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闇夜に溶かすモノ

●橋を塞ぐモノ
 時刻は零時三十四分。空は曇り、星の光一つない。
 街路灯は点滅を不気味に繰り返して消えた。深夜の凶行を照らすモノは何もなかった。
 遊び帰りの男子学生の、腹の底から吐き出される声が辺りに響く。その声を聞くモノはただ一人しかいない。
 否――一つといった方がいいだろうか。
 空中を無軌道に漂い、人肉を貪る物体がそこにいた。
 自らの形状すら維持することなく、虚空からわいては消え、再びわいてくる。それは有色のガスのようにも見えた。
 大きな橋だというのにもかかわらず、通行人は彼以外にいない。車の通行すらなく、ココだけ時間が止まってしまったかのような絶望感が漂っている。
 この物体には明確な意思があることがわかる。意思のみで存在するかのように、なんども凶行を繰り返してきている。この物体には悪意などなく、ただ欲に溺れているのだ。
 ヒトを喰らうコト。
 食人のためだけにこの場に揺らめくようにして待機し、獲物を見つけては喰らうという行為を繰り返すのだった。
 ガス状のエリューションは徐々に数を増やす。男子学生に群がるように集まるのだった。
 長い時間、男子学生の呻き声が聞こえていたが、それも今では止んでいる。彼の半身はもう跡形もない。出血しているのかといえばそんなことはなく、どこかに消えてしまったかのようにも見えた。
 彼は意識だけかろうじて繋がっていたが、生きたまま食べられるという異常性にもうろうとしている。現実を受け止めるだけの精神がもはや残っていなくて、己の終わりを傍観するかのように眺めていた。
 完全に体すべてがガス状のモノに包まれると、彼の意識は完全に遮断された。
 じっくりと時間をかけて、男子高生の衣服だけを残して食い尽くすエリューション。まるで初めからその場に彼がいなかったかのように、完全にエリューションによって喰らわれてしまったのだった。

●依頼任務
 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は淡々とした口調で、今起きている事件について話し始める。
「零時になると、橋に食人を好むエリューションが発生する事件が、立て続けに起こっています。場所は橋の中央です。欄干を人が通過すると突然わくようにして出現します。エリューションは夜間という時間帯も相まって、視認が難しくなっています。多くの被害者がエリューションに気がつかずに被害にあっています。現場の状況が悪いこともあり、被害は増加の一途をたどっているようです。エリューションは毎晩出現しているわけではないようです。毎週火曜の夜にのみ発生するという情報が入っていますね」
 和泉は端末を叩くと現場の写真をスクリーンに映し出した。
 街路灯も十分にあり、夜間でも明るさについて問題ないように思える。
「この映像で街路灯が確認できると思います。通常は本来の役目を果たしていますが、エリューションが発生したときだけ、街路灯の機能が失われることが確認されています。原因は不明です。街路灯を復旧させるより、光源を自ら用意した方が賢明だと私は思います」
 次に現場周辺の写真がスクリーンに映される。
 橋の中央の高さは、下から十メートルある。欄干を経由しなくても飛行で先回りをすることは可能のように思える。
 次の写真は橋の上空からのモノだった。
 橋の全長は五十メートルほどで、幅は歩道と車道二車線の幅がある。
 橋の上ということで、動きに制限されそうな所はほとんど見受けられない。
「急務です。迅速に殲滅してください」

 まとめよう。
 敵はフェーズ2のガス状のエリューションフォース、食人スモークが1体。フェーズ1のエリューションフォースの食人ガスが4体。どちらも見た目は色がついたガスのように見える。
 欄干を通過すると食人スモーク、食人ガスは出現する。
 橋の上は動きに制限はないが、明かりがなく視認性が悪い。回避や命中に影響が出ることが予測される。
 また、食人スモークの攻撃を受けるとバッドステータス「ショック」を受ける可能性がある。
 以上、健闘を祈る!


