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<バレンタイン2014>梅子と菫の地獄極楽チョコレート大作戦!


「刻むのは、手伝ったわよね? あとは湯煎して、混ぜて、型に入れて、冷やすだけなのだわって」
「はい」
「で、それがどーやったら、こうなるの?」
「えー、湯煎って鍋に湯を沸かしてボール入れてその中で溶かすわけだよな」
「……既に何か不安だけどまあ概ね間違ってはないのだわ。それで?」
「ボールに入れて、鍋に入れた時点で、まずボールがひっくり返ってだな」
「で?」
「イラッときてだな、もう一気に溶かせばいいだろって思ってだな」
「……それがどうして金属製のボールごと電子レンジに入れることに繋がるの……?」
 しかもラップがないからアルミホイルかぶせただと?
 その時呼び鈴が鳴ったから適当にぐいっと大きくひねったまま離れていただと?
 ――わかるような気がするけどけどわかりたくない。
 がくりと肩を落とした『深謀浅慮』梅子・エインズワース(nBNE000013)は、正座させた『まやかし占い』揚羽 菫(nBNE000243)の背後に広がる阿鼻叫喚図にもう一度目を向ける。
 刃の欠けた包丁。どこにぶつけた。
 血の滴る床。どれだけ自分の指切ってるんだ。
 電子レンジ爆発。どうしよう、これ。
 菫は片付けも苦手なようで、他にもまあ掃除を考えるだけでうんざりする状況なのである。
 はああ、と大きくため息を吐いた梅子に、菫があぐらをかいて居直った。
「だがな梅よ。今年も今年とてチョコを作っても、渡す相手もいないだろうが」
「うっ……だ、誰が梅よ」
「去年も作ってたな? 結局全部一人で食べてただろ? それでどうして怒ることがある」
「いやそれは怒るから。台所道具何一つないから貸してくれって言われた結果が大破とか普通怒るから」
「梅之助。悔しくないのか。燃えたくないのか。もっと熱くなれよ! できるできる、お前ならチョコを渡す相手のひとりやふたりくらいすぐできるだろ、ネバーギブアップだ!」
「誰が梅之助よ」
「梅之介梅太郎でお梅ブラザーズとして正月を席巻しろよ!」
「意味がわからないのだわ、いい加減ごまかさないの!」
 話をそらそうとしたのを見ぬかれた菫が、ち、と舌打ちする。
「だいたい、アンタこそどうして急にチョコつくろうとか思ったのよ。菫こそ配る相手はいないはずでしょ」
「いやそれがだな」
 諦めた顔で、菫はごそごそと荷物を取り出す。ほれ、と示されたのは、徳用の割れチョコの袋。
「チョコというのはな、カロリーとして素晴らしいんだぞ。
 そして、この時期は割れたヤツが結構大量に出回る。そりゃあもうちょと後になって時期を逃してからのほうが安いが、入手のし易さで言えばこの時期が一番だ。
 そこでだな、私は毎年これを大量に買い込んで、しばらくの食料としているわけだが。
 今年は、この1キロ入りのやつを、10個買おうと思ったわけだ」
「……あ、なんかオチ読めてきたのだわ」
「うむ。10個入りの箱を10箱買ってしまった」
 予想通りのオチにぐったりとした梅子に、菫がからからと笑う。
「さすがにこのまま食うのは飽きるからな。他の形にしてみたいと思ったんだが」
「むしろ賞味期限とか突破しちゃう方が早そうなのだわ、それ」
「賞味期限とか気にしてものを食ってないぞ私は」
「ちょっとは気にしなさい!」


 そんな経緯を脱線も多く語った梅子は、リベリスタに向き直って指をぴこぴこと振る。
「で、あの致命的な料理下手に誰か教えてくれる奴がいないものかって思うのよ。
 どうせいっぱい教えたらところてんみたいにぬけるだろうから、今回はチョコだけでいいの。
 大量に買い込んだらしいのは全部没収したから、チョコの数にだけは余裕があるのだわ。
 ……て、手伝ってくれてもいいのよ?」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年03月04日(火)22:44
ももんがです。OPの爆破風景は実体験ではないです。ないったらない。ないよ!

●OPをまとめると
絶望的な料理下手、『まやかし占い』揚羽 菫(nBNE000243)とチョコを作らないか?

