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<大晩餐会>命が燃え尽きるより、速く


 賊軍が勢力を終結させた四国の空を、巨大な雷雲が覆う。裏野部一二三は、遂に大規模行動を開始したのだ。
 無論大規模な殺戮行動を取るとなれば察知したアークが討伐に動く事は明白である。かくして四国と言う名の巨大な皿に乗せられてしまった人々の命を賭けて、アークと賊軍の全面衝突の幕が切って落とされたのだった。


 黒い雲の中を稲光が走る。
 その巨人はゆっくりと街に向かって歩を進めていた。
 足下には松明を掲げた小人達が呪詛の言葉を放っている。
 『賊軍』のフィクサード、牙塔菖蒲(がとう・あやめ)は巨人の肩の上からその景色を眺めていた。今までのようなセーラー服姿ではなく、その細い体を覆うのは巫女を思わせる衣装に替わっている。顔には刺青で禍々しい模様が描かれていた。
 間もなく殺戮の晩餐会が始まる。
 仰々しい物言いだが、やることは同じ。
 ややこしい事情もあるようだが、やることは変わらない。
 皆殺しにしてやればいい。
 革醒して間もない頃は、周りから排斥された。だけど、「速さ」という名の力を手に入れてから、それは逆転したのだ。
 気に入らないと言う理由で自分は傷つけられた。だから、自分も気に入らないという理由で人を殺して良い。それがマイルール。
 だから、どこまでもはやく、早く、速く。
「それじゃあ、始めようかな」
 菖蒲がぺろりと唇を舐めたとき、力が流れ込んでくるのを感じた。
 ここにいるのは「賊軍」のための贄だ。
 存分に食らい尽くそう。


 厳しい寒さばかりが続く2月のある日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。場にははっきりと緊張が漂っている。そして、リベリスタ達に対して、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は事件の説明を始めた。
「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるぜ。今回お願いしたいのは、『裏野部』……いや、『賊軍』連中との戦いだ」
 いよいよ来たかと頷くリベリスタ達。無理もない。彼の組織が『裏野部』と呼ばれていた頃から、アークとは幾度もぶつかっている。元々、過激派で知られる組織だ。アークとは最も相容れない組織だろう。その連中と、いよいよ決着を付ける時が来たのだ。
「ただまぁ、状況は決して楽観視できるわけじゃない。これを見てくれ」
 守生が画面を表示させる。すると、そこには四国を覆う暗雲があった。
 昨年末に裏野部一二三に拠って誕生させられた意思を持つ巨大雷雲、E・エレメント『ヤクサイカヅチノカミ』の放つ雷により、四国へ出入りせんとする一般の艦船、航空機は航行不可能な状態にある。3つの本州四国連絡橋も賊軍の手で封鎖された。
 つまり、四国は完全にこの国より切り離された事になる。
 もっとも、あの裏野部一二三が四国を手に入れた程度で満足するはずもない。
「奴の目的は……正直狂っている。いや、裏野部らしいって言われりゃ、その通り。今まであの連中がやってきたことを考えれば納得がいくって代物だ」
 裏野部一二三の目的は、四国の全ての民を残さず喰らって自らの力と化す事。
 四国各地に『蜂比礼』と呼ばれる刺青型のアーティファクトを其の身に刻まれ、裏野部一二三と力のパスを繋いだフィクサードを中心とした賊軍部隊が散って殺戮の時を待ちわびている。
「だが、これは同時にチャンスでもある」
 四国を覆った『ヤクサイカヅチノカミ』の階位結界で通常の兵器は届かず、リベリスタに頼るほかに手段は無い。賊軍が人々を虐殺すればする程、裏野部一二三は力を増すだろう。けれど首領から力を分け与えられたフィクサードが人々を虐殺できずに死ねば、分け与えた分の力は回収できずに裏野部一二三の力は減じる事になる。
「元七派首領の戦闘力だ。真正面から戦って勝てる程簡単な相手じゃねぇ。だけど、これなら十分勝ちの目は拾える。だけど、裏を返せば失敗したら苦戦は必至。重要な作戦だぜ」
 フィクサードやアザーバイドといった雑多な集まりである賊軍を纏めているのは裏野部一二三と言う強力な個人だ。故に組織としては非常に脆い。封鎖された本州四国連絡橋を突破、四国各地の虐殺を食い止め、裏野部一二三を殺せば賊軍は瓦解するはずだ。
「あんたらに向かって欲しいのはこのポイントだ」
 守生が示したのは徳島県の某都市。『賊軍』のフィクサードがアザーバイド「まつろわぬ民」を率いて、人々を虐殺しようとしているのだ。敵の数は多いが、アークとしてもあまり多くの人員を割くことは出来ない。それでもやるしかない。
 もちろん、不安要素はそれだけではない。
「四国には他派の連中も向かってきている。幸い、このポイントだと衝突する危険性は無いが、一筋縄に行く状況じゃねぇ」
 四国が混沌の巷と化すことは明らかだ。
 しかし、そう言いながらも守生は信じている。その「一筋縄でいかない状況」を乗り越えてきたリベリスタ達のことを。
 だからこそ、いつものように説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。
「今まで暴れてきた連中に熨斗を付けて返してやれ。あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年03月12日(水)23:11
皆さん、こんばんは。
いよいよ裏野部との決戦、KSK(けー・えす・けー)です。
今回は『賊軍』フィクサードと戦っていただきます。

