●並び立つ暴君 峰の境目に双虐あり。 その者、真紅の鱗を纏う豪傑なり。 緋色に染まった体表は騎士が装着する美麗なる鎧が如し。 逞しき尾は剣の如し。 背には勇壮なる大翼を広げている。 頑強な竜鱗で覆われた、筋骨が隆起した堂々たる巨躯。噴き上がらせるは煉獄の灼熱。 細かく整列した牙は、四肢を切断する鋸を想起させて止まない。 獰猛性を宿した黄褐色の瞳に映るは、餌となるべき命のみ。 皮を剥ぐ牙と、肉を裂く爪をもって、喰らい、喰らい、喰らいつき、己が血脈と化すべし。 まさに残虐の化身たりえん。 その者、翡翠の鱗を纏う智謀なり。 碧色で彩られた長躯は瀟洒な外套を羽織った賢者が如し。 老獪な髭は杖の如し。 長大な体をうねらせ空を駆け巡る。 妖艶な龍鱗に包まれた、物々しく蠢く畏怖を漂わせた痩身。降り注がせるは天界の稲妻。 大きく発達した牙は、心臓に打ち込む杭を想起させて止まない。 狡猾な輝きを秘めた真珠の瞳に映るは、糧となるべき命のみ。 皮を貫く牙と、肉を溶かす毒をもって、嬲り、嬲り、嬲り尽くし、己が愉悦と為すべし。 まさに嗜虐の化身たりえん。 赤竜が大地に業炎を巻き起こせば、緑龍は蒼天に雷光を走らせる。 熾烈なる饗宴。穏やかな山野にありえぬ異変を招来させる。 災厄の出現はあまりに突然の出来事であった。今はまだ、連なる峰々――天然の城砦が行く手を阻んでいる。しかしいざ解き放たれたならば、その幻想性すら抱かせる悪辣とした容貌からして、どれほどの被害をもたらすことか。想像の及ぶ範疇ではない。 早急な対処が迫られていた。この異形二頭に挑む、勇敢なる戦士の登場が待たれる。 ●実際のところ 「トカゲとヘビね」 至極冷静に、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は山岳地帯の谷底で観測された二つの対象を判定した。 既にブリーフィング・ルームには数名のリベリスタが召集を掛けられている。 「でも、外見的特徴はよく捉えていると思う。大きいし。たぶん、正真正銘のドラゴンがいる次元に影響されて進化したんだろうけど」 とはいえ、身も蓋もなく言ってしまえば翼の生えたトカゲと髭を伸ばしたヘビなので、戦闘力に関しては雲泥の差があるのは間違いない。もしこれがアザーバイドとして現れた本物のドラゴンであるならば、骨が折れるの一言では済まないだろう。 てきぱきと万華鏡から挙がってきたデータを拾い集めるイヴ。 「今はまだ人間の犠牲者は出てないようね。片割れの飛行能力の発現が不十分だから、谷から抜け出す手段がないみたい。主食にしているのは、近辺に生息する山羊や鳥類かしら。谷の中央には微かに川の清流が通っているみたいだから、水浴びなんかもするのかもね」 「なんかそうやって生態を聞かされると可愛く思えてきました」 しかしながらエリューションであることは事実。明日にでも外観相応の能力に到達してしまう可能性は拭えない。現時点でもフォルムと不釣り合いというだけで、十二分な敵性と殺傷力を有している。 「見た目ほどの強さはないとは思うけど、注意は怠らないこと。それだけは伝えておくわ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:深鷹 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年03月18日(火)23:02 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●潜行! 澄み切った青に、流れ雲の白がよく映えている。 実に晴れやかな空だと、パラシュートで降下中の雪白 桐(BNE000185)は思う。 