●成功条件
この日を生き延びること

●会場
三高平市内の学校で、調理実習のできる家庭科室を借りました。
床には念のためビニールシートもひかれています。

●プレイングの書式について
【A】教える
菫にチョコ作りを教える方はこちら。
なお、菫の料理技能は「殺人料理」です。
食べられるものの完成率は限りなく低いと思われます。

【B】作る!
菫とか関係なく作り、食べる方はこちら。
チョコその他、材料はある程度用意されています。
いちゃいちゃとかしても許されるでしょう。バレンタインだし。

【C】作る?
菫とか関係なく作り、食べる方はこちら。
ただしこちらは、何らかのアクシデント(自己申告可)が起こったりします。
チョコその他、材料はある程度用意されています。

【その他】
 この状況で可能そうな、上記に当てはまらないものはこちら。
 (描写されない可能性が最も高い選択肢です)

以上4点からプレイング内容に近しいものを選択し、プレイングの一行目に【】部分をコピー&ペーストするようにして下さい。
また、どの場合でも公序良俗に反する内容は描写しません。
プレイングは下記の書式に従って記述をお願いします。

(書式)
一行目:行動選択
二行目:絡みたいキャラクターの指定、グループタグ(プレイング内に【】でくくってグループを作成した場合、同様のタグのついたキャラクター同士は個別の記述を行わなくてOKです――が、愛称等は相手が誰かわかるレベルにおさえていただけるとありがたいです)等
三行目以降:自由記入

(記入例)
【C】
Aさん(BNEXXXXXX) ※NPCの場合はIDは不要です。
溶かしたチョコで熱湯しーえむするんじゃない!

●参加NPC
・梅子・エインズワース
・揚羽 菫
NPCは全て、誰も触れなければ描写がない場合もあります。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
参加NPC
揚羽 菫 (nBNE000243)
 
参加NPC
梅子・エインズワース (nBNE000013)


■メイン参加者 18人■
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
アウトサイドダークナイト
テテロ ミーノ(BNE000011)
ジーニアスナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
アウトサイドナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ジーニアスプロアデプト
メリュジーヌ・シズウェル(BNE001185)
ハイジーニアスデュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
ギガントフレームクロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
ナイトバロン覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
フライダークマグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
アウトサイドスターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
ジーニアスインヤンマスター
九曜 計都(BNE003026)
ハイジーニアスプロアデプト
離宮院 三郎太(BNE003381)
ナイトバロン覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
メタルイヴスターサジタリー
御経塚 しのぎ(BNE004600)
フライエンジェスターサジタリー
エフィカ・新藤(nBNE000005)
フュリエスターサジタリー
リシェナ・ミスカルフォ(nBNE000256)


「手作りチョコは、落ち着いてレシピ通り作ればそんな難しい物じゃありません」
 無表情に大きく見開いた目(※通常運転)で犬束・うさぎはチョコ道を説く。
「難しくない、たってなあ……」
「それに、今回は一度で上手く作る必要もない。風斗さん達が味見役もしてくれます」
 失敗したばかりでのの字書いてる菫にうさぎが示した先には、椅子が3つ並んでいた。
「チョコを食べさせてもらえるって聞いたで……あれ? 何で椅子に縛るんでござる? この『毒見役忍者』って札は何でござる!?」
 とっ捕まったリシェナ・ミスカルフォの白く柔らかい絶対領域に食い込む縄がどうのこうのと語るのは全年齢だからやめておくとして。
「さあ、コーヒーメーカーには濃く淹れたコーヒーを一杯に用意しておいてくれ」
 こちらもやっぱり椅子に縛り付けられて墨痕鮮やかな『毒味役シュゴシン』と書かれた札を首から下げた新田・快が悲壮な決意を胸に不敵な笑みを浮かべる。
「毒味役と言ったが――別に、全部平らげてしまっても構わんのだろう?」
 カカオを抱いて溺死しろ。イー○・JOHN海で。
「まあ、あいつの料理の腕は大したもんだし、うまいものが食えるのなら断る理由もない。
 まさに『うまい話』ってやつだ。ハハッ」
 1時間以内に「……そう思っていた時期が、オレにもありました」と呟くことになる運命を、楠神 風斗はまだ知らない。ところで『毒味役ハーレム』風斗くん君うさぎさんの料理の腕とかいつ知っいややめとこう。
 とりあえず今のうちに、犠牲者(予定にしてほぼ確定)に黙祷。

