● 異世界から来た盗賊団 巨大な蛇の頭に乗った、3人の女性の影が見える。彼女達は皆、明らかな異形。少なくとも、この世界では見かけない。 そも、彼女達が乗っている蛇からして、その大きさは30メートルに近い巨体である。頭の数も3つという怪物だ。頭1つに、1人ずつ乗っている。 1人は、艶やかな上半身から続く、下半身が蛇だった。 1人は、その美しい顔を引き立てる、長い髪が蛇だった。 1人は、全身にびっしりと蛇の鱗が生えていた。 恐らく姉妹なのだろう。似通った顔立ちは皆美しく、それと同時に狂気を孕んでいる。 暗闇で見ると、瞳が赤く光って見えることも特徴だろうか。 「えっと、それで、これからどうするんだっけ?」 そう問うたのは、全身に鱗の生えた女であった。それを受け、蛇の髪を持つ女が飽きれたように溜め息を吐いた。 「言っただろ。まずはアジトを決めるんだって。そのためにわざわざ、こんな山奥に来てんだよ」 「アジトを決める必要がないなら、美術館にでも忍び込んでるわよ。アジトを決めないと、奪った宝も隠せないし、Dホールも用意できないわ」 大蛇の上で寝そべったまま、下半身が蛇の女がそう言った。どうやら彼女たちは、強盗目的でこの世界にやって来たらしい。 現在彼女達が居るのは、かつて金が産出されていた鉱山である。とっくに廃棄され、穴だらけになったまま今は立ち寄る者もいない。 鉱山から見下ろす町の夜景は美しかった。キラキラと光る宝石のようだ、と評する者も居るだろう。 「奪えるものは、全部奪って帰りましょう」 そう呟いたのは、誰だっただろうか。 「盗賊団(レムレース)の仕事は、完璧じゃないと」 大蛇の頭を優しく撫でて、彼女達は楽しげな笑い声をあげる。 ● 盗賊団レムレース 「やって来るのは、どうしてこうも面倒事の種ばかりなのかしら」 辟易した様子で、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は重たい溜め息を零す。視線の先には、モニターに映る3姉妹と大蛇があった。 「まぁ、面倒事の種になるくらいの厄介者でもなければ、わざわざDホールに飛び込もう等とは思わないのかしら」 再度溜め息を吐いて、イヴは言う。モニターの画像を拡大すると、3姉妹の異質さが一目で分かるようになった。 蛇と人と足したような姿。明らかな異質。まるで神話の怪物のようだ。 「彼女達は(盗賊団レムレース)を名乗っているわ。下半身が蛇の彼女は(ラミア)。Dホールを開く能力と後方支援、指揮の担当。蛇の髪を持つのが(ゴルゴン)で、遠距離神秘攻撃を得意としているみたい。蛇の鱗を持つのが(メデュ−サ)。近距離での戦闘や罠のセットは彼女の役目」 全員コードネームみたいだけど、とイヴは付け加えた。 全員、蛇に似た特徴を備えている。確証はないが、恐らく、感知能力に優れているであろうことが予想されているようだ。 「チームを組んでいるだけあって連携はかなりのものね。3人の乗っている3頭の蛇(スキュラ)にも注意して」 その巨体は、動くだけで地面を揺らす。戦闘能力に秀でている、というわけではないが、それでもアザーバイドだ。油断はできない。 「アジトを金山に決めたみたい。山を降りられる前に見つけ出して、追い返す事ができればいいのだけど」 目的地は美術館だと判明しているのだから、そちらで待ち構えていても遭遇は可能だろう。 もちろん、街にまで侵入を許すと被害が増える可能性も格段に上がる。 「作戦次第ね。Dホールの破壊も忘れないように」 そう言ってイヴは、仲間達に出撃命令を下すのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年03月31日(月)22:18 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●レムレース かつてそこは金山だった。