● 赤いお化けと青いお化け しんしんと雪の降る日のことだ。その遊園地は、記録的な豪雪に見舞われ、アトラクションのほとんどが稼働していなかった。ジェットコースターはもちろん、その他アトラクションもまともに動いているものはない。 丘の上に建てられた洋館、ホラーハウスもその例外ではない。丘へ上るためのロープウェイが停止しているので、開店休業状態だ。そのうち積雪が危険領域に達したため、ホラーハウスのスタッフには事務室へ避難してくるようにと連絡をとることになった。 しかし、繋がらない。ホラーハウスのスタッフへ、連絡がとれない。何かしらのトラブルかもしれないと、数名のスタッフが安否を確認するためにホラーハウスへ向かった。 けれど、新たにホラーハウスへ移動したスタッフたちも戻ってこない。それどころか、連絡すらない。外はすっかり雪が積もって、すでにホラーハウスへの移動は困難だ。 事務室に居るスタッフたちは、ホラーハウスに残された組の、安否を祈るしかないのであった。 一方その頃、ホラーハウス内ではおおよそ現実的ではない奇妙な出来事が繰り広げられていた。 全4階建てのホラーハウス内で踊り回る、白いお化け達がそこには居た。 白いシーツを被ったようなオーソドックスなデザインのお化け達だ。その数は全部で16体ほどだろうか。 外見は全て同じに見える。しかし時折シーツの隙間から覗く中身が違った。 シーツの中身は人魂だろうか。赤い人魂と、青い人魂の2種類が居るようにう見える。 彼らは同じような動作で踊り、同じような呻き声をあげる。 ホラーハウスの内部に、取り残されたスタッフ達の姿はなかった……。 ● 奇妙なルール 「Eフォース(ガイスター)が8体。それと、ガイスターに取り付かれたスタッフが8人。以上16体のガイスターが今回のターゲット」 淡々とそう告げたのは、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)だ。 作戦の概要を、仲間達に伝えるために、彼女はモニターに映像を映す。 「洋館は全部で4階建て。1階はエントランス、2階は食堂や客間、3階がホールで、4階は館の主の部屋、ということになっているわ」 エントランスやホール、主に間はそれなりの広さがあるが、2階は小さな部屋と狭い通路で構築されている。その中を、全部で16体のガイスター達が彷徨っているのである。 「今回の主な任務は、ガイスターに取り付かれたスタッフ達を解放すること。赤い魂のガイスターがEフォースで、青い魂のガイスターはスタッフ達みたい」 魂の色はシーツを捲らなければ確認できない。それ以外にガイスターを区別する方法はないようだ。 「あいにくと、白いシーツが透視や千里眼を阻むみたい。だからシーツを捲って目視で確認して。青い魂のガイスターは、ホラーハウスから外に出すか、赤い魂のガイスターを全滅させると元の人間の姿に戻れるみたい。それと同時に、青い魂のガイスターも戦闘不能になるから」 もちろん、その前に討伐してしまうと、人に戻ることなく死んでしまうことになる。ガイスターはこちらを襲ってくるだろうから、迎撃する際には十分注意が必要となる。 「基本的には遠距離からの攻撃を得意とするようね。不運や呪縛、呪いなどのBSを与えてくるから」 それじゃあ、いってらっしゃい。 そういって、イヴはリベリスタ達を送り出すのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月28日(金)22:59 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●幽霊屋敷のガイスター 遊園地のホラーハウス。大雪によって他の場所と遮断されたそのアトラクションは、いつの間にかEフォース達に乗っ取られていた。不気味な装飾、不穏なBGM。暗い館内をあっちへこっちへふよふよと彷徨うのは、空飛ぶ白い布だった。 