● すらりとしたパフェのグラスを手にしたら、さあ何から入れていこう? やっぱりチョコレートソース? クリームチーズをミルクで滑らかに伸ばしたソースもいいかも知れない。 それともシリアルやパフを流し込んで、上から白いヨーグルトで覆ってみようか。 或いはブラウニーの上にラズベリーのジュレを乗せて、もう一度ブラウニーを置いて素敵な層を作ろうか。 カスタードの池にスポンジの島を浮かべ、フルーツを乗せるのも良いだろう。 間に入れるのはアイス? それともストロベリーやチョコレートのムースか。 切った苺を見せるようにガラスに沿って並べたら、真ん中にたっぷりホイップクリームを絞ろう。 アイスやムース、クリームやフルーツでグラスをたっぷり満たしたなら……。 飾りに乗せるのはやっぱり苺? それともローストした胡桃の感触が楽しいブラウニーをもう一度? 輪切りにしたドライオレンジに半分だけチョコレートをかけたショコラオランジュを刺してみるのも大人っぽいかも知れない。チョコレートソースにアイス、チョコレートムースの層の合間にレモンピールを忍ばせて、一番上のホイップクリームにクリスタルジンジャーを掛けてもシックだ。 チョコレートとバナナなんて黄金の組み合わせ、美味しくないはずがない。 さくさくした食感も味わえる細いチョコレートパイだって捨てがたい。 小さなストロベリーのギモーヴもパステル調で可愛らしい。 ワッフルやチェリー、ブルーベリーにアラザンを散らしてソースを垂らせば見目にも賑やか。 シュガーやチョコレートの細かなスプレーを咲かせて華やかにするのもいい。 それとも定番、ハート型の薄いチョコレートを乗せてみる? 何でもいい。 細いグラスに積み上げたのは、あなただけの甘い思いの積み重ねだから――。 ● 「と、まあそんな訳でバレンタインな訳ですけど、パフェ作りに行きましょうパフェ。え? はははやだなぁ、カップル限定ならぼくが言い出したって寂しいだけじゃないですか、独り身の人もこの機に乗じて楽しみましょうよ、皆さんのお口の恋人断頭台ギロチンはいつだってお付き合いしますから」 本気か冗談か分からない何時もの笑みでのたまった『スピーカー内臓』断頭台・ギロチン(nBNE000215)が差し出したのは、一枚のポストカード。 色とりどりのパフェが並べられた写真の裏面には、地図。 「ここのカフェでね、バレンタインの時期限定で自分でパフェを作れる催しがあるそうなんです。誰かの為に作ってあげるのもいいでしょうし、思い切り自分の好きなものだけ詰め込んでも問題ないそうですよ」 恋人同士の語らいから、友人同士の交換会、或いは甘いものを愛する一人の為――。 用意された様々な材料を組み合わせ、たった一つのパフェを作り上げよう。 ギロチンの知り合いであり、神秘を知る三高平市の住人であれば多くの気を遣う必要もない。 ゆっくりとこの日を楽しんで欲しい、との事だ。 「ね。良かったら行きましょうよ。ぼく一人だと寂しいですから。幸せな人たちを見てるだけでも、結構楽しいものですよ?」 勿論目の前のパフェに夢中になってもいいですけど。 小さく笑って、フォーチュナはポストカードを差し出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:黒歌鳥 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年03月03日(月)23:02 |
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● 冬場とはいえ暖かな光の降り注ぐ昼は、空が高くとても穏やかだ。 ベルを鳴らし店に入ったシュスタイナと壱和は見えた光景に笑い合う。 美味しいものを食べるのに友達が一緒なら、もっと美味しい。 「バナナとかマシュマロとか、チョコかけると一層美味しいわよね」 シュスタイナが下に注ぐのはコーンフレーク。チョコソースの上に輪切りのバナナを乗せてから、ふと隣の壱和へ問い掛ける。 「私はチョコパフェ風にするけど、壱和さんは?」 「ボクはフルーツパフェに。今だと苺が美味しそうですね」 クリームにチョコチップを散らすシュスタイナと話しながら、流し込むのは砕いた苺のゼリー。間に挟むのは、本物の苺。更に上にメロンゼリーを重ねれば、陽光に透かしても綺麗な層が出来上がった。違う味を重ねて完成していくそれは思い出にも似ている。 壱和が呟けば、シュスタイナも頷いた。彼女のパフェの上を飾るのは、小さなハートのマシュマロとたっぷりのチョコソース。