穴だらけで、落盤の危険があるということで、今は立ち入り禁止となっている。そこに今、アジトを構えているのは3人の美しき盗賊と、その僕たる巨大な蛇であった。 金山から下る山道へ、巨大な蛇は進む。 3つの頭をもつ大蛇だ。それぞれの頭に乗っているのは3人の盗賊。アザ―バイド(ラミア)(ゴルゴン)(メデューサ)の三姉妹であった。 金山の一角にアジトを構え、これから街へ宝を盗みに繰り出そうというのだ。 そんな彼女達の前に、8人の男女が姿を現した。 『……ぁ?』 不穏な声を出すのは、メデューサだ。ギョロリとした眼球で来訪者たちを睨み付ける。 それを受け……。 「オマエらこっそり忍び込む気ないだろ。そんな目立つ成りで街に繰り出すんじゃねぇよ」 リベリスタ達の先頭に立った男『力の門番』虎 牙緑(BNE002333)は、にやりと不敵に笑みを返すのだ。 ●力任せの盗賊団 「ふむ、のっぺりとした仮面は蛇のようですがあちらの方が愛嬌がありますね? ああ、愛嬌がある馬鹿よりは、彫刻のような仮面の方が好みですが」 『愛嬌で我が使命が果たせるならこの仮面にいくらでも塗りこんでやってもいい。それとも蛇の皮の方がいいか?』 レムレース達をそっち退けにして『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)と『Seraph』レディ ヘル(BNE004562)が言葉を交わす。 と、言ってもレディの方は声を発することが出来ないので念話で、ではあるが。 そんな2人を、レムレース達は苛ついた様子で見つめていた。 『何をしに来たのか知らないけど、邪魔をしないで貰いたいわ』 そう言ったのはラミアだった。細い指をこちらへ向けて、忠告よ、と告げる。 「うーん、面倒なので帰ってもらえません?」 「何か鱗がぬめぬめしてて気持ち悪いね。うん? 聞こえなかったかな? ぬめぬめして気持ち悪いって言ったんだよ」 面倒そうに帰還勧告を行う『カインドオブマジック』鳳 黎子(BNE003921)と、明らかに喧嘩を売っている『断罪狂』宵咲 灯璃(BNE004317)。その隣では、『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)が疲れた様子で溜め息を零す。 「これで引いてくれれば万歳なのですが……」 無理そうですね、と肩を落とし武器を構えた。レムレース達の怒りがダイレクトに伝わってくる。相当に怒っているらしい。仕事を前に、気が立っているのかもしれない。 どちらにせよ、穏便に事を済ませることはできそうにない。 『やっておしまいなさいな』 ラミアが指を鳴らすと同時、大蛇(スキュラ)が、その太い尾をリベリスタ達へと叩き付けた。地面が揺れ、木々がなぎ倒される。一撃で地形が変わるほどの威力。しかし、遅い。 「おっとぉ……!? 盗賊団……っていうにはなんかハデすぎないかなぁ?」 地面を転がり、スキュラの尾を回避する『六芒星の魔術師』六城 雛乃(BNE004267)が悲鳴をあげた。素早く杖を掲げ、魔方陣を展開。白い炎が、スキュラを焼いた。 炎に焼かれ、スキュラがもがく。 「異世界をまたにかけて活動するとは圧巻です。されど一歩間違えば命を落とすことも? そのこと、重々教えて差し上げましょう」 宙を舞う『雨上がりの紫苑』シエル・ハルモ二ア・若月(BNE000650)が、悪戯っぽく笑って、そう言った……。 スキュラの頭から、メデューサが飛び降りた。鋭い爪をまっすぐ伸ばし、鱗に覆われた腕を振るう。 それを受け止めるのは、黎子である。大鎌を旋回させ、爪を弾く。スキュラの腹を蹴って牙緑が跳んだのを確認し、黎子は踊るようなステップを踏みながら、大鎌を振り回した。