●目的
 ・『賊軍』の撃退
 ・一般人の安全を確保する

●戦場
 徳島県の某都市です。
 街中に入ろうとする『賊軍』を道路上で迎え撃ちます。

●「賊軍」
 ・牙塔菖蒲
  元裏野部派に属するビーストハーフ(狼)のソードミラージュです。
  中学生ほどの少女で、とりあえず「速い」です。
  激情家で考えて動くよりも感情に任せて動く性格。ソードミラージュの例に漏れず、速度には強いこだわりを見せます。幸せな人間は殺してしまって良いという信念の持ち主です。
  拙作「<混沌組曲・破>アレグロ・コン・ブリオ<関東>」等にも登場していますが、読んでいなくても問題ありません。
  瞬撃殺・ソードエアリアルを主に使用します。
  また、グラスフォッグに似た「煉獄霧(れんごくむ)」という神近範のExスキルを使用します。与えるBSは流血・麻痺・獄炎です。
  非戦スキルとして「簡易飛行」「猟犬」を持ちます。
  刺青型のアーティファクト『蜂比礼』によって、耐久力などが強化されています。

 ・炎天宿儺(えんてんすくな)
 古い時代に封印されたアザーバイド、「まつろわぬ民」の中でも強力な個体です。1体います。
 3つの頭に6本の腕、6本の足を持ち、常時2回行動します。
 全長10mほどあり、ブロックには5人必要です。
 1.怨嗟の剣 物近範 ショック、ブレイク、業炎
 2.三連の矢 物遠複 致命、無力、獄炎
 3.ハイバランサー P
 4.再生 P
 5.揺れる大地 P 周囲の大地を揺らし、敵味方問わず大地を歩くものの行動にペナルティを与えます

 ・アヤカシ
 古い時代に封印されたアザーバイド、「まつろわぬ民」の一種です。30体います。
 人間に似ていますが、どす黒い肌をした身長1メートル程の小人です。
 数が多く、上手く工夫しないと射程が「全」のスキルでも全てを射程に入れられません。
 1.鬼火 物遠単 火炎、業炎

●Danger!
 このシナリオはフェイト残量によらない死亡判定の可能性があります。
 予め御了承下さい。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ノワールオルールスターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
アウトサイドソードミラージュ
リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
アークエンジェソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
ハイジーニアスソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)
ハイジーニアスマグメイガス
ラヴィアン・リファール(BNE002787)
ハイジーニアスクリミナルスタア
禍原 福松(BNE003517)
ハイジーニアスレイザータクト
ミリィ・トムソン(BNE003772)
ジーニアススターサジタリー
靖邦・Z・翔護(BNE003820)