壱和のパフェにはホイップクリームと苺が鎮座していた。お互いの出来を褒め合ってから口にすれば、見た目通りの甘さが体中に染みていく。 「何か作るのって楽しいわね。また何かあればご一緒してくれる?」 「喜んで。シュスカさんと一緒にいるの、楽しいですから」 「あ、そうだ。これ」 囁き合う中、ふと取り出された小箱。一度首を傾げた壱和だったが、今日が何の日であるかを理解し――表情を驚きと喜びの交じり合ったものへと変えた。 「はわ……っ。ありがとうございます! すごく嬉しい」 「……ふふ」 表情にシュスタイナも頬を緩めて小さく笑う。言葉よりも何よりも、それは壱和の心を雄弁に現してくれていたから。 バレンタイン。それは主に甘味が出張る日である。日本のメインは当然チョコレートだ。 「らんでぃさんのパフェも作ったげるの」 ぐっと拳を握った旭は自信満々、スタンダードにチョコソースやパフ、フルーツやホイップクリームなどを重ねて――ここまではランディの想定内だったのだが。まあるいチョコジェラートを浮かべた横にブラウニーを刺して、重ねていくのはマカロンの塔。彩りも考えて苺やビスケットも乗せたなら……まあ。 「え、えっらい盛ったな」 「おいしそうでしょー」 「俺だけじゃ食えないから一緒に頼む」 はしゃぐ旭にランディが笑えば、勿論、と微笑が返ってくる。 「そうだ、もうすぐ女子大生だったな」 「えへへ、そなの。もうすぐじょしだいせ……」 言葉を紡ぐ唇も、表情も、もう子供ではない。一人の立派な女性であれば、余りに子ども扱いするのも失礼であろう。頷こうとした旭の手を取り、その頬に別の手の掌を触れ合わせて己の方を向かせれば、翠が驚きに一度ぱちりと瞬いた。 瞳には赤が映る。ランディの色。暖かく燈る赤。旭がきらいで、すきないろ。 ほんの僅か見詰め合ってから、目を離したのはランディだった。 「俺には似合わねぇわな、こんなの」 「に、似合わないってゆーこともない、んじゃない、かなあ……?」 「まぁ……贔屓目に言っても随分綺麗になった、と思う」 目を逸らしたのが照れ隠しであったのに頬を赤らめた旭が気付いたか否か。 思わずその表情に唇を寄せそうになった事は黙っていよう、とランディが思うより早く――。 「むぐっ?」 「……ありがと」 口元に運ばれたスプーン、はにかんだように礼を告げる彼女の表情は、パフェよりも甘く。 「こっちこそ、ありがとな」 珍しく微か安らいだ笑顔で告げたランディに、旭もにっこり微笑んだ。 「メリッサおねーさんとパフェ作りーっ」 「はいはい、器はこれにしましょう」 嬉しさを微塵も隠さない様子できゃっきゃとシーヴにメリッサが取り出したのは、少し大きめの器。どんなパフェがいい? と問えば、世界樹なパフェ、との答え。 「どんな感じ?」 「ん-、どどーんときらきらーな感じで」 両手を広げて自らの故郷であり母の姿を伝えるシーヴにふむ、と頷いて、選んだのはチョコレート。ミルクにビター、色の違うものを重ねれば年輪にも木肌にも見える。ただそれだけだと飽きてしまうので、間にはフルーツを挟もう。食感を出すにはチョコクランチ。 「わーい、完成っ」 「……食べきれるかしら、これ」 シーヴが喜ぶものだから、つい盛りすぎてしまった気がする。しかしいざ行かん、かの世界樹へ。 「あまくておいしいーっ。ふふーっ、挟んである果物も良い感じにっ」 「おいしい。でもシーヴ、そんなに勢いで食べたらダメよ、頭が」 「――キーンって><。」 メリッサの忠告が追いつかない程度に美味しかったのだろう。こめかみを押さえるシーヴの前に、メリッサは小さく笑って暖かいハーブティを差し出した。 ほっとひと息ついたシーヴだが、ふとその視線がパフェに戻って……。 「崩れて、暴走しちゃったみたいな異形に……!」 パフェは食べれば崩れるもの。仕方ない。とはいえしょんぼりしてしまったシーヴに、メリッサはスプーンに乗せたアイスを差し出した。 「食べちゃえば一緒よ。二人で作ったんだもの。美味しいうちにね」 見た目が変わっても、美味しさは一緒。シーヴは差し出されたスプーンをぱくりと咥えて――また嬉しそうに笑ったのだった。 甘くて美味しい時間。それは何者にも変えがたく――。 「ぎろぎろがパフェおごってくれるって聞いたでござる!」 「いつ言いましたかそんなの!」 ましてや他人の金となれば更に美味い。突込みを受けながらもうまうまと(結局奢った)パフェを手にしたクノイチフュリエは今度は自分で作りに掛かる。 手にしたディッシャーで掬うのはバニラに抹茶、苺のアイス。土台にしたそれの上に真っ白なホイップクリームを掛け、苺の入った細切りミルフィーユを刺す。 