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<バレンタイン2014>甘いばかりが恋の日じゃない

●バレンタインとその弊害
 聖バレンタインデー。
 日本においては主に女性から男性へ、想いを伝える日とされる。
 とはいえ昨今ではその基準も自由に幅を見せ、友情や義理、中には上司や部下への挨拶として起用されることも多いイベントだ。
 そんな中、とあるスイーツビュッフェの店内。

「チョコは良いから餅を食え!」
 どん、とテーブルに皿を乗っけてのたまったのは、『直情型好奇心』伊柄木・リオ・五月女(nBNE000273)だ。
「餅だけじゃないぞ、練り物も存分に食っていけ! ほらほら、ハート型五目揚げにハート模様の蒲鉾!」
 幾らでもあるぞ、と言いながらテーブルに並べられたのは、正月の余り物もあからさまな焼いただけの白い切り餅や丸餅に始まり、豆餅や蓬餅、大福に串に刺した焼き団子。
 更には彼女の言う通りのハート型に成型されたり告白文がプリントされた五目揚げやはんぺん、ハート模様の紅白染めが愛らしい蒲鉾など、練り物も多彩に及んでいる。
 但しそれを勧めている方は、何故か若干涙目だ。
「実にバレンタインっぽい色形だろう!? 味も美味いぞ、一級品だから!」
 どう見てもやけくその勢いでハートのはんぺんに齧り付き、時々えづきそうになりながらそれでも口の中に押し込んでいく。
「うう、いや、あのな、そのー……だな」
 やがてその内に意地も何も耐え切れなくなったのか、言い淀んで視線を泳がせた五月女が深々と溜息を吐いた。
「……昨今のバレンタインブームに便乗して、行き付けの練り物屋がこの手の『甘くないバレンタイン商品』を大量入荷したらしいんだが、案の定というか在庫が出るに出まくったらしくてな……」
 無計画に便乗なんかするからこんなことになるんだ、と愚痴を零すように言いながら、齧り掛けのはんぺんを軽く振る。
「このままだと大赤字必死、のみならずそれほど日持ちするものじゃないから一斉処分になると泣き付かれたんだ。仕方ないから全部引き取った訳なんだが、何しろ想像以上の量でなぁ」
 餅はただの食い残しだが、と付け足しながら、フォーチュナがどうにかもう一口、はんぺんに齧り付く。
「食べ物を無駄にするのはアタシの性に合わないし、かと言って流石にこの量はアタシ一人じゃ……えっぷ」
 此処に至るまでどれだけ食べたのか、横を向いてえづきかけた五月女が軽く咳払いをして向き直る。
「一応ほら、なんだ! 今日はこの店貸し切ってるし、普通のスイーツやらチョコレートフォンデュなんかも食べ放題だから!」
 それで手を打ってくれ、と両手を合わせた矢先、ふと思い出したように顔を上げた。
「あ、そうそう。店に用意してもらったスイーツ食い尽した場合はお代わりはないから、欲しければ自分達で作ってくれたまえ」
 調理場使用の許可は取ったから、と。
「折角だ、乙女諸姉は専門の調理場を使って、意中の相手に手作りスイーツをプレゼント、なんていうのも粋じゃあないかい? 男性諸君にしても、乙女達の嬉し恥ずかしお菓子作りの光景が目の当たりに出来るチャンスだぞー」
 いい笑顔でそう告げて、白衣のフォーチュナははんぺんの最後のひとかけを飲み込んだのだった。――直後、またえづいたが。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:猫弥七  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年03月07日(金)23:26
 御機嫌よう、猫弥七です。
 最近のバレンタイン商戦は独創的ですね!
 そんな訳で今回も、どうぞよろしくお願い致します!