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:わかまつ白月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年03月15日(土)22:35
 フェーズ2のエリューションフォース1体、フェーズ1のエリューションフォースが4体の討伐が今回の依頼内容です。
 暗い場所での戦闘となりますので、対策なしの場合は回避命中が不利になるでしょう。
 また、全員が欄干を通過しない場合はエリューションフォースは発生しないので、最低一人は橋の入口から侵入する必要があります。
 食人スモークの攻撃でバッドステータス「ショック」を受けると、回避命中が不利になります。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ノワールオルールナイトクリーク
アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)
ジーニアスソードミラージュ
ルア・ホワイト(BNE001372)
ハイジーニアス覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
ハーフムーンホーリーメイガス
綿谷 光介(BNE003658)
ハイジーニアスマグメイガス
六城 雛乃(BNE004267)
フライダーククロスイージス
丸田 富江(BNE004309)
ジーニアスインヤンマスター
深崎 冬弥(BNE004620)
ビーストハーフスターサジタリー
クリス・キャンベル(BNE004747)

●夜、橋にて
 月明かり、星明かりすらない橋を照らすのは、頼りない街路灯だった。街路灯は闇に飲み込まれてしまいそうな雰囲気を切り裂き、人工の光によって場をともしていた。
『愛情のフェアリー・ローズ』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)は重力に逆らうように、橋桁の裏を悠々と歩いていた。
 本来の橋の渡り方などお構いないといわんばかりに、頭上に河の流れを感じながら橋を渡りきるのだった。
『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)は橋の下から空を舞い、見下ろしていた。いまだ現れない獲物を狙い、奇襲のタイミングをはかっているのだ。
「火曜の夜のみ現れるのは何か理由があるのだろうか? 特に理由は無いのかもしれないが」
 深崎 冬弥(BNE004620)は橋の上空を舞飛び、疾風の近くを飛んでいる。
 討伐依頼の、人を喰らうガス状のエリューションは事件を起こしすぎた。情報を元にリベリスタたちは奇襲の布陣を完璧に敷くことが出来た。
 橋を囲むようにして、パーティーはアクセス・ファンタズムで連絡を取り合いながらポジションやタイミングを確認していく。
『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)はこれ以上の被害は出させないという、決意の色が瞳に灯っている。持ち前のスピードで、今日この日も確実に仕事をこなすといわんばかりに、足取りは軽い。
『遺志を継ぐ双子の姉』丸田 富江(BNE004309)は闘志に燃えている。己のタフネスならば食人スモークだろうがなんだろうが、おさえてみせると決意の色がうかがえる。
『Killer Rabbit』クリス・キャンベル(BNE004747)は銃弾がガスに通じるか不安はあるものの、自分の武器を信じるのだった。確実に狙い撃ってやろうという意思が感じられる。
『六芒星の魔術師』六城 雛乃(BNE004267)は正面からの突入班から少し距離を置いていた。距離にして十メートル。その距離は雛乃が慣れ親しんだ距離だった。最高の効果を得るために敵の出現に備えている。雛乃は詠唱を開始する。徐々に体から強力エネルギーがわいてくるのを感じるのだった。
 各人、アクセス・ファンタズムで連携を取りながら、奇襲の陣形を確実なモノとしていく。その動きに無駄はなく、ベテランの色がうかがえる。
『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)の目にはすべてが映っていた。橋の中央からの奇襲。入口からの正面突撃。橋の逆側からのバックアタック。すべて作戦通りに陣形が完成している。
 アクセス・ファンタズムを通して、指示を出す光介。
「オールクリアです。踏み込みましょう」