更に抹茶の粉末をまぶし、頂点にサクランボを乗せれば三色のいたりあーんぱふぇの完成だ! お前の国籍は何処だとか突っ込んではいけない。異世界だ。 「……美味しいとは思うでござるが、緑色って、こー食欲をそそらないでござる」 しかも作っておいてこの発言である。大丈夫。これは美味しい。 そんな二人がどこで話題を仕入れてくるのかとか知り合いのお姉さんからだとか喋っている所に、木蓮が手を挙げる。 「ギーロちんっ! ちょっとカモン!」 「はいはい?」 「ギロチン的にどのチョコが一番ビビッとくる?」 彼女がテーブルに並べたのは、幾つものパフェ。並ぶ隻眼の射手の姿は今日はない。 「いや、龍治がデートに来れなくなっちゃってさ、せめて本番のチョコレートで少しでも癒してあげたいな~、って思ったんだが……」 試作品を色々作ったら、どれがいいんだか。遠い目をしていた所に見えたのが丁度いいカモもといギロチンだったという訳である。 「じゃあ遠慮なく」 「個人的にゃこのマカロンショコラかなと思うんだけれど、どうだ?」 「あ、いいですね。ちょっとさくっとした食感で飽きが来ない感じの」 だろう、と頷いた木蓮はようやく安堵したように息を吐いて、甘味以外での空腹を訴えていたお腹を思い出して手を挙げた。思い思われとはいえ、乙女の悩みはかくも深きものなのである。 ご協力感謝、と差し出されたチョコレートを、ギロチンも礼を言いながら受け取った。 「じーじとバレンタインデート!」 「今日みたいな日は女の子と出かけるものじゃないのかしら」 「美少女と一緒ってなんかうれしいじゃん」 「なら尚更あたしじゃないと思うのだけれど」 言っても無駄な事は知ってはいるが、笑う夏栖斗に肩を竦めながら告げるエレオノーラも唇の端は上がっている。美少女はともかく、人と出掛けるのはそう嫌いでもない。 お互いのパフェを作って交換しよう、とはしゃぐ少年に彼は頷いて、選ぶのは美しい青紫の色。菫シロップのジュレに重ねるのは、優しい白のパンナコッタと砕いたナッツにクッキー。上に乗せるのはストロベリーアイスと、とろりとした甘さのアメリカンチェリーのコンポート。 上にちょこんと乗せたハートチョコは少しだけ苦い。 「夏栖斗ちゃんのイメージは炎、ね。赤い炎」 青い炎はより温度が高いというが――彼はいつか、冷めた色で熱を燃やし続ける青に変わるのだろうか。 「炎かぁ。なんか、ちょっと照れるけど嬉しいな」 夏栖斗がグラスに流し込んだのはチョコソース。ホイップクリームを重ねたら、間に入れるのはチョコミントのアイスだ。もう一段同じ様に重ねて、更に苺もトッピング。チョコレートのギモーヴも添えて、一番上に天使の羽の形のチョコレートを飾れば出来上がり! 「どう? 美味しい?」 「……美味しい。ミントアイスもチョコも大好きよ」 「うん、じーちゃんのも美味しい。ね、せっかくだからハートかいて!」 「……全くもう」 呆れたように笑いながらラズベリーソースで描かれた縦長のハートは、きっと酸味を添えてくれるだろう。クールだけどちょっと甘い所もある『大人』な彼に――夏栖斗は笑って礼を言うのだった。 日が少しだけ傾き始める午後三時、少女らのお茶会は始まるのだ。 香り高いアールグレイやダージリンの紅茶を傍らに、今日のお供は自分達で作るパフェ。 「氷璃さんの為に素敵なパフェを作るわ」 「ええ。腕によりをかけて最高のパフェを作ってあげるわ」 氷璃が掬い上げたのは、チョコソースとラズベリーシロップ。うまく底で螺旋に交じり合うように混ぜて、細く重ねるのはカスタード。パフを散らしてチョコムースを乗せ、間にラズベリーやブルーベリーを流していく。最後の飾りはアイスの左右にチョコ掛けワッフルを乗せて――。 「~昇天ペガサスMIX盛りver.NOIR~、よ」 優雅な黒蝶をイメージしたというそれを得意げな表情でお披露目する氷璃だった。 一方の糾華も氷璃の為の、氷璃らしいパフェ。ちょっと大人で、少し子供っぽい。言うなれば、包み込むような黒と深い青と淡い紫が滲む……淡雪浮かぶそんな逸品。 ビターチョコのソースの上にミントシロップのジュレ。金と銀のアラザンを零し、重ねるのは葡萄のジュレ。ホイップクリームを乗せてチョコジェラートを飾った横には菫の砂糖漬けを置く。 「名付けて! <夜天の天蓋 冬の星空仕立て 鮮やかな花の彩りを添えて>」 二人して凄い名前が付いた。 糾華は何かノセられた気がするとか思いながらもペガサスだか黒蝶だか微妙なものを口にして――。 「……美味しい」 名前はともかく、氷璃が試行錯誤して作ったそれは確かに美味しい。