● 突如現れたアザーバイドの群れを前に、「剣林」のフィクサード、武蔵トモエ(たけくら・-)は判断に迷っていた。 元・裏野部のフィクサードが四国で他勢力に戦闘を挑んでいるというのは知っている。そもそも、彼女がここに来たのだって、対抗する戦力としてだ。四国にも「剣林」の拠点となる場所は多数存在する。組織である以上、そこを奪われる訳にはいかないのだ。もっとも、彼女の師に当たる男は「放っておいて気に入っている酒蔵潰されたらかなわねぇ」と言っていたが。 とは言えやはり、予想外に敵の動きが早かったのは紛れもない事実だった。 「あの数は……さすがに、陽動っぽいかな。ただ、放っても置けないよね」 二面四臂で剣と弓を持つ、3m程の巨人が唸りを上げている。その周りには松明を持つ不気味な1mほどの小人達が耳障りな笑い声を上げていた。 少なくとも、「剣林」の拠点に乗り込ませるような数ではない。運悪く、トモエ以外の戦闘力の高いメンバーが遅れてしまっているだけで、本来はより戦力がいてもおかしくは無いのだ。 しかし、動かない訳にはいかない。 彼女が守備を任されたのは、「剣林」が運営する賭場だ。ここには戦闘力を持たない者もおり、被害が出るということは「剣林」の面子にも関わる。 「よし……!」 トモエは刀を手に取ると、表門へと駆け出して行った。 悩むのは性に合わない。「剣林」らしく、目の前の敵を潰すだけの話だ。 目の前に鬼がいたなら切れば良い。 蛇が出たとしても切れば良い。 それが「剣林」のやり方だ。 「かかってこい、化生ども! 剣林が一、武蔵トモエ! いざ、参る!」 ● 異常な冷え込みを見せる2月のある日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。そして、リベリスタ達に対して、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は事件の説明を始めた。 「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。今回はちょっと事情が複雑な任務になる。あんたらにお願いしたいのは、剣林の拠点の1つ、四国にある賭博場の防衛だ」 ざわめきたつリベリスタ達。 「剣林」は日本主流七派の1つ。武闘派のフィクサード集団であり、有体に言って敵だ。 少なくとも、助けてやるいわれは無い。 「言いたいことは分かる。ただまぁ、ちょっと説明を聞いてくれ」 守生が端末を操作すると、人型をした怪物が表示される。いわゆるアザーバイドだ。それも複数いるらしい。 「これが今回相手になるアザーバイド達。『まつろわぬ民』とも言われる連中だ。事情に詳しい奴もいるんじゃないか?」 言われて一部のリベリスタは納得する。 そこで守生は補足のための資料を引っ張り出す。 昨年末の女性革醒者の連続拉致事件に端を発した「裏野部」の動きは、古い時代に封印されたアザーバイド『まつろわぬ民』等を解放し、自勢力への吸収する事で『単独でアークと渡り合える戦力の確保』を目的とした物だった。 大規模雷雲スーパーセルを発生させ、神秘の力を宿した超自然現象で封印を破壊するという彼等の目論みは、リベリスタ達の尽力により当初の予定よりは規模を縮小されたものの、古都であり西日本の霊的な要である京都はダメージを受け、奈良に封じられたまつろわぬ民や四国各地に封じられた魑魅魍魎等は解放されてしまうのだった。 これにより勢力を拡大した彼らは、主流七派を脱し、各勢力に対して敵対的な態度を見せている。各地でこうした小競り合いは見られるらしく、着実に裏世界のバランスは崩れつつあるのだ。 「それで今や裏野部一二三を中心とした勢力は『賊軍』を名乗り、四国に集結しつつある。最終的な目的までは分からねぇが、わざわざ朝敵を名乗っている以上、碌なことは起きないはずだ。だから、アークも介入することを決めた」 そう言って、地図を表示させる守生。 古めかしい日本家屋に見えるが、「剣林」が運営する賭博場で、一般人も出入りしている。