万華鏡が導き出した突入時刻は真昼も真昼の正午十二時。崖に影を作られる谷底というロケーションの都合上、最大限光を確保できる時間帯が選ばれることは、ある程度は予測できたことである。 「さて、いつまでも空中散歩に耽っている暇はありません」 大地の裂け目には、今まさに長大極まる龍が泳いでいるというのだから。 「果たし合いといきましょう」 龍に限界まで接近したところで、バックパックを切り離し機動性を獲得。 『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)が授けた翼が空中での自由を保証する。 『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)の張った結界はこの先に起きる神秘を完全に隠匿する。 宙を往く龍は、己の周りに複数の人間が群がっていることを認識すると、直ちに迎撃を始めた。 「生憎ですが、あなたは後回しですので!」 背後に小夜を隠しながら、自らの身長以上に開かれた大口にも臆することなく、牙を狙って剣閃。さながら鉄塊の如き極太の剣が、龍の先制攻撃を弾き返す。華奢な体と端正な顔立ちからは想像できない――外見から一番想像できないのは、彼の性別ではあるが――極めてパワフルな一撃だった。 降下中が最も無防備であることは織り込み済み。その隙に唯一の支援役である小夜を欠くような失態を、練達のリベリスタである桐が演じるはずもない。 「流石で御座います」 小夜はそんな桐の頼もしい背中を、うっとりした眼差しで眺めていた。 「さあて、まずは地べたを這ってる野郎から参りますか」 崖から突き出た岩上に布陣した『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)が構えた真紅の銃が、大気を裂くような咆哮を上げる。 狙い撃つは陸地で待ち構える竜の関節。伸縮性を持たせるために鱗の防護が薄くなっているその部位は、数少ない急所といえる。 「こちとら遊びじゃなく仕事なんでね。メリハリは効かさせてもらうぜ!」 再度放たれた銃弾は正確に局部を捉える。無論、一撃で仕留められるということはないが、着実なダメージの積み重ねが後々ボディーブローのように効いてくるだろう。 味方全員に翼の加護が行き届いたことを確認すると、小夜もひとまずブレスと同じ足場を拠点として、戦況を見守る。 「護衛はお願いしますね」 「合点承知、てな」 龍の胴体に威嚇射撃を入れながら、小夜の要請に応じるブレス。自在に治癒スキルを使いこなせる小夜が長期戦に及んだ場合の生命線である以上、元よりそのつもりだ。 ●レプリカ 「いやーさすがは僻地! お天道様が高いうちから人目を気にせず暴れられるのは気持ちがいいのだわ!」 着陸するや否や、軽快な足取りで駆けているのは『ベビーマム』ミリー・ゴールド(BNE003737)。 「ドラゴンは強くてこそなのだわ。期待してるわよ!」 まずは竜から距離を測って、じっくりと観察。小柄なミリーの何倍もの身の丈を持つエリューション相手でも、焦る必要はない。その有り余る巨躯からいって、サイズ相応の鈍重な動きしか出来そうにないことは、容易に予見可能。 絶え間なく動き回り、竜を撹乱しながら弱点を探る。疲労は小夜が癒してくれる。心配はない。 上空では、セレアと『六芒星の魔術師』六城 雛乃(BNE004267)の二人のマグメイガスが漆黒の鎖による攻撃を開始していた。竜と龍とが重なる瞬間を見計らい、まとめて巻き込む心算である。 同じ種類の魔術を行使しているのだが、顕現している鎖の形状は、互いの性格が出ているのか違いが見られる。翼で浮遊するセレアが書物を媒介として作り上げた黒鎖は、非常に太々としていて一本一本が強い剛性を誇っていた。