●扉の向こうに…… 「ここから、私の新しい生活が始まるんですね……!」 『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)は、ちょっぴり胸を高鳴らせつつ、扉を前にしみじみとそうつぶやきます。 家賃もお手頃、通学にも便利という好条件なその部屋は、紫月が方々を探し回って見つけたものです。初めての自分だけの我が家に、ドキドキの紫月ちゃん。 一人暮らしを始めよう! と思った、その事の起こりは、彼女の姉夫婦の結婚でした。 大いに尊敬し、憧れの対象でもある大好きな姉さんの結婚を、紫月は祝福したものですが……そこには、一つの問題をはらんでいたわけで。 その、大いなる問題とは、 「…………思い出すのは、やめましょうか」 何となく、ぽっと頬を赤く染める紫月ちゃん。うん、まぁ。健康な若いカップルと一つ屋根の下で暮らすという状況が、お年頃の女の子の多感な心にどのような影響を及ぼすかについては、ここでは言及を避けるといたしまして。察してください。何となく。 ……カベとか薄かったのかな。苦労したね、紫月ちゃん……。 それはさておき。 ベッドはどこへ置こうかな、机は窓際のあそこがいいよね、本棚はあっちに……なんて、お引越しの算段に胸をときめかせつつ、さっそく新居の扉を開いた紫月でしたが。 「っきゃあ!?」 途端、うけけけけ! と、不気味な笑い声が部屋の中から響き渡ります。 なんということでしょう……! 紫月の新たな門出となるはずのその新居は、いつからか、凶暴なエリューション・ゴーストたちの巣窟と化していたのです! 部屋の中でげらげらと奇声をあげるゴーストたちに、楽しいはずの新生活のスタートに早くもつまづいてしまった紫月は、眉根を寄せつつ心の中で思うのでした。 こうなったら……彼らに助けを求めるしかない……! ●作戦開始……あれ? 「はいっ、終わり! 今ので最後だね」 こうして紫月のSOSに応じて召集されたリベリスタたちと凶悪なゴーストどもの壮絶なバトルが今ここに幕を開kもう終わってる!! 「ありがとうございました! ごめんなさい、こんなに弱かったなんて……」 「いや、大したことのない相手で良かったよ。大事な新生活の始まりに、妙な綾をつけられちゃたまらないよね」 恐縮する紫月に、『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)はそう言って、あっけらかんと笑います。集まってくれた頼りになる友人たちの活躍で、紫月の新居は無事に護られたのでした、いやもうあっさりと。 「でもさ、考えようによっては、ちょうど良かったよな?」 「そうだね、このままボクたちで、引越しを手伝ってしまえばいいんだから」 静けさを取り戻した部屋の中、『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)と『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)が、それぞれ武器をアクセス・ファンタズムにしまい込みながら、快活に笑って言います。何て良いお兄さんたちでしょう! 確かに、一般人であろう引越し屋さんにお願いするのに比べれば、まあ概ね力持ちなリベリスタたちのこと。女の子の一人暮らしに必要な荷物を運ぶくらい、ちょちょいのちょいでありましょう。 「えっと、助かりますけれど……よろしいんですか?」 「ま、行きがけの駄賃ってやつだな! 遠慮しなくていいぜ?」 「虎美とお兄ちゃんの愛の巣みたいな、素敵な部屋にしてあげるからね!」 と、『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)と『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)の仲良し兄妹も、ノリノリで参加を表明。戦力はもう十二分に揃ったと言えます。 持つべきものはお友達、ですね! といった次第で、エリューション・ゴースト討伐大作戦改め、紫月ちゃんのドキドキ☆一人暮らし大作戦が、ここに発動されたわけであります。 皆さん、お手伝い頑張ってくださいね! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:墨谷幽 | ||||
