかなり心もとない。
 真田は静馬に暫くの間この山奥に篭もって修行することを提案した。エリューション化した御神木や御神石は強靭な精神力と集中力をもってしないと斬れない代物だった。今のままでは剣が跳ね返されて太刀打ちすることができない。
「己の誘惑や欲望に打ち勝ち、自己を律し何事にも只惑わされず――剣術を志す者は剣を振るう前に己の心を鍛えねばなるまい。剣は腕で振り回すのではなく心で斬るもの。禅と同じく心を鍛錬すればこの御神石は必ず斬れるようになる」
 翁が視線を向けた先にはまだ斬られていない先ほどと同じ大きさの夫婦石だった。まるで大きな岩壁が行手を阻むように目の前に立ちはだかっていた。

●強靭な精神力
「貴方達にはしばらくの間、京都の山奥で修行をしてきて貰うわ」
 『Bell Liberty』伊藤蘭子(nBNE000271)が髪を掻き上げながら集めた資料を元にしてブリーフィングルームのリベリスタ達に状況を説明した。
 つい最近までとあるフィクサードが修行していた跡地に数多くのエリューション化した御神木や御神石が発見された。動かない相手をただ斬るだけの簡単な仕事のように見えるが、エリューション化した御神石は強靭な精神力と集中力をもってしか斬れないような仕組みになっている。強靭な精神力や集中力を高めるためには修行するのが効果的だ。
「今回は地元のリベリスタの二人が先に当地で修行しているから彼らに援助して貰いながら心の鍛練や武器の扱い方などを鍛練してくるといいわ。最後に修行の成果を是非発揮してエリューション化した御神石を見事潰して来て頂戴ね」
 蘭子はそう言って笑顔でリベリスタ達を見送った。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:凸一  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年04月07日(月)23:31
こんにちは、凸一です。

今回は、修行です。
技術は基より精神力も重要になってきます。
高いレベルを目指して各自修行に励んで下さい。

それでは、以下は詳細です。
よろしくお願いします。

●任務達成条件
修行をして最後にエリューション化したゴーレムを全滅させる


●場所
京都の山奥にある奥の宮の境内
境内には短期滞在できる御堂の道場やエリューションゴーレムのある杜、さらに杜の奥には滝などがあって集中して修行できる環境にある。ただし食料は自足時給の生活。


●修行内容
 修行は以下の種類で構成されており、どれかを選んで(複数を選ぶのも可)各自で修行を行う形式。武器は各自の普段使用している物を使うが日本刀などの刃物系武器の貸出もある。
一 精神修行
 滝の下で座禅を組んで精神統一する。何事にも動じない集中力を身につけるのが目的。
共に座禅をしている静馬よりも長い時間足をしびらせず風邪を引かずに座禅を組めることを目指す。ちなみに彼は5時間耐え続けることができる。その間は少しでも手足を動かしてはいかず、雑念を抱いて身体を少しでも動かすと見張りをしている翁の鉄拳制裁が容赦なく飛んでくる。
ニ 武器修行
 地面に等間隔に並んだ大量の藁の巻かれた丸太をスラローム状に突進しながら次々に斬っていく。少しでも角度や力を入れ過ぎると切れる前に倒れてしまう仕組みになっている。この修業では、力任せに叩き斬るのが目的ではなく正しい姿勢と角度で武器を撃ちこめば、少しの力で効率よく斬ることができることを身につける。
三 乱取り修行
菊之助もしくは静馬を指名して剣道の乱取りをして相手から一本取る。乱取りは峰打ちでダメージを受けないように配慮されているが、油断して集中力を切らすと思わぬ怪我もある。菊之助は回避カウンター型で静馬はスピード重視の一撃必殺の戦い方。

四 その他(自由教習)
各自で苦手なものを克服するために自由に内容を設定して修行する


●協力者(同行リベリスタ)
元『隠密御庭番衆』のフィクサードで色々な武器の扱いに長ける真田菊之助翁と二刀小太刀を武器とする蒼乃宮静馬が一緒に修行をする。アドバイスを請われれば丁寧に指導してくれる。
上手く最後に任務が達成できれば静馬の趣味である渋茶が振る舞われる。