対して崖の出っ張りを足場とする雛乃が杖先から射出している鎖は、圧倒的に本数が多く、的確に対象を捕捉している。 「黒くて太くて逞しいって、素晴らしいことだと思わない?」 「ちょっとよく分かんないけど……」 困惑する雛乃。 「ううん、やっぱり緑色の龍が邪魔になってるかな」 龍の全身を覆っているエナメル質の鱗が、鎖の威力を遮断してしまっている。陸地の竜に届く頃には、本来の禍々しいまでの呪術効果は失われているであろう。 「それじゃ下からいきますか」 集中攻撃を喰らおうものならひとたまりもないが、リスク覚悟で向かうしかない。出来得る限りエリューションの射程外になる位置をキープしたいところだ。 「あっ、ちなみにさっきのは鎖の話であって腐りの話じゃないよ? ホントホント」 「マグメ組が動いたな。しばらくは俺が陽動に回るっきゃねぇか」 一旦銃を下げ、発光グレネードを準備するブレス。 「あっ、あの、ダブルクロスさんっ。来てます!」 小夜の警告に顔を上げると、旋回した龍が毒の滴る牙を剥き出しにしてこちらに向かってきているではないか。 「チッ……こっちに気づきやがったか。射手が近接戦できねぇって思ってんじゃねーだろーな! 舐めんじゃねぇぞ!」 咄嗟に銃身に装着された刀を構え、迎撃態勢を取る――が、その必要はなかった。 「ふう、間に合った。あなたの相手は私だよ、ヒゲのドラゴンさん」 機敏な動きで空中戦を仕掛けるフィティ・フローリー(BNE004826)が、龍の進軍を食い止めていた。 短剣を用いた物理的な攻撃手段を得意とするフィティにとって、頑丈な竜は相性の悪いエリューションである。その分、物理に弱い龍は苦にならない相手。たとえ谷間を悠々自適に飛行していようと、面接着でポジショニングを取りやすい彼女にはさしたる問題ではない。 崖にぴたりと張りついて、両サイドを交互に跳躍して行き交いながら、すれ違いざまに龍の身体を切り刻む。フィティの優れた俊敏性がこうしたアグレッシブな身のこなしを可能にさせていることは、今更言うまでもない。 かつてドラゴンの悲喜交々を身をもって体験したフィティ。龍がフラストレーションを募らせているであろうことが手に取るように分かる。そう考えると妙に親近感を覚えてしまうというのが人情というもの。 「が、がおー」 思ったより恥ずかしかったらしく、頬をかすかに紅潮させた。 フィティが龍の牙の届く距離に入ると、即座にブレスによる閃光弾での牽制が飛んでくる。我が身を傷つけられているというのに標的を絞り切れない龍は明らかに苛立っており、感情に任せて雷を呼び起こす。 それは彼女らに限らず地上のリベリスタにも被害をもたらしたが、小夜の無尽蔵の回復のおかげで深刻なダメージには至らなかった。 「龍が暴れているのだわ。早く陸戦を終わらせないと」 跳ね上がって竜の眼球を殴りつけた後、それまで接地して戦っていたミリーが、低空飛行の姿勢に切り替えて川を渡る。 一心不乱に彼女を追いかけ続けていた竜の足が、水場を前にしてぴたりと止まる。 「さあドラゴンちゃん! こっちに来てミリーと戦ってみるといいのだわ……って……」 挑発虚しく、距離を保ったまま容赦なく火炎が噴きかけられる。 「い、意外と頭がいいわね。目潰ししたからそのまま川に入ってくれる予定だったんだけど……」 「E・ビーストは一定期間この谷に棲息しています。野性の勘とはいえ、私達よりも地形への理解度は高いでしょう」 剣を盾のように構えながら駆け寄ってきた桐が言葉を掛ける。なんとか直撃は免れたとはいえ、ミリーの衣服は端々が焦げついていた。 「おっと、己を無視してもらっちゃ困るな」 居丈高な声が上がる。