■難易度:EASY | ■ リクエストシナリオ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年03月16日(日)22:28 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●作戦開始 「ちょっと揺れるんだけどね。普通の車とはまた違った視界で、面白いだろ?」 『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)の運転する、『新田酒店』印の軽トラックは、がたがたと荷台に積んだ荷物をちょっとばかり揺らしつつも、軽快な速度で目的地へ向かって走ります。 「ええ、そうですね。今まで、あまり車に乗る機会が無かったので、新鮮です」 声をかけた快に、助手席にちょこんと座った『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)は、窓の外を流れる景色へ物珍しげに視線を流し言います。 今日は、紫月が晴れて新居へと移り住む、その当日。親切な仲間たちの申し出で、引越しは彼らが全面的に協力しつつ行われることとなっていました。 アークの誇る精鋭たちを、このような雑事に動員するなんて……と、控えめな紫月はいささか恐縮気味ではありましたが。でも、リベリスタたちの備える基礎体力を持ってすれば、若い女の子一人の引越し荷物の運搬などは朝飯前というものですし。ついでに引越し代もロハになって諸々万々歳! という一石二鳥の作戦が立案され、本日ついに決行の時を迎えた、という次第なのでありました。 が。物事、何でもそう上手いこと進むというわけでもないようで。 「……あれ?」 「何でしょうか……?」 やがて見えてきた目的地。二人の目に入るのは、何やら、大きなトラックの列でした。 「いやー、さすがはアークのトップエース、ゴールデンコンビの御厨夏栖斗に新田快! そこへ、『不敗の鉄甲』設楽悠里まで加わったとあっちゃ、ゴーストなんて瞬殺だったな!」 「私は、エアお兄ちゃんペロペロしてたら戦闘が終わってたよ。……遠慮しないで、本物相手でも良かった気がするよ?」 快活に笑う『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)と、ちらっと流し目を傍らの兄へと送りつつの『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)、ブレない兄妹二人。彼らは集まった仲間たちと共に、巨大なマンションの玄関口に佇んでいます。 紫月の要請にて、現場へ急行したリベリスタたち。しかし、彼女の新生活の大事な一歩を阻む不埒なE・ゴーストの群れは、歴戦の猛者たる彼らに、もう言葉通りに瞬殺されてしまい。1ターンすら持たなかった戦闘に、彼らは力を持て余し……たからかどうかはさておき、ともかく、そのまま紫月の引越しを手伝おうという流れとなり、こうして荷物の到着を待っているところなのでした。 手持ち無沙汰に快と紫月を待ちつつ、『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)はそびえる高級マンションのてっぺんを背を反らして眺め、嘆息します。 「一人暮らしかぁ……そういえば、僕ももうすぐ大学生だし。そのあたりのこと、いろいろと考えないといけないのかなぁ?」 竜一の語る通り、アークでは古株かつ一流の夏栖斗ですが、その実、彼はまだ18歳というお年頃の男子でもあるわけで。同い年ながら、自分よりもいくらかオトナに見える紫月に、女の子のほうがしっかりしてるのかなぁ? などと物思いに耽ります。 「それにしても……」 と、ちょっぴり圧倒されたように言うのは、『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)。 「まさか、エレベーターが使えないとはね。登るのか……30階……」 そう。折りしも、今時期はお引越しシーズン真っ盛り。この機に新生活を始めようという人々の引越しラッシュが重なり、荷物や家具などを積んだ台車がエレベーターの前に大行列を作っており、どうやら、とても順番が回ってきそうにはない雰囲気なのです。 「でも、相棒の義妹なら、僕の妹と言っても過言じゃない! ここは、きっちり手伝ってあげないとね」 ぐっと意気込む悠里の視線の先から、見覚えのあるトラックが道の向こうからやってきて、やがて彼らの前へと停まります。 