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美しき魔弾の射手。或いは、狙撃手の狩り場。

● 私の弾丸
 神社の境内。長い長い階段を上った先、鳥居の真下にその女は立っていた。
 暗闇を溶かしたような長い髪が風になびく。髪の先の方だけ、燃えるような
赤色に染められている。
 白目のない、真っ黒な瞳と、血を塗ったような赤い唇。黒いロングコートに隠された、しなやかな肢体。手足の色のみ、不気味に黒い。
『この世に狩り以上の楽しみがあるか? 否だ。狩りは至高』
 自分自身に問いかけ、自分自身で答えを返す。肩に載せた長柄のマスケット銃を一撫でして、ほぅ、と熱い吐息を零した。
 腰からも、銃を下げているがこちらは片手でも扱える短いものだ。中折れ式の、狩猟銃のように見える。馬上からでも扱えるように、軽量小型化されたものだろう。
『狩りの醍醐味とはなんだろう? 答えは、獲物を追い込む、おびき出す作業』
 ポケットから取り出したのは、鉛の弾丸が5つ。それを地面に放り投げると、弾丸はみるみるうちに、その形状を変えていった。
 1つは馬に。
 1つは犬に。
 残る3つは、人の形に変化した。
『お前達の仕事はなんだろう? それは、獲物をここまで追い込むことだ』
 さぁ、獲物を見つけて、追い立てておやり。
 そう言って、黒い漁師は、自分の生み出した配下達を送り出す。
 長い長い、階段を降りていく配下達。無数の鳥居をくぐり抜け、最下まで辿り着くまで、およそ500メートルと言ったところだろうか。
『今日の調子はどうだろう? 愚問だ。私の弾丸は、獲物を捉えて逃さない』
 引き金を引くその瞬間が待ち遠しくて、彼女はそわそわと肩を揺らしていた。
 
● ザミエルの魔弾
「彼女の名前は、アザーバイド(魔弾のザミエル)。狩ったことのない獲物を狩ることを喜びとしているようね」
 つまり、この世界へは人間を狩りに来たのだろう。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はやれやれと溜め息を零す。モニターに映るのは、神社の境内へと続く長い長い階段である。
 階段の距離は500メートルほど。
 先攻するのは、ザミエルの生み出した配下(ガンナー)が2体と(猟犬)が1体。それより100メートルほど後ろに(軍馬)に股がった(ガンナー)が続く。
「配下達にしろ、ザミエル本人にしろ、使うのは銃ばかり。本来なら柵杖で弾丸と火薬を込めないとマスケット銃は使えないはずだけど、彼女達が使う弾丸は魔弾。自身のエネルギーを弾丸に変えたものだから、装填に時間は使わない」
 リベリスタ達の使う、魔力銃と似た武器なのだろう。
「階段をまっすぐ上らないと、ザミエルの元には辿り着けない。境内まで行けば、ある程度広い場所で戦えるけど」
 そこに辿り着くまでが一本道だ。姿を隠しながら進むか、先攻している猟犬やガンナー、上から見ているザミエルの目を引きつける役割がいなければ、ザミエルに気づかれず上まで到達することはできない。
「階段を上っている最中は、基本的にいい的になるものだと考えていたほうがいいかもしれない。とにかく、一般人がターゲットになる前にザミエルを討伐、或いは送還すること」
 幸い、境内にはまだDホールが開いている。ザミエルが消えれば、配下のガンナー達も消えてしまうだろう。
「やり方は任せるから。ザミエル達を止めてきて」
 バン、と銃を撃つ真似をして、イヴは仲間達を送り出した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年03月28日(金)22:19
おつかれさまです、病み月です。
皆さん、お元気ですか?
今回は、異世界から来たアザーバイドの送還、討伐指令です。
策を弄するのもOK。正面突破もOK。
皆さんのご参加、お待ちしています。

【場所】
神社の境内と、そこへ続く長い階段。
階段の距離は500メートル程度。神社の境内は、そこそこ広い。
階段を最上部、鳥居の下にザミエルは控えている。
現在、ザミエルの配下が階段を降りてきている。
人形が3体。猟犬が1体。馬が1体。
階段は見晴らしがよく、まっすぐなんの対策もなしに進めば、すぐにザミエル達に発見されてしまうだろう。
境内にDホールが開いている。