■目的
 和風バレンタイン商品改め、バレンタイン仕様の練り物(+餅)を食べて食べて食べ尽くすこと。
 店内に他スイーツや、菓子作りの材料等の持ち込みは自由です。


■選択肢
【1】練り物と餅の消費に協力する
・食べて食べて食べ続ける場合はこちら。勿論スイーツも食べ放題です。

【2】調理場で菓子作り
・普段はパティシエの利用する専門の調理場です。器具や置かれている材料は自由に使用出来ます。

【3】寛いだり遊んだり、自由行動
・飲み食いしたり菓子作り以外の行動を取りたい場合は此方。ご自由にどうぞ。


■場所
 スイーツビュッフェ専門店の店内。貸し切られているので神秘を気にする必要はありません。
 2人~6人ほどまで掛けられるテーブルセットが並び、店内左右と奥に配置されたテーブルには様々なスイーツと、五月女の持ち込んだ餅や練り物が置かれています。
 店内にはケーキに始まりプリンやババロア、フルーツ等の多数のスイーツ、バレンタイン期間限定のチョコレートスイーツ、フォンデュ用のチョコレートマウンテン、好みで組み合わせて作れるパフェや手焼き出来るクレープのコーナーもあります。
 但しそこに餅や練り物の香りが存分に混じっているので、店内には独特の匂いが漂っています。
 また、フリードリンクですがアルコールはありません。(酒を使ったスイーツはあります)

 イートインスペースと調理場の間は大きな硝子板で遮られているだけなので、双方から互いの部屋の様子が伺えます。
 屋上と店先にもパラソルとテーブルセットは出されているものの、膝かけしか防寒具が用意されていないのでとても寒いです。
 夜になると店回りと屋上にはバレンタイン風のライトアップが施されるので、そこそこの雰囲気があります。


■その他
・五月女の他、過去の猫弥七依頼に登場したNPCの呼び出しも可能です。絡みたいNPCの名前をプレイング内に記載して下さい。
・他の参加者様との絡みがNGの場合は、プレイング内に【絡み禁止】【絡みNG】等のタグをお願いします。


■備考
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・公序良俗に反した行為や趣旨に著しく反する行為等、及び白紙プレイングは描写出来ませんので、ご了承願います。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・誰かと一緒に参加する場合はお相手様のフルネームを、グループ参加の場合はグループ名を【】で括り、プレイングに記載して下さい。
 尚、NPCの場合はタグやフルネームは不要、名前や通称だけで結構です。
参加NPC
伊柄木・リオ・五月女 (nBNE000273)
 


■メイン参加者 28人■
アークエンジェインヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
アウトサイドダークナイト
テテロ ミーノ(BNE000011)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ハーフムーンソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
フライダークホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ハイジーニアスソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
アウトサイドソードミラージュ
リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
ハイジーニアスクロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
ギガントフレームデュランダル
富永・喜平(BNE000939)
ハーフムーンナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
アークエンジェインヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
アウトサイドナイトクリーク
リル・リトル・リトル(BNE001146)
ハイジーニアスデュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
フライダークマグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
アークエンジェプロアデプト
銀咲 嶺(BNE002104)
ジーニアスデュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ジーニアスホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)
ジーニアスプロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
アークエンジェダークナイト
フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)
ビーストハーフプロアデプト
柊暮・日鍼(BNE004000)
ナイトバロン覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
ナイトバロンクリミナルスタア
熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)
ジーニアスソードミラージュ
御陵 柚架(BNE004857)
ジーニアス覇界闘士
李 美楼(nBNE000011)
メタルフレーム覇界闘士
桜庭 蒐(nBNE000252)
フュリエスターサジタリー
リシェナ・ミスカルフォ(nBNE000256)


 洋菓子店の厨房を借りての和菓子作りというのも乙なものだ。
「柚架そこまで器用じゃないですよ……?」
 小さく呟いた『夢追いの刃』御陵 柚架(BNE004857)の視線の向かう先は、『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗 (BNE000004)の手元だ。
「ねりきりの和菓子って繊細にみえるけど、割と作るのはむつかしくないんだよ。どういうの好き?」
「どんなの……ですかー。あんまりウカばないのでお任せしますっ」
 柚架の言葉に頷いた夏栖斗がすぐに形を作り始める。
「この季節だから、桃と鶯なんかいいんじゃないかな」
「……ってコレ鶯じゃなくてなんか鳥みたいなサムシングですよっ!?」
 求肥に抹茶や食紅を混ぜて色付けをしていく夏栖斗の手際を見よう見まねに挑みみながら、柚架が声を裏返した。
「粘土細工みたいで楽しいだろ?」
 今日の記念にと練り切りの写真を撮る夏栖斗の横で。
「ま、負けました……御厨さんのお菓子、ほんとスゴいんですよー。……いつか、いつか超えるのデス……!」
 苦労の跡を見せながら柚架が溜息を吐くと、そっと決意を固めたのだった。