さて、到着した荷物に、一同気合を入れなおし。 「それでは、皆さん、今日はよろしくお願いしますね」 車を降り、ぺこりと丁寧に頭を下げた紫月ちゃんに、各人サムズアップで返し、まずは作戦の第一段階。遥か上空、30階目指して、ピストン輸送作戦の開始であります! ●しばらくお待ちください 「……ハァ……ハァ……ハァ」 「ふっ……ふっ……ぜい、ぜい……」 「ひい、ふう、はあ……」 「…………あ、まずい、崩れ」 「ちょ、ま、やば」 「おわああああああ!!」 「きゃああああああ!?」 「お兄ちゃあああん!!」 「……………………あ、あぶなかった」 「うん、気をつけよう……」 「……ハァ……ハァ……ハァ」 「ぜい、ぜい……はあ、ふう……」 「……ひい、ひい……」 ●私も住みたいです 「こ……これが、最後の、荷物……お、終わった……」 荒い息をつき、床へとへたりこむリベリスタたち。さすがのツワモノたちも、体力の限界を試すかのようなドトウのごとき30階分の階段往復には、辟易とした様子。 とはいえ、悠里のつぶやいたように、ひとまず荷物の運び入れはこれにて終了です。まだまだ作業は続きますが、ひとまずお疲れ様! 一息つきがてら、紫月は改めて、これから自身の生活の拠点となるその部屋を、ほう、とため息がてらに見回します。 「……本当にこんな所へ、私一人で住んでも良いのでしょうか……?」 彼女が気後れがちにそうつぶやくのも、無理はないのです。なにせ、もう、このお部屋がすごい。すごすぎます。 築5年の高層マンションの30階に位置するこのお部屋。オートロックで鍵はカードキー、なんてのは序の口としまして。 2LDKで広々50畳、収納はウォークインクローゼット。 キッチンにはワイドグリルのついたIHクッキングヒーター、もちろん自動食器洗浄機も完備。 バス・トイレ別は当たり前としましても、お風呂は両足を投げ出してもゆっくりとくつろげる快適空間で、ジャグジーまでついていて。 南向きの日当たりの良い部屋で、ベランダに出れば太陽をいっぱいに浴びることができる上、家庭菜園でも出来そうなくらいのスペースがあります。 インターネット回線ももちろん敷設済み。壁は厚く、防音性だってばっちりです。 極めつけに、キッチンの横には、ワインセラーまで備え付けられているのです! これで、お家賃何と、驚きの4万円也……ウソでしょ? 「なんか……すごいところだね……」 「築5年で、何があってゴーストが住み着いたんだよ……ワケあり物件にも程がある!」 という悠里と夏栖斗の率直な感想も、まったくもってその通りというものです。ほんとに何があったんでしょうか。 とはいえ。そんな、奇跡のようなお部屋に入居することができたのも、住み着いたゴーストたちを難なく駆逐する力を持ったリベリスタならでは、であったわけではありますしね。 「んじゃま、一息ついたら、さっそく始めますか!」 いつも元気な竜一の先導で、作戦は第二段階へと突入していきます。 ●それぞれのお仕事(?)風景 竜一と夏栖斗は二人、50インチのフルハイビジョンテレビをリビングへと運び入れます。テレビもこれまた、迫力の大画面! オーディオには一家言お持ちの匠・竜一さんは、各種AV機器の設置位置について驚くべきこだわりを発揮し、 「いいか、重要なのは、音を鳴らし切る……ってことさ。音を鳴らし切るってのは、もちろん知ってるだろうが、その機器の音質を最大限に出し切る! って事な。ここからが大事なんだが、音を鳴らし切るのに最大の敵は、そう! ノイズだ。電磁波ノイズに振動ノイズ、こうした様々なノイズが、音のピュアさを失わせてしまうわけで、つまりは…………」 あ、はい。ありがとうございます。そのへんは、よろしくお任せいたしますね。 夏栖斗が、差し入れの各種ゲーム機よりどりみどりを、テレビ周辺へもくもくと配線している横では。 快がなにやら、床や壁を指でこんこんと叩きつつ、 「さすがは高級賃貸……壁は厚いし、防音材もしっかりしてる。隣の音はほとんど聞こえなさそうだね。これなら、もし仮に隣が若い新婚夫婦だったとしても、夜も安心だね。あるいは、紫月さん自身が、防音を必要とするような状況になったとしても! ねえ、紫月さん!」 ……聞こえていないのか、あるいは黙殺されているのか、別の部屋で虎美と二人で荷解きをしている紫月からの返事はありません。 