●ええ、何やってもいいから解体するんですよ。 あるところに五階建て三十世帯の団地がありました。 正確には四半階半地下一階のつくりでエレベーターは無し。築何十年と経ち、そこかしこの劣化が進んでいる住宅でした。 しかし一時期エリューションがちょっと暴れた影響で幽霊騒ぎなんぞ起きてしまいまして、住民総退去からの管理団体ノータッチからの不法入居者続出からの暴力的強制退去からの一棟まるごとエリューション化という最初と最後しかつながってないコンボが炸裂したのであります。 とはいえ団地がエリュっただけで何をしてくるでも無く語りかけるでもなく、たまたま住み着いていたアリだかが流れでエリュった程度の影響に留まっておるのです。しかし大きさにして二ミリ程度のEアリさんは日に日に数を増やし、今日で十匹にまで増えてしまいました。将来的にはその辺の動物までエリュったりしそうな気がするので、今のうちに取り壊してしまおうかなと思った次第でございます。しかし腐ってもエリューション。その辺の解体業者に頼むわけにもございません。 ということで、このたびリベリスタ日本一でおなじみアークの皆様にエリューション退治という名の解体作業をお願いする運びと相成ったわけでございます。 長い話を要約しますと、団地を一棟破壊してくださいまし。 ●だから何やってもいいから解体しろっつってんだろ! アイワ ナビ子(nBNE000228)がシムをシティする感じのゲームをプレイしていた。 ビルを建設しては壊し建設しては壊しを続けるという、歪んだプレイスタイルである。 大量に住民が入居した集合住宅をさらっと破壊し、帰ってきた住民が慌てふためくさまをとっくりと観察するという、ちょっとあまり見かけないタイプのやつだ。 そんなナビ子の横でテレビ電話越しに説明してたのが、団地の管理人兼持ち主のおっさんだった。 『そもそも山奥にひっそりと建てたものでして、重機を入れようにも木々や道が邪魔になる場所でございます。その分周辺のことを気にせず好きに壊すことが出来るはずでございます。手段は問いませんので、どうか解体工……エリューション退治をお願いできればと……』 「予算は?」 『はあ……はい?』 「予算ないとだめでしょ。うちだってタダで働く便利屋ってワケじゃないんだし、リベリスタに自腹切らせる分けにもねー。なんかねー」 『それはその……二十万ほど』 「えー。それじゃあ爆薬積みまくってドゴォーンってできないじゃん。重機も入れられないんでしょ?」 『すみません。それ以上はさすがに……ああ、でも一台や二台ならなんとか』 「機材費は?」 『そ、そちらもちで……』 「じゃあアレだ。意外と大変なんだ」 『しかし建物の耐久年数も随分と過ぎていますし、リベリスタの皆さんならきっと……』 「まあ時間かければ無理じゃないよね。無理じゃあね」 『で、ですか』 ナビ子はせっせと建てた発電所を火事で爆破させ町ごと吹っ飛ばすというプレイをしたあと、ゲームを終了させた。 「解体作業ってさあ、囲い建てて足場組んで全部屋を内側から整えてっていう準備作業がクッソ大変でさ、最近は鉄と石を分けろだのなんだので細かい作業すごく多いんだよね、窓枠や木材まで全部人力で外してから重機でなるべく静かにーって感じで。爆破でどかーんとやれた時代が懐かしいよね。でも今回は何でもアリアリで、手順も作業も自由自在らしいから、結構好き勝手出来るよね。経費が安いから割と自力でいかなきゃだけど、そこはさ、自由にさ、テキトーにさ」 次に遊園地を作るゲームを立ち上げつつ、ナビ子は言った。 「残った経費は山分けして貰っていいんで。あとはよろしくなんで! なんで!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年03月13日(木)22:19 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●アークリベリスタのやることにいちいちツッコミを入れていたら死ぬ。過労で死ぬ。 小鳥さえずる豊かな森に、バイオリンの音色が響いておりました(虹色光混じりのフォーカスをかけてご想像ください)。 