●通常の何倍ですか? 「ふう……やれやれ」 もはや使われなくなった市民プール。ただ、これだけ暑いのだから使わなければ損だろうと、急遽使用される事になったのだが……当然、しっかりとした掃除が必要である。 掃除担当の男は一人でブラシを肩に担ぎ、やる気なさげにプールの縁に立つ。暑いのか水着姿で掃除しているが、男の水着を細かく描写するのもアレなので省略させていただく。 「あーあ、とっとと終わらせて給料もらって帰るとするか」 と、男が振り返った、その時。 ずぞぞぞぞぞ。 と、音と共にプールの中の水が蠢き出した。 「……へ?」 男が混乱しているその間に、その水の塊は男を飲みこんでしまった。 ●この作品は全年齢対象です。 「ぬらりと鈍く艶めかしい独特な動きは個人的には一つの芸術だと思うのだが、それが世間に認められる事がないのが寂しい限りだと思わないか?」 いつもながら唐突な『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)の弁だが、今日も絶好調のようだった。 「さて、ところでだが、最近は暑くて色々と問題が多いと思わないか?」 暑くなくても問題が多いよって言葉を飲み込んだリベリスタが黙っていると、それを見た伸暁は首をコキリと鳴らし。 「E・エレメント、フェーズ1。まあ、プールの塩素水の塊ってヤツだな。リベリスタにしかできない、簡単なお掃除のお仕事ってヤツだ」 「……掃除ねぇ」 「コイツの能力は無駄に多い耐久力と、薄い布を溶かすくらいのものだから、大した事はない。ま、気楽な掃除だろ?」 「そうだな、別段防具を溶かすわけじゃないし……」 「ただ」 リベリスタが言いかけた言葉を伸暁は遮り。 「このエリューションは水着を着ている者だけじゃないと、水に擬態したままで出て来ない。必ず全員水着姿で行ってくれ」 「なあ、それって……」 「ま、プールの掃除なら水着姿なのも普通だろ。頑張ってくれ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:タカノ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月08日(月)23:32 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●水着お披露目会 かんかん照りの日差しが降り注ぎ暑さ真っ盛りの中、7人のリベリスタが集まり男女の更衣室に消えて行く。そう、もちろん水着にと着替える為に。 「どうかしら?」 モノキニの水着を着た『怪力乱神』霧島・神那(BNE000009)が、無駄に威風を使いながらポージングを決める。元々のスタイルの良さも相まって中々のセクシー度である。 「ひよちゃん、着替え手伝ってあげるねー」 白いタイサイドビギニを着た『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)が、『デイブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)の後ろに回って、彼女の水着を取り出す。 「うん……こんな事初めてですけどいいんです……あたし、ティセさんみたいな人好きですから……」 「ん……やっぱりみんなきれい。せくしーってやつ」 水色のワンピースを着た『うさぎ型ちっちゃな狙撃主』舞 冥華(BNE000456)が皆を見渡し、素直な感想の述べる。最年少ゆえの可愛さは飛び抜けているのだが。 「み、みなさん綺麗ですよ」 豊満な体に少ない布地のビキニを着た『ハプニング少女』大石・きなこ(BNE001812)もこくこくと頷きながら見渡す。 そんな中……『だんまく☆しすたぁ』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)は悩んでいた。 (このままじゃお兄ちゃんの視線を独り占めできない!) 兄の趣味に合わせてスクール水着をチョイスしたが、ライバルは多い。何とかしなくてはと決意を新たにするのであった。 一方その頃、男子更衣室では。 「何処だ……何処にいる」 今までのいかなる戦闘の時よりも『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)の神経は研ぎ澄まされていた。今まで数々の依頼をこなして来たが、今回以上のピンチを体験した事は、恐らく無い。 何しろ、集合場所に『いい男♂』阿部・高和(BNE002103)が現れなかったのだ。 (なぜだ。なぜ、俺はこうまでも身の危険を感じているんだ!?) 水着に着替える最中、もう一度後ろを振り返る。だが、其処にはいかなる気配も感じられない。 隣の女子更衣室から楽しげな話声が聞こえるが、今の竜一にはそれで妄想できるほどの余裕は無い。 