● ターゲット
アザーバイド(ザミエル)
マスケット銃とリボルバー銃を持ったアザーバイドの女性。
長い黒髪は、先の方だけ赤く染められている。白目のない目が特徴。
非常に目が良いらしい。
狩猟を趣味とし、獲物を狩ることに喜びを覚える。
未知の獲物、人間を狩るために、この世界へ来たようだ。
【狩人の魔弾】→神遠2貫[ショック][不運]
貫通する高速の弾丸。
【逃しはしない】→神遠単[ブレイク][不運][連]
高い命中率を誇る弾丸。
【最後の魔弾】→神遠2複[必殺][致命][呪い][流血]
高い命中率と、高威力を秘めた弾丸。ザミエルが受けたダメージに比例して、威力が上がる。

アザーバイド(ガンナー)×3
ザミエルの配下。獲物を弱らせ、追い込むよう命令を受けている。
連携のとれた動きが特徴。
うち1体は、馬に乗っている。馬に乗っている個体は、移動速度が速い。
【追い込み猟】→神遠複[麻痺][毒][不殺]
相手の体力を削ぐことを目的とした射撃攻撃。

アザーバイド(猟犬)
ザミエルの配下。ガンナー達と連携をとって、獲物を追う。
素早い動きとが特徴。
【狩猟本能】→物近単[不運][ブレイク]
爪や牙で、ターゲットを攻撃する。
※ザミエルの配下達は、戦闘不能になると弾丸に戻ってザミエルの元へと帰っていく。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
アウトサイドホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
ノワールオルールスターサジタリー
天城・櫻霞(BNE000469)
ギガントフレームスターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
メタルイヴクロスイージス
大御堂 彩花(BNE000609)
ギガントフレームスターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
アウトサイドスターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
フライエンジェクリミナルスタア
イスタルテ・セイジ(BNE002937)
ハイジーニアスマグメイガス
六城 雛乃(BNE004267)

●魔弾を追って
 神社へと続く長い長い階段があった。その先、鳥居の下には、1人の女性が立っている。長い黒髪が風に踊る。毛先だけが燃えるように赤い、魅惑的な肢体の女だ。肩に担いだマスケット銃がひどく不似合いであった。
 その眼光は冷たく、そして鋭い。ハンターのそれである。
『さぁ、狩りを始めましょう』
 自身の放った魔弾たちへ向けて、彼女、ザミエルはそう告げる。

●ハンターの狩り場
 階段を駆けおりて来る影が1つ。巨大な体躯の猟犬だ。猟犬からいくらか遅れて、2人のガンナーが銃を構えて降りて来る。鍔広の帽子を目深に被ったその姿は、神社の階段には酷く不似合いだった。
 遠目にそれを捉え、8人のリベリスタは動き始める。

