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雪原の熱風

●翼を焼かれ
「寒い……こんな日はこたつにミカンが最高にロックだぜ」
「いやはや、ロックも随分便利に使われてますねえ」
 そんな軽口もそこそこに、将門伸暁(nBNE000006)は早速仕事の説明を始める。
「数日後、とある山の山頂付近にアザーバイドが出現する。お前らにはこいつを討伐してもらいたい」
 素っ気なく言い放つ伸暁に、室内の青年リベリスタが怪訝な声を上げた。
「討伐って、いきなり物騒だな。そんなに意思疎通が困難な相手なのか? それとも、交渉の余地も無いような極悪人とか……」
 一口にアザーバイドと言っても、そのすべてがこの世界に害なすモノばかりではない。
 確かにこうした『訪問者』たちがこの世界に与える影響は看過できないが、それらが必ずしも悪意を持って行動しているわけではない。事情があってやむなく訪れたモノ、偶然迷い込んだモノなど、平和的に問題を解決した例はいくつもある。
 だからこそ青年は、戦闘前提で仕事を提示する伸暁に疑念を抱いたが、それには理由があった。
「このアザーバイドってのがまあ、一言で言うと生粋の戦闘狂、バトルマニアでな。異世界でも強い相手を求めて放浪してたみたいだが、どうも暴れすぎたみたいでな。それで、元の世界にいられなくなったそいつが、対戦相手を求めてこの世界に降りてきた、と」
 室内のモニターに光が灯る。映し出されたのは件の人型アザーバイドだ。筋骨隆々とした肉体に軽鎧、背中には鉄板のような大剣を背負っている。全身から発せられる熱気はこのモノの能力だろうか。その風貌はまさに修羅そのものだった。
「外見は見ての通り。武器は主に背中の大剣、それから徒手空拳の戦闘も好むみたいだ。能力は体表からの発熱、発火、それから出した炎を飛ばしたり操ったりもできるが、主に剣や拳に纏って戦うのが得意だ」
「うわあ……それはバトルマニアですね間違いない」
「それだけならまだいい。アークにも同じ穴のムジナがわんさかいるからな。問題は、そいつが出現した場所だ」
 画面が切り替わり、アザーバイドの出現位置を示す地図が表示される。
「見ての通り、雪山のど真ん中だ。こんな場所じゃ強い奴どころか人っ子一人いない。さらに厄介なのが奴の能力だ」
 モニターが再び切り替わる。映し出されたのは、人型アザーバイドが引き抜いた大剣を振り回しながら、周囲に灼熱の火炎をまき散らす映像だった。暴れ回るその様はまさに狂戦士である。
「この山にはまだかなりの量の雪が残ってる。その中でこんなのが暴れられたら、雪崩を引き起こす危険がある。その上、戦えない鬱憤でイライラのボルテージは最高潮ときた」
より強い者を求めてさまよう、戦闘好きのバトルマニア。この手の輩には周囲を顧みないきらいの者も多いが、それにしてもこのアザーバイドは少々迷惑が過ぎる。まして雪崩など起こされては、麓の住人に甚大な被害が出るだろう。
「猛る勇者は、自らの熱で翼を溶かし地に落ちる、か。少し哀れな気もするが、キツめの灸を据えて元の世界に帰ってもらうとしよう」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:遊人  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年03月11日(火)22:32
どうも、STの遊人と申します。


要するにただの喧嘩バカです。存分に殴り合って下さい。
本人に悪気はないのですが、ちょっと周りの見えない迷惑な奴です。
幸いD・ホールも付近に残っていますので、
頭を冷やして元の世界に帰ってもらうとしましょう。


なお、フィールドは雪山ということになりますが、敵の周囲はあらかた雪が溶かされているため、足場に関しては実質平地での戦闘と変わりません。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
アウトサイドホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
ビーストハーフマグメイガス
二階堂 杏子(BNE000447)
ノワールオルールスターサジタリー
天城・櫻霞(BNE000469)
ノワールオルールマグメイガス
セレア・アレイン(BNE003170)
ギガントフレームプロアデプト
鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)
ジーニアス覇界闘士
蒼嶺 龍星(BNE004603)
メタルフレームクリミナルスタア
緒形 腥(BNE004852)
ビーストハーフダークナイト
テレザ・ファルスキー(BNE004875)