そして、決意したかのようにブーメランパンツを上にあげ、目つきを変える。そう、これからパラダイスが広がるはずなのだ! 「今は死ぬべき時じゃない! バックは誰にも取らせないぞっ!」 でも、前衛ですけどね。 ●プールサイドでの戦い 「やらないか? 掃除を」 プールサイドに七人が向かうと、何故か其処のベンチにツナギを着た阿部さんが座っていた。 表記の統一的には高和と呼ぶべきだが、此処はあえて阿部さんと表記させていただく。 そして、おもむろにツナギのチャックを下ろすと。思わず竜一は、ハッと見てしまう。だが、もちろん下は水着だ。そして、ぐいっとパイルバンカーを取り出せば、危うく「凄く……大きいです……」と言いそうになる。いかん、これでは阿部さんのペースだ。 そんなわけで阿部さんが事前に準備していた掃除道具で掃除を始める八人。 すると。 「きゃん」 虎美のおしりを何か、生温かい物が撫でる。驚いて後ろを見れば、其処には竜一がいる。それを見て。 「もうお兄ちゃん、そう言うのはいきなりじゃなくてちゃんと言ってくれれば……」 「虎美! 危ない!」 返事と同時に竜一の刀が横薙ぎに振るわれる。 「え」 と、虎美が驚いている間に竜一の刀が虎美の足元に迫っていた触手を切り裂く。 「さあ、出て来たみたいだぜ」 プールの其処から大きな水の塊が、うねうねと動き始め全員を狙っていた。 「お、思ってたよりもすごく大きいや……」 頬を染めながらティセが思わず呟く。 染めてるのは、夏で暑いからです。ええ、それ以外に理由はありませんよね? 「私に触っていいのはお兄ちゃんだけなんだから!」 くるりと虎美の両手にある銃が回る。まるで演舞の型のような動きで銃を動かし、スライムに銃弾を叩きこんで行く。 「ばーん」 気の抜けた冥華の声とは裏腹に勢いよく銃弾がスライムに叩きこまれる。 「ほら、どんどん続くよ!」 神那の突き出したパイルバンカーの一撃がスライムの体に突き刺さる。しかし、これだけの攻撃を与えてもスライムの体は震えるばかりで、まだまだ消滅しそうにない。 「たー」 冥華並みに気の抜けた気合い。いや、本人は精一杯に気合いなのだろう。その気合いと共に振るわれたティセのクローだが、それはスライムの触手に受けられる。その時、その触手が右の肩ひもを掠めたのだろう。はらりと右のトップスが落ちそうになり胸がギリギリまで見えそうになる。 「にゃわわ、ちょ、ちょっとタイムです!」 「キター! シャッターチャンスキター!」 急いで撮影を……と思った竜一だが、戦闘中は流石にマジメに戦おうと決意した。そう、撮影機会は最後にゆっくりあるのだから! それに、少しでも気を抜くと後ろに控えるいい男が怖いのもある。なので、眼球と言うレンズで心の中のフィルムに納めておくだけで留めておく。 そう、後ろのいい男を改めて認識したところで強烈な視線を後ろから感じている気がしてならない。特に下半身に。 走る悪寒。彼の歴戦のリベリスタとしての経験が危険だと信号を鳴らしている。 もしもーし、ロックオンされていますよーと。 「ええいっ! のんびりと平和に、撮影を楽しめるときは来ないのか! 俺の平和は何処にある!」 がむしゃらに振るわれる竜一の刀と剣。それが連撃となってスライムを攻めるが……その時飛び散ったスライムが竜一に降り注ぐ。 「くっ」 何とか飛び散ったスライムを振りほどくが……。 「キャー!」 誰か味方の黄色い悲鳴が聞こえる。そう、そこには全裸の竜一が立っていたのだから。 だが、竜一は自分を隠さない。そう、自分を偽ってはいけないのだ! 「何故だから知らんが、変態と評されるようになってしまった俺の実力を甘く見たか?」 そして竜一は仁王立ちに構える。 「こういうときこそ! あえて! 魅せる! 見せ付ける!」 「いいからお兄ちゃん! 前隠して!」 虎美が叫びながら両目を手で覆うが、指の隙間からしっかり見るのは忘れない。 だが、竜一は一つの失敗をしていた。 それは。 「へえ……いいもん持ってるじゃないの」 後ろに阿部さんがいる事だった。 「うおおおおおお!」 後ろからの悪寒を振り払うように突撃して行く竜一。 「ダメ! お兄ちゃん! 三刀流なんて!」 もちろんそんなスキルなんてありませんよ? その横で比翼子のナイフが無数の刃になってスライムを切り裂くが、まだまだスライムも元気なようだ。一瞬、竜一の方を間近で見てしまったが大丈夫。きっと三歩歩けば忘れられる。 「こうなったら私の宇宙最強の奥の手を使う時のようだね」 そう、この艶めかしいボディを倒すにはアレしかない。 「くらえ! ひよこ! デイブレイク! キィィーック!」 と、飛びあがろうとしてプールサイドの水で足を思いっきり滑らせる。 「ぐわーやっぱだめだー」 そして、倒れた比翼子めがけてスライムの触手が迫る。 「わー! 今はちょっと待ってー!」 それが届こうとした時。