「獲物が追い詰められるまで高みの見物、と言ったところなのでしょうね」
溜め息を1つ零し、『ODD EYE LOVERS』二階堂 櫻子(BNE000438)はそう呟いた。武器を手に、数歩前へ出る仲間を見送り、自身は『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)の背後へ。
「マンハントとは、随分と趣味の悪いアザーバイドだ」
 櫻霞は、両手に構えた拳銃を猟犬の方へと突き出した。早速リベリスタ達を、ターゲットとして判断したのだろう。猟犬の足取りは迷いがない。その後ろに続くガンナー2体は、ある程度の距離をとって、射程距離への移動を開始する。
 ターゲットを補足したら、即座に連携、囲んで追い詰める。それがハンターのやり方だ。
「長期戦になったら一般人が来るかも……急ぎましょう」
 背後を気にしつつ『鋼脚のマスケティア』ミュゼ―ヌ・三条寺(BNE000589)が、愛用のマスケット銃を構えてみせた。それを見て、ガンナー達の動きが止まる。自分達と同じ、長距離武器の使用を見て取って、警戒の色を顕わにした。
 ガンナー達に比べ、猟犬はさほど頭が良くないのだろう。主であるザミエルの命令のみを果たすため、真正面から櫻霞へと飛びかかる。
 猟犬のサポート目的か、或いは牽制目的か。
 ガンナー達が、素早く弾丸を放つ。予備動作は最短に、そして狙いは正確だ。猟犬の左右を弾丸がすり抜け、真っすぐ櫻霞へ。猟犬に合わせていた照準が、僅かにずれる。
「あら……」
 硬質な、金属と金属のぶつかる音が2度。弾丸を受け止めたのは、ガントレットに覆われた鋼の拳だ。
「牽制などしなくとも、私はさほど俊敏ではないので当てるのは難しくありませんよ。尤も、当たりはすれども撃ち貫けるかはまた別の話ですけれど」
 仲間達の壁となるべく、射線上に躍り出たのは『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)であった。牙を剥き飛びかかってくる猟犬を、彩花は上半身の動きだけで回避した。
「まさか我々の肉が欲しくてやってるわけじゃないでしょう?」
 飛びかかって来た猟犬を受け止めたのは、巨大な砲身を持つ重火器だった。それを片腕で、軽々と振り回す『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)は、彩花の従者である。
 へし折れた牙が、地面に転がった。血を吐きながら、血走った目でモニカを睨む猟犬の鼻先に、火縄銃の銃口が突きつけられた。
「さあ、狩りを始めよう」
 銃声が1発。猟犬の眉間を撃ち抜いた。『八咫烏』雑賀 龍治(BNE002797)の放った弾丸の前に、猟犬は倒れ、その身は1発の弾丸へと戻る。
 弾丸は、まっすぐに階段を戻って行った。神社の境内、ザミエルの元へ。
 仲間がやられたのを見て、ガンナー達は動きを止めた。一瞬、視線を交差させ2体は階段を駆けもどる。階段の踊り場、足場のしっかりした位置に陣取って、こちらへ銃口を向けた。
「狙撃が得意な人に高所を取られるのは凄く怖いですよう、やーん」
 足を止め、階段上を見上げる『モ女メガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)の頬を、冷や汗が伝う。今居る位置から1歩でも前に出れば、そこはガンナー達の射程内だ。
 銃を構える仲間達も、これ以上前には出る事が出来ない。上方に居るガンナーの方が、狙撃に有利だからだ。
「あたしが狩りって単語で思い浮かぶのは、やっぱりネットゲームかなぁ。こっちは命懸けだっていうのに迷惑な話だよねえ」
 杖を振りあげ『六芒星の魔術師』六城 雛乃(BNE004267)が飛び出した。射程内に入った瞬間、ガンナー2体が同時に射撃。2発の弾丸が、雛乃を襲う。彩花が庇いに飛び出るが、それを櫻霞が手で制する。
 弾丸が雛乃に命中するその直前、彼女の杖から黒い鎖の束が溢れだした。
 どろり、と血が流れるように鎖は濁流と化して階段を上がって行く。弾丸のうち1発は、黒鎖に飲み込まれて消えた。
 もう1発は、防ぎきれずに雛乃の肩へ命中。
 櫻子が即座に、治療にまわる。飛び散る燐光が、雛乃の傷を癒していく。
「今です!」
 そう叫んだのは、イスタルテだったろうか。
 視界が黒鎖に覆われた瞬間、櫻霞、ミュゼ―ヌ、モニカ、龍治の4人はそれぞれの銃を構え、同時にその引き金を引いた。

 溶けるようにして黒鎖が消える。その中から現れたのは、傷だらけのガンナーだった。ガンナーの視界を埋め尽くしたのは、蜂の群れにも似た弾丸の嵐である。
 狭い階段の最中にあっては、回避は不可能だろう。
 2体のガンナーは、回避を諦め同時に銃の引き金を引いた。弾幕をすり抜け、2発の弾丸は階段下のリベリスタの元へ。一方、視界一面を埋め尽くす弾丸の嵐は、ガンナー達の身体を撃ち抜く。
 ガンナー達の身体は、跡片もなく消し飛んだ。しかし、彼らの放った最後の弾丸は、宙を駆け抜け、リベリスタ達を撃ち抜いた。
 特に、前線で仲間の盾になろうとした彩花とミュゼ―ヌのダメージが大きい。地面に膝を突き、腹部に空いた穴を押さえる。
 即座に櫻子とイスタルテによって治療が施された。その様子を、馬に乗った最後のガンナーが見届けていたことを、リベリスタ達は知らない。
 ザミエルの元へ、2発の弾丸は戻って行った。