私のも、と勧める糾華に氷璃は頷いてから、勿体無いくらいと呟いた。 「だって――娘のような糾華が作ってくれたものだもの」 「む、娘みたいって……もぅ」 照れ隠しのように口を尖らせてみながら――糾華はこれも母の味になるのかと、小さく頬を緩めたのだった。 ● 暖かい日の光は、微笑み合う二人にも似て。 「ね、三千さん。それぞれパフェ作って半分こしましょう。私、美味しいの頑張って作るから」 「はい、気合を入れて作りますねっ」 普段は凛々しい愛しい人が、柔らかく微笑んで告げた提案に三千も深く頷いた。家事は得意な方だ、その技術の粋を集めて作ってみせよう。 イメージは青。ソーダジュレやチョコミントを使って、幾つも深みの違う青を重ねる。メインの食事に青というと奇抜な気がするが、デザートや飲み物だと鮮やかに映えるのだから不思議なものだ。チョコムースで層を作る三千を見ながら、ミュゼーヌも自分のグラスにパフを流し込む。 その上にはパンナコッタと苺のコンフィチュールと……あれ、妙に混ざった。気を取り直してブルーベリーを、あれ、何だか層が斜めに。ホイップクリームは綺麗に絞ったはずなのに、手を滑らせた巨峰が不思議に浮かんでいる。そんな調子で三千とはあまり被らないように、たくさんの種類を詰めたのだが――。 「……ど、どうかしら。ちょっとだけ、その、てんこ盛りになっちゃったけど」 交換の時に少し目を逸らしながら差し出したミュゼーヌのパフェは、ちょっと(本人申告)でこぼこな感じだったけれど、三千は目を輝かせて口にする。 「ん……おいしいですっ。ミュゼーヌさんが、僕のために一生懸命に作ってくれたんだなって感じますもの」 「そう? ありがとう」 心からの言葉に、ミュゼーヌも顔を彼に戻してはにかみながら礼を言った。 彼のパフェは、青の色。 「ふふ、三千さんは流石のお点前……ん、至福の時間だわ」 交じり合う青、そして間を埋めるように敷き詰められたチョコレート。 青はミュゼーヌで、チョコは三千。そのイメージを告げた時、彼女は瞬いてから――また、嬉しそうに笑うのだろう。 「今日は、お前はなにも動かなくていいのだ」 びしっと指差して雷音から告げられた言葉に逆らう気など、虎鐵には毛頭なかった。 けれど動くなといわれれば動きたくなるもので、可愛い娘が自分の為にお菓子を作ってくれるという感涙ものの体験ではあるのだが――それはそれとして手伝いたい。 葛藤を知ってか知らずか、雷音は大きなグラスに丁寧に盛り付けをしていく。 さくさくシリアルの上にはバニラアイスと苺のコンフィチュール。美味しい層が出来たなら、間に輪切りの苺を入れよう。その上に再び同じ様に重ねれば、やや大きめのパフェが出来上がる。 「虎鐵、どうだ?」 「ああ……拙者は今幸せをかみしめてるでござる……」 暖かな色合いで可愛らしく、雷音らしいそのパフェ。虎鐵としては今日ばかりは信じてない神へ喝采しても構わない気分だ。少し多いか? と問う雷音に首を振る。残さず食べる。勿論誰にも渡しなどするものか! 気合で食べるスピードを上げた虎鐵に、雷音はくすりと笑った。 「焦ってたべなくてもいいのだ」 伸ばした手は、虎鐵の口元についたクリームへ。指先で拭ってぺろりと舐める。 「君のほうが子供みたいじゃないか」 彼女は何でもない事のように告げたが……なんだ。これは。驚愕と喜びが交じり合って飽和状態になってはわはわと落ち着かない様子の虎鐵に、雷音はまた笑う。 暖かな光の中の幸せな光景は――夢ではないのだろう。 「結構色んなものがあるね、すごくおいしそう!」 「いちやとはウマい思い出たくさんだなーッ」 美味しい楽しみは分け合った方が、きっと二倍にも三倍にもお徳なのだ。 席についてから、あ、そうだ、と壱也が取り出したのは、箱の入った袋。 「はい、コヨーテくん! ハッピーバレンタインっ!」 「オレに? でも甘ェのは……」 チョコを渡す日なんだよ、と告げた壱也に少し申し訳なさそうに眉を寄せたコヨーテだが、彼女は分かってるとばかりに頷いた。 「大丈夫、ブラックペッパーいっぱいいれて甘くないようにしてあるからっ」 「え、辛ェの!? わざわざ作ってくれたンだなッ!」 そう。コヨーテは粒胡椒をそのままごりごり齧っても平然としていられる辛党である。逆に甘いものはからきし駄目だ。だからこそ壱也が作ったのはコヨーテの為の特製チョコ。味見は出来なかったけど、と言葉を濁す壱也にコヨーテは笑う。 「大丈夫、絶対ェうめェに決まってるッ。お礼に、いちや専用パフェ作るぜ! 最強のパフェ作ってやッからな!」 「わーい、やったー!」 