「もらったり上げたりはしても、こういうのはちょっと新鮮な感じッス」
 厨房にも漂う練り物の匂いを嗅いでみながら、『小さな侵食者』リル・リトル・リトル(BNE001146)が笑う。
「一緒に作って一緒に食べるという事を今日は致しましょう」
 表情を綻ばせた『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)が、生地を混ぜ合わせながら微笑む。
 砕いたチョコレートをバターと一緒に湯煎にかけ、ヘラで混ぜるリルの頬へと凛子が手を伸ばした。
「リルさん、チョコがホッペに付いていますよ」
「あ、さっき砕いたの飛んだんスね」
 凛子がリルの頬に触れ、溶けたチョコレートを指先に拭い取る。
 しっかり溶けたチョコレートを生地と共にココット型に流し入れ、オーブンに入れると、後は火加減任せだ。
 焼き上がるのを待ちつつココアの用意をしながら、凛子がリルを振り返る。
「リキュールを少し入れてみましょうか……バターは入れますか?」
「入れてみたいッスね。せっかくッスからチャレンジ!」
 カップの中に一欠片、落とされたバターがココアの熱に蕩け、黄金色の幕を薄く張った。
 やがて焼き上がったココット型に収まるフォンダンショコラと、淹れ立てのココアから暖かな湯気が漂う。
 二人、共に。恋とチョコレートの日は甘い香りに満たされて、穏やかに過ぎていく。


 チョコスポンジに生クリームを塗り広げ、その上にバナナを乗せて巻く。
「ふぁいやー!」
 『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)がスライスしてブラウンシュガーを塗したバナナをバーナーで焦がす。それをロールケーキの上に飾れば完成だ。
「ロールケーキカ。ちょっとチョコレートで塗装すればブッシュドノエル風に出来そうダナ」
「えへへ。わぁ……りゅみえーるさんのおいしそ!」
 『不可視の黒九尾』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)を振り返った旭が目を輝かせる。
 普通のスポンジ生地とチョコスポンジの間にバナナのカスタードクリームとスライスした苺を挟み、生クリームで覆った上からキャラメルを塗り付けて炙ったものだ。
「旭の髪色っぽいのができたナ」
「はい、りゅみえーるさん。あーん」
 満足げなリュミエールの口元に、旭がロールケーキを差し出す。
「確かに甘いナ」
 咀嚼したケーキに感想を零したリュミエールが自身のケーキにナイフを入れると、フォークに掬って旭に向けた。
「えへへ、あーんっ」
 はにかみながらも差し出されたケーキをゆっくりと咀嚼して。
「ふわ、しあわせ……♪」
 蕩けたように表情を綻ばせ、旭はうっとりと呟いたのだった。


 昆布とトビウオの出汁に、餅巾着や食べ易く切られた練り物が次々投下されていく。
「まあハート型は良いとしても、色がよろしくないと思う」
 躊躇なく叩き切りながら意見を零したのは『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎さん(BNE000465)だ。
「チョコと違って練り物だと、勉強の片手間に食べるとかできないし。後、なんか可愛くない」
「それにしても、ハートの練り物ですか……店頭の様子を想像するとシュールですね」
 練り物屋、という時点で、『天の魔女』銀咲 嶺(BNE002104)の脳裏に浮かぶのは純和風の佇まいだ。
 元々殆どが練り物の為にそれほど加熱する必要のないおでんをテーブルへと運びながら嶺が苦笑する。
「そういえば、練り物は美容食だと雑誌で書いてありましたっけねぇ」
 持参した柚子胡椒を、出汁を取った小皿に溶かしながら嶺がふと漏らした。
「義衛郎さんも使ってみますか? 柚子胡椒」
 柚子胡椒を差し出しながら、はんぺんやイワシのつみれ、エビ団子といった好物をたっぷりと器に取っていく。
「ふわふわのはんぺんに、出汁でゆるく溶いた柚子胡椒を付けるのがたまらないのです」
「辛子しか付けた事がなかったから、どんな味になるか興味あるなあ」
 遠慮なく初体験の調味料を受け取りながら。
 洋菓子屋の一角で、土鍋から出汁と練り物の磯の香が豊かに香っていた。