『へぇ……。なかなか戦える相手がいるみたいね。いいわ。反抗的なターゲットを狩るのも、楽しいものよ』
 面白そうにくっくと笑って、ザミエルは戻って来た3発の弾丸を、シリンダーに充填した。
 リベリスタ達についての情報を、馬に乗ったガンナーがザミエルに伝えると、彼女は再度「へぇ」と呟く。先ほどよりも、その声には好奇の色が滲んでいた。
 チラ、と視線は階段の下へ。当然、リベリスタ達の姿はまだ見えない。ここまで登ってくるかどうかも、まだ分からない。
 とはいえ……。
『狩りには、我慢も大事よね』
 そう呟いて、ザミエルはその場に腰を降ろした。

 猟犬とガンナーを撃破し、30分は待っただろうか。
 今だに、ザミエルは姿を現さない。イスタルテの張った結界のおかげで、この近くに一般人が立ち入る可能性は低いし、千里眼で覗いてみた所、ザミエルはまだ境内に居るようだ。
 ザミエルの傍には、馬に乗ったガンナーも控えている。
「獲物が追い詰められるまで高みの見物、と言ったところなのでしょうね」
 ザミエルが降りて来ないと判断し、櫻子は言う。彼女の言葉を合図に、他の仲間も動き始める。警戒心はそのままに、細心の注意を払いながら、しかし不意打ちは受けないように迅速に、リベリスタ達は、階段を駆けあがって行った。

『根競べは、私の勝ちね。それでは狩りを始めましょう。わたしの弾丸は、ターゲットを捉えて、逃しはしないのだから』
 バン、と小さく呟いて。
 ザミエルはマスケット銃を構えた。
 馬に乗ったガンナーが階段を駆けおりる。まっすぐ、矢のように。眼前に突き出したマスケット銃の引き金に指をかけ、ガンナーの眼光は鋭くターゲットを探すのだった。

 境内まであと少し、という地点で視界に飛び出して来たのは馬に乗ったガンナーだった。
 素早く放たれた弾丸が、櫻霞の腕を撃ち抜く。弾丸の勢いは弱まらないまま、今度は弧を描いて、櫻霞の背後にいた櫻子へと狙いを定める。
 咄嗟に櫻霞が弾丸の前に飛び出し、櫻子を庇った。弾丸を背に受け、血が飛び散る。一瞬、呆然とした表情を浮かべた櫻子だったが、即座に回復術を発動させ、櫻霞の傷を癒した。
 櫻霞を撃った弾丸はまだ勢いを弱めないままだ。
 僅かに軌道のそれた弾丸を、彩花が両手で掴み、地面に叩き付ける。
 それと同時に、ミュゼ―ヌが飛び出す。連続して放たれた、新たな弾丸を鋼脚で蹴り飛ばした。
「彩花さん、貴女にばかり痛い思いはさせないわ」
 そう呟くミュゼ―ヌの左右から、砲身と猟銃が突き出される。銃声は2回。モニカと龍治の攻撃は、しかしガンナーに届かない。
 あっさりと馬を返し、階段を駆けもどって行ったからだ。
「ザミエルの所に戻って行ったみたいですね」
 イスタルテの千里眼に映るのは、ガンナーを従えたまま境内に陣取るザミエルの姿だった。片手で数発の弾丸を弄んでいる。恐らく、回収した配下たちの弾丸だろう。
「復活してきそうなら、キリがないし、追っていったほうがいいかも」
 雛乃の提案に、異を唱えるものはその場にはいなかった。