ブラウニーを敷いた上に山盛りの苺、チョコアイス。注ぐのはベリーのジュレ。盛り付けこそ豪快だが、組み合わせは間違いない。大きくなれよと笑うコヨーテに壱也は一瞬真下に視線を落としたけれど――それはそれとして、コヨーテが取り出したものに瞬いた。 「仕上げに……いちやはどん位掛ける派だー?」 「マイブラックペッパー!?」 筋金入りだった。 辛いものが好きだったり甘いものが好きだったり、好みは色々。最近こそ『スイーツ男子』などと知名度は上がったが、それでもユーグのような男の甘味好きというのは時に肩が狭い。 「ギロチンさん、男一人だと気恥ずかしくて……」 初対面だがカウンターで一人パフェを食べるよりはいい。余裕で頷いてくれたしオッケーだ。 ユーグが作るのはチョコレートパフェ。深い色のチョコソースの上にシリアルを重ね、生クリームとチョコムースのクッションの上にはチョコアイス。飾りは砕いたナッツも香ばしいブラウニーだ。自重? 考えたら負けである。カフェでケーキとかはギリギリ大丈夫なのに――。 「パフェだと途端に女の子の食べ物って感じがするのは何でなんでしょうね」 「ねー。アイスとかチョコとか男も大好きなのに」 だが、ユーグに頷きながら頬張るギロチンの姿にはさして違和感がない。 なんだこれ。年期の差か。スイーツ男子の悩みは、深い。 一人で恥ずかしいなら、恋人と来ればいいじゃない。 今日は『ぼっちです!』と宣言する事もなく恋人と甘い時間を過ごしている竜一にとっては、そんな感じだろうか。 「甘い雰囲気の元、甘い恋の味をユーヌたんに!」 「ふむ、恋は甘い味なのか。食べ過ぎると胸焼けしそうだな?」 相変わらずクールビューティーな恋人にもめげないというかこれが可愛い。はりきる竜一の隣に付き添いながら手伝ってくれる姿も超可愛い。チェリー(好き)の竜一が作るのはチェリーパフェだ。 チェリーそのままでは嵩張るし食べにくいので種を取って潰し、チェリークリームを重ねたら食感を変えるのにシリアルを加え、更にチェリーのアイスを乗せる。最後にはチェリーソースを掛ければ完成だ! 「さあさ、ユーヌたん! 俺のお膝の上に乗りながら、俺のチェリーをたーんとお食べ!」 「聞きようによってはツッコミ所多い発言だな?」 突っ込んであげてください。是非。そんな言葉を口にしながら、竜一の膝の上でユーヌはパフェをぱくり。 「うん、良い味だ。器用なものだな」 「あ、ユーヌたんほっぺにクリームとかついてるよ!」 頷くユーヌに告げた言葉は真実か否か。頬から口元、唇へと移る恋人の唇に、ユーヌは一つ息を吐く。チェリー味というか、これでは竜一味だ。 「私と恋の味とどちらが甘いのか。決まっているか、私は甘くないしな」 「ユーヌたんは甘いよ!」 肩を竦めたユーヌが差し出したパフェを口にして、次いで贈られたキスに頬を緩めた竜一が口にした通り――彼女は相当に、彼に甘い。 ● 日が暮れて、夜の帳が下りる頃。 普段は修道服を身に纏う三人の女性達は――ミサではなく女子会を開いていた。 とはいえ、リリが口にしたのは至極真面目な事である。 「神様のお話か」 「はい。宜しければ、思っている事……神様や救いについてのお考え、聞かせて下さい」 「カミサマ……ね」 杏樹がチョコアイスを片手に問い返せば、リリはクリームを突きながら頷いた。苺を刺した海依音が肩を竦める。 杏樹にとってみれば、道標であり無関心な傍観者。その無関心ぶりは時にぶん殴りたい程だ。 「間違ってると思うならぶん殴ってでも振り向かせろ、って、昔神父様たちにね」 杏樹の抱くそれは憎しみではない。不信仰ではない。愛するからこそ、此方を向いて欲しい。 貴方を信じて、この泥に塗れた道を歩いているのだ。 リリは言葉に頷いた。道標。分かる。そして殴りたい気持ちも――アークに来て暫く経った、今なら少しだけ分かる。 「ワタシは神様はもう信じない。神様は、誰も救ってなんてくれないの」 海依音の纏う服は似通っていても、心の在り方は最早父の子から遠く離れてしまった彼女にとって、神はもうヒトの作り出した理想でしかない。 ナイトメア・ダウンに遭った時もそうだった。声が枯れるまで助けを求めたのに、信じる者に手を差し伸べてくれるはずの神様は何もしてくれなかった。 「全てに救いが届かないのは、何かお考えがあっての事なのか、と思っています」 悩みながらリリは首を振る。ヒトには理解できない、その心。 「救いというのは難しいな。迷い子が救われるための手助けならできる、って思ってる」 「でも、それは神の力じゃなくて人の力だわ」 杏樹の言葉に、自称コスプレ修道女は首を振る。