●強さに溺れ
 人間の歴史は常に争いによって紡がれてきた。人々は土地、財産、人種、民族、宗教、その他あらゆる理由で戦いを続けてきた。
 生きることは闘争だ。戦うこと、勝つこと、そしてそのために強くなること。それは、生物としての人間が本来的に備えている本能なのかもしれない。
 人間は誰もが戦う。人間は、誰もが強さを追い求める。
 と、いうのは、あくまで一つの側面に過ぎない。確かに戦いを好む好戦的な類の人間はいつの時代にも少なからずいるが、多くの人は無駄な争いを避け、平穏な暮らしを望んでいる。人間は今や、勝ち取るために戦うリスクと戦わずに歩み寄るメリットを天秤にかけることが出来る。
 一方、ただひたすらに強さを追い求める者、戦いに明け暮れる者もいる。それは何も戦闘狂や戦争狂に限った話でもなく、例えばスポーツ選手やアスリートもこの手の人種だと言える。ストイックに己を高め、更なる成長を望むことは悪いことではない。
 力は力でしかなく善も悪も無い。従ってそこにあるのは使い手の善なるか悪なるか、ただそれだけだ。力の価値とはその使い手に委ねられている。

 雪解けはまだまだ遠く、リベリスタ達は山肌に厚くのしかかる積雪に行く手を遮られながら進んできた。この厳しい環境でここまで登れてこれたのは、リベリスタ達の体力が一般人のそれより優れているからだ。そこまで険しい斜面、足場ではないにせよ、やはり雪山での登山というのはそれだけ危険を伴うのだ。
 雪道に足を取られつつ山道を進む一行は、不意に山の空気が変わったことに気付いた。
妙に乾燥している。周囲にこれだけの雪があれば空気中の湿度は高くなるはずで、実際さっきまで歩いてきた道はそうだった。
変化は次々に起こった。山道に残る雪の量は進むにつれ少なくなっていき、地面がむき出しになっている割合が増していく。ついには雪が無くなり、代わって現れた地面も乾いてさえいる。
原因は分かっている。そしてそれに徐々に近づいていることも。 
リベリスタ達は、映像に映っていた異界の戦士のいる場所を目指して前進を続けた。