その前に割って入った者がいた。 「おっと、大丈夫かい? この分だとそうとう我慢してたみたいだな」 其処には阿部さんが立っていた。スライムに水着を溶かされ全裸になっていたが、奇跡的な逆光で比翼子からは見えない。 代わりに、比翼子の声に振りむいた竜一はバッチリ見てしまっていた。 「いいか、竜一、水着を着た阿部さんはただの紳士、だが水着が溶かされれば野獣になる。野獣になった阿部さんは……無敵だ!」 「うわぁぁぁぁぁぁっ!」 竜一の激しい猛攻がスライムに襲いかかる。そう、今見てしまった物を忘れようとするがごとく。だが、あのインパクトはすっかり竜一の心のフィルムに記録されてしまった。今ほど時を逆戻りしたくなった事は無い。 ●ぽろりもあるよ。 「きゃあ!」 次にスライムのターゲットになったのはきなこだった。 スライムの触手がボトムに絡まり、そのボトムを溶かしていく。 「おおっ!」 もちろん真っ先に反応する竜一。だが、その溶けた水着の下には一枚の絆創膏。 「こ……これなら、水着が溶かされても大丈夫です!」 もちろん、そんなレベルのガードでは竜一が視線を外すわけがありません。そして、その光景が面白く無い人も当然いるわけである。 「もう!」 そして、何を思ったのか虎美がスライムに体当たりをし、その衝撃で水着の胸元が溶けてしまう。そして、そのまま隠さず竜一の前に立って。 「お兄ちゃんは虎美だけ見てればいいの! どう……私、おっきくなったかなぁ?」 前かがみになって竜一を挑発する虎美。とりあえず、何人かが思ったであろう事を、此処にあえて書いておこう。 (戦え) と。 ブラコンシスコン兄妹がわたわたやっているのを視界から外し、神那のパイルバンカーに電撃が宿る。 「面妖な変態スライムが!」 放電と共に突き出されたパイルバンカーの一撃はスライムの体表を貫き、いくつかのスライムの欠片が飛び散る。その破片が神那の水着の左のトップスを溶かすがそんなのは気にせず、もう一度パイルバンカーを振り上げる。 「早く倒れて!」 片手で胸元を隠したティセが、もう片方の手に炎を宿し、殴りかかる。リベリスタ達の猛攻を受けてスライムの体も大分縮んで来たが、それでもまだ活動を停止させるまでには行かない。 「ん、まだまだうつよー」 冥華の銃弾がスライムを捉え、その体を震わす。衝撃でまたスライムの欠片が飛ぶがそこまでの被害は無い。 「ああ……次は斬風脚だ……」 阿部さんの何故か満足した表情と共に風を纏った蹴りが、その衝撃をスライムに与える。ぶるっと震え、どんどん小さくなって行くスライム。小さくなったスライムに、これは好機と比翼子がずずいと前に出る。 「くらえ! 星に最強を約束された我が奥義! ひよ……」 「ばーん」 比翼子が必殺技の口上をのべているいる間に、冥華の狙い澄ました一撃がスライムを捉える。それが決定打になったのか、スライムの動きがゆっくりと収まり、やがてただの水になってそこに四散した。 「あ、あれ?」 きょとんとしている比翼子だったが、少なくとも戦いが終わったのは理解ができたようであった。 ●掃除タイム 一通りの掃除を済ませ、水を張れば後は自由なパラダイス。 掃除に関しては、その風景でも撮影しようと思っていたが。 「男は度胸と掃除! なんでもするのさ! きっといい気持ちだぜ! スライムの散った後から全て掃除するまで帰さないからな!」 と、阿部さんに連れられて一生懸命みんなに交じって掃除をしていたが、神那を始めとした、ボロボロになった水着のままで掃除している女性陣もいたので、それはそれで目の保養だったのかも知れない。ただ、後ろから常に悪寒を感じていたので、それどころではなかったのかも知れないが。 そして、いざ、撮影を! と、思ったらカメラを構えた瞬間にきなこの魔力の矢によってカメラは粉々に粉砕されていた。 「はあ……不幸だ」 カメラを壊され、落胆気味にプールの端に座っていた竜一の足元にちょこんとした重みが乗っかる。虎美は竜一の膝の上に座ると。 「大丈夫だよ、お兄ちゃんには虎美がいるよ?」 笑顔で竜一に正直に話す虎美に竜一は苦笑しつつ、曖昧な笑顔で返す。寅美はゆっくりと竜一の手を取り、そのままプールサイドに引っ張って行く。 「せっかくだからお兄ちゃんも遊ぼうよ。私、浮き輪持って来たんだ」 指を絡めるように手を握る虎美。しょうがないな。と言いたげな表情で竜一は腰を上げると。 「よし、遊ぶか!」 と、虎美をプールへと引っ張って行くのだった。 「……ありゃ、筋金入りのシスコンだな」 「ううん、あれもりゅーいちのいいところだから」 「はにゃーいっぱい想われてて羨ましいです」 そんな声が上がったとか、上がって無いとか。まあ、それも竜一には関係の無い事だろう。きっと。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|