そのテンプレートなお化け染みたデザインのエリューションのことを、ガイスターと、そう呼称することにする。 深々と降り積もった雪に足跡を付けながら、ホラーハウスに辿り着いた人影が8つ。うち4人は、翼を広げてホラーハウスの4Fへと飛んで上がった。神秘の存在を知らぬものからすれば、到底信じることのできない光景だっただろうが、幸いなことに空飛ぶ4人の姿を見る一般人はこの場に居ない。 空を飛んで4Fに辿り着く。入口を探すと、すぐに見つかった。既に1F突入組は館内に入ったろうか。館の裏には階段があった。非常口だろう。鍵は開いている。取っ手に手をかけ、藤枝 薫(BNE004904)は大きく深呼吸を繰り返す。 「初めての実戦……。焦ってはダメですね」 ドアを大きく開け放つ。生温い空気が漏れて来る。館内に入ってドアを閉めると、急に静かになった。どうやらこのホラーハウス、防音はバッチリらしい。 「お、お化けは苦手なんですよぅ」 息を潜め、足音を忍ばせ、恐怖にその身を震わせながらも『モ女メガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)は先頭を進む。カーテンをそっと捲って、室内を覗き見る。 そこには、全部で6体のガイスターが自由気ままに浮遊していた。 ガイスターの中には、ガイスターに取付かれた一般人も混ざっている。万が一にも、一般人を間違って倒すわけにはいかない。判別方法は、布を捲った中に見える魂の色だ。 赤がガイスター、青が一般人。 「なんかホントにゲームみたいな状況になってんねコレ」 イスタルテの後ろから身を乗り出して『魅惑の絶対領域』六城 雛乃(BNE004267)がガイスターを観察していた。震えているイスタルテとは正反対に、ケロッとした表情、平気な顔をしている。 「こ、怖くないんですか?」 「うーん。あたしって言うほど気弱キャラじゃないから全然平気なんだよね。その方が需要あるかもしれないけど……」 「そうですか……」 すごいですね、と溜め息を零すイスタルテを追い越して『蒼碧』汐崎・沙希(BNE001579)が室内へと足を踏み入れた。 ガイスター達の視線が一斉に沙希へと集まる。 『亡霊ね。悪いことをしなければ別に私の家に住み着いていても良いのだけど……』 す、っと筆を取り出して空中に陣を刻む。くすり、と頬笑みを零した。鈴の音のような沙希の声が仲間達の脳裏に響く。 『退治しろとの命令だし諦めてくださいな』 ●ホラーハウスの幽霊騒動 「ふふ、やっぱりシェリーさんと一緒だと心強いですね」 「……ふん」 柔らかな笑みを零す雪待 辜月(BNE003382)と、それを受けて照れくさそうに鼻を鳴らす『大魔導』シェリー・D・モーガン(BNE003862)が、ホラーハウスの入口に近寄る。自動ドアがゆっくりと開くと、そこはまるでホテルのエントランスのようだった。 本来なら受付のスタッフが立っているであろうカウンターに、1体のガイスターが浮いている。くるり、とこちらを振り向くガイスター。 次の瞬間、見えない圧力がリベリスタ達を襲う。 「っと……。オバケなんて居ないさ。オバケが怖いのは建前だよ。……もーっと怖いのが居るからねえ」 見えない圧力は、ガイスターの腕だ。お化けは本来、目に見えないもの。その攻撃も不可視であった。その攻撃を、緒方 腥(BNE004852)はナックルガードの付いた奇妙な形状の拳銃で防いでみせた。ナックルガードを軽く撫でて、肩を揺らす。ヘルメットのせいで表情は分からないが、恐らく笑ったのだろう。 「ええと、赤と青、どちらを殺ればいいのでしたっけ。……面倒だから両方まとめて殺っちゃいます?」 床を這うような低姿勢で『朱蛇』テレザ・ファルスキー(BNE004875)はガイスターへと駆け寄った。剣を一振り、ガイスターの身を隠す布を捲りあげる。 