 階段の上、鳥居の真下、肩に担いだマスケット銃と腰に下げたリボルバー。長い髪と、黒い目と、そして燃えるような赤い唇。
『いらっしゃーい。私の狩り場へようこそ』
 ザミエルは言う。その言葉を合図としたように、馬に乗ったガンナーが駆けて来る。
 狭い階段の最中で、その突進を回避することは難しい。
「意気揚々と腕試しに訪れたつもりなのでしょうけど運が悪すぎましたね」
 ガンナーの放った弾丸を食い止めるべく、彩花が最前線に駆け出した。ガンナーを迎撃するべく、モニカ―の武器が轟音と共に弾丸を放つ。
 あわよくば、爆煙でザミエル達の視界を邪魔してやろう、という算段である。
『これは、狩人の魔弾』
 ザミエルの放った弾丸は、目にも止まらぬ速さでガンナーを追い越し、彩花の肩を撃ち抜いた。それだけではない。後ろにいたモニカと、イスタルテもほぼ同時に腹と脚に痛みを覚える。
 撃たれた、と認識するのに僅かな時間を要した。それほどまでに高速の弾丸である。
「それ程の腕を持っているのだ。ここで潰すのも惜しい」
 脚を撃ち抜かれた龍治は、その場で地面に膝をつき銃を構えた。ザミエルに狙いを定め、引き金を引く。ザミエルの弾丸ほどではないが、こちらもかなりの速度、精度の一射であった。
 ザミエルを庇おうと、ガンナーは腕を伸ばすが間に合わない。
 弾丸はまっすぐ、ザミエルの眼前へ。
 だが……。
『私はとても、か弱いのだよ、紳士』
 腰から引き抜いたリボルバーを撃つ。弾丸と弾丸が、ザミエルの眼前で衝突し相殺した。
 恐ろしいまでの反応速度と、狙いの良さだ。
 一方で、ガンナーや馬にはザミエルほどの腕はないらしい。いつの間にか、ガンナーと馬の全身を、黒い鎖が縛っている。雛乃の黒鎖が、その動きを封じ込めた。
 その隙に、数名、ガンナーを追い越しザミエルの元へ駆ける。
 ガンナーを縛る雛乃と、ガンナーに拳を突きつけたイスタルテだけをその場に残して……。

●逃れ得ぬ魔弾
 弾丸が、イスタルテの腹を撃ち抜いた。黒鎖に飲み込まれながら、ガンナーが放った弾丸だ。イスタルテは大きくよろけ、地面に倒れ込んだ。
「ガンナーさえ封じてしまえば……」
 雛乃が呻く。彼女の黒鎖に飲み込まれながら、ガンナーは攻撃してくるので、思うように近づけないでいたのだ。その上、今もガンナーの乗っている馬は鎖から逃れようともがいている。
 ぶち、と何かが切れる音がした。
 ガンナーの片腕が千切れ、地面に落ちた。馬が鎖を抜ける。
 地面に倒れたイスタルテへとガンナーは距離を詰めた。銃口はまっすぐ、イスタルテの眉間に向いている。
 ガンナーが引き金を引いた。弾丸が放たれる。まっすぐ、イスタルテの頭に当たる筈だった弾丸だが、どういうわけかイスタルテには当たらず地面に穴を穿つ。
 ガンナーの乗っていた馬の脚を、雛乃の放った魔弾が撃ち抜いたからだ。馬がバランスを崩したせいで、ガンナーの狙いはずれた。
「メガネビームとか言わせませんよう」
 突き出されたイスタルテのフィンガーバレットから、無数の弾丸が放たれた。まるで流れ星のような弾丸の嵐が、ガンナーと馬を撃ち抜いた。