神秘と名はつけど、そこに神は介在しない。扱うのは人であり、それはただの異能だというのが海依音の持論だ。 「救済が叶うのは自分の力、ワタシはそうおもっているの」 「でも……見守って下さるだけでも、心強く思います。私のような弱い者には、そういった形で力を与えて下さっているのかも知れません」 ぎゅっと指を組んだリリが、息を吐いた。神様も、救いも、答えが出なくて、だから――。 「……ふむ、難しいこと考えてると糖分が足りないな」 「おかわり、しましょうか」 「次は和風とかどうかしら、桜味のアイスありましたよ!」 日々に寄り添う形で、信仰者達は自問するのだ。 布で遮られた視線、カウンター席に並んで座るのは快と天乃。 前に置いたのは、それぞれ作ったパフェの姿。天乃作のパフェはクリームの上にフルーツを重ね、チョコレートリキュールも混ぜたシックな外見の少し大人の味。 快が作ったのは鮮やかなプースカフェ・スタイルのカクテルに見立てたキウイや苺、バニラアイスやチョコレートが綺麗な層を描くパフェ。 「それじゃ、バレンタインと……俺達の命令違反に、乾杯」 冗談めいて快が告げた通り、天乃と彼と仲間達は先頃、フォーチュナの予知から大幅に外れた未来へと舵を取った。下手をすれば崩界の針を進める危険性のあるその方法を、アークは選ばなかったけれど――彼らは、その道を守りたいと思ってしまったから。 その事自体に悔いはない。全員同意の上だし、快には充実感すらある。けれど、一つだけ。 「護ってくれて、感謝はしてる」 乾杯の後で礼を告げた天乃は、死すらも厭わず戦う気だった、その事実。 「どうしていつも……お前は黙って俺の前から消えていこうとするんだ?」 戦に生きる彼女の信念と快の信念は噛み合う訳ではない。天乃にとって自分はその程度なのかと、問う彼に彼女は少し考えた。 「親しくなるほど、別れは辛くなる。死ぬ私は、いい」 何も残らないから。でも、残される側は? ――きついだろう。 彼女とて、理解できない訳ではなく……また、無関心だと言う気もない。 「……そんな気遣いは、する程度の男だよ」 立ち上がった小柄な体は、守ってくれた大きな背中に後ろからそっと寄り添う。 鼓動の音が近くて、快は小さく息を吐き――目を瞑り、ただ黙っていた。 カフェの置く、チョコレートケーキにロウソクを立てて祝うのはミーノとリュミエールの18歳コンビである。 「1大人! ちょうせくしー!」 「ミーノのほうが早生まれと言う事実にツイテ」 バレンタインはミーノの誕生日、リュミエールは21日。一週間とは言えお姉さんなのだ。ミーノが。 「ないんているずの18さいきねんなの~」 「歌は……歌って欲しいナラウタウガ」 「わっほい!」 目を輝かせて歓声を上げたミーノに、リュミエールは一度肩を竦めて唇を開いた。滅多に歌を紡ぐ事のない彼女が奏でるのは、異国の調べ。今の時期は未だ雪に閉ざされているだろう、北のおと。 はしゃぐミーノが取り出したのは、リュミエールへのプレゼント。 「はいっ、手作りのちょこまふぃん! これからもきゅびーずとしてよろしくなの~」 「オオ。じゃあ、これはドウダ?」 お返しにとリュミエールが彼女に被せたのはニット帽。狐耳も綺麗に入るそれは、リュミエールの手編みだ。暖かいそれと美味しいチョコケーキのダブルパンチに、ミーノの笑みが零れる。 大満足だ。良い誕生日だ。これからもがんばろう――そんな風に誓う彼女なのだった。 バレンタイン。それは乙女にとっては一大行事ではあるが、ただの平日と言ってしまえばそれまでである。 「世間はバレンタインなんてありましたね……」 ポスターを見て、思い出したように告げるモニカ。とはいえイベントがあれば店長こと慧架と出掛けるのは何故だか恒例と化してきているし、楽しめるものは楽しんで損はない。 ましてや大抵のものは美味しく頂けるので、特に選り好みはしないが……。 「アルコールだけは駄目ですよ、体質的に受け付けませんから」 合法ロリこと少女の体のままで年を重ねてきたモニカにだって、駄目なものはある。まさか酔わせてあんなことやこんなことを、と頬に手を当ててみるが、慧架相手では普通に首を振られるだけだった。 「私もまだアルコール飲める歳ではありませんよ。折角ですからチョコレートを贈呈しましょう」 「あ、じゃあ私からも。折角ですので」 「あれ、私の分もあるんですねー。ありがとうございます」 差し出したモニカに首を傾げる慧架。忘れていたという割には準備が良い。問えば偶々持っていただけだとの答えが返るが――。 「この形と、この梱包で?」 それは明らかにバレンタイン向けである。