●修行の成果(エリューションの破壊)御神木10体&御神石1体
 修行した後は、最後に境内にあるエリューション化した複数ある御神木をひとりずつ斬っていく。各修行で目標基準に達していれば容易に切り崩すことができる。ただし、一番大きな岸壁のような御神石はエリューション化する以前から数々の剣士が挑戦して斬れなかったという伝説の言い伝えがある。他のゴーレムよりもかなり頑丈であり並々ならぬ技術と精神力を要するために複数人で協力して斬っても構わない。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ハイジーニアスデュランダル
新城・拓真(BNE000644)
アークエンジェインヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ハイジーニアスダークナイト
山田・珍粘(BNE002078)

リセリア・フォルン(BNE002511)
ジーニアス覇界闘士
ミリー・ゴールド(BNE003737)
ハイジーニアスマグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)
ヴァンパイアデュランダル
双樹 沙羅(BNE004205)
フライエンジェインヤンマスター
エイプリル・バリントン(BNE004611)

●精神の極地
「真田菊之助という者だ。諸君らの参加を心より歓迎する」
 リベリスタが到着すると先に修行を行っていた真田菊之助翁が手を止めた。構えていた剣を懐に締まってリベリスタ達の方へ向き直る。
「……今回はお世話になります、真田翁」
 『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)が頭を下げる。
 ふと、後ろに控えていた蒼乃宮静馬と目が合った。
「あの後、どうしたかと思ったがな。壮健そうで何よりだ」
 拓真は僅かに笑って静馬に声を掛けた。
「あの程度の斬撃で俺は死なない――それがお前の甘いところだ」
 静馬も軽口を叩いて答えた。先日の鬼蜘蛛との一件で拓真と静馬は死闘を戦った。その時に大きく切り裂かれた傷は今も静馬の胸に大きく刻まれている。
「怪我はもう大丈夫な御様子ですね」
 『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)もその時、間近で闘いを見守った当事者だ。あの後、静馬はどうしたかと心配していたが無事に再会出来て嬉しく思う。
「諸君らには儂らと共にしばらくの間、修行して貰うことになる。当然の事ながら修行は甘えや油断は許されぬ」
 菊之助はリベリスタに厳しい口調で説いた。修行の成果であるエリューションの破壊を目標に各自が設定した修行に励むことになる。
「この修行って全部まとめて一つの流れになってる気がするんですよね。滝で得た集中力で、丸太を斬り。そうやって得た技術を実践して高めるといった所でしょうか?」
 『グラファイトの黒』山田・珍粘(BNE002078)が菊之助に質問する。
「ほお、これは期待が持てそうだ」
 菊之助が関心して大きく頷いて見せた。
「それでは俺に付いて来い」
 静馬が早速厳しい視線でリベリスタに言い放つ。
 一行はすぐに境内の奥へと入っていく。険しい山道を延々と歩いてようやく到着した先に待っていたのは大きな滝だった。
 崖の上から真っ逆さまに大きな白い飛沫が落ちてきている。
 静馬は着ていた服を脱ぎ捨てて滝の中へと入っていく。『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)も遅れまいと静馬の後に続いた。
 滝の中に入り込んだ瞬間、激しい濁流が頭から襲いかかってきた。
 押しつぶされそうな痛みに思わず逃げ出しそうになる。
「俺よりも長くここで座禅を組んでいろ」
 静馬はただ一言、発した後は目を閉じて瞑想の中に入った。
 拓真も負けているわけにはいかない。静馬の横に座って早速座禅を開始する。雑念を振り払ってひたすら平生を保ち、心と身体を自然と一体化させるように務める。
 時間はすぐに過ぎ去っていく。珍粘はすでに足の痺れと冷えた身体の痛みに襲われていた。
 だが、途中で諦めることは許されなかった。近くで監視をしている菊之助翁が竹刀で少しでも身体を動かすと容赦無く背中を叩かれるからだ。
 珍粘は思い留まる。全ての修行を志したからには途中で止めてはいけない。
 ユーヌもすでに身体の感覚が無くなってきていた。先程から身体の痺れが麻痺してしまっていて痛いのか寒いのかもわからない。
 ただ感じるのは自分がここにいるということのみ。滝に打たれて反発する筋肉の動き、呼吸とともに動く筋肉が手に取るようにわかる。
 重心がずれないように修正しながら極限の集中力を高める。無駄に力が入って疲労が蓄積しないようにユーヌは精密動作を只ひたすら繰り返す。
 続ける時間が重要なのではない。ただやるかやらないかだ。
 ユーヌはすでに自身の身体の動きを見極めていた。細かな筋肉を制御してこれで十分と思った時にユーヌはゆっくりと目を見開く。
「よし、滝修行はこれまでだ」
 静馬の終了を告げる声が辺りに響き渡る。
 太陽はすでに暮れて夜空に満点の星がすでに瞬いていた。