「チョコ作りは慣れた物ですよっ! それではカカオ豆の焙煎から……え? 無い? 湯煎?」
 三角巾に手袋、そして割烹着のエフィカ・新藤、本格派志向過ぎてお手軽感が迷子。かつてチョコ千個を作り上げた猛者であり、その際にはカカオの実を砕いてココアバターから作った100%手作りチョコレートなるものすごい努力の方向音痴っぷり(褒め言葉)も披露している。
「湯煎して、型に入れる程度なら、ともかく……焙煎から、というのは興味深い」
 知っておけば、サバイバル、で役に立つかもしれないし、ね……とは星川・天乃の言。
「しかし、そもそもカカオ、をどこで手に入れれば、いいんだろう……。
 ……そう言えば、エフィカには、あげる人とか、いるの?」
「わ、私ですか? ええっと……その、天乃さんこそ、どうなんですか?」
「義理、ならともかく……いや、それも珍しいけどいない、かな」
 女子トークしながら材料を並べていき、気を取り直したエフィカは軌道修正しようとして、
「仕方無いので溶かした99%カカオのチョコとバターを使って……。
 って、バター電子レンジに入れちゃ駄目ですよっ!?」
「えっ」
 600ワット2分くらいで溶けるかなあ、とかやりかけてた菫。いきなり前途多難。

「湯煎からのガナッシュ位なら、菫にもできるんじゃないかと思った結果がこの前の惨事なのだわ」
 バンダナで髪を抑えた梅子が、どこか諦めた風情で割れチョコを刻んでいる。リズム良い音とは言えないものの、安定感のあるテンポで切っているあたり梅子は放っておいても基本問題なさげである。
「梅乃助! 溶かしたチョコで熱湯しーえむするんじゃない!」
「だからそれ誰!?」
「おっと梅子弄りはこれくらいにして揚羽さんの監視をしないとなっ」
 絶対押すなよ的空気を感じたらしくどーん、と梅子の背中を押したツァイン・ウォーレスが、驚いた拍子に包丁を振り回す梅子を回避しつつ今日の目的を思い出す。
「料理とかはそんな詳しい訳じゃないが殺人料理って大体余計な事しちゃうからだろ?」
 もしくは大事なことをサボるか、そもそもよくわかっていないかのパターンが多いです。
「エフィカのエプロン姿、と思ってたけど、割烹着というのもなかなかですな~ってちょっと待ったー!
 何を入れようとしてる何を!」
「えっ」
 急いで制止するツァイン。菫の手には、だいぶ前に塩チョコはやってたよなあ、と言いつつ入れようとしていた醤油と粉末出汁。


「ふふふ、俺様の方は……ちゃっかり! モル屋で売るチョコの試作品作りだったりする!」
 草臥 木蓮はハートに乗ったモルの型に手早くチョコを流し込んでいく。
「木蓮と一緒にチョコ作り……と見せかけて味見係っ」
 木蓮の持参していた完成試作品をひょいぱくしたテテロ ミーノが、両手で頬を押さえて目を輝かせる。
「このもるちょこ、おいひー!」
「既に作ったものもいくつか持ってきてあるんだぜ、ミーノもじゃんじゃん味見してな♪」
 へへ、と笑って鼻をこすった木蓮の、鼻の頭にちょっぴりチョコが。
「むむぅ……ミーノも作ってみよっ。でもみーんながチョコだとチョコだらけになっちゃうから……」
 考えこんで9本の尾をばふりとさせたミーノの顔を見て、木蓮はふと彼女の料理の腕が気になった。
「そういやミーノはどんなの作るんだ?」
「そだ!! ちょこまひん! ちょこまひんつくるの~!」
「おおっ、チョコマフィンか! 考えたなぁ……!」
 促された拍子に思いついたのか、手をポンと打ってミーノは料理の本をめくると材料を集め始める。
「俺様もお手伝いするぜ、美味いのいっぱい作ろうっ!」
 ふるいにかけたり卵を混ぜたり、溶かしたバターに混ぜたり混ぜたり混ぜたり混ぜたり。
 最終的にオーブンから取り出したマフィンに竹串をさしてそっと引き抜いて。
「ほふー! おもったよりうまくできたの~」
 中までちゃんとやけたチョコに、ミーノはご満悦。木蓮のモルチョコと交換して、食べあいっこ。
「んむんむ、良い甘さだぜ。バレンタインのお菓子はこうでなくっちゃな♪」
「にふふ~。おいしいね~」
 ことしはこれをみんなにくばったのっ><* ミーノがんばった! (ふんす)