 炎を纏い異形の者どもが街に迫る。
 大地が唸りを上げ、空も揺らめいて見えた。
 世界の滅亡を連想させる光景、地獄の亡者どもが地上に現れるさまを連想させる。
「日本の神霊なら日本を守る為に働いて欲しい物だ。まあ、エリューションに言っても詮無き事か」
 帽子を直しながら『ラック・アンラック』禍原・福松(BNE003517)がぼやく。古来より日本に存在した連中ではあるが、決して良好な関係を気付いていたとは言えない者達だ。そこまでは望むべくもあるまい。
 そして『賊軍』の目的を考えれば、ここから先へ通す訳にはいかない。
 手は打っておいたが、人々の避難は十分なものとは言えない現状もある。つまり、リベリスタ達こそが事実上最後の防衛ラインなのだ。
「遂に本格的に動く、か。裏野部一二三……」
「裏野部……いえ、今では賊軍でしたか。最後の彼らとの戦いです」
 『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)の瞳は炎を映して赤く染まっていた。『裏野部』という組織は「過激派」という性質上、幾度となくアークとぶつかって来た。彼女が戦ったのも一度や二度ではきかないし、その度に激しく血が流されてきた。
 だが、今日こそここで終わらせる。
「最後の彼らとの戦いです。勝ちに行きますよ? ……明日を掴み取る為に」
 リセリアに対して頷いた『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)は、スターサファイアを宛てがわれた象牙製の指揮棒を天に掲げた。
 平和という星に手を伸ばすかのように。
 犠牲者を出させないという祈りと共に少女は戦場を奏でる。
「此処から先には進ませません。彼らは贄等では決してないのだから。任務開始。さぁ、戦場を奏でましょう」
 ミリィの宣言に呼応するかのように、「まつろわぬ民」達が大挙してやって来た。
 その姿は地獄の亡者か餓鬼どもか。
 いっそう大地の鼓動も激しさを増す。しかし、スキルによって姿勢制御を行うリベリスタ達は揺るぎもしない。この程度のことで、戦士達の意志を挫くことなど出来ないのだ。
 震源である巨大なアザーバイドの肩にはフィクサードの影があった。『アリアドネの銀弾』不動峰・杏樹(BNE000062)の鋭い五感はいち早くその存在に気付く。間違いない。
「いつかの楽団戦以来だな。その縁もここで終わりだ。あの時の借りもまとめて返してやる」
「あぁ、あの時の? あたしが街を焼いてやった時だったね、キャハハ」
 杏樹はフィクサードと戦った経験があった。
 もし出会う時が違っていたら、別の道もあったかも知れない。もし、更生させる機会があったのなら、死ぬまで付き合ったって良い。それが杏樹の流儀だ。
 しかし、既に決戦の場。それを考えていられるような状況では、すでに無い。
 ただ1つ、言えることがあるとするなら、
「一先ず、悪ガキには拳骨だ」
 暴れた分のお仕置きは必要だ。
「うるさいなぁ。今回も手加減抜きだからさぁ。街を全部焼き払って、平和ボケした連中を絶望の底まで叩き込んであげるよ」
「人の不幸で味わう幸福感って確かにあると思う。でも、その感覚自体が「惨め」だって気づくのも結構すぐだよね」