銀色髪の乙女っていうか『運び屋わたこ』綿雪・スピカ(BNE001104)は振り向きながら爽やかな笑顔と共に高音を響かせ、そして。 「ロース塩タン上カルビイイイイイイイイイイイイイイイイイイイアアアッ!」 廃墟ビル(エリューション)にバイオリンを叩き付けました。へし折れるバイオリン。折れて飛ぶバイオリン。 ちなみにこのバイオリンは次回予告の時に喋ります。『どうもバイオリンです。みんないいバイオリンと言えばストラディバリウスみたいな風潮ありますけど、あれって楽器制作者のアントニオ・ストラディバリさんの名前がなんまついたもので、名前のイメージは「よっちゃんイカ」とさして変わらないですよね』みたいな感じです。 「どうしたんですあの人。今日になって急にキャラが行方不明なんですけど」 「さあ。似たキャラが混在しすぎて交通事故を起こしたんじゃないでしょうか? 知らないですけど」 丸太に腰掛けておにぎりむしゃむしゃする『興味本位系アウトドア派フュリエ』リンディル・ルイネール(BNE004531)アンド『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)。 「まあ、今日は私、団地妻なんですけどね。昼下がりの」 「……なんて?」 「結婚してないですって? いいえ私は既婚者ですよ旦那様はお仕事が忙しくて全然帰ってきてくれないですけどほら今も携帯一本で声が聞こえるんです旦那様今なにしてるんですかそんな私のこと考えてたなんて恥ずかしいですうふふうふふ」 圏外表示になった携帯電話を耳に当て、ハイライトの消えた目でおにぎりむしゃむしゃする小夜の図である。今日のハイライトシーンである。 リンディルは『かざみさんとこでやれ』という謎の彫り込みがなされた丸太から立ち上がると、ぐっと背伸びをした。 「それじゃあ、団地をチェラってリアルジェンガしますか!」 小鳥さえずる豊かな森に、さいころが転がるときのBGMが響いておりました。なにがでるかな的な。 「はい、『初恋の話』。略してコイバナっす。さんはい」 「コイバナッ!」 と、こっちではない。 フュリエ界における文字通り人外魔境な恋愛話(しかも他人の話)を展開しようとしたシーヴ・ビルト(BNE004713)を、『忘却仕様オーバーホール』ケイティー・アルバーディーナ(BNE004388)はそっと止めた。 「あれ、コイバナはいいんですか? いっぱい話しちゃおうかなって思ったんですよっ!」 「さいころ間違えたっす。こっちっす」 きゃっぴきゃっぴしたシーヴさんにじゅうはっさいを前に、ケイティーさんにじゅうにさいは別のさいころを取り出した。六面ダイスである。 「じゃあこれ転がすっすから、出た目のところを壊していって、見事壊れたらアッキーナが脱ぐっていうルールでどうっすか」 「うんいいよっ!」 「よくねえよ。この界隈にはツッコミ係いねえのかよ!」 後ろを高速で通り過ぎていったアッキーナをほぼ無視する形でさいころを転がし始めるケイティー。 「ほうほう、まずは一番下のド真ん中と。っしゃー、問答無用に壊れやがれええ!」 背景に虎だか竜だかペンギンだかを浮かべて殴りかかるケイティー。 が、その拳はペギューっていうペンギンみたいな効果音と共にへし折れた。 「うがああああああ殴り方間違えたあああああああっす!」 拳を掴んで転げ回るケイティー。 シーヴはかがんだ姿勢で軽くガッツポーズをとると、なんかスポーツ男子を元気づける女子マネージャーみたいな顔で言った。 「大丈夫? 痛いの飛んでけしてあげよっか?」 「あんた生粋のデュランダルじゃねーっすか。『遺体飛んでけ』になるじゃないっすか」 「じゃあ代わりに私が解体やってあげる。サイコロ借りるね。何が出るかなーっと、えいっ!」 片足をぴょんと上げてさいころを転がすシーヴ。 「あ、あっちだ! メガクラッシュいきまーっす!」 安全ヘルメットを振り回して突っ込んでいくシーヴ。 ケイティーは起き上がり、彼女の転がしたさいころを見た。 『恥ずかしい話』と書いてあった。 「……どっち?」 二度あることは三度ある。 小鳥さえずる豊かな森に、バラエティー番組特有のオープニング曲が流れていた。 