 抹茶と桃の形の練り切り、器に盛られたおでんと日本酒が並ぶ中。
「ホントデートらしく同じもの食べたほうがいいんだろうけど、ね?」
 からかうように声をかけたのは、『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)だ。
「デートっ?! ……あ、いや、うん、そうなのだけど」
「え、ええい揉むな!」
 『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)が頬を染めながら膝の上の物体を揉み込むと、テディベアもどきが大きく手を振り回した。
「おっと、すまない。快はこの子と会うのは初めてだったな」
 甘味で釣れたアザーバイドの抗議に、雷音が改めて抱き直す。
「彼はくま頭領。くまくま盗賊団のトップだ。そして、こちらが、アークトップリベリスタの誉高い守護神こと快だぞ」
「ほー。よろしくな兄ちゃん」
 雷音の膝でもふもふされながら、テディベアもどきが片手を上げた。
「ああ、こちらが例のくまさん。ようこそ、アークへ」
 穏やかに微笑む快から視線を外した雷音が、くま頭領の耳元に囁く。
「あと……ボクが気になる人、だ。内緒だ、ぞ」
「どうかしたのかい?」
 首を傾げた快に、雷音が慌てて首を横に振った。
「なんでもないのだぞ、この西王母なかなかに美味しい。うちの喫茶店でも和菓子を考えようかなとおもうのだ」
 練り切りを示し、口に運びながら微笑む。
「西母王は初めて食べるかも。これが陰ト陽のメニューに増えるなら、俺は歓迎だな」
「……ははーん」
 二人の顔を見比べていたくま頭領が、不意ににやりと笑った。
「恋の季せ――もがっ」
 言いかけた口を塞ぐように、雷音に練り切りを突っ込まれたくま頭領がぱちくりと瞬いて。
 妙に悟った顔で肩を竦めたのだった。


 店の一角。
「ぶどーかんゆうしょうきねんでふーとのおごりっ! ふぉふぉふぉ、たべほーだいやぶりのミーノけんざんっ!」
 高らかに名乗りを上げた『わんだふるさぽーたー!』テテロ ミーノ(BNE000011)が練り物へと手を伸ばす。
「いっただっきまーす!」
「……あーあーあー、あんまりがっつきすぎるな。お前もう18なんだろ?」
 呆れた口振りは『折れぬ剣』楠神 風斗(BNE001434)のものだ。
「もう少し女の子らしい動きはできんのか」
 突っ込みながら此方もちびちびと練り物を食べていく。
 経緯としては先日のトーナメント優勝記念や世話になった礼を兼ねた上、この場所ならミーノの旺盛な食欲を満足させられるだろうと見込んでのものだ。
「それにここなら、オレの財布も大きなダメージを受けずに済むし――むぐ、」
 不意に口の中に突っ込まれた練り物に、風斗が思わず目を白黒させる。苦手なものは風斗の口に捻じ込む作戦だ。
「お、押し込むなって!」
「だいじぶ! ふーとならたぶんだいじぶっ!」
 根拠のない自信で風斗の口に次々に押し込みながら、ミーノ本人は好きなものだけを摘んでいく。
 しっかりと風斗の口を塞いでおいて、ちゃっかりと別料金のメニューを注文し。
「ほふ~。だいまんぞく!」
 思うままに堪能しながら、次も美味しいものを奢ってもらえる様に頑張ろうと、心に誓ったミーノでした。


