●バレンタインとその弊害 聖バレンタインデー。 日本においては主に女性から男性へ、想いを伝える日とされる。 とはいえ昨今ではその基準も自由に幅を見せ、友情や義理、中には上司や部下への挨拶として起用されることも多いイベントだ。 そんな中、とあるスイーツビュッフェの店内。 「チョコは良いから餅を食え!」 どん、とテーブルに皿を乗っけてのたまったのは、『直情型好奇心』伊柄木・リオ・五月女(nBNE000273)だ。 「餅だけじゃないぞ、練り物も存分に食っていけ! ほらほら、ハート型五目揚げにハート模様の蒲鉾!」 幾らでもあるぞ、と言いながらテーブルに並べられたのは、正月の余り物もあからさまな焼いただけの白い切り餅や丸餅に始まり、豆餅や蓬餅、大福に串に刺した焼き団子。 更には彼女の言う通りのハート型に成型されたり告白文がプリントされた五目揚げやはんぺん、ハート模様の紅白染めが愛らしい蒲鉾など、練り物も多彩に及んでいる。 但しそれを勧めている方は、何故か若干涙目だ。 「実にバレンタインっぽい色形だろう!? 味も美味いぞ、一級品だから!」 どう見てもやけくその勢いでハートのはんぺんに齧り付き、時々えづきそうになりながらそれでも口の中に押し込んでいく。 「うう、いや、あのな、そのー……だな」 やがてその内に意地も何も耐え切れなくなったのか、言い淀んで視線を泳がせた五月女が深々と溜息を吐いた。 「……昨今のバレンタインブームに便乗して、行き付けの練り物屋がこの手の『甘くないバレンタイン商品』を大量入荷したらしいんだが、案の定というか在庫が出るに出まくったらしくてな……」 無計画に便乗なんかするからこんなことになるんだ、と愚痴を零すように言いながら、齧り掛けのはんぺんを軽く振る。 「このままだと大赤字必死、のみならずそれほど日持ちするものじゃないから一斉処分になると泣き付かれたんだ。仕方ないから全部引き取った訳なんだが、何しろ想像以上の量でなぁ」 餅はただの食い残しだが、と付け足しながら、フォーチュナがどうにかもう一口、はんぺんに齧り付く。 「食べ物を無駄にするのはアタシの性に合わないし、かと言って流石にこの量はアタシ一人じゃ……えっぷ」 此処に至るまでどれだけ食べたのか、横を向いてえづきかけた五月女が軽く咳払いをして向き直る。 「一応ほら、なんだ! 今日はこの店貸し切ってるし、普通のスイーツやらチョコレートフォンデュなんかも食べ放題だから!」 それで手を打ってくれ、と両手を合わせた矢先、ふと思い出したように顔を上げた。 「あ、そうそう。店に用意してもらったスイーツ食い尽した場合はお代わりはないから、欲しければ自分達で作ってくれたまえ」 調理場使用の許可は取ったから、と。 「折角だ、乙女諸姉は専門の調理場を使って、意中の相手に手作りスイーツをプレゼント、なんていうのも粋じゃあないかい? 男性諸君にしても、乙女達の嬉し恥ずかしお菓子作りの光景が目の当たりに出来るチャンスだぞー」 いい笑顔でそう告げて、白衣のフォーチュナははんぺんの最後のひとかけを飲み込んだのだった。――直後、またえづいたが。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:猫弥七 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年03月07日(金)23:26 |
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■メイン参加者 28人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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