●鍛練の刃
「次は藁斬りをやって貰う」
 菊之助が武器の扱い方を簡単に説明して各自に日本刀を配る。初めて扱う日本刀にエイプリル・バリントン(BNE004611)は興味深く見入った。
 まずは正しい姿勢と角度で日本刀を扱えることを目指して斬ってみる。
 だが、日本刀は藁を斬るどころか突き刺さることさえ容易ではない。何度か試してみたが、突き刺さるところまではいくが斬るという所まではいかない。傍らでは珍粘も慣れない日本刀の扱いに苦闘していた。取り敢えず翁の言うとおりに正しい姿勢で素振りする。
 エイプリルと一緒に千本素振りをした頃にはくたくたに疲れきっていた。
「腕に力が入りすぎておる。もっと力を抜いてまっすぐに刃を立てろ」
 菊之助がお手本を見せると丸太はいとも簡単にスパッと切れ落ちた。無駄な動作が一切なく構え方から振り下ろすに至ってとてもスムーズだった。
 エイプリルは修行を再開した。徐々に角度を付けながら丸太の芯を狙って振り下ろすようにすると程なく斬ることができるようになってきた。
「魔道以外の修行・鍛錬は初めてじゃの。他の修行をすることで、次の魔道修行に活かせるかも知れぬな。ともあれ、新しく始めるのは楽しみなことだ」
 『大魔道』シェリー・D・モーガン(BNE003862)は楽しそうに言った。直後に全身にマナを滾らせ魔陣展開し、気合を入れ挑む。
 自らの杖の刃先に神秘の刃を纏い刀として準備を整えた。
「切れ味は抜群じゃぞ、妾の魔力が全てこめられておるからの」
 自信たっぷりに言ってシェリーは思いっきり振りかぶって丸太に斬りかかる。
 力任せに振り下ろされた剣先は丸太に突き刺さったままびくともしない。だが、これはシェリーの想定範囲内だった。まずは実際の強度をこの目で確かめる。
 理屈を知っているのと実際に試すのでは違いがあって当然だ。
「腰の振りとウェイト移動のタイミングがイマイチわからぬのじゃ」
 シェリーは菊之助に相談して腰のひねり方と武器の握り方をまず教えて貰う。もう一度同じように構えて振り直すと今度は先程に比べてスムーズに刀が出た。
「ちなみに、妾は利き手の右腕が左腕よりも1cm長いのじゃが?」
 シェリーはまだ納得がいかずに翁に続けて指導を受ける。
「右腕に力を入れずあまり振り回さずに自然に刀が前に出るようにしろ」
 翁の言葉を元にしてシェリーは撃ちこむ角度と力を抜くことを意識して丸太に挑む。
「日本刀を一本、お借りします」
 リセリアはいつもとは形状や重さの違う日本刀に興味があった。実際に手にすると剣とは違った重心のバランスがある。振り回してみると風を斬るような音が出た。
 等間隔に並んだ丸太をスピードを生かして切り裂いていく。次々に斬られた丸太はわずか一本だけを残して続けざまに斬り落とされた。
 一本だけ残ったのは悔しかったが、菊之助の言うように刀を上手く扱うことがしばらくの反復練習の内に出来るようになっていた。
「リセリア殿は非常に筋がいい。才能ならこの中でも群を抜いておる。飲み込みが早く敵の技を盗むのにも長けているように見受けられるな」
 菊之助はリセリアの才能を見抜いて好評した。剣の扱い方が上手くこれなら日本刀も問題なく扱えそうだと菊之助が感嘆する。
 隙があればもっと敵の技を盗むことも狙ってみるといいと助言をした。対してリセリアはやっぱり一本だけ残ったことが不満でもう一度頼み込んで丸太切りをさせて貰う。
「ふむ、時々面白い筋肉の使い方するな。別系統の最適化された動きは面白いな」
 ユーヌも素振りから徐々にコツを掴んできていた。先ほど得た集中力を生かして筋肉の動きを微修正しながら日本刀に加える身体の力を調える。
 その際に斬るという感覚ではなく押すという間隔を身につけていた。
 問題なく丸太は斬れて落ちていく。だが、リセリアのようにまだスパッと綺麗に落ちるというような域までには至ってはいない。
 初めてにしては格段の進歩を見せているユーヌだが、もちろん本人はそれだけで満足せずに更なる高みへと昇るために一層集中して丸太斬りに取り組んだ。