そんな中、悠里は寝室へと一歩足を踏み入れた途端、思わず目頭を押さえ、ふーっ。と一つ大きなため息。 部屋の真ん中に、ででん、と鎮座するのは、ぷるんぷるんとマットを震わせるウォーターベッド。しかもこれ、回転式のようですどうやら。 百歩譲って、それはまだいいとしましても。ベッドの上でこれでもかと自己主張をする、ピンクのハートのYES/NO枕。 うら若き乙女の寝室に、何てモノを置いたものでしょうか……一体誰ですか、こんなものを置いたのは! 「竜一くんだね」 正解! それはさておき。寝室の目の前でふるふると揺れる、気持ち良さそうなウォーターベッド。彼が、 (ちょっと寝てみたい……) と思ったとしても、正直言いまして、それは無理からぬことではありました。 そんなわけで。 「さて、寝室の防音性も、ちゃんと確かめておかないとね……あっ」 「あっ」 ふいに寝室へ姿を現した快と目が合ったのは、ふるんふるん。ベッドに横たわってその寝心地を堪能する、悠里さんでありました。 ふるん、ふるん。 しばし黙って見つめ合い、やがて二人で、苦笑い。 さて、寝室と隣り合うもう一方の部屋では、紫月と虎美の女性陣が、荷解き……主に衣類、事に、あまり男性陣の前ではおおっぴらに広げたくは無い、つまるところの、下着類をダンボールから取り出し、整理しているところでした。 部屋の外では、実に健康的な男子たちがひしめきあっているわけで、虎美はそこらへんの対応策へ実に余念が無く。わざわざ用意してきたカーテン布をガムテープで天井に張り付け、即興の衝立をこしらえる周到ぶりです。何て頼もしい! 「そうそう、虎美さん。ベランダに置く、あのテーブルセット、とっても可愛いです。ありがとうございます」 「うん、いいよ、引っ越し祝いってことで~……わあ、すごいねこれ。勝負下着ってやつかな」 「あ、ち、違います、それはダメです、虎美さん……!」 と、女の子二人の仲睦まじい様子の、華やかなこと。 となれば、もちろん外にいる彼ら……男子たるもの、そんな魅惑の花園へと決死の突入を試みるのは当然の性なのかも知れません。 というわけで、 「さて、衣類の整理も手伝わないとね、ぱんつなにいろー?」 「あ、衣服の整理? 任せて、手伝うよ! っておい、カズトはあっち行って」 ばちばちばちっ。無謀にも乱入を図った、男・夏栖斗&竜一の目の前で、激しくスパークするイナズマ。きりきりと引き絞られる矢の鋭利な輝き。 ……ぱたん。虎美のスタンガンと紫月の弓矢に、物言わず撤退を決めた決死隊の二人。賢明な判断だったと言えましょう。 待ち受ける強力な障害の情報が正しく伝わったらしく、以後は不埒な乱入者が現れることもなく。二人は穏やかに和みながら、作業を進めてゆきました。 ●紫月の想い 「あ、悠里、ちょっとそっち持ってて」 「こうかい? 良いカーテンだね、レースのフリルが紫月ちゃんにぴったりだ」 夏栖斗と悠里が、可愛らしいカーテンをレールへ取り付ける、その背後……するすると足音を殺しつつ通り抜けていく、一つの影。 抜き足差し足、ひっそりと慎重に歩を進める竜一の目指す視線の先には、魅惑の広々バスルームです。 と言っても、今は、誰かが入浴しているというわけではなく。代わりにそこでは、 「トイレ、お風呂、脱衣所、玄関、リビング、ベッド周り……低いアングルでパンチラ狙いとか。ふふふ、ポイント丸分かりだよ。お兄ちゃんの部屋に1024個仕掛けた、私の目に狂いはないよ」 スゴいことを口走りつつ、仕掛けられた盗撮用カメラを次々に撤去していく虎美ちゃんの、手際の良さときたら。 「脳内お兄ちゃんってアドバイザーもついてるし。お兄ちゃんの考えることなら、何だってお見通しだよ……えっ、お兄ちゃん、今度はあっちが怪しいって? さすが虎美のお兄ちゃん、頼りになるんだからもう」 うふふふふ、と誰とも無く笑みを浮かべつつ、バスルームから出て行く虎美ちゃん。ちなみに、彼女のエアお兄ちゃんは百八人いるので、大抵の状況には対応できるんだそうです。……これも愛のなせる業、でしょうか。 そんな妹の背を、息を潜めながら見送った本物お兄ちゃん。 「……ふふふ、さすが俺の妹、全ての仕掛けをこうも容易く見破るとは。でも、お兄ちゃんは諦めるわけには行かないんだ……だって、何かあったら大変だもんね。どんな時でも見守れるように、ちゃーんとカメラを設置しておかないと!」 