●驕れるものは久しからず
 一行は山の中腹の開けた場所にたどり着いた。
 その場所は雪山のど真ん中でありながらまるで砂漠のように暑く、乾燥していた。雪は解けるどころか蒸発し、足元の土は風で舞い上がるほどカサカサに乾いていた。雑草は茶色く変色し、木々は枯れてしまったかのように水分を失っていた。
 異界の戦士、Dホールを通ってこの世界にやってきた上位チャンネルの住人は、平地の中央でまさしく仁王立ちしていた。
 身長は二メートル弱くらいだろうか。映像で見た通り筋骨隆々の肉体。分厚い胸板に割れた腹筋、上腕や太腿、ふくらはぎは太いワイヤーの束のように盛り上がっていた。胴や腰には衣類と思しき布、手腕には肘当てや籠手、足には膝当て脛当て、そして胸部や肩、背中には皮か何かで作られた軽鎧を纏っている。その立ち姿はまさに武神の彫刻のようだった。
「それにしてもバトルマニアだなんて、戦うことが大好きなアザーバイドも居るんですね。殴られたら痛いだけですのに……」
「何時もながらアザーバイドは難儀なものですねぇ」
「いくらなんでも、最下位の世界にまで出張してくるというのもどうかと思うがね」
 阿修羅の如きアザーバイドを遠目に見ながらやれやれという風に口を揃える双子のビーストハーフ『ODD EYE LOVERS』二階堂櫻子(BNE000438)と『白月抱き微睡む白猫』
二階堂杏子(BNE000447)に、『アウィスラパクス』天城櫻霞(BNE000469)が同意する。
 ただのバトルマニアならいい。問題は、異世界でのべつまくなく暴れ回った問題児が、誰にも相手にされなくなったからといってこの下位階層の世界にまで現れたということだ。異世界の住人がこの世界に与える影響は計り知れない。
それも、このアザーバイドの能力と雪山というフィールドは相性が悪すぎる。映像に記録されていた奴の能力。あれをここで振るわれては災害にまで発展しかねない。被害が出る前に元の世界へ追い返さなくては、とリベリスタ達がアザーバイドに接触しようとした時だった。
「(何じゃ、ヌシらは)」
 突然響いた声。空間にではない、リベリスタ達の脳内に直接、である。
 考えづらいが、声の主、ならぬこのテレパシーのような能力の主は奴しかいない。目の前のアザーバイドだ。あまりにも脳筋な見た目ゆえにイメージが直結しないが、このアザーバイドはこの能力で意思の送信、そして受信が可能なようだった。
 話が通じるかも、とリベリスタ達は考え始めたが、それは思い過ごしに終わった。
「(ふん。ワシと戦いにどんな猛者が来るのかと待ち構えてみればなんじゃ、半分以上が女ではないか。残る男共もヒョロヒョロで、なんだか拍子抜けじゃ)」
 脳内に再び響く声からは、よそ様の世界にズカズカと現れた傍若無人なモノらしい、いかにも自己中心的な言葉だった。
「……ここまで迷惑千万な存在ならば、いっそ人間の形などしていなければよろしいのに。言葉が通じる分余計に空しい」
 『クオンタムカーネル』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)がぽつりと呟いた。
 どうやらやはり、話の通じる相手ではないらしい。力の善悪とか使い手の善悪とか、そんなありがたい話以前に、このアザーバイドは、ただただ単に迷惑な奴のようだった。
「喧嘩馬鹿……悪くない。だが、やるならば周囲に迷惑を掛けない場所の確保を忘れるな!」
「っもうタイミング悪い……おっさん引き継ぎの仕事溜まってんだからさぁホント」
 蒼嶺龍星(BNE004603)は指で眼鏡をくっと持ち上げ、アザーバイドを指差しながら言い放つ。ガラケーのメール作成画面を操作しながら、緒方腥(BNE004852)もごく迷惑そうに非難の声を上げる。
「こっちの世界に殴り込みかけに来たんだから、こっちで死ぬ覚悟はできてるのよね?」
「1人を多数でよってたかって、というのも無粋かもしれませんが、これが私達の戦い方ですから。それとも、今からお友達を呼びに行きますか? あ、嫌われたんでしたっけ」
「(フン、女の口が達者なのはどこの世界でも同じらしい。構わぬぞ。孤高なるは強者の特権、徒党を組むは弱者の特権じゃ)」
 『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)のやや物騒な言い回しも、『朱蛇』テレザ・ファルスキー(BNE004875)の挑発も、アザーバイドは意に介していない風だった。
「まぁとっとと帰って欲しいのが本音だったりするけど……周りに迷惑かからないように好き放題できる場所で戦いましょ?」
 セレアが指をパチンと鳴らすと周囲を取り囲むように陣地が形成される。
 現在閉山中の雪山の中腹なので一般人の介入は考えられない。またこのアザーバイドが逃走する可能性も低い。しかし、戦闘の衝撃によって雪崩などが起こりかねないことを考慮すると、陣地の作成は必要だった。
「これで思う存分やれるわよ? 元々、逃げるつもりとか全然ないんでしょ?」
「(ほう、戦いのための闘技場を用意してくれるとはな。弱者も役に立つということか)」
 アザーバイドの方は、陣地を試合のためのリングか何かだとでも思っているらしい。傍らの地面に突き刺された剣が引き抜かれる。
「(さあ、貴様らも弱者なりに、ワシの強さの糧になってもらおうか)」
 アザーバイドが構える。戦いの火ぶたが切って落とされた。