問われれば、いつもの涼しい顔でメイドは肩を竦めるのだろう。 「やっぱり私には嘘は向いてないみたいですね」 最初から用意していましたよ、と告げる彼女は、慧架にしてみれば茶目っ気のある可愛い存在だった。 「とらさん可愛いですねー」 「もっと褒めてもいいよ☆」 ピンクのキャミワンピに白のファーマフラーのとらが差し出したのはココアのアフォガード。 バニラアイスにストロベリー風味のピンクココアとチョコソースを回し掛ける。ミントを添えれば、とらの色に似た冷たくて温かいスイーツの完成だ。 「聞き飽きたかもだけど、誕生日おめでとー☆」 「ありがとうございます。飽きたりなんかしませんよー」 笑う彼を家を渡り歩く半ノラの猫みたいだ、と笑った彼女は、カウンターに肘をついて覗き込む。 「こないだねぇ、学校で補修受けたんだけどちょっと楽しかったよ♪」 「あ、夜倉さんのですね」 「うん。ギロギロさんは、高校の思い出ってある?」 嘘でもいいから聞きたいな。そう微笑む彼女に、ギロチンも笑いを返す。 「そうですねえ、ぼく大学付属の一貫校だったんで……」 ――デザートをお供にした今日の『お話』は、お喋りなりに長くなりそうだった。 ● パフェ。それは人によっては、子供時代を連想させるデザートである。 「パフェか。最後に食べたの、何時だろう」 「最近、食べてないですねえ」 遠い日を思い返すように首を傾げた義衛郎に、嶺も小さく頷いた。 とはいえそれもお店のパフェ。自分で作るのは義衛郎も嶺も初めてだ。 自分の好きなものを入れられるなんて素敵だし、美味しいのが出来れば尚嬉しい。 義衛郎が最初に手にしたのは、チョコ風味のスポンジ。チョコリキュールで浸して苦味と風味を増したその上に苺を重ね、八分立てのしっかりした生クリームを。手際よく三度ほど繰り返したら、最後は生クリームとカット苺、コポーにアラザンを散らして見栄えもよく。 隣で嶺が浸していたのはコーンフレーク。上にはブルーベリーを敷いて、砕いたマカロンで食感を出したら生クリームを重ねよう。ブラウニーの土台を作ったら、バナナを花の様に並べて生クリーム、ラズベリーやブルーベリーを咲かせよう。しっかりと見栄えにも拘った『パフェ』を手にして一口ぱくり。 「……うん、我ながら良くできた。れーちゃんのも一口おくれ」 「義衛郎さんのも一口頂きますね」 それぞれ好みを貫いて、けれどお互いの味も愛しくて――いつもの様に穏やかな時を過ごす二人は、美味しい、と微笑みあうのだった。 義衛郎や嶺のように、お互いの距離を知り慣れた二人と違い……レイチェルは未だ緊張気味だ。 少し薄暗い夜の店、いつもより少しだけ大人っぽい赤のワンピースが褐色の肌によく映えていて夜鷹は小さく笑った。肩に掛けたバッグには彼に渡す手作りチョコが入っているけれど、レイチェルはそれを渡すタイミングも計りかねている。 「プッシー・キャットはどうかな? 可愛い子猫ちゃん?」 「はい、お任せで」 猫の名が付くノンアルコール・カクテルと自ら頼んだマティーニのグラスを鳴らし、余裕の表情の夜鷹がレイチェルにはちょっと悔しい。彼は確かに『大人』なのだ。 「レイは可愛いな」 さらさらした黒髪を撫でながら囁く夜鷹にとってみれば、そんな緊張するレイチェルも愛しい。きっとすぐに彼女も大人の女性になって、ますます美しくなることだろう。だからこそ、成長する途中の可愛さは、今しか味わえない。だから知ってて、口にする。 「レイ、今日はバレンタインだね。チョコはくれないのかい?」 「え、チョコレートは、その……」 口ごもるレイチェルだが、夜鷹は微笑んで頭を撫でる。笑んではいるが、諦める気は全くない顔だ。 「君が俺にくれる全ては最高に素晴らしいものなのだから」 「……もう」 そんな夜鷹には、レイチェルだって弱い。諦めたようにチョコを出して、一つ抓んで彼の口へ。 「ん、美味しい。ありがとう、レイチェル」 そう微笑んで、短いキスを指先に贈る彼の笑顔は――何よりも甘いのだから。 甘味と酒は、合わないようでそうでもない。特に洋酒となればチョコレートは悪くない。 「酒呑さんはチョコレートはお好き?」 「極端に甘い物は苦手だが 程々な物は相応に」 ミサに頷いた雷慈慟の認識はそんなものである。とはいえ、最近は日本酒が多いので久しく口にしていないのだが。そう、と頷いたミサはチョコが好きである。つい食事の代わりとしてチョコで済ませてしまう程だ。 けれどそれを口にすれば雷慈慟の眉は寄った。 