「赤……」 素早く魂の色を確認し、ガイスターへ向けてスプレーを噴きかけた。白い布に、赤い色が染みる。多勢に無勢、状況は不利と判断する程度の頭はあるのだろう。ふわりと浮き上がると、ガイスターはそのまま上の階へと逃げていこうとする。 「上です。3、2、1……今です!」 傍らに控えたシェリーへと合図を出す辜月。シェリーが杖を掲げたのと同時に、上階からオーラで作りだされたガイスターが飛び込んできた。 ふらり、と2体目のガイスターが現れる。素早く周囲を飛び回るガイスターの分身が、シェリーの身体を床に叩きつけた。 「シェリーさん!?」 辜月は悲鳴に近い叫び声をあげる。素早く光弾を撃って分身を打ち消す。その隙に、腥とテレザは壁を蹴って天井へ向かって跳んでいた。 「面倒いから見失わない内に張り倒すぞ!」 先ほど赤いスプレーでマーキングしたガイスターに接近し、被った布を片手で掴んで引き寄せる。その眉間に銃口を突きつけ、容赦なく引き金を引いた。弾丸がガイスターの頭部を撃ち抜くと同時、中に入っていた魂が、蝋燭の火を消すようにして掻き消える。 被っていた布が、ひらりと床に舞い落ちた。 一方テレザは、もう片方のガイスターに接近し、被っていた布を捲りあげた。 「こう、布に覆われて隠れてる場所を捲り上げて覗く、と言ってしまうと趣がありますが」 魂の色は青。青いスプレーで布に印を付ける。青い魂のガイスターは、取り憑かれた施設スタッフだ。攻撃は出来ない。構えていた剣を引き戻し、防御の姿勢を取った。見えない腕が、テレザを掴んで床へと投げ落す。 追いかけて来る青いガイスターを無視して、一同は2階へ上がる階段へと駆ける。 時同じく、所は変わって4階の部屋。館の主の私室という設定の部屋だ。6体のガイスターが漂っている。そのうち4体が赤いガイスター。2体は青いガイスターだ。 漂い、浮き沈みを繰り返しながら見えない腕や分身を使ってこちらを攻撃してくる。楽しげに見えるのは、見間違いではないだろう。ガイスター達からすれば、これは戦闘ではなく遊びなのかもしれない。 『亡霊はペットにしてあげてもいいのだけど……』 分身による攻撃を回避しつつ、沙希は思案する。片手に広げたスケッチブックに筆を走らせ、ガイスター達の姿を描画しているのは、彼女の癖のようなものだろう。 時折、ダメージを受けた仲間へ回復術を使用している。 「ううう、お化けさんと出合い頭に交戦……とか、避けたかったのに」 赤いガイスターのみを狙って、イスタルテは神秘弾を撃ち込んだ。穴だらけになった布が床に落ちる。彼女の手や、顔には赤と青のインクが付着していた。足元に散らばったカラーボールの残骸を踏みつけ、後退する。 魂の色を識別するためのマーキングは、主に彼女が行っていたようだ。 後退したイスタルテを追って、4体のガイスターが迫る。赤が2体、青が2体だ。 「当たり前だけど、赤にしか攻撃できないんだよねー」 雛乃は杖を掲げ、魔方陣を描きながら唸るようにそう呟いた。葬操曲・黒の魔方陣を描こうとしていたのだが、攻撃範囲内に青いガイスターが居るのを確認し、魔曲・四重奏へと切り替える。 解き放たれた4色の魔光が、赤いガイスターを撃ち抜き、消し去る。しかし、残る3体のガイスターによる攻撃によって、雛乃は窓の外へと叩きだされた。 『あら……大変』 翼の加護で得た羽を打ち振って、沙希は雛乃を助けに向かう。沙希に次いで、ガイスターも窓へと接近。しかし、見えない壁に阻まれるようにしてガイスターの動きが止まった。どうやら彼らは、ホラーハウスから外には出られないようだ。 窓の外から放たれた魔光が、赤いガイスターを射抜く。ガイスターは残り3体。青が2体と、赤が1体。 「1つ1つ、訓練した通りにこなせばいい筈です」 最後に残った赤いガイスター目がけ、薫が光弾を投げつけた。閃光が弾け、ガイスターの動きが止まる。フラッシュバンによって動きの止まったガイスターを、イスタルテの弾丸が射抜く。 