●激突
 アザーバイドの大剣に火が着く。火は剣の上で燃え広がり、やがて大剣全体を包み込む。
「(オオオオオオ!)」
 大剣が振り下ろされる。炎が奔流し、地面の上を走り、リベリスタ達に向かう。
「やれやれ、実力行使はいつもの事か」
 迫りくる熱波をいなし、櫻霞は銃身を持ち上げる。同時に櫻子が弓を構える。
「面倒ごとは嫌いだが、まあ仕方がないな」
 放たれた二つの弾丸がアザーバイドを捉える。続いて杏子、さらにセレアが術の詠唱を終える。
「戦うのがお好きなら……私の奏でる葬操曲で美しく踊って下さいませ」
 二人の術者が奏でる魔曲は血の黒鎖を実体化させる。鎖は濁流のようにアザーバイドを絡め取り、そのまま流れの底へ引きずり込もうとする。
 鎖に囚われたアザーバイドの動きが止まる。その間に、残りのリベリスタ達が攻撃を加える。拳が、銃弾が、斬撃が、アザーバイドに叩き込まれる。
 しかし、この異界の戦士もこの程度で倒れてはくれなかった。
 土煙の中、アザーバイドは大剣で鎖を振り払う。拘束を解いたアザーバイドは勢いよく前進、向かう先には龍星がいた。
 大剣が振り下ろされる。二度、三度と落ちてくる刃を龍星は手にした得物で何とか受けきり、次の一太刀をいなして弾く。大振りな技の後に生まれた隙を逃さず、龍星はアザーバイドに掌底を叩き込む。
 アザーバイドが一瞬よろめく。テレザが剣を手に駆け込む。赤く輝く剣の軌跡がアザーバイドへ吸い込まれていく。
 打撃と斬撃で怯んだところへ追撃、あばたと腥の射撃攻撃。コインさえ打ち抜く精密さと目にも止まらぬ速さを備えた弾丸がアザーバイドの急所に当たったかに見えた。
「(なる程……なかなかやるではないか)」
 ぼとり、と音を立てて地面に落ちたのは、アザーバイドの体表の熱で一瞬にして溶かされた銃弾だった。
「(ワシをここまで追い詰めるとはな。面白い……面白いぞおおおおおおおお!)」
 アザーバイドの咆哮。それは怒りからなのか、それとも興奮からなのか。
 大剣が宙へ投げ捨てられる。アザーバイドは自由になった両腕に炎を纏わせ拳を構える。
 両腕の先の炎をさらに膨張させながらリベリスタ達を次々に襲う。テレザと龍星を弾き、腥とあばたに迫る。
 しかし、アザーバイドの動きががくん、と急停止する。見ると、両腕両足を気糸の罠が絡め取っていた。
「嫌ですねぇ、もう少し上品に出来ませんの?」
 アザーバイドがもがく。今だ、杏子の足止めが有効なうちに決定打を叩き込む。
「コイツで…トドメだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
 衝撃を鎧の奥へ叩き込む龍星の掌底、深紅に輝き敵の命を削るテレザの剣撃。
「ただの力技で避けられると思うなよ?」
 櫻霞と櫻子、腥の射撃。拘束を解く間も無く続けざまに攻撃を受けるアザーバイドは鎧と炎でガードするのが精一杯だった。
 セレアの手元で再び黒鎖が発生し、幾重にも折り重なる波となってアザーバイドを押し潰さんばかりに襲う。
「(このっ、ワシが、ワシがああああああああ!)」
 断末魔の叫びを上げるアザーバイドに、あばたの無慈悲な銃弾が浴びせられる。
 アザーバイドは、陣地の内壁を絶叫で震わせながら地に倒れた。

●盛者必衰の理

 アザーバイドは、この期に及んで帰るのを渋っていた。
「(このワシが負けたまま帰れるか! 強者が敗走などありえん!)」
 Dホールを背にしながらそんな風に駄々をこねるアザーバイドに、あばたとテレザは容赦が無かった。
「そこの穴から逃げられると、わたしたちは追うことはできません。それでも尚わたしたちのシャバで暴れると言うのなら……」
「面白くない方を見ると、私、殺してしまいたくなるのですよ?」
 二人の得物が煌めく。このアザーバイドもさすがに先程の戦闘を思い出したのだろう、最後にはすごすごと次元の穴へ入っていった。
「けどま、良い殴り合いだったぜ! これからは周りに迷惑かけんなよ?」
「いくら欲求不満だからってまた来るなよ。今回と同じように、自分の世界に帰れる保障なんざありはしないんだ」
「貴方がバトルが好きでこっちの世界に来たみたいに、相手を徹底的に痛めつけるのが好きで、大義名分まであると好き放題やっちゃうのも居る、のよ?」
 リベリスタ達はこの迷惑モノがもうこの世界へ来ないことを、そしてできれば少しは自分と周囲を省みることが出来るようになることを願いながら、招かれざる来客を見送った。
「あぁ、やっと終わりましたね……戦闘狂のお相手は本当に疲れますわ」
Dホールが閉じると、杏子は心底疲れた表情でため息を漏らす。
「はぅ、お仕事終わりましたですぅ~」
「あいつさ……ちょっと、間が悪かったのではないかね」
 櫻子が櫻霞の腰元に抱き着く横で、腥は再び携帯電話を取出しせわしなく操作していた。
 神秘の脅威から世界を守るため人知れず戦うリベリスタ達は、今日も危険な仕事を終えて帰っていく。
 運命を勝ち取った彼らが、この先力に溺れることなど決して無いだろう。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
やっぱり周りに迷惑をかけないってのが第一ですよねー。

しかしこの、ビッグマウスなかませ役を書くことのなんと楽しきことよ。

皆さん、暑苦しい中お疲れ様でした。