「新感覚!」 「ガテン系!」 「「アイドルーッ!」」 ツナギとヘルメット姿でピッケルやドリルを掲げる『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)とメリュジーヌ・シズウェル(BNE001185)。 神秘界隈ではアイドルオーラを物理的に感じることができるようになった昨今、自力でアイドルをするリベリスタたちがここにいた。いやそのうちスキル取るかも分からんけど。 「はいオッ……ケェイ! お疲れさァン!」 そんな二人をハンディーカムで撮影する『現場監督』岡崎 時生(BNE004545)。 最近はカメラ技術も進んだもんで、物理的な手ぶれ補正ガジェットやら高画質小型カメラやらが出回りあほみたいにデカい機材を持ち歩かなくてよくなったそうでございます。まあ大抵のカメラ系機材が近代兵器のお下がりってだけにクッソ高いのが玉に瑕ですが、ザキオカもまたそういう近代カメラの恩恵にあずかる一人でした。つまりブレなし高画質高音質で撮影していたのでした。 「じゃあまずKY確認するから。三メートル以上の場所では高所作業用のフックちゃんとかけてね。メットと安全靴も必須だから。あとこの下り全部ディフェンサードクトリンの一環だから」 「じゃあオフェンサードクトリンは?」 「後で焼き肉奢る」 「っしゃおらー!」 ピッケルとツナギを脱ぎ捨て、タンクトップとホットパンツ状態(アッキーナ・ゼロスーツ)になってからちゃんとジャケットとジーンズを上から着るという行程を挟む明奈である。 その背中を『仕事慣れしてるなあ』という目でメリュジーヌは見つめていた。 「ところで、なんで態々撮影することになったの? おねーちゃんそこが知りたいな」 「それはアイドルデビューのためっしょ。解体芸人にばっかりお株を奪われちゃたまらんからね! ビル解体の現場を撮影して商材にする。商材にして売る。そのツテでメリュジーヌのメーちゃんを売り込む!」 「あ、おねーさん売り込まれるんだ? えへへ、二十歳の記念にアイドルデビューなんて波乱の人生。じゃあ白石明奈さんは先輩ってわけね(同事務所の先輩アイドルをカメラの前で呼ぶ時はフルネームで述べるのがマナーだぞ☆)」 ザキオカはゆっくりと平行移動しながら、あえて斜め下の角度からカメラを回し始めた。 脳内では『これから秋茄子とメリュジーちゃんはビル解体に挑むのだ!』みたいなナレーションがついている頃である。藤岡弘探検隊のノリで。 「ダイジョウブダイジョブ、僕基本ちっさいバラエティで活動する派だから。いかがわしいデビューはしないから。でも視聴者が望むかもだからサービス盛り込んでもらってもいーかなー」 「可能な限り? で、今回はどういう映像をとるの?」 「ミュージックPVってやつだね。パンチの効いたクールでセクシーでバイオレンスなネセサリー」 「ソーリガン?」 「プライマリー」 などと適当な会話をしながらビルの裏手側へやってくる明奈アンドメーちゃん。 ザキオカはスマホを取り出してメモ帳を起動した。 「秋茄子ちゃんと話し合ったアイデアだとねー、マッポーの世で実際可憐なカワイイギャルの二人が暴力に屈してしまうかのようなアトモスフィア。しかし二人はアイドル重点。アイドルミームオタッシャデー」 「何語? それ何語なの?」 「おねーさん理解しづらいんだけど、要するにカラオケで『翼広げて』『夢を掴んで』『手を伸ばして』『瞳開ける』感じの曲で流れるやつって認識でいいのカナ?」 「アッハイ」 「じゃあ二人が謎の魔の手から手を取り合って逃げまどうシーンから行ってみようか。踊るダメ人間のPV前半を意識する感じでお願いね。追いかける役は後で僕を自録りしてつなげとくから」 「はーい、りょーかーい!」 ●『ビル解体の依頼……だと思っているのか?』『ナ゛ニィ!?』『この建物ごとPVにし尽くしてくれるわ!』『もうダメだ……おしまいだ……!』 軽くボロけた格好の明奈、そしてメリュジーヌは林の中を走っていた。 時になんもない所で転ぶ明奈。それを引っ張り起こして走るメリジェンヌ。あ、ちがうメリュジーヌ。 