『賊軍』の性質上、彼らを巻き込まないということはあり得ない。いや、好んで巻き込もうとするはずだ。であれば、リベリスタが戦う理由も十分だ。 現場のフィクサードもことを荒立てないために、一般人を外に出させないようにしている。だから、やって来たアザーバイド達の迎撃さえ行えば、彼らの安全は保障される。 「ただ気を付けてくれ。『賊軍』は2つある門の表から陽動を仕掛けて、戦力を引き付けた隙に裏から指揮するフィクサードが強襲を仕掛けるつもりらしい。それぞれに距離はあるから、こちらも二手に分かれた方が良いな」 どちらの門からでも、敵が入れば一般人に被害は免れまい。 とすると、多少厳しくても二面作戦が必要になる。 この場合、「剣林」との利害は一致している。現場で共闘を持ちかけても良いだろう。 「説明はこんな所だ」 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 ● 「キャハハ、正直さー、猪相手に喧嘩する気は無いって言うかさー」 表門側で始まった戦いを見て、「賊軍」のフィクサード牙塔菖蒲はうっすらと目を細める。中々に使える連中だ。最初は気持ち悪いと思っていたが、たしかにこれは大した「力」だ。「剣林」の厄介者を十分に相手してくれている。 彼女の目的はあくまで「剣林」の拠点を奪取すること。 ここにいる連中を血の海に沈めることが出来るのなら何よりだ。 権力が欲しいならとっくに他派についている。 自分がやりたいのは幸せそうな連中を引きずりおろすこと。それに向いているのはやっぱりこの組織だ。 戦いたいんじゃない、暴れたいのだ。 斬って刺して、全てを粉々に引き裂いてやりたいのだ。 そして、最後の仕上げの為にと、傍に居並ぶ異貌の者達に指令を飛ばす。やることは「裏野部」にいようが「賊軍」にいようが変わりはしない。気に入らないものを皆殺しにしてやること。 「行くよ、おまえ達。選り取り見取り、殺し放題! 殺戮タイムの始まりだよ! キャハハハハハ!」 菖蒲の言葉に従うように、矮小なアザーバイド達は燃え盛る炎を手に一斉に賭博場へと乗り込んでいくのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月26日(水)00:36 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「まつろわぬ民」を引き連れたフィクサードの少女はやって来てすぐ、裏門の周辺が厳重に塞がれていることに気が付いた。そして、「嫌な臭い」があることを知った。だが、やるべきことに変わりは無い。アザーバイドに指揮を飛ばすと、屋敷に乗り込もうとする。 その時だった。 「永遠に防げるとは思っておらん。だが、我らを相手にしながらこれを破壊するのは、少しばかり骨であるぞ?」 声と共に姿を見せたのは『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)。 ある時は密やかに。 またある時は大胆に。 変幻自在の策で数多の敵を謀って来た、神秘界きってのトリックスターだ。物量で下回るのは道理。だが、その道理を捻じ曲げる策を見せるのが彼の流儀である。 その名を知るが故に、フィクサードはわずかに躊躇した。迂闊に攻め込めば、彼の術中に嵌りかねない。 「よう裏野部、いや今は賊軍か? ここは通行止めだぜ」 緊張が走る裏門の沈黙を打ち破ったのは『スーパーマグメイガス』ラヴィアン・リファール(BNE002787)の元気な声だ。どんな時だろうと、彼女の判断はシンプルで真っ直ぐ。とにかく悪い奴をぶっ飛ばす、それだけだ。 「国を取る、にしちゃあずいぶん小物臭いやり方だぜ。まあ、コソ泥ならそんなもんだろーけどよ」 「国取るとか関係無いね。あたしは殺したい奴を殺すだけだからね」 「だったら、このラヴィアン様がいる限り、てめーらには誰一人殺させねえぜ!」 ラヴィアンが高速で術を紡ぎ上げる。すると、足元から現れた黒い鎖がアザーバイド達へと襲い掛かった。