●エリューション発生
 ルアが橋の欄干を通過すると、唯一の光源である街路灯が点滅を始めた。点滅の周期は短くなり、完全に沈黙する。辺りは暗闇に包まれた。重い沈黙が場を支配する。
 仲間からの通信だけが頼りとなった。
 パーティーの眼は暗闇ごときに後れを取らない。有色のガスが何もない空間からわき出てくるようにして現れるのが、全員の瞳にしっかりと映るのだった。
 食人スモークと名付けられたガス状のエシューションが現れる。橋の上中央に霧が出たかのように広がっていく。それはスモークと呼ぶのにふさわしいサイズだった。橋の向こうに視界が通らないほどのサイズがある。スモークの密度は非常に濃い。
 食人スモークを護るようにして、異なった色のガスが4つ現れる。食人ガスと呼ばれているフェーズ1のエリューションで間違いない。こちらはサイズは食人スモークに比べれば小さいが、人一人飲み込むことぐらい何ともないといえるサイズだ。
 食人スモークを中心に、食人ガスが2つ左右を護るように立ちふさがっていた。
 暗闇に漂う食人のスモークは奇怪にして不気味だった。
「行くよ――」
 ルアは疾走し、食人ガスの前に立ちはだかる。
 ルアは高速で二刀流の斬撃を放つ。刃の速度は視認不可能なレベルまで加速している。ルアを中心に斬撃の嵐が吹き荒れた。全身の筋繊維が全身に組まなく力を伝達させ、常人では到達することが不可能な速度まで体を加速させているのだ。
 食人ガスは2つとも超高速の斬撃に翻弄される。無限にわき出ると思われたガスの供給が絶たれたかのように、今や中空に揺らぐのみ。食人ガスは血液を溢すかのように、斬られたガスが重みを持って重力に引かれて落ちていく。橋に触れるとそのまま跡形もなく消滅した。
 雛乃はルアの動きを確認して詠唱を完了させた。血液が熱い。血液が全身からあふれ出す。血液は黒金の鎖となった。金属が擦れ合う音を響かせながら、食人ガスを一気に飲み込んでいく。黒く鈍い光を放つ鎖は橋の手前を丸ごと飲み込んだ。仲間をうまく避けるように放っている辺り熟練が感じられる。
 無限に感じる鎖の波が過ぎ去ったあとには、食人ガスは跡形もなく消滅していた。視界には大きく存在感をあらわにする食人スモークだけが見える。入口から食人スモークまでの射線は完全に開かれた。
 アンジェリカは一人、逆サイドから食人スモークに向かって駆けていく。立ちはだかるのは2つの食人ガス。不気味に存在感を示している。獲物を見つけたといわんばかりにアンジェリカに寄っていく2つの食人ガス。
 アンジェリカがひるむことなく解き放ったエネルギーは、暗闇に一つ、朱色の月を作り出す。アンジェリカの背後に浮かぶ真紅の円は、たとえガスといえど不吉からは逃げることは許されない。
 みるみる生気を失うかのように存在感が薄れる食人ガス。食人ガスの背後で、食人ガスとは異色の食人スモークが風に揺れていた。食人スモークも不吉な赤い月から逃れることは出来ない。
 冬弥は戦況を冷静に見ていた。どうやら増援はないと判断する。2色のガス――食人ガス、食人スモーク――に向かって凍結するほど冷ややかな雨を降らせた。雨粒一つ一つが食人スモークと食人ガスの形を削っていく。橋の上は雨粒が跳ねて冷ややかな空気が流れた。
 光介は戦況を逐一確認しながら、援護攻撃を行う。短い詠唱から魔法陣を展開する。魔法陣は闇の中でも輝き、模様を鮮やかに浮かび上がらせた。光介の元から一迅の閃光が走る。
 揺らめいている食人ガスに真っ直ぐ伸びて直撃すると、カッと光を放ち花火のように跡形もなく散った。
 疾風は最後の取り巻きである食人ガスに立ちはだかり、全身の闘気を解き放って連続斬撃を放つ。他を寄せ付けない圧倒的な無限連閃。刃の煌めきが食人ガスを瞬時に削っていく。存在そのものを許さないという連撃に、耐えることはかなわない。
 すべての取り巻きを失った食人スモークに、うろたえる様子は感知することが出来ない。初めからいた位置で不気味に漂っているのだ。まるで、取り巻きなど元からいなかったのではないかと錯覚してしまうほど、場の雰囲気は重く変化がない。

