● 『……メリク』 『なんでしょう、スード様!』 エリューションが跋扈するこの世界とは違う、異世界。 1人の少年が、幼き少女に声をかけた。 『キミもそろそろ私の力を継いで、新たな水瓶の担い手になる時がきた』 スードと呼ばれた少年は続けて言う。 経緯は定かではないが、この少年はメリクという少女に能力を受け渡そうとしているらしい。 『しかしそのために試練を受けてもらう。良いね?』 メリクに与えられる試練は、内容だけ聞けば極々単純なもの。 うお座のアレーシャとアルの棲む水辺に、尽きることなく水をたたえる水瓶の水を満たす事――。 普通に考えれば、失敗する事など考えられはしないだろう。 元気よく『わかりました! いってきます!』と言い水瓶を抱え、走るメリクもそう考えていただろう。 ――しかし、しかしだ。 『……なんでこうなっちゃったんだろう?』 落とし穴というものは、往々にいつハマるかわからないものである。 ぺたんと座り込み、呆然とした声で呟いたメリクにとって、この世界は未知の世界。 路傍の石に躓いて水瓶を落としたかと思えば、その水瓶は現実的な落とし穴――即ち、次元の穴を通ってこの世界に文字通り、落ちた。 その水瓶を追って、メリクもこの世界にやってきた。それは、良い。 『水瓶……どこぉ……!』 だが、拾い上げるべき水瓶の姿はそこには無し。 あるのは水を湛えた大きな池と、 『キシャアアアア!!』 その池を悠々と泳ぐ巨大な水蛇……否、どちらかというと竜か。 おそらく水瓶は、この竜の泳ぐ池の底に沈んでいるのだろう。拾い上げるためには、この竜をどうにかしなければならない。 『……グスン、どうしようもないよぉ……!』 非力なメリルにとって、この竜を乗り越える事は無理に等しく。 そしてまた、水を零し続ける水瓶によって池はその広さを増していくだろう。 池が広がれば広がるほどに、竜の活動範囲も広大になるという事実と共に。 ● 「……はじめてのおつかいも、大変ね」 おつかいに出てすぐに難易度が跳ね上がってしまいました。 世知辛い世の中ねとため息をつきつつ、桜花 美咲 (nBNE000239)はこなすべきミッションをリベリスタ達に告げた。 池を泳ぐ水竜を倒し、水瓶をメリルの手に返す。 内容だけ聞けば至極単純なミッションではあるが、問題は件の水竜が池を泳いでいる点か。 「水深は5mほど。格闘に持ち込むなら、潜る必要があるのよね」 必要とされるのは水中呼吸を駆使しての行動だろう。もしくは水面を飛びつつの攻撃も手ではあるかもしれない。 被害を抑えるためには、水上と水中で各々が攻撃のしやすい位置を取る事が大切となるだろう。 水瓶は今でも水を溢れさせているが、その流れは緩慢であり、リベリスタ達が戦っている間にも池はほとんど大きさを変えはしない。 「後は、水竜をどうにかするまでは水瓶には手を出さない事、かしら?」 水竜を放置して先に水瓶を入手する事も視野には入るだろうが、水瓶を手に取った者が攻撃を受ければ水瓶が破壊される可能性もある。 そのため、美咲は先に水竜を倒してほしいとリベリスタ達に告げた。 はじめてのおつかいが成功するかどうか――それは、現地に赴くリベリスタ達の手にかかっている。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年03月09日(日)22:40 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●迷い子の涙 『水瓶、どこなのぉ……』 見知らぬ世界に1人ぼっち。 大切な持ち物はどうやら池の中に落とし(見当たらないためにそう判断は出来る)、かつ不気味な鳴き声をあげる化物がその池を泳ぐ現実。 およそ人間に見立てて10歳にも満たないアザーバイドの少女が直面するものとしては、過酷以外のなにものでもない。 『気付かれないように取る? ううん、そんなの無理だよ、あわわ……』 唯一幸運だったのは、池を泳ぐエリューション達が水辺に立つメリクを標的としていない点か。 池の広さは人に巻きつく事の出来るサイズのエリューション7匹が悠々と泳げる広さではあり、現状ではメリクの存在に気付いていたとしても射程に収めてはいないようだ。 