硬質な鱗は痛覚どころか触覚そのものを鈍らせているのか、背中に竜ヶ崎 恋(BNE004466)が乗っていることに竜は全く勘付いていなかった。 「おかげさまで、存分に狙いは定めさせてもらった」 竜の息吹を宿したバイオ・サイズを振り上げる恋。相手がドラゴンと聞いて燃えているのはミリーだけではない。恋もまた、因縁めいたものを抱いて此度の戦闘に臨んでいる。 「ナイスなのだわ! そのままガツンとバターンってな具合でお願い!」 「分かってる。オ……ラァァァァァァッ!」 気合一喝。頭部目掛けて浴びせかけた鎌の衝撃が、竜を前のめりに転倒させる。 水飛沫が盛大に舞い上がった。 「竜を模したなら……これくらいで倒れてもらっては困るな!」 突き飛ばされた赤竜はすぐさま起き上がり、大地を揺るがす憤怒の雄叫びを発するが、既にリベリスタの思惑通り小川の中。 流水に足を奪われ、ただでさえ重々しかった動作が、更に遅くなる。 「さあさ、一転攻勢に移る時! 燃えていくわよ」 正面からミリーと桐が突進。竜の後方からは恋が駆け出し、挟み撃ちの構図を作る。 負けじと竜もそれぞれに爪と尾で反撃しようとするが、一手遅い。鋭い爪の閃撃は桐の大剣に受け流され、バランスを崩された結果、雄々しき尾も恋の肉体を射止めることなく空を切る。 「今が撃ち頃、ってなぁ!」 更に、ブレスの遠隔狙撃によるサポートが加わる。照準合わせに十分に時間を割いて射出された弾丸が、完璧に竜の眼球に突き刺さり視力を奪い去る。 「みんな下がってて! これがミリーのぉ……全力ッ!!」 火を吐く瞬間に見えた、最も守りの薄い場所――即ち、口の中を狙って、勢いよくジャンプしたミリーが乾坤一擲の拳撃をぶち込む。灼熱の炎を纏ったその拳は、火を操るエリューションの許容範囲さえも凌駕する。粘膜を焼く臭気が辺り一体に漂い、甚大な痛みに竜が絶叫を上げる。 それでも、竜は膝を付かない。ミリー自身には会心の手応えがあったが、やはり、物理攻撃に対してはかなりの耐性を持っている。 「おーっとっとぉ! そういう時は私の出番!」 いずこからか飛んできたセレアが詠唱を始めた。いくら硬い鱗の防護で直接的な攻撃に強かろうと、呪術の前では意味を成さない。無慈悲に降り注がれる強大な鎖に縛り上げられ、憤懣、絶望、焦燥、悲哀、堕落、あらゆる負の感情に襲われながら、苦悶の内に絶命していく竜。 「専門家のお仕事ですから!」 謎のテンションで颯爽と現れたヴァンパイアが、美味しいところを持っていった。 ●アゲイン 「あとは、あのエリューションだけだね」 遅れて参じた雛乃が、上空で泰然と待ち構える龍の長躯を指差しながら言う。 「一体だけならば断然与し易い敵だとは思います。幸いにも、先程のE・ビーストと違って私達デュランダルの攻撃は通りやすいようですし」 「でも遠いぞ? いくら物理に弱くても己らじゃ攻撃が届かない」 「要は、地面に叩き落としてしまえばいいのでしょう?」 言うが早いか、岩壁すれすれを沿うように浮上していく桐。その意図を察したか、恋も桐を追う。 龍よりも高く舞い上がり、二人は崖上部の出っ張りに布陣。 そこから龍の背へと飛び乗った。 「っと、陸の奴より繊細だなこりゃ。己達が乗ってることに気づいたみたいだ」 体全体を揺する動作で振るい落とされそうになるも、なんとか堪える。 「手早く終わらせましょうか。いざ、参ります!」 サイズ差に気圧されることなく、桐が剣を、恋が鎌を、渾身の力を込めて龍の胴体に振り下ろす。 溢れん限りの衝撃が、極めて局所的に集中する。 攻撃を受けた箇所を支点にして龍の体が直角に折れ曲がる。姿勢が崩れたことで浮力が激減し、急落を始めた。 身をよじらせて、痛みの出所に噛みつこうとする龍。 「余所見してんじゃねぇぞ。手前の相手はそいつらだけじゃねぇ!」 