 フィクサードの笑いを遮るように『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)が肩を竦める。話に聞いた敵の性格を鑑みるに、この手の挑発は有効なはずだ。
 SHOGOの頭の中は冷静だ。彼は一見チャラいように見えて、その実本当にチャラい。それでもその魂は紛れもないリベリスタのそれだ。しっかりと、この場でどうすれば『賊軍』を撃退できるかを考えていた。
 極限まで高められた集中力によって、視力は異常な程に強化されている。
 その瞳は、「まつろわぬ民」の一挙一動を見逃さない。相手は散開しており、まとめて薙ぎ払うような真似は難しい。それでもやりようはある。
「あん? そこの奴、何か言った?」
「先日、両面宿儺が倒れるよりも早く逃げ帰ったのは貴女ですか。一方的な殺しが出来なければ逃げ出すなど、逃げ足だけは達者な様子」
「てっきり一二三に殺されてると思ったぜ。で、一度逃げ出した負け犬が何の用だよ?」
「殺す」
 SHOGOに合わせてリセリアと『スーパーマグメイガス』ラヴィアン・リファール(BNE002787)が挑発をかぶせる。対するフィクサードは極めて『裏野部』らしい反応と共に炎を纏う。アレこそがアーティファクト『蜂比礼』で強化された力なのだろう。
 しかし、敵が強化されているというのなら、それはラヴィアンも同じこと。彼女もまた、人々を護るという想いでその本領を発揮できるのだから。
「どんな力を持っていようが、何度でも追い返してやるぜ。このラヴィアン様がな!」
 魔剣をすらりと抜き放ち、陣地を形成する。虐殺など、やらせるものか。
「正義の味方、ラヴィアン様が悪党をぶっ飛ばしてやるぜ!」
 ラヴィアンの真っ直ぐな言葉は、フィクサードの癇に障るものだった。だから、敵は「まつろわぬ民」を予定よりもリベリスタの側に集中させる。そして、フィクサード自身も矢のようにリベリスタ達の中へと突っ込んでくる。
 しかし、それに負けない速度で一筋の光が姿を見せて、互いに弾かれたように距離を取った。
 現れた光の名は、『不可視の黒九尾』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)。
「思ッテタヨリハ速イジャネーカ」
 それぞれの手に短剣を握り、リュミエールは片を竦める。手に握る短剣の一振りが、一瞬ぶれて見えたのは気のせいだろうか?
「菖蒲トイウヤツは速いラシイ。天風の長い間柄の相手ラシイカラ今回は天風に譲るシャーナイ」
「えぇ、ありがとうございます」
 『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)は6枚の翼を広げる。まともに戦うことも出来ない程に戦場は荒れている。しかし、空にさえ上ってしまえばそのようなものは気にする必要もない。
「今回、逃げるのは無しだ。あんたが死ぬまでやってやるよ」
「雑魚を街へ放ち煽る位なら自分達を全力で殺しに来て下さい。負けるのは……嫌でしょう?」
 あえて相手を挑発して、自分に引き付けるようにする亘。
 この戦場は天王山であり剣ヶ峰。
 リベリスタもフィクサードも、真っ向から戦うだけだ。
 かたや命を救うため。
 かたや命を奪うため。
 そして、相容れることの無い戦士達の戦いは始まった。