「学者が糖分を要するのは理解するが 栄養摂取は確りしなければ」 「身体に良くないとは分かってはいるのだけど……」 そう苦笑するミサと杯を合わせた雷慈慟は、次いでパフェを作ると言う彼女に付き合い一緒に来てみたが――数多と並ぶ甘露の前に動きを停止した。これを盛り付けるのか。個別に摂取したのでは駄目なのか。合理的ではあるがいまいちその辺りの機微が理解できない雷慈慟をよそに、ミサはうーんと考える。 「んー、何をどう器に入れたら綺麗に見えるのかしらね……?」 普段料理をする訳でもなければ、どうにもその辺はミサにも分からない。それに、この材料はそれぞれ単品でも美味しそうじゃないか。ふと思いついた彼女は、ブラウニーを取って雷慈慟の前に。 「……酒呑さん、はい、あーんして?」 「……? あ、あーん」 一度目をぱちりと瞬かせた雷慈慟だが、経験にないそれも何となくジェスチャーで理解し口を開く。優しく押し込まれたブラウニーが、口の中でほろりと解けた。 ほろ苦いそれだけれど、嬉しそうに笑う彼女を見ると――何故か更に甘い気が、しないでもなかった。 甘すぎるものが得意ではない悠里の為、カルナがベースにしたのは爽やかな杏仁豆腐だ。つるりとしたそれはしつこくないし、苺やキウイ、桃やパイナップルにナタデココを重ねて上に少しだけ生クリームを飾れば彼の為のパフェが出来上がる。 カルナの為に悠里が作るのは、シリアルの上にチョコソースを注ぎ、バナナやストロベリーの上にバニラアイスを重ねたパフェ。生クリームでしっかり飾り、最後に乗せるのは赤く可愛いチェリーの姿。 作ったパフェを差し出して――美味しい、と笑った悠里はスプーンに乗せて彼女の前に一口差し出した。 「はい、あーん」 「えの、あの、あーんは恥かしいのですが……」 悠里にとっては、そんな恥らう彼女も愛らしい。少し頬を染めて、それでも仕方なさそうに唇を開けてくれるカルナが愛おしい。その表情だけで胸いっぱいになっている所で、彼女が口を開いた。 「悠里、口の横にクリームがついていますよ?」 「え?」 「取りますので、横を向いて……目を瞑ってください」 「目を?」 顔を近づけて囁かれた言葉。もしやこのシチュエーションは――いや、あーんはともかくこんな所では流石に恥ずかしい。いやでもそんな彼女からのアプローチなら。内心の葛藤はともかく目を閉じた悠里の唇に触れたのは……紙のナプキンであった。 「どうしたんですか、悠里?」 「カ、カルナ……ちょっと意地悪だね……」 カルナにとってみれば先程の意趣返し。しれっと告げた彼女に肩を落とすも、そんな所も可愛いのだから許せてしまう。笑う悠里にカルナも表情を緩め、差し出したのはチョコリキュール。甘いものが苦手な彼も、少しずつ嗜める大人の味。 「悠里、ハッピーバレンタインです」 「ハッピーバレンタイン、カルナ」 去年も、今年も、共にこの日を迎えられた喜びに……彼らは微笑みあって、手を重ねた。 カクテルを軽く一杯。そして甘い甘いパフェを自分の好きなように作れるという魔力。 喜平の理性は別に暴走してはいなかったが、静かに別の空間に飛んでいた。 「即ち愛。フェザーと、甘味たちへの愛が『欲する侭成せ』と囁いている……」 「……何言ってんだ喜平先生」 いつもの顔のまま自分への愛も含めて流れるように口にする喜平に突っ込みながら、プレインフェザーもグラスを手に材料の前にいた。 ご機嫌な様子で喜平が選んでいくのは、コーヒーゼリーやビターチョコ、甘さを控えたベースに生クリームを重ねチョコリキュールを掛けたりブラウニーを添えたり、といったもの。 プレインフェザーが選ぶのは、チョコと柑橘系。爽やかな風味が、甘いチョコの後味をすっきりしたものに変えてくれるからオレンジピールは外せない。食感や香ばしさを出すならクルミも美味しそうだ。 「あたし、甘いモノってあんまり好きじゃなかった筈なんだけど……」 彼女は自分の持つ皿を見た。食べられるようになってきている原因は、言うまでもない。誰かさんと一緒にいるお陰だ。 そんな変化も、共に時間を過ごしたからだと思えば悪くはない。かも。 「苦味で甘さを引き立てる……とは言え、何よりもフェザーが存在は俺にとって一番に甘い」 「はいはい」 パフェにしっかりみっちり盛りながらそう告げる愛しい人に少しだけはにかみながら頷いて、プレインフェザーはグラスを上げた。 「折角だし、乾杯しよっか?」 掛け声は、ハッピーバレンタイン。 ――来年もまた、一緒に過ごせますように。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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