●修練の炎
「修行! うんうん必要よね。主人公は皆そんなことして強くなってたわ!」
 『ベビーマム』ミリー・ゴールド(BNE003737)は頷いた。エリューションのある境内の林の中で一人離れて修行していた。万が一ここなら集合時間に遅れずにすむし、誰もいないため集中して修行に取り組むこともできる。
 ミリーは早速持参した漫画を捲った。ミリーにとって漫画とはリベリスタになったきっかけでもある。一般人時代に漫画を真似して修行していたら覚醒した。
 修行ならいつでもやっているしお手のものだ。今回はさらに集中して修行できるというから新しい技に挑戦すべく気合を入れて挑む。
 両手を広げて重心を低くして構えの姿勢に入った。深く息を吸い込み、手に炎の火を浮かべ上がらせる。ミリーは火力を上げると燃え広がろうとする炎を何とか一箇所に集中して留めることができないかと考えた。
 覇界闘士の炎の技は火力を上げると燃え広がろうとする傾向がある。全体に放つ攻撃としては有効だがその分、威力が分散されてしまっている。
 拳に炎を集中させることが出来れば攻撃威力が倍増する。ミリーは何とか一箇所に莫大なエネルギーを貯めこんで一気に叩きつけるイメージを持って練習を開始した。
 まずは手頃な木に向かって溜め込んだ炎の拳を叩きつける。木々は燃え盛りながら衝撃とともに後ろへと倒れたがまだ制御が甘く他の木々も巻き込んでしまう。
 広がる炎を一箇所に止めておくのは思った以上に至難の業だ。ミリーは繰り返し練習した。炎がイメージ通りにまとまるように繰り返して集中する。
 繰り返し練習するがなかなか思ったようにならない。すでに日が暮れて集中力が途切れ始めていた。それでもミリーは根性で修行を続ける。
 すぐには習得できるはずもない。気長に根気よく修行をすることを心に決めた。
「ね、ちょっとボクに独占されて。教えてよ、武器の使い方」
 『デストロイヤー』双樹 沙羅(BNE004205)は菊之助相手に剣道の試合を申し込んだ。簡単に武器の使い方を習ってすぐさま乱取りの修行に入る。
 やはり武器は実践形式の中で学ぶのが一番だと沙羅は思った。もちろん、菊之助は自分よりも武器の習熟に長けていて強そうで嫌いだ。だが、自分が強くなるための踏み台にするのは悪くないし教えてもらった相手を倒すのはそれだけで面白い。
 それに適当に鎌を振り回して敵の首を掻き切る精度をあげたかった。適当に振り回して当てるのではなく、狙って当てるように上達したい。
 己の欲望や誘惑に打ち勝たないと切れないのならやってやる。どんな困難が待ち受けていても必ず克服してやると沙羅は振りかぶって行った。
「その心意気とくと見せてみろ」
 菊之助も沙羅の意気込みを悟って本気で斬りかかってきた。カウンターを狙って空いた腹に強烈な一発をお見舞いする。鋭い一撃を食らって吐き気を催した。急に腹から力が抜けて崩れ落ちそうになったが、ここで倒れてはいけないと踏ん張る。
 負けるわけにはいかない。ここで横になったら確かに楽になる。だが、それでは意味が無い。自分の弱さに打ち勝つためにはここで倒れてはいけない。
「――絶対に出す、出してみせる」
 沙羅は歯を食いしばって足を踏み込んだ。
 菊之助が更なる一発を叩き込もうと剣を振りかぶってきている。菊之助の目はすでに勝ち誇っていて最後のトドメを刺そうとしている所に見えた。
 まだ菊之助は沙羅が戦えることを知らない。
 渾身のクリティカルヒットを出す、絶対に――。
 沙羅は重心を低くして飛び込む。
菊之助の刀よりも早く相手の喉目がけて突き出した。
「おりゃああああああ!!」
 その瞬間、菊之助の喉に沙羅の刀が突き当たる。
 菊之助は隙を突かれて後退した。むせ返りながら後ろに尻もちをつく。
 だが、沙羅も腹に同じく一撃を食らった。
 沙羅の方は先程と同じ所をやられて今度は苦悶に満ちながら倒れた。
「驚いた、まさかあの態勢から打ってくるとは。まさに執念」
 菊之助は沙羅の精神力を褒め称えてすぐに手当を施す。続いて休む暇もなくエイプリリルとの乱取りに入った。先ほど見ていた試合からカウンターの間合いを読んでそれ以上は近づかないように位置取りを試みる。
 菊之助が痺れを切らして先に仕掛けた所を見てエイプリルは刀を繰り出した。
 惜しいことに菊之助の華麗な裁きによって交わされてしまったが、エイプリルは何とかコツをつかみ始めてきていた。ようやく何十回目にしてようやく一本を取る。