「これで赤4体撃破ですね。1階でも1体倒したみたいですから、残りは3体ですか」 4階に残るは青いガイスターのみ。雛乃と沙希の復帰を確認し、4人は3階へと階段を下る。 2階の部屋にガイスターは3体。1階から付いて来た青いガイスターを含めれば4体だ。新たに遭遇した3体の色を確認すべく、辜月、腥、テレザが散った。追ってきたガイスターを引き付ける役目はシェリーが請け負う。見えない腕がシェリーの身体を掴みあげ、壁に叩き付けた。口の端から血を流しながら、シェリーはゆっくり杖を掲げる。 「後顧の憂いなく戦えるようにするのがお仕事ですから……」 来ます、とそう呟いて辜月は魔弾を放つ。魔弾を回避し、上下にひらりと逃げたガイスターを追って、テレザは下から、腥はドアを足場に上に跳ぶ。 狭い通路だ。ガイスターは壁をすり抜け、室内へと逃げようとするが、それより先に2人の手が布を捲りあげる。 「これは……青ですね」 「こっちもだ。全力防御に切り替える」 腥とテレザの動きが止まる。見えない腕で掴まれたのだ。2階に居たガイスターは全て青色。攻撃するわけにはいかない。 後衛から、辜月がペイントガンを用いてガイスター達に色を付ける。 それから、床に蹲っていたシェリーを助け起こし駆け出した。向かうは3階。 青いガイスターに追われながら、4人は更に上階を目指す。狭い通路で列を成して逃げる4人を、ガイスターの攻撃が襲うのだった。 3階へ上がった4人が目にした光景は、まさに混戦である。広いホールを飛び回るガイスター達と、その分身、リベリスタ達。そこに追加された4人と4体。 ガイスター11体。リベリスタ8人。合わせて19の影が行き来する。 そのうち、青だと分かっているガイスターは6体。赤のガイスターは2体。色の分からないガイスターが3体いて、そのうち2体は青、1体は赤のガイスターだ。 「色の識別から始めましょうか……」 辜月は、頬を引きつらせそう呟いた。 ●ゲームセット 光弾が弾ける。閃光が飛び散って、数体のガイスターがその動きを止めた。視界が一瞬、白く染まる。動きの止まった中に、まだマーキングされていない個体を見つけ薫は駆ける。素早く布を捲りあげると、そこには青い魂があった。 「仕方ありませんが、撃破せずに放置します」 青いスプレーで布に印を付ける。薫の近くには赤いガイスターは存在しない。硬直状態から解放されたガイスターが、不可視の腕で薫を掴んで床に叩きつける。 「う、っぐ」 地面に押しつけられた状態で、呻き声をあげる薫の傍に赤いガイスターが寄って来た。薫目がけて、腕を振り下ろすようなアクションをとる。衝撃と共に呼吸が止まる。不可視の腕で殴られたのだ。 更にもう一撃、不可視の腕が降り降ろされた。 「おっと。赤い魂のガイスターは見つけ次第撃破を」 薫を庇い、不可視の腕を受け止めたのはテレザであった。テレザの持つ剣が禍々しいオーラを発しているのが分かる。奪命剣。対象の生命力を奪うテレザの技だ。 ガクン、と赤いガイスターが大きくよろけた。 その隙を付いて、青いガイスターを振りきり、飛び出した影がある。拳を大きく振りあげた姿勢で、腥が跳んだ。落下の勢いそのままに、ガイスターの眉間目がけて銃口を叩きつけるようにして突きつけた。 衝突と同時に火花が散る。硝煙の香り。弾丸は0距離からガイスターを撃ち抜いた。 「タネも仕掛けもある怖さを教えてやろう。とりあえず、その面白そうなシーツを置いて逝け!」 魂が消失すると同時に、腥は布を引っぺがす。中身の居なくなった白い布が、バサリと音をたてて翻る。 暗視眼鏡を投げ捨てて、雛乃は杖を振りげた。空中に描かれた魔方陣に、4色の魔光が集約していく。雛乃の周囲を飛び回るガイスターの分身が、彼女の身体を傷つけていく。皮膚が裂け、血が飛び散った。楽しげに踊るガイスターの猛攻を、雛乃はただただ、黙って受け止め続けている。 「う……っく。