メデューサとスキュラを纏めて切り裂く斬撃の舞踊を、しかしメデューサは冷静に見切り、受け流す。 「近くの沼で蛙でも食べてなよ、お・ば・さ・ん!」 メデューサの背後から、2連続の斬撃が飛んだ。斬撃を放ったのは灯璃である。剣から溢れる禍々しいオーラに、メデューサの顔色が変わった。 至近距離で、黎子と灯璃相手に斬り結ぶのは分が悪いと判断し、メデューサは大きく後ろへ後退。それと同時に、メデューサの瞳が怪しい光を発する。 『なかなか速いね、アンタ達』 蛇の瞳に射抜かれて、2人の動きが一瞬鈍った。麻痺しそうになる体に鞭打って、それぞれの武器を構える。メデューサの爪を受け止めるが、抑えきれずに2人は地面に倒れ込んだ。 追撃を放とうとしたメデューサだが、数歩後ろへ素早く後退。 先ほどまでメデューサの居た位置を、鎌と剣が薙ぎ払ったのはその直後だった。 「蛇と魔術って結構密接な関係があったりするんだよね。しかも異世界の蛇となれば結構良い魔法研究の材料になったりするかも……」 杖を頭上に高々と掲げ、雛乃は魔方陣を展開。呪文の詠唱を開始する。集中力と、魔力が上昇し、周囲の空気がざわつくのを感じた。 空気の変化を感じ取ったのか、スキュラの動きが止まる。3つの頭部をゆらりと揺らし、周囲の空気を感じ取るような動作を繰り返す。ラミアが前進の指示を下すが、しかしスキュラは動かない。生物としての本能が、危険を感じ取ったのだろう。太い尾を力任せに地面へ叩きつける。狙うは雛乃だ。 「魔風よ……在れ」 スキュラの尾が雛乃を叩くその寸前、魔力を含んだ強風がその尾を吹き飛ばす。地面が揺れた。雛乃の身体が宙に浮く。それを受け止めたのは魔風を起こした張本人であるシエルである。 雛乃の身体を抱えたまま、大きく後退。スキュラの攻撃範囲から撤退する。 直後、雛乃の詠唱が終わった。空中に展開された無数の魔方陣から、流星群が降り注ぐ。地面を砕き、スキュラの身体を貫いた。 スキュラの身体が大きく傾く。頭部に乗ったラミアとゴルゴンが、スキュラの頭にしがみつき、落下を免れる。 一瞬の隙を、牙緑は逃さない。スキュラの首を蹴飛ばして、ラミアの正面へと着地した。 ラミアの視線に射抜かれた瞬間、牙緑の身体から力が抜けた。気を抜けば、正気さえ失ってしまいそうな圧力を感じる。魔眼の力を侮っていた、とそう感じた時にはすでに遅い。すでに剣にはオーラを集中させているのに、それを振りあげる力が出ない。 『ゴルゴン。他の奴をこっちに近づけるんじゃないわよ!』 『了解姉さん。殺しちゃってもいいんでしょ?』 ずるり、と蛇の下半身をうねらせラミアは牙緑へと近づいていく。蛇の舌を出し入れしながら、にたりと笑みを浮かべた。ラミアは戦闘が得意なタイプではないが、それでも蛇の力でターゲットを締め付ければ、全身の骨をへし折るくらいは訳はない。 「ぐ……」 呻き声をあげる牙緑。撤退は間に合わないだろう。それならば、と震える手で剣を持ち上げた。 その時だ。 「バックアップを先に潰してしまい、力で押し切れる状況まで持ち込むようにします」 銃声が2発。ラミアは体をその場に伏せ、銃弾を回避した。直後、ラミアの全身に気糸が巻き付く。いつの間に仕掛けられていたのか、罠に嵌められた、と気付いたラミアと、そんなラミアを見上げるあばたの視線が交差した。 『ぎ……いいいい! この! ゴルゴン! 奴らを追い払うのよ!』 ラミアが叫ぶ。直後、ゴルゴンの髪が蠢き始めた。髪の蛇が体を伸ばし、四方八方へと展開し始めた。蛇が1体、ラミアの身を拘束していた気糸を切断した。 ラミアが立ち上がったその瞬間、彼女の眼前に刃が迫る。 「オマエラの鎌首、オレが残らず食いちぎってやるよ。降参するならイマノウチ、だぞ?」 オーラが爆発した。空気が震え、振り下ろされた牙緑の1撃がラミアを後方へと吹き飛ばした。 