●更なる高みへ
「どこを見ている? 貴様の相手はこの俺だ」
 静馬が挑発して拓真が振り返った。両者とも真剣を手にしている。拓真の頼みとあって静馬と菊之助が一斉に拓真に襲いかかってきた。
 二刀小太刀を巧みに操ってくる静馬に防戦一方となる。さらに後ろからは菊之助がヌンチャクを振り回して徐々に拓真を脇へと押しやった。
 案の定、静馬の回転舞剣撃に切り刻まれて拓真は血反吐が出た。
 ニ対一の手加減なしの闘いに拓真も攻撃の糸口さえ掴めない。
「拓真、貴様は遅すぎる。その無様な剣の使い方では、神速の双剣式抜刀術を巧みに操る近藤の前では容赦無く切り捨てられるぞ」
 静馬の言葉に拓真は宿敵の近藤の姿を思い出した。
 この二人相手に何も出来ないようでは絶対に奴には勝てない。
「この間は見ているだけでしたが――私も参戦させて貰います」
 リセリアが剣を振りかぶって拓真と一緒に菊之助と静馬に立ち向かう。リセリアは速攻で上段から巧みに敵の攻撃を交わして一気に切り裂きにかかる。
「なかなかやるな」
 拓真とは違ってスピードのある攻撃に静馬も後退せざるをえない。
 リセリアの奮闘する姿を見て拓真はもう一度剣を握りしめる。
 剣禅一如、僅かでも物にする事が出来ていれば、攻撃に対応する無念無想の太刀を繰り出す事が可能のはずだ。
 拓真は集中した。いくら二人が手馴れた強力な相手とはいえ、完璧に二人が呼吸を合わせて戦えているわけではない。二人が一緒に戦っている以上、必ずそこには隙がある。
 双剣で二人を威嚇した。打ち込んできた相手の剣を上手く捌く。研ぎ澄まされた集中力で敵の綻びと間合いを見抜いて双剣を振り込んだ。
 静馬と菊之助どちらが防御するか一瞬止まった隙を狙って叩き込む。
 その時だった。
一度に二人をなぎ倒すように自然と九つの斬撃が出た。
静馬と菊之助は巻き込まれて壁に激突した。
「今のはまるで奴の技のようだ。スピードがなかったから辛うじて半分は避けれたが――もし今の倍の速度が拓真にあればやられていた」
 静馬は驚きを隠せない。集中力を養って修行した拓真には武器の扱いが自然と出来るようになってきていた。剣禅一如の効果であろう、すでに剣に余計な雑念を入れることなく素直に剣を扱えている成果だった。あとは静馬の言うように速度が物足りない。
「それでは、最後に皆殿にはエリューションの撃破をして貰う」
 菊之助がついに頃合いと見て一行は林に案内された。そこにはエリューション化した御神木が無数に立ち並んでいる。一人で修行していたミリーも遅れずにその場にいた。