(料理はするけど、お菓子を作った事がない僕はどうしていいかわからない……)
 材料を前にして、設楽 悠里が唸る。菫ならどっちも同じものだろと言い放ってしまいそうだが、実際のところ料理と菓子作りでは決定的に違うところがある。『分量』だ。
 料理なら、厳密に作れば確かに美味しいものができるだろう。しかし目分量で作ったものが味は落ちたとしても食べられない域に達することは(バツ技能でもない限り)そうそうない。しかし菓子の場合はそうもいかないのだ。スポンジが膨らまないなど、分量を間違えることが即失敗につながる物も少なくない。
「こんにちは。私でよければお手伝いするわよ?」
「じゃあお願いしてもいいかな?」
 見兼ねたか、声をかけたシュスタイナ・ショーゼットにいくらか情けない声で悠里は助けを求める。
「チョコづくりは水気厳禁。後は温度管理をちゃんとすれば問題ないわ。
 材料は沢山あるんですもの。何回か挑戦したら慣れると思うしね」
 てきぱきと計量や混ぜ方の指示を出すシュスタイナの指示に、悠里は従順な生徒のように従う。コツさえ判ってしまえば、悠里の適応は早かった。
 用意していた型に流し込み終えると、冷えるまで時間ができる。どれも綺麗に出来たと嬉しそうに一息ついた悠里の、先程までの真剣な様子にシュスタイナはふむ、と呟く。
「彼女さんに渡すのかしら?」
「うん。ちょっとぐらい失敗しても喜んではくれると思うけど、ちゃんとしたものを渡したいなって」
「こんなに真剣に作ったんですもの。きっと喜んで貰えるわ。
 素敵なバレンタインになればいいわね。応援してる」
 応援の言葉は確かな気持ちだが、その一方で心が泳ぐのは昔の記憶。
(いつかそういう人に出会えるよ……って夏に言われたっけ)
 季節は流れて今年も立春が過ぎたけれど。
(私の春はいつになるやら)
「これはもう固まったかな。
 今日お世話になった先生に――はい、シュスカちゃん。ハッピーバレンタイン」
 できたばかりの一つをにこやかに差し出す悠里に、シュスタイナは少し口元を緩める。
 まったく――自分には何が出来て、何を望まれているのだろう。

「チョコ造りに必要なものは何かわかるかな? はい、みっちー!」
「必要なもの? えっと、愛情とかそういうのってこと?」
「ちがーう。正解は料理の腕前です! 結局頼れるのは己の腕前だけだよ!」
「ってロマンがないね! しのちゃん」
 妙にテンションの高い御経塚 しのぎに今日は押され気味な御厨・夏栖斗。
「そう、バレンタインは女の子から男の子へ送るのがメインだからね!
 と言う事で作っていくよ! みっちーは適当に遊んでて!」
 ウィスキーボンボンをしこたま食べちゃったしのぎさん、どんどんチョコを削ってボールに入れて。
「あ、湯煎はもっと丁寧に……」
 お湯が入っちゃうと風味が落ちるのです。
「テンパリングしっかり!」
 冷えてきたと思っても湯煎の温度を無闇に上げると見た目と風味が(略)
 見てらんない! な気持ちで両手で顔を覆ってしまいそうになる、夏栖斗。だけど男の子としては。
(まあ、でも、僕のためにっていうのは正直、嬉しいな……あ、にやにやしてる、僕)
「みっちーほら、チョコがこんなところにあるよ!」
「なななななっ?! そ、いうのは! 気軽に! しちゃ! いけません」
 ちょっと呆けてる隙に唇にチョコを塗られてしまった夏栖斗の心臓、バクバク。
「いい? わかった?」
「ナイスセクシー! ――怒られた!」
 そうしているうちにどうにかこうにか溶けたのをしのぎは型に入れ、固まったら上からココアパウダーを。
「はい、えっとーなんかおしゃれっぽいの! どう? 美味しい!?」
「製造過程は怪しかったけど、おいしいよ。ありがと」
 ――夏栖斗の素直さは、美点、なのかもしれない。