獣の咆哮を上げながら、ゴルゴンが暴れる。縦横無尽に宙を駆ける蛇髪を回避しながら、あばたは岩影へとその身を潜ませた。 入れ替わるように飛び出したのは、影人だった。蛇髪に貫かれ、影人は式符に戻って消える。 「降伏するならお早めにお願いしますね。無駄な手間が少なくてすみます」 影人を囮に、死角から放たれた一撃がゴルゴンの乗った頭部へ当たる。爆風に煽られ、ゴルゴンは悲鳴を上げた。皮膚が黒く焦げている。その様子を、諭は酷薄な笑みでもって見つめている。 『て、っめぇ!』 ゴルゴンの額に血管が浮きあがる。血走った瞳が、諭を捉えた。魔眼が光る。 だが、ゴルゴンの魔眼は不発に終わった。蛇髪の間を縫って接近した、レディの剣が見えたからだ。髪を一部犠牲にして、レディの剣を受け止める。 放たれた魔弾が、ゴルゴンの胴へ命中した。血を吐きながら、蛇髪を操り、レディを襲う。 『立ち去れ……』 猛毒を持つゴルゴンの蛇髪も、レディには通用しない。しかし、ダメージと攻撃の勢いだけは殺せはしなかった。翼に蛇纏わり付いて、自由を奪う。落下するレディを尻目に、再度蛇髪をうねらせるゴルゴンの視界に、吹き飛ばされる姉の姿が映った。 『姉さん!』 レディや諭を攻撃するのは一時中断だ。蛇髪を伸ばし、吹き飛ばされていく姉を受け止め、スキュラの頭部へと乗せる。 地上では、メデューサがリベリスタ相手に奮闘しているのが見える。 スキュラは、流星群に射抜かれて、大怪我を負っている。 『盗みに入る前からこれほど劣勢なのは、珍しいね』 と、一言小さくそう呟いて。 ゴルゴンは、口元の血を拭うのだった。 ラミアの命令で、スキュラは山を下り始めた。木々をなぎ倒し、地面を抉り、地響きを立てながら。リベリスタ達は、スキュラの身体にしがみつく。その背中の上では、メデューサと黎子&灯璃が斬り合いを続けている。 器用なものだ、とそれを見て諭は感嘆の声をあげる。 しかし、このままスキュラを自由にさせておくわけにもいかない。この速度で移動されては、あっという間に街へと辿り着かれてしまう。 ばら撒いた式符から、無数の影人が姿を現した。それぞれが、重火器を構えている。諭自身も、重火器を手に影人達の指揮をとる。 諭の隣には、雛乃の姿。目的は、諭同様スキュラの動きを止めることだろう。すでに目を閉じ、集中を重ねているようだ。魔力は溢れ、魔方陣が形成される。 『やらせるものか。ゴルゴン!』 ラミアの指示で、ゴルゴンが動く。無数の蛇髪が、2人を襲う。 それを阻んだのは、レディとシエル、そしてあばたの3人だった。 宙を駆ける蛇髪を、レディの剣が切り裂いていく。時に剣で、時には魔弾を撃ち、そして時にはその身を張って、蛇髪を諭たちの元へと近づかせない。 『潔く立ち去れ。でなければ、死が待っている』 レディの声が脳裏に響く。しかしゴルゴンは止まらない。彼女の従う相手はただ1人、姉であるラミアのみだ。 レディを追い越し、蛇髪が数匹、諭へと迫る。しかし、空中で蛇の動きが止まった。張り巡らされた気糸が蛇髪を捉えたのだ。 「わたしは敵。貴女達の敵。やらせはしない」 指先のみを動かす最小の動作で、あばたは気糸を操っている。ゴルゴンとあばたの視線が交差した。次の瞬間、蛇たちが暴れはじめる。それを押さえこむべく、気糸が宙を疾駆する。 蛇と糸とが、複雑に絡み合う。 「さて、おとなしく家に帰るならイノチまでは取らないが、どうする?」 牙緑は、ラミアと対峙しそう問いかけた。ラミアは不敵な笑みを浮かべたまま、返事を返さない。戦闘要員である牙緑と、レムレースの頭脳であるラミアではラミアの方が不利だろうか。 ひゅう、とラミアが口笛を吹いた。 その音は、姉妹への合図である。牙緑は請け負うという意味の合図。そちらが片付いたら援護に来い、とそういう指示だ。 