と、実に生き生きとした良い笑顔のままに、いそいそと新しいカメラの設置にかかります。 「またゴーストとか出たら、しづっきーが危ないし。そう、大切な仲間を! 俺は! 傷つけられたくないんだ……ッ!!」 迷いなく叫ぶ竜一の声が、バスルームいっぱいに乱反射し。 秘密の作業に没頭している彼は、いつの間にやら背後に佇んでいた影にも気づくことなく。米国俳優でモノホンの警官で合気道の達人でもある、詳細言及不可能ながら恐らく誰もが知っているあのお方の魂を何となく宿してるっぽい、我らが快さん。コキャッ! と竜一くんの首ねっこをICHIGEKI。 乙女の名誉と自尊心は、こうして無事に守られたのでした。 「皆さん、少し休憩を挟みませんか? お茶とお菓子を用意して……あら、竜一さんは……?」 「ああ、ありがたいよ、丁度喉が渇いてたところだったんだ!」 首を傾げる紫月をよそに、何事も無かったように熱いお茶を受け取る快さん。 しばしの休憩タイムに、一同はほうっと一息つきます。 夏栖斗は、お茶請けの羊羹をパクつきつつ、 「なーなー、紫月、なんで突然引越し決めたん? 大学進学の機会なん? その割りに何か顔赤らめてたけどなんでなん?」 あまりにもあまりな直球に、紫月ちゃんはちょっぴり困り顔。 「あ、あの、誤解の無いように補足しておきますけれど……別に、その。うるさかったりしたから、引越しを決めたわけではないですよ? 少し気を使ったのは、確かですけれど……」 微笑みながら、紫月は彼女の姉夫婦とのやり取りを思い出します。 優しい彼らのこと、いてもいいんだよ? とは言ってくれたものの。 「まあ、そうですね……二人が、二人の幸せを考えられるようになったのなら。もう、私が何かを言うことも無いでしょうから」 あとは二人に任せて、自分は自分の幸せを考えればいい……そんな紫月の想いもあっての、今回の引越しなのでした。 「気にするなって言われても、やっぱり、ね。新婚夫婦との同居となると、気を使うよね」 紫月の姉夫婦二人を良く知る悠里は、そう言って苦笑いしつつも、 「その辺りが、鈍感なところもあるけど……でも、それが彼の良いところでもあるから、さ」 尊敬する大好きな姉、その伴侶となった彼には、ちょっぴり複雑な心持ちではあったりもするものの。 でも、紫月は悠里の言葉に、そうですね……と、にっこり笑みを浮かべるのでした。 ●作戦終了! 「っは! ……あれ、もう終わってる?」 「……ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃ……あ、おはようお兄ちゃん。引越しならもう全部済んだよ?」 虎美の膝の上で目を覚ました竜一がきょろきょろと辺りを見回すと、窓の向こうでは、とっぷりと日が暮れており。荷物は全て解かれて、部屋の中はすっかり小奇麗に整えられた後なのでした。 キッチンの側の食卓では、さっそく夏栖斗と紫月がその使い勝手を確かめつつ腕を奮い、こしらえた引越し蕎麦が並べられ、ちょうど夕食の準備が整った頃合。 6人で卓を囲み、快が音頭を取って。成人組は日本酒で、未成年組はジュースとウーロン茶で、乾杯! 「紫月さん、お姉さん夫婦の後ろに、どこか一歩引いてる印象があってね。あまり親しくできてなかったから、今日はいい機会になったよ。これからも、何か困ったことがあれば遠慮なく、『友達』に相談してくれよ!」 うんうん、と力強く頷く、頼りになる仲間たち。そのありがたみを、紫月はじんわりと胸に感じながら。 「今日は、本当にありがとうございました……たくさん食べて、休んで。ゆっくり疲れを癒して下さいね」 肉体労働の後の心地良い充足感と、紫月の感謝の笑顔に、食卓は和やかな雰囲気に包まれるのでした。 その後、酔いつぶれてしまった悠里に、紫月は毛布をかけてあげたり。同じくすっかり潰れてしまった竜一と、その介抱をしていたはずの虎美がいつの間にか姿を消していたり。残った紫月、快、夏栖斗で楽しくゲームなど遊んだり。 色々ありましたが、ともかくこれにて、『紫月のドキドキ☆一人暮らし大作戦』は完遂となりました。お疲れ様でした! 紫月ちゃんの新生活が、楽しく、幸せに満ちたものとなりますように。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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