その点からおそらく――否、ほぼ決定的といえる基準で池、即ち自分達の領域を侵した存在に対して襲い掛かるのだろうと推察は出来る。射程に収めていたならば、メリクはリベリスタ達が到着する前に攻撃を受けているはずなのだから。 であるが故に、メリクは襲われていない。逆に水瓶を取りに池へと踏み込めば、標的となる事は間違いない。 『ふぇ……』 じわりと少女の目に涙が浮かぶ。 自分ではどうする事も出来ない局面は、幼い心を絶望に追いやるには十分な要因なのだから。 「試練の筈が、大変な事になっちゃったみたいだね……うーん」 「転んだ所に、たまたま次元の穴が有ったねえ。そんな事って、簡単に起こるもんなのかね? どうも、この状況が試練って感じもするけど……」 単に水瓶をうお座のアザーバイドのもとまで運び、水を湛える事が試練なのか? それとも、この現状をどう切り抜けるかも試練なのか? 呆然と座り込んだメリクの後ろで、『ニケー(勝利の翼齎す者)』内薙・智夫(BNE001581)と『イエローナイト』百舌鳥 付喪(BNE002443)がそんな言葉を交わす。 どこまでが試練で、どこまでが事故なのかは試練を与えたスード以外にわかりはしない。 わかっている事はメリクが困り果て、後方に現れたリベリスタ達にすら気付かないほど余裕がない点だけだ。 「はじめてのおつかいで実際にとんでもないハプニングってあるもんなんだね~」 「それにしても、これはちょっと厳しすぎるわね」 そんなメリクの様子を眺めながら、『六芒星の魔術師』六城 雛乃(BNE004267)と『ANZUD』来栖・小夜香(BNE000038)はやれやれとため息をつく。 いきなり接触してびっくりさせないだろうかという懸念が、メリクに気付かれるように声をかける事を2人に躊躇させている。 意を決して接触を試みたのは、『愛情のフェアリー・ローズ』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)だ。 「君がどうして泣いてるのかボク達は知ってるよ」 軽く頭を撫で、ビックリした様子で振り返るメリクに対してのアンジェリカの言葉は通じているのだろうか? アンジェリカの発するマイナスイオンが如何に気持ちを落ち着けるものだったとしても、いきなり見知らぬ存在が声をかければメリクも対処には困る。 「幸いにもわたくし達が事態を知る事になったのだ。ささやかならが助力いたそう」 しかし傍らに立ったヒルデガルド・クレセント・アークセント(BNE003356)はメリクには凛々しく、頼っても良いのかとすら感じさせ、 「君の大切な物、ボク達がきっと取り戻してあげる。だからもう泣かないでね」 続いたアンジェリカの微笑を浮かべながらの言葉は、直感的に『悪い人ではない』と判断させるに値する優しさが感じられた。 ――この人達が助けてくれるのかな? 警戒する姿勢を解いたメリクは、安堵の気持ちからか涙を零し、溢れさせていく。 不安だったのだろう。怖かったのだろう。 ならば! 「俺は敵じゃない、君の味方さ。お兄ちゃんって呼んでくれてもいいんだよ」 両手を広げて、飛び込んできたメリクを抱きしめる事こそ『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)のジャスティス! さぁメリク、お兄ちゃんに向かって飛びつくように抱きついて――、 『……』 いかない。 アンジェリカとヒルデガルドの背にさっと隠れたメリクにとって、竜一は『怪しい人』に見えたのかもしれない。 それが正解かどうかは集ったリベリスタ達の反応が答えてくれるとして、 (私達はレグルスやボレアリスの事も知ってる。あなたは彼等のことを知ってるかしら? ま、それなりに自信はあるから少し後ろで待ってて頂戴) 言葉が伝わっているかどうかの壁を乗り越えるかのように、小夜香のテレパスがメリクへと飛ぶ。 この人達は(変な人も含め)助けに来てくれたのだと理解したメリクは、そのテレパスによってようやく状況を理解したようだ。 