 戦いは明らかにリベリスタ達の不利から始まった。
 敵の目的はリベリスタの殲滅では無く、人々の虐殺。本来であれば、数に任せてリベリスタ達を突破してしまえば良い。しかし、指揮官の性格を逆手に取ったリベリスタの挑発が功を奏し、ラヴィアンの作った陣地の中からフィクサードが出ようとする気配は無い。「まつろわぬ民」達についてはその限りではないはずだったが、指揮官がリベリスタの殲滅を優先させた結果、多くが陣地の中に残ることとなった。
 これはまさしく背水の陣である。たしかに敵が一般人の元へ辿り着く可能性こそ減ったものの、リベリスタ達の危険度が跳ね上がることを意味するのだから。
「自らが気に入らないという理由だけで人を殺す。何処までも子供ですね、貴方達は」
 ミリィとて年は幼いが、今や世界にも名の知られたレイザータクトにまで成長している。その指揮棒が奏でる戦場は、『賊軍』の策を精確に切り裂く。
 高台から彼女の投げた閃光弾が輝きを放つと、戦場をすり抜けようとした「まつろわぬ民」が動きを止める。
 幸い周辺に一般人の気配は無い。ここさえ守り抜けば、リベリスタ達の勝ちだ。
「行くぜ! 滅びのブラックチェインストリーム!」
 陣地内に残った「まつろわぬ民」の肉体をラヴィアンの生み出した黒鎖が拘束していく。当然、全ての敵の動きを封じることなど出来はしない。それでも、リベリスタ達には回復系のスキルを使用できる者はいない。自分達が倒れるより先に、やるしかない。
「細工はキャッシュ、後は仕上げをパニッシュ☆ ってね……語呂悪いな」
 もっと良い台詞回しが無かったかと考えながら、SHOGOは高く聳える巨人を見る。時折威嚇射撃を行いながら、侵攻を妨げる。アレにこの場を越されたら、全てが終わりだ。
 そしてもう1つ。
 自分達に炎を投げかけてくる「まつろわぬ民」を駆逐するため、銃口を怪人どもに向けた。
「フッ君、クロスブレイクライドだ! ……どんな技かは明日相談しよう」
「何れにせよ回復が無い現状、短期決戦を心掛けるしかないな」
 SHOGOと福松、2人の手に握られた拳銃が火を噴く。醜い怪物どもは血を撒き散らして倒れて行く。それでも敵の数は多い。加えて広く散開しているために、纏めて攻撃することが出来ないのも厄介な所だ。
 そして、状況はフィクサードの足止めに向かったリュミエールと亘も苦戦を強いられていた。
「ナンダ、思ッテタヨリ遅イナ。ガッカリダ、テッキリメッチャ速イノカ期待シタケドソンクライカー」
「あんたみたいなノロマにどうこう言われる筋合いはないね!」
 火花が飛び散るような戦いだ。
 刹那の間に無数の刃をぶつけ合わせるソードミラージュ達。その様はまさしく疾風残影。
 高速の世界で切り結ぶリュミエールは、炎の痛苦で動きが自分の鈍るのを感じていた。
(私ハ尻尾増エタラ速度落チタ、ムカツクナー)
 そんなことを思いながらも、リュミエールの獣性はなお執念深く敵の動きを捉えていた。今は制限が加わっているが、スピードに懸けるものの意地というものがあるのだ。