「んんーすごい! いーい匂いだねぇ。 これはーお姉ちゃん! 頑張れる気がする!」
「ね、何作ってみたい?」
 おもいっきり深呼吸したメリュジーヌ・シズウェルに、喜多川・旭が材料を見回しながら問いかける。メリュジーヌは、ん? と少し首を傾げると、すぐにまた笑顔を見せる。
「簡単でもいい、美味しい、ふつーのでいいんだ。ふつーの」
「簡単なのだとガトーショコラやトリュフ、生チョコかなぁ。
 もっと簡単だと板チョコデコとかあるけど、せっかくの機会だもんね」
「じゃあねーじゃあねー、お姉ちゃんガトーショコラがいい!」
 旭の上げた名前から、チョコケーキを選ぶメリュジーヌ。ガトーショコラで検索かけると候補にすぐ「炊飯器」って出てくるのだが、それでも多くのレシピはメレンゲを必要とするらしい。
 チョコを細かく切る間に材料を用意しておこうと、旭は卵やバターなどを揃え始める。
 メリュジーヌが、はじめてを嬉しい気持ちでいっぱいにできるように。
「そいえば、メリュジーヌさんのお国ではバレンタインてどんな日なんだろ。
 チョコを贈る習慣はないんだよね?」
「んんー? お姉ちゃんの国はねー、男の人からあげるの。
 パパがママにとっても綺麗な花束をあげてたの見たことあるよ。お姉ちゃんはもらったことないけどね☆」
 バレンタインが伝わった際、生花業者がいち早く乗り込めたということらしく。近年は徐々にチョコや宝石もそこに割入り始めているらしいが、主流は赤い薔薇のよう。
「そっか、花束なんだぁ。メリュジーヌさんもいつか、すてきなひとに貰えるといーね」
 それまではわたしが独り占めー♪ と、旭がメリュジーヌに軽くハグをする。
「……でも、お姉ちゃん今が一番幸せ。だって、こんな素敵なお友達ができたんだもん。
 よし! 見ててね旭ちゃん! お姉ちゃんうんと美味しくって豪華で、綺麗なショコラ作るから!
 チョコ削り出しでお家作るぞー!」
「えへへ。
 わたしもお友達になれて、しあわせだよ……ってメリュジーヌさん、ふつーのガトーショコラはー!?」
 気合の入ったメリュジーヌが彫刻刀を構えてチョコに向き合ったのを、旭は慌てて止めに入った。

「単に溶かして冷やすだけじゃ、ちゃんと固まらないッスよ?
 テンパリングしないと、べたべたしたり粉吹いたりするッス」
 湯煎のチョコをヘラでかき混ぜる離宮院 三郎太に、九曜 計都が自作を型に移し入れつつ説明する。
「なるほど、ボクは料理はするのですがお菓子作りは殆どしたことが無くて……っ」
「フッ、長いこと女子やってると、こういう技術は身につくッス……」
「友チョコでもきっと手作りのチョコならもらった方はすっごく嬉しいと思いますっ!」
 いままでは友チョコしか作ったことないけどな! と血の涙流しそうな計都にフォローを入れる三郎太。彼を見て、不意に計都に悪戯心がわいた。
 流し入れた残りのチョコを味見がてら、自分の唇にチョコを少し残して。
「三郎太くんも味見するッスか? キ・ス・チョコ♪」
「え? え? えぇーーー!?」
 赤面して声を上げた三郎太に、計都は思わず頬がゆるむ。
「あー、もー、照れちゃって三郎太くんかわいいっ! おねーさん、ゾクゾクしちゃうッスよ、ヒャッハー!!」
「あ、じょ、冗談ですか……びっくりした……も、もうっ!!」
 本当に冗談なのかどうかはさておいて、二人のチョコはつつがなく完成を迎えることができた。
 計都は綺麗にラッピングしたハート型のチョコを、三郎太に渡す。
「これが初めてよ。本命チョコを作ったのはね♪」
「えとえと……ボクからもこれっ……一生懸命作りましたっ!
 あ、あとこれからは計都さんって名前で呼んでもいい……ですか?」
 貰ったチョコが嬉しくてしょうがないといった様子の三郎太が、彼自作のチョコを渡しながら差し出した、少しの勇気。
「三郎太くんもありがとう。……計都『ちゃん』でいいのよ?」
 その全部を受け取って、計都は微笑む。