「わーいっ、伊吹君の手作りお菓子にありつけるんやね♪」
 『無銘』熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)がプレートに生地を塗り広げると、『かたなしうさぎ』柊暮・日鍼(BNE004000)が声を弾ませた。
「こういうのなら任せろ、何でも好きな物を載せるといい。日鍼は何が好きなのだ?」
「わいの好きなもの?」
 クレープに乗せる具材を見繕いながら伊吹が尋ねた。
「甘いんはどれも好きなんやけれど……クレープやったらはちみつバターかな!」
 言いながら完成させた一枚目のクレープを頬張る日鍼だったが、伊吹がクレープに練り物を乗せているのを見て目を瞠った。
「伊吹君の舌は進化しとるね……!?」
「む、甘くないものも案外合うのだぞ」
 練り物入りのクレープを咀嚼すると、伊吹が次なる生地に黄粉餅を包む。
「あっ、でもお餅はのせたら美味しそうかも!」
「腹持ちの良い餅クレープというのを考えてみた。うむ、いけるぞ」
 早速口に運びながら満足げに頷く。
「あ、そうそうっ、じゃーん! 本命チョコ持ってきてん、どうぞー♪」
「ぐ……!」
 差し出されたハート型に、伊吹が喉を詰まらせた。
「ひ、日鍼よ、本命チョコとは好きな異性に贈るものでな……」
 慌てて呼吸を落ち着けながら、ハート型と日鍼に視線を往復させる。
「ここは大人として日鍼に健全な異性交遊というものを教育しなければ」
「……えッ!? なんでこのタイミングで保健体育の授業なん伊吹君っ!」
 そそくさと用意し始めた伊吹だったが、日鍼の慌てる様子に目許を和ませた。
「だが気持ちは純粋に嬉しいぞ。ありがとう」
「あっ、でも一応受け取ってくれるんや!?」
 日鍼の尻尾がぴんと跳ね、やがてふわりと揺らいだのだった。


「甘くないのは着眼点はいいと俺個人は思う」
 そう口にしたのは『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)だ。
「バレンタインが甘いばかりじゃない人もいるんですよ! な、壱也!」
「な! じゃないよ!!」
 不満げに言い返すのは『腐敗の王』羽柴 壱也(BNE002639)だ。
「さあ、どうぞ、お嬢さん」
「え、何、エスコートしてくれるの?」
 訴えを聞き流した竜一が椅子を引くと、壱也が素直に腰を下ろした。
「さっすが彼女持ち! 今度燕尾服とか着てよ!」
 ねだる壱也の前へと、竜一が土鍋を運んでくる。
「オープン!」
「わ、おでんだ! わたしおでん大好き!」
「練り物といえばオデンだろう。冬だし」
 蓋を開けた鍋を目にして声を弾ませる壱也に竜一が胸を張る。
「しっかり味しみてるしおいしいいっ!」
 すぐに箸を伸ばした壱也が頬張る端から表情を和ませた。
「いい出汁でてるねー!」
「出汁は、ちゃんと昆布と鰹節でとったよ」
 出汁の成否が、オデンの成否を決めるといってもいい。それが竜一の持論だ。
「さあ、たーんとお食べ。あーんする?」
「あ、あーん!? し、しないよ、はずかしいし!」
 にやにやと言われた壱也が思わず顔を赤らめて言い返す。
「むしろわたしばっか食べて申し訳ないからしてあげようか?」
 熱々ねじ込んであげるよ、と言いながら竹輪を持ち上げながらも、すぐにまた相好を崩した。
「ま、たくさんつくってくれてるし一緒にたべよ!」
 甘い香りも満ちる店内に、おでんの香りが溶け合っていた。