ファーストアタックが決まったのを見て、『悪漢無頼』城山・銀次(BNE004850)はすっと白刃を閃かせる。 「目的は防衛、共闘じみた形になる。仕方ねぇが、気に入らねぇ」 元々、守勢に回るのが嫌いな男だ。加えて言うと、『剣林』とは過去に抗争した都合もあって、正直手を組みたい相手ではない。 だから、自分達の目的を果たすために、もっとも簡単なプランを実行することにした。 「全部叩き斬ればそれでいいだろ。さァ、戦争しようぜ!」 普通ならばあり得ない考え方だ。しかし、暗黒街の盟主とまで名を高めた者なら、それすら可能となる。絶対的自負と共に己のルールを主張することで、自身を縛る世界法則さえも一時的、部分的に捻じ曲げるのだ。 神秘と神秘がぶつかり合う。 寡兵ではあるが、リベリスタ達の戦意は決して劣らない。その抵抗にフィクサードは舌を打つ。しかし、ここで退くつもりもない。突破口を開こうと動き出した時、道を遮るように『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)はその6枚の翼を広げた。 「ふふ、お元気そうで菖蒲さん」 「やっぱり……あんたもいるよね、天風亘。ちょっと見ない間に羽根なんか増やして」 幾度かぶつかり合ったリベリスタとフィクサード。 互いに見ぬ間に、力を蓄えた。いや、速さの高みを目指していた。 同じ道同士を走るからこそ、互いに譲れない。 だから、迷う事無く、刃をぶつけ合った。 ● 客への対応の為に引き下がるフィクサードの姿を見て、『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)は息をつく。彼らなりの商売の範疇で、一般人を護るつもりということだ。地元住民と密着している上で、面子に関わるから護って戦うというのはらしいということも出来ようか。 「こういう時、フィクサードもリベリスタもあまり関係無いと思うのですよね」 その点では比較的、信のおける相手と思っている。少なくとも、『裏野部』こと『賊軍』や『黄泉ヶ辻』と言った連中よりは。 「ただ殺す為に殺し血に酔い狂うだけの手合い、何者であれ武人の端くれとして純粋に気に入りません」 リセリアが見上げる先には、二面四臂を鎧に包んだ3m程の巨躯が聳え立っていた。賊軍の尖兵を務めるアザーバイドだ。四国の制圧に向かう賊軍は他派の拠点を奪いにやって来た。本来であれば、リベリスタとフィクサードはそうそう共闘はしない。 しかし、 「アーク云々は置いておき、友達の助けをするのに理由が必要です?」 共闘を促したのは、『大雪崩霧姫』鈴宮・慧架(BNE000666)の言であった。 「ハハ、なら素直に好意に甘えておこうかな」 剣林フィクサードのトモエと慧架が知己であることが有利に働いた。そうそうあって良いことでも無いのだが、友人と共に戦列に立てるということで慧架は少し心が弾んでいる。 「信用しろとは言わん。だがオレ達は『お人好し』のアークだ。利用しない手は無いだろう?」 また、別の側面よりこの共闘を成り立たせたのは、『ラック・アンラック』禍原・福松(BNE003517)の力も大きい。『剣林』は古来より続く任侠の気風を色濃く残す組織である。そんな組織が実力者であるだけで個人の我がままを通す訳は無い。 そこで相手の面子を立たせることで、巧みに介入を行ったのだ。さすがは暗黒街の盟主に名を連ねるだけのことはある。 「七派の中でも色々あるみたいだな……全く面倒だ」 ため息をつきながら淡々と黄金銃の引き金を引く。わらわらと迫ってくる小人を蹴散らしながら、同時に周囲を見渡して不意を討とうとしているアザーバイドがいないかを確認する。両方ともこなさなくてはならないのが辛い所だ。 だが、覚悟は出来ている。 次第に連携を構築していくリベリスタとフィクサードの様子を見て、『魔術師』風見・七花(BNE003013)は漸く安心する。この様子なら心配はあるまい。ならば、自分は自分の為すべきことに集中するまで。 (楽団の時を含め武蔵トモエとは何度目の共闘になるのでしょうか。