居た」 雛乃の意識が朦朧となり始めた頃になってやっと、その時は来た。目の前に迫るマーキングされていないガイスターの足元に、雛乃は視線を向けた。 元々暗いホラーハウス。雛乃が居たのはその端っこ、非常灯の明りすら届かぬ完全な暗闇。 ガイスターの布の中には、赤か青かの魂が燃えている。 雛乃の眼前に迫ったガイスターの足元が、ぼんやり赤く光っている。マーキングされていないが、このガイスターは赤だ。 「やっぱり洩れてた」 真っ暗闇で、低空飛行状態なら布を捲らずとも魂の色は窺えるのではないか、と彼女は考えたのだろう。その目論見は正しかった。 魔方陣から放たれた魔光が、ガイスターを射抜き消し飛ばす。 青いガイスターの集中砲火を、シェリーと辜月が受ける。 「う……くァ」 今まで受けたダメージが蓄積されたのだろう。シェリーは意識を失い、その場に倒れた。そんなシェリーを庇うように、辜月はその背に覆いかぶさる。 辜月の背に、不可視の拳が叩きつけられた。彼を攻撃したのは青いガイスターだ。反撃するわけにはいかない。 「せめて……牽制だけでも」 ガイスターの攻撃からシェリーを庇いながら、辜月は魔弾を撃ち出した。 青いガイスター達は難なくそれを回避すると、不可視の腕で、辜月の身体を、高く高く、天井間際まで持ち上げたのだった……。 素早く視線を巡らせる。残りのガイスターは9体。最後に残った赤いガイスターは天井付近を飛んでいる。 先ほどから、イスタルテがそれを追っているが、他の青いガイスターや分身に邪魔されて想うように動けないでいるようだ。 『さて……』 と、沙希は脳裏で呟いた。青いガイスターの意識が、前線で戦っている仲間の方へ向いているため、沙希は比較的自由に行動できている。それはつまり、回復に問題はないということだ。 イスタルテがダメージを受ける度、沙希が即座に回復させている。 だが、このままこの状態が続くのはまずい。 回復支援に集中する沙希は、事態を好転させる手段を持たなかった。 「うう、青いガイスターさんは外に出て行ってくれませんかぁ?」 進路を阻む青いガイスターの真下を潜り抜ける。その際、ガイスターに話しかけるのだが、無視されてばかり。そもそも言葉が通じていないのかもしれない。 急降下や急上昇を繰り返しながら、イスタルテは最後に残った赤いガイスターを追っている。 逃げる事に集中しているらしい赤いガイスターに、しかしなかなか追いつけないでいた。 一か八か、まっすぐ腕を伸ばし銃口を赤いガイスターに向ける。何度か繰り返しているが、上手く当たらないでいた。 今回も、牽制程度にしかならないかもしれない。 そう思った、その時だ。 『加速して……』 イスタルテの脳裏に、沙希の声が響く。その声を聞いた瞬間、イスタルテは一気に加速し赤いガイスターとの距離を詰める。 赤いガイスターは、イスタルテを迎撃するために不可視の腕を伸ばす動作をとった。 次の瞬間、伸ばされた不可視の腕を、何処からか飛んできた魔弾が撃ち抜いた。予想外の攻撃に、ガイスターの動作が停止する。 腕を撃ち抜いた魔弾は、苦し紛れに辜月の放った牽制である。 不可視の腕を回避しながら、イスタルテはガイスターの眼前へ到達。ガイスターが次のアクションに移るより速く、その身に無数の弾丸を叩き込んだ。 赤い魂が散って、消えていく。ボロボロになった布切れが、雪のように飛び散った。 それと同時、暴れていた青いガイスターが動きを止めてひらりはらりと地に落ちる。 数秒後、布の下から現れたのは、意識不明の施設スタッフ達だ。 「8人全員、いるようですね」 解放されたスタッフの数を確認し、薫はほっと、安堵の溜め息を零すのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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