その後ろを全身タイツでスケキヨ仮面を被ったザキオカが、両手を掲げがに股でしゃかしゃか追いかけてくる。 二人はジュースとおにぎり、そしてカラアゲというロケ弁みたいなやつをもりもり食べてくつろぐケイティー(顔に目線処理)とパズでドラドラしてるリンディル(乳に目線処理)を通り過ぎると、寂れたビルの中へと飛び込んだ。 ハンマー片手に通路を塞ぐ暴漢(ザキオカ)が行く手を塞ぐ。 別の方向からはチェーンソーを持った暴漢(ザキオカ)が行く手を塞ぐ。 二人は手を取り合って階段を駆け上った。 なんか部屋でリンディルが首を吊っていた。 壁には『旦那様なんで帰ってこないんですか旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様 by神谷』と病んだペイントがなされていた。 腰を抜かしてへたりこむ二人。 追いついてじりじり近寄ってくる暴漢A(ザキオカ)。 逆方向からもじりじり追い詰めてくる暴漢B(ザキオカ)。 『もっとやれー脱げー』と言って新しいノンアルコールビールを開けるケイティー。 その横でもそもそ寿司を喰うリンディル。 突然切り替わったシーンの中でビルに向かってメガクラを連射するシーヴ。 鉛筆を倒して、倒した方向に柱を破壊するスピカ。 架空の相手と架空のメールを交わす小夜。 夜の校舎窓ガラス叩いて回ったリンディル。 急に戻ったシーンの中でなんかこう片手を翳す感じでぱっと上げる二人。 二人の手がこう、なんかぴかーって、かーって光って、それを見た暴漢の群れ(全部ザキオカ)がうわーって感じで驚いて。 ぐらぐらーって部屋が揺れて。石とか砂とかぱらぱら落ちてきて。 うわ崩れるーって感じで、両手を頭の上に上げてそしてがにまたで暴漢の群れ(ほぼザキオカ。一部スピカ)が逃げていって。 あと小夜が屋上から水平発射されて。 なんか微笑んだ明奈とメリュジーヌが手を繋いで空を見上げる感じで。 空にカメラが向いて。 それで終わりである。 「はいカットォ! おつかれちゃーん!」 ザキオカの号令と共に、明奈とメリュジーヌはくたっと肩の力を抜いた。 「ふー、いい映像撮れたー?」 「撮れた撮れたー。マジいーよー。最高だよー」 「んー、おねーさんついにアイドルデビューかー。アイドルオーラとらなきゃかも。ワクワクしちゃう」 「所でこのビル、なんかぐらぐらしてないっすか?」 おにぎりもぐもぐしながら、ケイティーが呟いた。 真顔で振り向く明奈たち。 「今、綿雪さんとシーヴさんが下の柱ぶっ壊しまくってるから、そろそろ崩れる頃だとおもうっすけど」 「そそそそれを早く言えい!」 「おおお落ち着いて、こういうときは『おかし』の法則だよ! はい言ってみて! さん、はい!」 ビシッと指さすザキオカ(戦闘指揮の図)。 ビシっと親指を立てるメリュジーヌ、明奈、リンディル。 「『お』いてけ、『か』まうな、『し』かたない!」 「『お』いつめて、『か』くれがをあばき、『し』のさばきをくだす!」 「『オ』デノ、『カ』ラダバ、『ボ』ドボドダ!」 「誰一人として知ってねえ! 最後のおかしですらねえ。オカボっす! オンドゥル語っすよ!」 「あ、ところで小夜くんは?」 「さっき屋上から水平発射されていったっすよ」 「あいつ一人で逃げやがった!」 「それより早く逃げ――」 べしゃっと崩れる建築物。 その光景を背に、スピカとシーヴは大きな金属製ジョッキで乾杯していた。 ジョッキを持った腕を組んでぐるぐる回りながら一気のみしていた。 「ジュースおいしー!」 「今日のわたし、ほんとキャラが行方不明!」 「それじゃあ帰って、焼き肉パーティーですねっ! たのしみ!」 二人はパチンとカメラ目線でウィンクをした。 綺麗に締めたつもりだった。 つもりであった。 ……かくして、恐ろしきエリューション団地はリベリスタたちの手によって解体されたのだった! だが世界にはまだいくつものエリューションがひしめいている。 全てのエリューション撲滅の野望を胸に抱きつつ、彼女たちは明日を目指して歩いて行くのだった(ナレーション・ザキオカ)! |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|