だが、ブレスの射撃がそれを許さない。鱗の隙間を狙い済ました鉛弾の痛撃に気を逸らされる。 ならばとばかりに闇雲に落雷を起こそうとするが、その行動も崖を並走するフィティによって阻害される。 「させないよ。足掻くのはやめて。もう、大詰めなんだから」 竜の落下速度は増し続ける一方。 「ベビーと違って可愛げのないヘビね。腕が鳴るわ!」 凶悪な龍の面を仰ぎながら、ミリーはぐるぐると肩を回してリズムを整える。 接触攻撃を泣き所とするエリューション相手なら、覇界闘士の独壇場。 体の大小なんてのは問題ではない。 大事なのは―― 「破壊力ぅ!!」 頭から墜落してきた龍の鼻っ柱を、低く腰を落として真っ向から拳で打ち抜いた。 鱗を突き破る感覚、肉を貫く感触、牙が砕ける音――それら全てがミリーに勝利を告げている。 「あんた達との闘いも無駄にしないからね」 重厚長大なドラゴン退治を成し遂げて、格闘少女は弾けるような笑みを見せる。 彼女の胸の内は、大いに達成感で満たされていた。 ●狩りの成果 討伐された二体のエリューションは、死してなおその巨大さを見せつけていた。崩れ落ちた竜の死骸はちょっとした丘のようであり、地に横たわる龍に至っては、尾から頭までの距離に桁外れのスケール感を抱かせた。 「西洋のドラゴンと、東洋のドラゴン、か。竜と龍というのが同じ言葉で、微妙にニュアンスが違う、というのも不思議な気がするね」 両者を見比べて、フィティがふと小さな疑問を漏らす。 「ふむふむ。竜は西洋だと悪魔の象徴だけど、元々は古くからの土着宗教の神様で、どっかの大御所宗教が自分達以外の神様を悪者にする為にそうしたらしいよ。一方で龍は今も昔も神格化された象徴みたいなもんだね」 雛乃の解説は実に堂に入っており、フィティだけではなく他のリベリスタをも感心させた。 「えっ、何それ? 何やら凄そうな話題なのだわ」 「一応これでも近代西洋儀式魔術のプロだからね~。といっても今回のケースだと、竜はいかにも典型的なドラゴンの成り損ないって感じで、龍の方はどっちかって言えば原始的なワイアームみたいだね」 「ほ、ほほう」 正直ミリーはよく分かっていない。 「複雑な関係性なんですね。仕事の合間にやってるゲームだと、西洋的な竜も東洋的な龍も同時に仲間にできたりしますけど」 「ゲームかよ」 ツッコミを入れるブレス。 「はい先生! 質問です! せっかくドラゴンを倒したんですからドラゴンキラーとかドラゴンスレイヤーとかそんな感じの名前の剣が手に入ったりしませんか?」 気の毒なことにもう一人ゲーム脳がいた。しかもこっちのほうが重度。 「流石に流石に。でも仮に手に入るとしても、敵が偽ドラゴンだからトラコンスレイヤー辺りになるんじゃないかな。何とかカリパー的に考えて」 残念なことに雛乃もまたゲーマーであった。 「ありえるわね!」 「ありえねぇよ」 ツッコミを入れるブレス(三十秒ぶり二回目)。 「竜殺しの称号とかでもいいですけど、やっぱりモノが欲しいです! 浪漫は大切です! 昔の日本の神話だと尻尾ぶった切った時に剣が出てきたんでしたっけ? 尻尾切ってみましょうか!」 鼻息荒くトカゲドラゴンの尾を切断しようとするセレアではあったが、桐の洒落にならないくらい冷ややかな視線を感じて慣用句的な意味でのトカゲの尻尾切りを恐れたらしく、やめた。懸命な判断と言える。 (今更言えないな……) 黙ってはいたが、どうやら恋もドラゴンスレイヤーという響きにロマンを覚えるタイプだったらしい。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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