「ていうか え? 最後のこれ刀使うの? 素手じゃダメかしら。燃やせば倒せないの? ――特別にオーケー? 決めてやるわ!」
 菊之助に何とか承諾を得てミリーは集中して拳に炎を溜め込んだ。
 業火に包まれた渾身の一撃が御神木を真っ二つに割って倒す。
 ミリーは喜んだ。まだまだ完成形には遠いとはいえ、形にはなってきていた。
 側で見ていたユーヌと珍粘も日本刀を振るった。
 ただ御神木を前に見据えて自然な角度で刀を振り下ろす。
 邪念のない迷いのない斬撃は見事に御神木を斜めから切り倒した。
「どうなるかと思いましたが、成功して何よりです」
「ふむ、意外と面白いな」
 珍粘もユーヌも短期間で無事に日本刀が扱えるようになって喜ぶ。
 さらにシェリーやエイプリルが同時に刀で斬撃を繰り出した。
 一際大きな御神木が二人の力によって後ろに切り倒される。
 見守っていた翁も二人に合格点を与えた。
「最後は御神石だ。やってみるやつはいないか?」
 静馬の言葉にリセリアと拓真が名乗り出た。
 ただ真っ直ぐに剣を石の中心に向けて突きつけるがリセリアは困惑する。
「さすがに一筋縄じゃいきませんね」
 巨石はまるで意志を持っているかのように激しく抵抗した。
 拓真も直観で見通すと御神石の凄まじい威圧感が伝わってきた。
 斬られることへの抵抗と無言の挑発が巨石から伝わってくる。
 この場で奴と同じ……いや、それ以上の領域に踏み込んでみせる。
 拓真は閉じていた目を見開いて一気に双剣を撃ち放つ。
「ツェアアアアアアッ──!!」
 雄叫び同時に風圧が辺りを襲った。
 風も刃と化した一撃が御神石の中心に当たってひび割れを作る。
 大きな振動と地響きが起こって巨石は激しく抵抗する。
「――――アアアアアアッ!!!!」
 拓真は無我夢中で双剣を押し斬った。
 その瞬間、巨石が音を立てて後ろについに崩れ落ちた。
「まさかこの巨石を崩すとは。まだ荒くて力任せなところはあるが、ようやく奴と肩を並べられたわけだ。だが、それで満足なわけではないだろう?」
 静馬は拓真にそれ以上は何も語らない。代わりに趣味の渋茶を皆に披露する。
「ものすごく苦い――これが修行の味かな」
 エイプリルは苦笑いを浮かべて最後の一滴まで飲み干した。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
修行の成果はいかがでしたか?

各自、自身の苦手を克服するために厳しく励めれたと思います。
どうか初心を忘れず、これからも更なる高みを目指して修練してください。

それでは、またの機会に。