頷くと同時に近くにあった木の陰に身を隠し、こっそりと戦場を覗く態勢をとって見せた。 「……では、いきましょうか? どちらとも、守り切ってみせましょう」 唯一、この戦場においての不安材料であるメリクが池から離れた今、リベリスタ達が攻めるのに余計な問題は起こり得ない。 酸素ボンベを背負い、準備を整えた『蜜蜂卿』メリッサ・グランツェ(BNE004834)の双眸が見据えるのは、池の主と言わんばかりに闊歩する水竜達のみ。 「胸がキツくてピチピチだったり、太腿が食い込んだりするけど……」 この寒い冬の空の下、スクール水着を披露する雛乃や、同じく水着姿のアンジェリカに対し、真っ先に水着での戦闘を提案していた竜一の顔が『ぐへへへ……』となっている点は置いといて。 リベリスタ達にとっては経験する事はほとんどないであろう水中戦は、静かに幕を開けた。 ●暴れ水竜 リベリスタ達にとって、唯一注意するべきは水上を飛行しない事に尽きる。 陸上を飛行し、射線を確保した上での攻撃ならば大丈夫そうではあるが、水竜が水辺のメリクを無視していた点から、彼等の方から進んでいかねば状況は変化しないだろう。 「もう少し近寄らなければ釣れないか?」 仲間達がメリクを安全な場所に移す中、先んじて攻撃をかけていたヒルデガルドの存在が水竜達を刺激してはいる。 水を通して伝わる殺気は、水竜側も相手の状況を把握すればすぐに仕掛けてきそうなほどに鋭いものだ。 のらりくらりとヒルデガルドの攻撃を避ける水竜達は、もっと奥まで来いといわんばかりに距離をとる事を優先している。 「これは潜らないとダメっぽいのかな……?」 そうなれば、近寄る以外に道はない。凍る一歩手前の冷たい水に入るのは相当な覚悟が必要ではあるものの、意を決して足を浸したアンジェリカに迷いはなかった。 「寄ってきてくれると楽なんだがな」 敵が釣れれば竜一の言うように戦闘は多少なり楽に運べるが、警戒している事が理解できる今はそう上手く行かないかもしれない。 が、彼等の領域には完全に入り込んだのだ。 「来ますよ」 最後に水に潜ったメリッサは、自分達を標的とした水竜が近づく姿勢を見せた事を見逃しはしなかった。 背負った酸素ボンベは背中に重りを乗せているようなものではあるが、果たして潜ったリベリスタ達は無事に水中戦を切り抜けられるだろうか? ドパァン! 激しく鳴り響く、水がはじける音。 「水中戦では強くても打ち上げたら、どうでしょうか」 大型の水竜はともかく、小型の水竜ならばメリッサにとって水面まで殴り飛ばす事は難しい事ではなかった。 今も水面下では仲間達が激戦を繰り広げているのだろうが、水辺で待ち構えるリベリスタ達にとって、打ち上げられた水竜は格好の標的に他ならない。 「じゃあついでに縛り付けちゃわないとね!」 「あまり射線は通ってないが、贅沢は言ってらんないね」 加えて雛乃が放った葬送曲が打ち上げられた水竜の身を縛れば、水中のソレはともかく水上のソレは付喪にとってまな板の上の鯉と同義。 水面に叩きつけられ、潜る事も許されない水竜を、奔る雷撃が焼き焦がしていく。 もちろん水中に潜み戦っている水竜にもその影響は及んでいるのだが、水上からは水中の戦況がどうかまでは判別する事は難しい。 「水中の戦況は、大丈夫かしら?」 「今のところは五分五分だね。……っと!」 状況を把握できる存在がいたとするなら、小夜香が問いかけた智夫だけだろう。水の上を歩く彼ならば、離れた水辺にいる仲間達よりも水中の戦況ははっきりと見通せるのだから。 その智夫は水面まで浮上し喰らいつこうとした水竜の牙をすんでのところで交わし、お返しとばかりに聖なる光――神輝閃光を見舞う。 「潜らなければならない状況は、もう少し先、ってことね」 呟いた小夜香の視線の先。 「流石に水中戦に特化しているだけはあるな。動きに鈍さが感じられない」 水面を隔てた水中では、滑るように泳ぐ水竜の機敏さにヒルデガルドが舌を巻く。 決して捉えられない速度ではなく、現にメリッサの手によって水上に打ち上げられた個体がその証拠となるのだが、 「やっぱボンベは重たいな」 水中に潜った大半のリベリスタが背負う酸素ボンベは、中でも最も実力者である竜一ですら動きに制限のかかるモノ。 