ラミアは戦闘に勝つ必要がないのである。あくまで暫くの間だけ、牙緑を押さえることができれば、それでよかったのだ。 しかし……。 「………」 牙緑が剣を構えた。 ラミアの頬に、冷や汗が伝う。 はたして、どれだけの時間、凌ぎきることができるだろうか、と不安がよぎるのであった。 「大いなる癒しを此処に」 シエルは静かに祈りを捧げる。 眩い燐光が飛び散って、仲間達の傷を癒していく。暖かい光だ。 シエルは静かに、目を閉じる。 回復に徹する。それが彼女の役割である。 ●盗賊の矜持 「まだ諦めないっていうのはちょっと……ホントにお勧めはしないよ? 綺麗なお宝手に入れる以前に綺麗に輝くお星様になっちゃうんだよ~」 雛乃が告げる。魔方陣から、流星群が解き放たれた。それと同時、諭や影人の持つ重火器も一斉に火を噴いた。轟音、閃光、地面を穿つ。地盤が緩んでいたのか、それとも同時に高威力の攻撃が集中されたせいか。 山道が崩れ、地面が砕け、山は崩れスキュラの進路を完全に塞いだ。 動きの止まったスキュラの背の上で、黎子の鎌と灯璃の剣が閃いた。短い悲鳴をあげて、メデューサはそれを回避する。 『くっ……。2人相手じゃやっぱりきついわ』 チラ、とスキュラの頭部へ視線を向けた。司令塔である姉に指示を仰ぐためだ。元来、メデューサはあまり頭が回らない。考えるのは姉の役割、実働が彼女の役割だと割り切っていたからだ。 鋭い爪を振り回す。刃と刃の隙間を抜けて、左右の爪は黎子と灯璃の胸元に突き刺さる。 やった、と思ったその瞬間。 メデューサの両肩に、鎌と剣とが突き刺さった。 「盗みなんかに命を賭けるなど馬鹿馬鹿しいでしょう。帰ってください」 「ねぇ、聞き入れないんなら遠慮なくぶち殺すよ?」 黎子と灯璃の忠告を受け、肩の痛みに歯を食い縛り、それでもメデューサは姉の指示を待つ。姉からは、こちらが片付き次第増援に来るよう命令を受けているが、どうやら1人では2人を倒すことはできないだろう。 それなら、次はどうすればいいか。 しかし、いくら待っても指示はない。ラミアもゴルゴンも、それぞれ別の相手と交戦中で、こちらに指示を出す余裕などないのだ。 『姉さんが引かないなら、私も引けないわ』 血を吐き、しかしメデューサは笑う。 そうですか、と黎子は呟いた。 鎌が。 剣が。 振り抜かれ、メデューサの胴を切り裂いた。噴き出す鮮血。白目を剥いて、メデューサは倒れる。死んではいない。しかし、暫くは動けないだろう深手である。 メデューサが倒された。それを見てとり、ラミアはゆっくり両手を上げた。 その胸には、大きな切傷。流れる鮮血は止まらない。牙緑は、荒い呼吸を繰り返しながら、ラミアの様子を窺う。 一進一退の攻防の末、先に降参したのはラミアだった。 即座にゴルゴンへ、攻撃を止めるように指示を出す。 『姉さん……。なんで』 『こんな状態では、盗みに入ってもまともに動けないでしょう。メデューサも負けたようだし、これ以上は無駄よ』 『……わかった』 ラミアの指示を受け、ゴルゴンは意識不明のメデューサを蛇髪で引き上げた。黎子と灯璃がそれを見送る。 『いいでしょう。そちらの提案通り、私達は帰還する。降参よ』 ゆっくりと、スキュラに乗って後退していくレムレース。 全員の姿が、Dホールへと消えるまで、8人はじっとそれを見送っていた。 「直にお帰り下さるならゲートを閉じる直前に回復して差し上げましょう」 シエルの申し出を、レムレースは断る。 必要以上の情けは受けない。 それが、レムレースに残された、最後の矜持であった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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