実力は問題無し、信頼はできませんが信用は出来る) 詠唱を重ねるごとに、七花の周囲を魔法陣が覆っていく。 自己評価はさておき、実際の実力において彼女は魔術師として大魔道の称号を得るにふさわしい実力者だ。しかし、この奥義はそれ程の実力者を持ってしてもそうそう為し得る技ではない。その最大魔術を紡ぎ上げる。 七花の永久炉より全身の魔術刻印にエネルギーが流れ込んだ。 自身すら魔法陣の一部とした時、唇が魔術を完成させる最後の言葉を紡ぐ。 「マレウス・ステルラ」 ● 「喰らいな! ラヴィアン・ハンマー!」 黒鎖を操りながらラヴィアンは叫ぶ。 鎖の束縛から解き放たれたわずかなものが少女の肉体を焼こうと炎を放つ。しかし、その中から彼女は無傷で姿を現した。よくよく見ると、彼女は周りに物理攻撃を完全に遮断するシールドが展開されている。 幼い印象を与え、実際彼女は若い。しかし、それでも彼女は幾多の戦いを生き抜いてきた凄腕のリベリスタである。加えて言うのなら、ただの人類エリューションではない。さらなる深化を遂げたハイジーニアスなのだ。 「やっぱ俺、剣林は好きだな。自分自身の力で戦う所とかも含めてさ」 ラヴィアンは以前、『剣林』のフィクサードと共闘したことがある。善悪を抜きにすれば、バトル好きな彼女にとってはその主義は好ましいものとして映った。 だからこそ『裏野部』、いや『賊軍』の行う卑劣な真似を看過することは出来ない。 「裏野部がどんな力を得ていたとしても、このラヴィアン様が全員撃退してやるぜ!」 鎖の束縛を受けながらもフィクサードは素早く突破して、賭場へ向かおうとする。しかし、それを予測して、一歩先んじて動く影があった。 そう、常人には影にしか見えまい。 フィクサードもまた、常識を超えた速さの持ち主だった。 しかし、亘――影の正体だ――の速度はわずか一歩先を行く。 互いに全身の電気を完全制御し、極限にまで速度は高まっている。わずかに覚悟に揺らぎがあれば敗れていたかもしれない戦い。その高速の世界を、亘は制した。 「2つお話があるんです。聞いてくれませんか? 1つは貴方が速く在ろうとする理由です」 わずかにフィクサードの刃が緩んだ。 亘も彼女と戦い、相容れないことは知っている。それでも、いや、だからこそ同じ高みを目指し違う道を走る人の想いを生き方を知りたい。ただそれを知り、なお自分も貫きたい意地があるから。 「もう1つは宣言を。最速を求める者として今、貴方を超え此処を守ります。自分の全てを……お魅せしましょう」 「あたしは全てを壊す。気に入らない奴ら全てを壊して進む。誰にも邪魔させない! それがあたしの速さだ!」 そして、ぶつかり合う無数の刃。 当初はフィクサードの方が勝っていたが、次第に亘が押し返していく。 その光の飛び交う中で暗躍していたのは、オーウェンだ。 「隙が大きすぎる……動きではなく、心のな」 戦場の隙を縫うように、オーウェンは気糸を走らせる。戦いの最中にありながら、オーウェンの脳内では高速で戦闘のシミュレーションが為されていた。 スライドのようにいくつもの戦闘結果が示されていく。 その中で、明確な勝利のイメージが組み上げられていった。 そして、決定的なポイントをピンポイントで気糸が貫く。 「チッ」 「高速戦は一瞬の遅れが命取りである……さて、どうする? 俺を倒すか?」 傷ついた肩口を押さえながら舌を打つフィクサードに対して、オーウェンは挑発気味の仕草を向ける。しかし、そこで不利を悟ったフィクサードは撤退の姿勢に入った。 見ると銀次が鬼神を思わせる戦いでアザーバイド達を圧倒している。裏側に回ったリベリスタ達は、決して耐久力があるとは言えないメンバーだ。しかし、相手の攻撃を巧みに封じる戦いで自分達の不利を補っていった。 神代の怪物を思わせる黒いオーラの中で、銀次は熱く吠え猛る。 「日本のほとんどの神秘勢力に喧嘩売るような連中が詰まらん事すんなよ。さァさっさと掛かって来い、この俺が相手をしてやるぜ!」 銀次の戦い方は決してきれいなものではない。 前のめりで泥臭く、自分すらも傷つけてしまう危険な戦い方だ。 