「お餅も練りものも嫌いじゃないけど、バレンタインとは……合わないんじゃ……」
 菓子と餅と練り物の入り混じる光景に、『淡雪』アリステア・ショーゼット(BNE000313)の声が徐々に小さくなる。
「なんかさ、いっぱい食べていいんだってさ。つーわけで沢山食べれー」
「そうだね、美味しく頂きま……むぐ!」
 『黒き風車と共に在りし告死天使』フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)に返し終わるより早く餅を口の中に押し込まれて、アリステアが目を白黒させた。
「うーん、悪くないのにねぇ……なんで売れ残ったんだろうね」
「わるふふぁないへれふぉ、やっふぁり、ちょふぉのふぉうが……」
 磯の香の揚げ物を食べながら零すフランシスカに、アリステアが不明瞭な響きで苦笑した。
「……所でさ、なんでそんなに最近になって懐くようになったのさ?」
「ほぇ? 理由?」
 勧めようと練り物を差し出す手を止めて、アリステアが首を傾げる。
「私が落ち込んでる時とか、さり気なーく傍にいてくれるじゃない? それがとっても嬉しいから」
「は?」
「だから、つい傍に行っちゃうんだよねー」
 相好を崩し微笑むアリステアに、フランシスカが溜息を吐いた。
「……だめ?」
「それ、普通なら恋人の役目じゃない? ま、別に嫌じゃないからいいけど」
 様子を窺うように顔を覗き込む様子に苦笑すると素直というには少しそっけない感想を零しながらも、フランシスカはアリステアの口に、取ってきたケーキを押し込んだのだった。


「この時期甘いもの飽和気味だし、たまには練り物イイかも!」
「バレンタインに練り物とは新しいが、折角だから色んな食べ方試してみようか?」
 『ビタースイート ビースト』五十嵐 真独楽(BNE000967)に、練り物を七輪の上で炙りながら『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)が声を掛ける。
「うん! 熱々でおいしそぉ♪」
「マヨネーズに醤油に七味に、柚子胡椒も良いかな」
 それぞれに好きな調味料を混ぜ合わせながら、ユーヌが真独楽を見る。
「醤油マヨネーズとか好きなんだ。……真独楽はお勧めの食べ方あるか?」
 ユーヌが練り物に醤油マヨネーズを付けて咀嚼しながら尋ねる。
「まこのオススメはねぇ……やっぱマヨネーズに調味料プラスすると、なんでもイケるよねっ!」
 次々と食の実験を進める一方、ユーヌが馴染みのない食材を取り上げた。
「これはちくわぶか……馴染みのない食べ物だけれど、真独楽は食べ方判るか?」
「ちくわぶ……まこも食べたコトないやぁ。あ、でも地方によっては、お汁粉に入れるコトもあるみたい!」
「ふむ、チョコフォンデュにしたら美味しいか、試してみるか」
 二人して顔を見合わせると、ちくわぶをフォンデュ用のチョコレートに浸す。
「……うーん」
「……何とも言い難いな、これは」
 複雑な表情になったユーヌの言葉に、真独楽も小さく苦笑を浮かべた。
「スキな人はスキなのかもだけど……これなら普通に食べた方がまこはイイかなっ!」
 早々に次の実験に挑みながら、賑やかな食べ比べはまだまだ続くのだった。


 賑やかに食を楽しむ面々もいれば、穏やかに時を楽しむ面々もいる。
「さ、どうぞこちらへ。シュスタイナお嬢様」
「……ん?」
 恭しさに戸惑いの目を向けた『揺蕩う想い』シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)が、『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)の悪戯めいた表情に子供扱いのからかい方だと察するに時間はかからなかった。
「……だとしたら、ちょっとだけつまんない」
 小さな呟きは、すぐに賑わいに掻き消される。
「今日は宜しくお願いするわね」
 此処でむくれてしまうと子供であることを認める気がして、シュスタイナが姿勢を正してテーブルに着く。
 けれど目の前に差し出された一皿に、すぐに瞳が輝いた。
「どれも美味しそう!」
 声を弾ませてから慌てて緩んだ頬を押さえ、ちらりと鷲祐を見る。
 目撃していた筈の鷲祐はしかし、からかいの言葉は口にせず微笑んだ。
「……ふふ。ごめんなシュスカ。さ、食べよう」
 淑女然とした態度を取り繕ったシュスタイナが改めてテーブルを眺めると、彼女の為に可愛らしく選び盛りつけたスイーツに表情が和らぐ。
「……どれも美味しそうね」
 改めて言い直しながらも、綻ぶ表情を隠さずにシュスタイナがカトラリーを取り上げた。
「淑女も甘いものには弱いのよ」
 仄かに微笑んでケーキを掬い、口に運ぶと益々表情を綻ばせる。
「――表情の一つ一つが可愛らしいのは、この年頃のレディの特権だな」
 鷲祐の感嘆は、『淑女』の前にそっと中空へと溶けて消えた。