ボンベを破棄しない限り、そのハンデは決して消える事はない。使いどころを考える彼は最初からボンベを1回で使い捨てるつもりだったが、無理に息継ぎを行う必要も無さそうだと判断したらしい。 「ボクがなるべくフォローするように頑張るよ……」 水の中でも呼吸が出来るアンジェリカが作り上げる、不吉を届ける月が水竜にどれほどの不吉を届けるか。ハンデのある中では、それが唯一被害を軽減する一手となるだろう。 そんなハンデを背負っている中でも、不慣れともいえる水中戦でも、リベリスタ達はよく戦っている。 「おっと、直撃は勘弁してほしいな!」 背負ったボンベの重さに加えて水の抵抗に悩まされる中、それでも竜一は襲い来る仔水竜からの直撃だけは避け、 「やはり何度も上手くいくものではないですね」 「いや……1度で駄目なら2度だ!」 再び水上へと敵を打ち上げようとするメリッサの攻撃が外れたところで、彼の振るう宝刀露草が二段構えの態勢となり、標的を水上へと押し上げるのだ。 押し上げてしまいさえすれば、 「次はあそこですか。上手く纏めきれる位置は……っと」 「なるべく水には入りたくはないからね。精々派手に吹っ飛ばしてストレス発散といこうか!」 水辺で援護を続ける雛乃や付喪に対してのわかりやすい目印ともなり、攻撃を全員が叩き込みやすい状況を作り上げてもいる。 「慈愛よ、あれ」 幸運だったのは、水中の戦いが小夜香の援護の及ぶギリギリの位置で行われていた点だろうか。 「まったく。上手く嵌ったらこういう状況になるわけだね」 水上から仲間の傷を癒しにかかる智夫にとって、否、リベリスタ全員にとってこれは予期せぬ好状況といえよう。 たとえ打ち上げられずとも、 「打ち上げにくいのなら、わたくしが気を引いて見せよう。その隙を突いてくれ」 広い戦術眼をもって状況を把握したヒルデガルドの気糸が、水竜を挑発するかのように怒りに誘う。 「キミ達にとってはボク達は餌にしか見えないんだろうね。でも、食べられるわけにはいかないよ……!」 最前線に立つアンジェリカの不吉の赤い月は、最も遠くでとぐろを巻くフェーズ2の水竜すらも射程に収める事が出来ている。 しかし水竜もただやられるだけの存在ではなかった。 「う……速い!?」 ゆっくりとではあっても確実に距離を詰めていた大水竜が、仔水竜を打ち上げた直後のメリッサの体を強く締め上げていく。 懸命にレイピアを突き刺すメリッサの抵抗を気にも留めず、次の標的を探しにかかる大水竜。 ――それは本能から来るものか。 水辺付近では水上からも攻撃が飛ぶと理解した大水竜は、周囲のリベリスタの攻撃を受けながらも、メリッサに巻きついたまま再び池の奥へと身を翻していった。 「学習しているのか? 流石に親玉だけのことはあるな」 フェーズ2であるが故のフェーズ1のそれとは違う戦い方に、ボンベから一気に空気を取り込んだ竜一が遂にボンベを脱ぎ捨てる。 そうしなければならない。ハンデを背負ったままで楽に勝てる相手ではない。 「全力だな。だがわたくしは……」 逆にボンベを外さないままでの追撃を判断したヒルデガルドの選択も、この戦いにおいては間違いなく正解だ。 呼吸により隙を作る事を嫌うか、ハンデを背負ったまま戦う事を嫌うか――。即ち継戦能力か瞬間戦闘力のどちらを選ぶかの違いだけに過ぎないのである。 「どちらにしろ奥に進まないと駄目ってことだね……」 ゆっくりと池の奥へと泳ぎ、追撃をかけるアンジェリカのように、池の奥へと進むかどうかがこの場合においては重要となるだろう。 視界の決して良くはない水中の中を注意深く見渡せば、仔水竜の数は確認できるだけでも2匹。 「張りぼてとは言え、鎧を着て水泳は多少手間ではあるね」 とはいえ大水竜が水辺近くに長く留まらないような動きを見せている今、陸上からの支援攻撃は限界に近づいている。 鎧を脱ぎ捨てぬままに水へと入る付喪は、その手間を踏まえて学習能力のあるらしい大水竜へ少しだけ恨むような視線を向けた。 「じゃあ水瓶、取り戻してくるよ~」 行く間際にメリクにそう声をかけた雛乃や小夜香が水中へと進んだ事により、戦場は本格的な水中戦へと移り変わっていく。 