それでも、実戦の中で生き残るために培ってきたものだ。そうそう破れるものではない。 「ヌルいなァ……俺を殺すんじゃなかったのかい?」 そして、動かなくなったアザーバイドの死体の前で、血まみれの銀次はニヤリと笑うのだった。 ● 空から降り注ぐ鉄槌の星がアザーバイド達を打ち砕く。 これこそ最大魔術『マレウス・ステルラ』。 鍛えた術者が1回発動するのがやっとな間に、七花は二撃目を解き放つ。 さしものアザーバイドと言えど、これには耐えられない。1人、また1人と倒れて行く。しかし、両面宿儺の名を持つアザーバイドは違った。その名にふさわしい戦闘力で、リベリスタ達の前に立ち塞がったのだ。 「裏門の方は片付いたみたいですね」 七花が安堵のため息を漏らす。出来れば増援に向かいたかったところではあるが、目の前の敵はそれを簡単に許してはくれなかった。エリューション、アザーバイドといった連中は、リベリスタやフィクサードよりも耐久力に勝ることが少なくない。 「剣星招来とやら、見せてみろ。お膳立てはしてやる」 フィクサードに声掛けをすると、福松は精確にアザーバイドの四肢を狙い撃つ。神速の抜き打ちから逃れることは出来ない。的確に急所を貫かれ、多脚のアザーバイドの姿勢が崩れる。 そこへ星の力を帯びた魔剣が突き刺さる。 「グォォォォォォォォン!!」 アザーバイドが叫ぶ。しかし、リベリスタ達の攻撃は収まらない。 「ハッ!」 タイミングを計ったかのように、慧架が一気に距離を詰める。 鉄扇を華麗に振るい、怒涛の連打を畳み掛ける。 トモエと戦場を共にするのは初めてである。それも所属する組織は互いに敵対している。しかし、それを感じさせない抜群のコンビネーションであった。 「日本最強に連なる一端、この目に焼き付けさせてもらいました」 リセリアが構えを変える。今までのように相手の動きを封じるためのものではない。トドメを刺すためのものに、だ。 『剣林』の戦い方は見させてもらった。であれば、今度は自分達の番だ。 「『鬼神』両面宿儺の一族の力、如何程のものか――確かめさせていただきます」 リセリアの跳躍と共に、魔力を帯びた刃が光り輝く。 怨嗟の念を帯びた刃がせめて一太刀浴びせようと迫ってくる。しかし、それを自然な動きで回避する。破れかぶれの一撃など、リセリアには通じない。 そして、光の飛沫をフェイントに、蒼銀の軌跡がアザーバイドの胸板を貫く。 リセリアは何事も無かったかのように剣を引き抜くと、踵を返して仲間達の元へと歩を進める。その後ろで鬼神の名を持つアザーバイドはゆっくりと崩れていくのだった。 ● 「恩を着せる心算は毛頭無い、いい物も『観せて』貰ったしな」 気取った風でも無く、福松はフィクサード達に告げてみせた。政治感覚の欠落している『剣林』と言えど、意味することは分かっている。タダより高いモノは無い。ギブ&テイクと言う奴だ。 『剣林』のフィクサード、トモエとしては苦笑を浮かべるしかない。 そんな彼女の後ろから、慧架が抱き付く。 「良いじゃないですか。フフフ、少々ゆっくりお話ししたり、紅茶か緑茶を作ってあげたくなりますねぇ」 そう言うと、2人して拠点の中に入って行った。七花は大丈夫なのかと思案顔をしている。 しかし、そこで銀次はそんな不安を笑い飛ばすと、自らも拠点へと向かっていく。リベリスタとしてではなく、客としてだ。 「剣林フィクサードに今はまだ用はねェ。まァ賭場は見させて貰うかね。いつかまた来るかも知れんしなァ?」 『剣林』には借りがある。いずれはそれを返す予定だ。そうなれば、この場に客ではない形で関わることになるはずだ。そのためにも、下見しておくのは悪くない。彼に言わせれば、『賊軍』を退治したのはそのついでに過ぎない。 それに、近いうちに大勝負の時は来る。その景気づけ。一勝負打たせてもらうとしよう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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