●対決、食人スモーク
 クリスは取り巻きが片づいて見通しがよくなったこのタイミングを、隙なく攻撃につなげる。次のパーティーの動きを予測して発砲した。銃口が跳ね上がる反動を器用に押さえ込み、連続して発砲を繰り返す。
 いつも以上にうまく射撃が出来ていることを感じた。初めこそ攻撃に効果があるか不安に思っていた。実際に弾丸を撃ち込んでみると、食人スモークは激しく揺らめく。
 食人スモークの濃厚な密度を保つ空間に、ぽっかりと穴がいくつも開いた。そこからは流血しているかのようにスモークがこぼれ、こぼれたスモークが消滅していく。
 食人スモークは銃弾を受けて初めて己の危機に気がついたかのように動き始めた。
 富江は強烈な風を起こし食人スモークを散らしていく。まるで台風の時に吹き荒れる風のような暴風に食人スモークの体が散っていく。
「さぁアタシが相手だよ! かかってきなっ!」
 細切れに散っていったスモークは再び戻ることなく、虚空に消滅していく。確実にダメージを与えているという手応えがあった。
 食人スモークは揺らめきながら富江を飲み込んだ。スモークに触れた部分から生命エネルギーが吸い取られるように感じる富江。
 大きな傷を負っているわけではないにもかかわらず、自身がショック状態に陥っていることを感じた。生命の危険を感じるレベルの捕食攻撃に、富江は冷たい汗が流れる。
 光介は富江の危機を敏感に察知して癒やしの微風を巻き起こす。詠唱は冷静で迅速だった。
「目を逸らしちゃいけないと思うんです。仲間の背中からも……惨たらしい敵からも」
 富江は奪われた生命エネルギーの半分ほど戻ってくるのを感じた。食人スモークはいまだ健在で、不気味さは増したように感じる。
 離れた場所で雛乃は冷静に詠唱を続けている。再び血潮が漆黒の鎖となって、食人スモークに襲いかかった。
 食人スモークは横に広がるように漂っていたので、一気に鎖の海に飲み込まれる。ジャリジャリと金属質な音で洗われる橋の上。食人スモークはいまだかつてない人数を相手に戸惑いを浮かべているかのように、どっちつかずに蠢いている。初めて遭遇する圧倒的な力を持つ存在に、食人スモークは己の生存が危険にさらされていると理解し、もがき始めているのだ。
 ルアは超高速の連続攻撃を食人スモークに放つ。攻撃の流れは決して止まることが無く、一撃一撃がスモークを大きく削っていく。ルアの放つ刃は止まることを知らずに、大きくスモークを散らす。それはまるで食人スモークの血肉が飛び散っているかのように見えた。
 疾風は羅刹のごとき闘気を身に纏い、瞬時に食人スモークに残像を伴った超高速連撃を喰らわせる。斬撃はどんどん加速し、スモークを完全に消し飛ばしてしまうかのように放ち続けられた。
 アンジェリカは光を放ち五重に残像を出す。
「どんな理由があるか知らないけど、これ以上人を殺させないよ!」
 消えかけの食人スモークに致命的な攻撃を次々に与えていく。暗闇を照らす希望のような光に一同は息をのむ。
 残像が重なり一つに戻ったとき、その場にもう食人スモークは生存していなかった。

●火曜日の噂
 ネットの片隅に忘れられたような掲示板があった。そこでは少人数による書き込みしかない。
 ノートパソコンで今回の橋について検索していたアンジェリカは、偶然この掲示板を見つけた。少しでもなにかわかればと過去ログを読んでいく。最終レスが書き込まれたのは1ヶ月前になっていた。
『名無しのマッドさん:橋の噂知ってる?』
『ホラーハンターさん:ああ、焼身自殺だろ』
『名無しのマッドさん:それがまた起きたらしいよ』
『ホラーハンターさん:火曜日ってなんか決まりでもあんの? 儀式かなんかなの?』
『名無しのマッドさん:最初の焼身自殺が火曜日だったんだって』
『ホラーハンターさん:それがなにか?』
『名無しのマッドさん:模倣自殺だよ。誰かがこの場所で、こういう条件で自殺したからまねしようってやつ』
『ホラーハンターさん:そんなことあんの?』
『名無しのマッドさん:富士山の樹海とかもそのたぐい』
『ホラーハンターさん:怖ええ!』
 以下、ログは雑談に続く。
 世の中に絶望した中年が今回の戦場となった橋で、焼身自殺をしたことが過去にあったようだ。その後、立て続けに焼身自殺が続いた。後に続いた自殺者は初めの自殺を模倣するように、手順をなぞっていた。まるで何かの儀式のようで、不気味だという声が相次いでいたらしい。
 橋の上には肉を焼いた臭いがこびりつき、簡単にはとれることはないだろう。流れた血が多い分、負の感情がこの場に集まっていったことは容易に想像できる。
 いつしか怨念のようなモノが、この地に蔓延るようになったという噂の書き込みが、ログの一部にあった。
 この噂話と食人スモークが関連しているかはわからない。ただ、火曜日の夜、橋の上が死のオーラに満ちていたことだけは確かなようだ。
 アンジェリカはノートパソコンから視線を外して、窓の外を眺めた。今日も火曜日。こんな悲しい連鎖は終わりになって欲しいと、亡くなった魂を慰める為に心をこめて鎮魂歌を歌った。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 見事、奇襲作戦成功です。食人ガスには攻撃の隙を与えることなく撃破できました。食人スモークとの戦闘でも、回復をきちんと行ったため無事に倒すことが出来ました。
 この後、食人スモークや食人ガスが、この場に発生することはありません。
 食人スモークを倒してからというものの、この橋で悲しいことは起きていないようです。いまでは、重たい雰囲気も薄れつつあり、人通りも増えてきているようです。
 おつかれさまでした。