 状況はリベリスタ達にとって劣勢に思われた。
 それは『賊軍』の士気を高揚させ、一層苛烈な攻撃をリベリスタ達に見舞おうとする。しかし、その時大きく状況を動かす一打が振るわれた。しかも、それは「まつろわぬ民」の1人である巨人から味方であるはずの『賊軍』へと行われた攻撃であった。
「何やってる、お前!?」
「気に入らないから殺す――成程、真理ですね」
 当惑するフィクサードに答えるように、リセリアは大地に立っていた。そう、彼女の刃の輝きが巨人を惑わし、本来の目標を違えさせたのだ。
「今回は逃げなかったのですね。結構、逃がす心算はありません」
 自分も似たようなものかとリセリアは苦笑する。自分だって気に入らない。
 それでも、彼ら賊徒の凶行をこれ以上続けさせる訳には行かない。
 故に、討つ。
「貴女を斬る。貴女が私達を殺すより速く……燃え尽きさせてあげます」
 リセリアの銀髪が炎に照らされ、赤く染まる。
 それは決意の宣言だ。此処から先へは行かせない。
 此処で本当に終わらせる。
 再びリベリスタ達と『賊軍』は激しく刃を交え合う。だが、少しずつリベリスタ達が盛り返してきたのだ。もし、ここでリセリアが敵の動きを封じ込めることに失敗していたら、状況は逆だっただろう。むしろ、無残にリベリスタ達の側が押し潰されていたはずだ。
 『賊軍』は数に勝るが、所詮は雑兵。壊し、奪うことしか無い連中だ。
 しかし、リベリスタ達には覚悟があった。己の運命を燃やし、傷ついても戦い続けるという覚悟だ。これこそ、まさしくリベリスタ達の切り札とも言える力だ。
「無駄無駄ぁ! 俺にそんな弱っちい攻撃なんて効かないぜ!」
 傷だらけの身を引きずってラヴィアンが叫ぶ。痛みが無いはず等は無い。それでも、『賊軍』の炎が彼女に宿る正義の心を傷付けることが出来ないのは真実である。
 黒い鎖が舞い、弾丸が駆け、「まつろわぬ民」を屠って行く。残った「まつろわぬ民」が炎を投げかけてくる。
 そこで杏樹は小型の盾を構えて前に飛び出した。すっかり錆び付いてしまった『白』の盾。だけど、この盾が不壊であることを彼女は知っている。
「私が火矢で倒れるわけにはいかないな」
 冗句めいた言葉と共に迫りくる炎を受け流すと、杏樹は黒兎の描かれた魔銃を天に向ける。
 狙う相手は「まつろわぬ民」達、そしてこんな理不尽な運命を強いる神様だ。
「仲間に余計な傷は負わせない」
 天に向かって放たれた弾丸は業火を帯びた矢に変じ、「まつろわぬ民」達を貫く。逃れ得ぬ烈火は彼らを焼き尽くして行った。
 残った「まつろわぬ民」と巨人を見て福松は駆け出す。ここが勝負どころだ。
 これ以上、連中を動くチャンスを与えられる程、こちらにだって余裕はない。
 あれだけデカいのもいるのだ、巻き込めない筈は無い。
 位置を取り福松が念じると光り輝く剣が姿を現す。その光はどこか儚げで、まるで屑星のようだ。それでも、これは彼の剣だ。
「星の煌きと言うには粗悪なデッドコピーではあるが……!」
 星の力を帯びた魔剣は真っ直ぐ敵陣の中を突き進む。そして、巨人の心臓を貫いた。
「屑星の剣も中々効くだろう?」
 倒れる巨人を見て、福松はニヤリと笑った。
 そして、周囲に気を配る必要が無くなったリベリスタ達は、残るフィクサードの少女へと攻撃を集中させる。敵は速く、しかもタフ。厄介な相手ではある。それでも、如何に強化されていようが、1人のフィクサードでギリギリの状況を覆したリベリスタ達を倒すことは出来ない。
 結局、『賊軍』のフィクサードもまた、裏野部一二三が力を得るための道具に過ぎない。だが、リベリスタ達は力を合わせることが出来る。そこが最終的に勝敗を分けた。
「ねぇ菖蒲さん。貴方とは真逆で……でも似た物同士でしたね」
 亘が戦うのはフィクサード――菖蒲と真逆だ。理不尽な運命が、死が気に入らないから守る。そうして得た皆の笑顔や幸せが嬉しいんのだ。
「だから壊させない。ただ貴方より速くある。まず今日、どらちが速いか決めましょう」
「壊すよ。あたしの方が速いんだ!」
 フィクサードが再びその身に炎を纏う。スキルを発動し、纏めてリベリスタ達の動きを止めようというのだ。実際問題、リベリスタ達の負傷者は少なくない。これが直撃したのなら、ミリィも撤退の判断を下さざるを得ないだろう。
「不恰好でも生きてる限り最速で貴方を抑え続け勝つ。その為に自分は此処に居るんです!」
 その時、優しい風が苛烈な炎を包み込む。
 フィクサードのスキルが発動するよりも速く、亘の刺突が菖蒲の胸に突き刺さったのだ。
「負けちゃった、か……仕方ないな……ちくしょう……」
 フィクサードの身体が飛行能力を失い、落ちて行く。『蜂比礼』で与えられた力を返す事無く、彼女が命を失った証拠だ。
 戦場だった場所は死屍累々。
 死を振りまく『賊軍』は敗北してなお、深い傷跡を刻んでいった。
 だが、リベリスタ達の戦いは終わっていない。首魁たる裏野部一二三が倒れない限り、彼は何度でも暴君として荒れ狂うのだろうから。
 そして、リベリスタ達は次なる戦場へと向かっていく。
 命が燃え尽きるよりも、速く……。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『<大晩餐会>命が燃え尽きるより、速く』にご参加いただき、ありがとうございました。
賊軍との激闘、如何だったでしょうか?
リプレイ中にも書いた通り、状況は不利でした。
しかし、それを気合で乗り越えて行った印象を受けます。

それでは、今後もご縁がありましたら、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!