「それじゃあ、どっちが”竜”か、試そうじゃないか! 竜という竜を倒せば、俺が一番の竜さ!」 陸上からの支援に徹していた仲間達が追いつくまでの間も、竜一をはじめとした最初から水中で戦っていたリベリスタ達の戦いは繰り広げられていた。 撃ち漏らしていた仔水竜の動向も気になりはするが、今は目の前の大水竜に集中すべき時。 「メリクさんの試練をこんな所で失敗にさせる訳にはいかない。ボクより小さな子が、哀しみにくれている姿は耐えられない」 五重の残像を展開したアンジェリカは、追ってくる仲間達がその対処をしてくれるだろうと信じ、全力を持って大水竜を攻めたてている。 (水龍達に恨みはないけど水瓶を取り戻す為、倒させてもらうよ) 「さぁ、ここからは全力だね。援護は任せてもらうよ」 どこまでが試練でどこまでが事故か? 戦う前に耳に届いたそんな会話が脳裏を過ぎるが、水瓶を取り戻さなければメリクは試練を続けられない。 巻きつかれたままのメリッサが智夫の援護で解放されたことを確認し、アンジェリカはその決意を胸に敵を見やった。 「水中戦も勝手が違って、いい経験になりますね」 ようやく解放されたメリッサも返す刃で攻撃をかけ、放たれる水流の刃は盾で防ぐと見事な活躍を見せている。 「それにしても見事な大きさだな。竜とされるのも理解できようぞ」 相手の大きさを間近で見、その大きさに感嘆の声をあげたヒルデガルドの気糸が大水竜の敵意を自分に向けさせれば、 「追いつきましたっ、いきますよー!」 「雷が通用するのは水属性ならではかね?」 追いついてきた雛乃や付喪の雷撃が大水竜の体を激しく焼いていく。 どうやら残った仔水竜は仲間達の信頼に応えた2人が屠ったようで、その姿はもう見えなくなっていた。 「こっちもしっかり標的に入れてくる。流石というべきかな」 「救いよ、あれ」 戦線を支える智夫と小夜香にも当然の如く大水竜の攻撃は及んでいるが、回復の2枚看板はやはり厚く、そのどれもがリベリスタに大損害を与えるには至らない。 双方が繰り出す攻撃の応酬が、池の水面を激しく揺らす。 「ぷはっ! ふぅ……」 そんな折、息継ぎのために浮上してきた竜一の視線がメリクと交差する。 大丈夫? と聞きたげな視線に近くにいた智夫と2人で頷いて答えた足の下で、池の色が赤く染まっていく。 リベリスタの血ではない、水竜の血で、だ。 その赤く染まる池が再び弾け、大水竜がその巨大な全身を空気に晒した時、勝負は決まったのだろう。 「コツは掴んだのですが、終わりのようですね」 打ち上げたメリッサはそういうと、雛乃と付喪の雷撃に喘ぐ大水竜の最期を見届けるべく水面に浮上した。 水面を激しく叩く尾。 しぶきを上げるほどにのた打ち回る鱗に覆われた体。 懸命に生きようと暴れる大水竜が動きを止めるまで、そう時間はかからなかった。 ●少女の試練は続く 『水瓶……ありがとう!』 水竜を撃破したリベリスタ達から手渡された水瓶を落とさないように抱え、メリクは彼等へと笑って見せた。 「立派に水瓶座の力を受け継ぐ事ができるよう祈ってるよ」 頑張る少女に涙は似合わない。似合うとするなら笑顔だけだと、メリクをそっと撫でるアンジェリカ。 「さ、最後くらいはスキンシップを!」 『……変な人だねー』 一方で両手を広げて再び彼女を抱きしめようとする竜一に、今度はメリクも警戒の色を見せなかった点は、彼の戦いを間近で見たおかげでもあるだろう。 頑張ってくれたのだから、少しくらいは身を任せても良いかもしれない。 きっとメリクはそう考えたのだろう。 『ちょっとだけだよぅ?』 最後の最後に竜一にぎゅっと抱きしめられた彼女は、少し恥ずかしそうにしながら元の世界へと帰っていく。 試練の結果がどうなったのかは、今はまだわからない。 だが彼女はきっと無事に試練を終わらせるはずだ。 見送るリベリスタ達は、確信めいた気持ちを持って穴を閉じる――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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