 ところで、割と今回黙々と作っている梅子だが。
 今日は回りをうろちょろ――否、ウロチョコする存在がいた。
「やあ、梅チョコ。
 チョコ作りはうまくいってるかい?」
 結城 "Dragon" 竜一である。さりげないアピール、らしい。
「チョコっと気になったものでね。
 いや! 大丈夫! 俺の事は気にせず、チョコ作りに励んでくれ!」
「……そうさせてもらうのだわ」
「チョー高級な感じにしなくても梅子のチョコならみんなほしいと思うよ。
 あ? 梅子、肩凝ってないかい? ちょーコってたりしないかい? 肩揉む?」
「…………欲しいなら欲しいって最初っから言いなさい!」
 てい! とばかり投げつけられたのは、梅子の自分用トリュフチョコいっこ。


「おいまて、それは食い物じゃない、投入するな!」
「ち、違いますハンドミキサーじゃなくホイッパーを――えええハンドミキサースイッチ入れっ放しで手から離しちゃ駄目ぇーっ!?」
 ところで菫サイド。幾度か悲鳴が(主に風斗とエフィカから)上がったものの。
「……ウルトラじょうずにやけましたーって、いや焼くんじゃないよ!!」
 絶望的な悲鳴を上げるハーレムさんは次の惨劇を予期して顔色が青くなっている。快は悟ってる。
「ふぅ、危ない場面は何度かあったが何とか変なものは入れずにすんだな……これなら不味かったとしても惨事にはならないはずだ……どれ」
 額の汗を拭いながらひとつ摘んだツァインが、次の瞬間「ぱるぷんてッ!?」と断末魔を上げた。
 リシェナはにげられない。
 口に含むとただのチョコレートのはずなのに、弾けるような衝撃が襲い掛かってくる。
 脳髄から背骨を通じて真っ直ぐに貫くこの感覚。
 もし体の自由が利けば、あまりの衝撃に倒れていただろう。そうこれは――(※この3行コピペ)
「まさにエリューションの攻撃並の味……! リベリスタはどこでござるか!」
 ボトムチャンネルに来た衝撃は忘れられない。未知の感覚に震え、興奮する。
 このチョコを口にしたとき、同じような衝撃を受けた。未知の体験、それは――(※この2行コピペ)
「これが死ぬということ……まさに殺人的料理……がく」
 お願い、死なないでリシェナ! 次回、『リシェナ死す』、ニンジャスタンバイ!
「これを食えと……?」
 目の前の犠牲に震えながら、風斗はまだ状況を確認しようとする。決死隊として真っ先にチョコを口に含んだ快は、口の端から赤い液体(※タバスコと苺ジャム)を流し、真っ白に燃え尽きたような表情で轟沈済みだったりする。
「ああ、わかってる、わかってる! 味見役として来た以上、責任はこなす!
 幸い、うさぎの作ったほうはまともだ……交互に食えば……っ! いただきます!!」


 ――しばらくお待ち下さい――
 (清涼感溢れるお花畑の映像が流れるモニターのイメージ)


「……長い、長い戦でした。
 何故か冷やしても溶解したままだったり謎のガラス片が混入してたりお口の中で弾けたり濃厚なリコリス味だったり見た目も味も味噌田楽だったり取り敢えず一口で昏倒するほど不味かったり不味かったり不味かったり……色々ありました。
 ですが。
 ようやくその全てが終わりを告げたのです。
 そう……風斗さん初め食べる人が全員ピクリとも動かなくなりましたので」
「良い子は決して真似しちゃ駄目ですっ☆」
 無表情に安全圏決めたうさぎが屍たちを回収し医務室に運び、徒労感でぐったりしてるエフィカの目にはハイライトがなく。
 後にはなんでだろうなあと首をひねる菫が残されていた。

 結論:食べ物で遊んではいけません。

<了>

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
全員生還……! (ざわ……ざわ……)
ほ、ほら、真ん中辺り、真ん中あたりはちゃんとバレンタインだから!