『逃しはしないわ』
 そう囁いて、ザミエルは弾丸を放った。仲間達の壁役に徹する彩花の肩や腹を次々と射抜く。
 グラリ、と彩花の身体が揺れた。
『狩人の魔弾は、ターゲットを射抜く』
 次に放たれたのは、高速の弾丸。彩花の脚を貫通し、背後に控えたモニカの脇に命中した。飛び散る鮮血と、崩れる隊列。
「最後まで抵抗するなら致し方ありませんか……」
 彩花が呻くようにそう言った。すでに帰還するように勧告はしているが、それを聞きいれてくれる気配はなかった。
「ひとつだけアドバイスしておきます。狙撃手というものは敵の攻撃に晒されず敵を仕留めるのが前提なんですよ。如何に強力でも、自身がダメージを受ける事を前提としているようでは……」
 砲身はまっすぐ、ザミエルを捉えた。モニカはこの一射に全神経を集中させている。脇から流れる大量の血を気にもとめず、その視線は敵を射抜く。
 ザミエルが魔弾を放った。それと同時に、モニカも引き金を引く。
「みせておやりなさい」
 そう呟いたのは、彩花だった。モニカの放った弾丸は、空中でザミエルの弾丸と衝突。ザミエルの弾丸を打ち砕き、次の瞬間にはザミエルの腹部へと命中していた。
『ん……なっ!?』
 銃撃戦で撃ち負けるとは思っていなかったのだろう。驚愕に目を見開く。
「痛みを癒し……その枷を外しましょう」 
 飛び散った燐光が、仲間の傷を癒す。胸の前で手を組み、祈るような姿勢で櫻子は術を発動させた。
 痛みにあえぐザミエルが、櫻子に銃口を向けた。回復役から仕留めるつもりなのだろう。
 真っ先に反応を見せたのは櫻霞だ。
 ザミエルの放った弾丸の前に、その身を投げ出し櫻子の身代わりとなる。
「狩られる側になるなんざ予想できなかったか? 狩猟がやりたいなら他所でやれ」
 血を吐き、その場に膝をつく。銃声が2発。左右の手に拳銃から、弾丸が撃ち出される。空中を疾駆し、弾丸はまっすぐザミエルの脚を撃ち抜いた。
 ダメージを受け、平静を失っていたザミエルはそれに対処しきれない。地面に膝を突き、悲鳴を上げた。自分が狩られる側になったことなどないのだろう。
『よくも……。貴様ら……』
 美しい顔を醜く歪ませるザミエル。全身に、禍々しいオーラが満ちる。恨みの力を弾丸に込め、それをリベリスタ達へと向けた。
『これで最後にしてやるわ!』
 ザミエルの髪が真っ赤に染まる。銃身も、燃えるように赤く。
 ザミエルが引き金を引いたと同時、彩花とミュゼ―ヌが飛び出した。モニカの放った弾丸がザミエルの片腕を吹き飛ばすが、すでに弾丸は放たれた後だ。
「一度しか言わないわ。ここは貴女の狩場ではないの、この世界から去りなさい」
「狩りで奪うものは必要な命だけです。貴方がたを殺すこと自体には我々には何の利益もありませんから」
 ミュゼ―ヌと彩花が駆け出した。ザミエルは、そんな2人に銃口を向ける。こちらの言葉に耳を傾けるつもりはないようだ。ザミエルの弾丸が、2人を撃ち抜く。飛び散る鮮血はそのままに、しかし2人は動きを止めない。
 鋼の拳が、弾丸を受け止める。
 弾丸は止まらない。ガントレットに罅が入った。
 振り下ろされた鋼脚が、弾丸を地面に叩き付けた。恨みの力を動力に、未だ動き続ける弾丸を2人がかりで押さえつける。
「それが邪魔だった」
 2人の影から、龍治が飛び出す。火縄銃の銃口は、まっすぐにザミエルの額を捉えていた。ザミエルがリボルバーを引き抜くが、遅い。
「貴様と同じく、俺も逃しはしない」
 集中に集中を重ねた一撃が放たれた。
 そしてそれは、吸い込まれるようにザミエルの額を撃ち抜く。飛び散ったのは血ではない。黒い霧のような何かだった。
 風に吹かれ、霧はどこかへ流されていく。境内に空いたDホールへと吸い込まるように消えていった。
『この世界……なかなか楽しめそうな狩り場みたいね』
 ザミエルの声が響く。黒い霧が、ザミエルの本性なのだろう。
 最後に一言そう言い残し、ザミエルは消えた。境内に転がっているのは、ボロボロになった白骨だけだ。
「はぅ~……ちょっと疲れましたですぅ」
 そう呟いて、櫻子は地面に座り込む。ザミエルを追い払うことには成功したが、討伐とまではいかなかったようだ。
 しかし危機は去った。
 魔弾の射手は、こうしてこの世界から去っていったのだった。 

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。依頼は成功です。
ザミエルは、この世界から立ち去りました。
素直に帰るなら帰してやる、というプレイングが多かった結果です。

魔弾の射手の物語、いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけたなら幸いです。
それではそろそろしつれいします。
縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。