「あたし、コレ食うの初めてなんだけど……」
 『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)が興味津々に餅を眺める。
「喜平は食べ慣れてんだろ? あたしがちゃんと食えるように、しっかり指導するように」
「勿論だよ」
 『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)は笑顔で頷きながら、手始めに砂糖醤油や黄粉を用意して、プレインフェザーの前に差し出した。
「醤油の味は結構好きだけど、砂糖混ぜてもイケるんだな」
 砂糖醤油の小皿を味見したプレインフェザーが、早速餅を浸し口に運ぶ。
「あ。美味しい。ちゃんと米っぽい味すんだな」
「どっちもお米から出来てるからね」
 雑煮のような汁物を差し出しながら喜平が頷いた。
「きな粉に海苔に……バレンタインらしく、チョコ掛けたりしてみる?」
「矢張りフェザーは何をしてても絵になるねぇ……一生こうしてたい」
 次々と挑戦し始めたプレインフェザーを見詰めながら、喜平が独り言を零す。
「……!」
 けれど新たな味付けを試みていたプレインフェザーが、不意に喉を詰まらせた。
 茶を望むジェスチャーをする彼女の背中をすかさず叩いて茶を渡す。
「た、助かった……」
「安全に美味しく、餅フリークに油断は許されないのだよ」
 何とか飲み下した餅に安堵するプレインフェザーに、喜平は穏やかに微笑んだのだった。


「まあ、食べ物を粗末にするのはバチが当たるしな」
「食べ物なら、この李美楼にお任せヨ! 食って食って食い尽くしてやるネ!」
 『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)が呟く傍ら、『迂闊な特攻拳士』李 美楼(nBNE000011)が元気良く練り物や餅を取っていく。
「男は黙って食う! ぞ!」
 意気込み皿に取りながら、『槿花』桜庭 蒐(nBNE000252)が『直情型好奇心』伊柄木・リオ・五月女 (nBNE000273)を振り返った。
「ってなわけで五月女さんはコンニチハ! 餅の消費、一緒に頑張ろうな!」
「あぁ、よろしく頼む」
 声をかけられたフォーチュナは、身体を起こす気力もないと齧り掛けの竹輪を振る。
「五月女殿でも食べきれない量……大変でござるなぁ。しかし、不可能を可能にするのがクノイチでござる!」
 煎餅を齧りながら零した『クノイチフュリエ』リシェナ・ミスカルフォ(nBNE000256)が、テーブルに調味料と茶の入った魔法瓶を載せた。
「料理の基本はさしすせそ! 砂糖、塩、酢、醤油、そろそろ本気出す!」
「な、何か違うがその意気や良し!」
 突っ込み損ねたフォーチュナが適当な声をかける。
「チョコを餅に掛けるとかそういうのもまずいかな」
「美味しいアルヨ?」
 躊躇う蒐の横で、美楼がチョコを絡めた餅をパフェやクレープに乗せて次々に口に運ぶ。
「てか、五月女さん、よく食えるな……」
「努力のなせる技だ!」
 胸を張って言い返す五月女だったが、若干涙目になっていた。
「雑煮にするのも悪くないな。……新しい餅が焼けたぞ」
 そんな光景を余所に義弘が餅を網から下ろし、一緒に炙った練り物と共にテーブルに移す。
「ほう、気が利くな。家族サービス中の親……」
「親父臭いと言うんじゃない。兄貴分と言ってくれ」
「そ、そこまでは言ってないぞ!?」
 言葉を途中で攫われた五月女が、焦った顔で五目揚げを頬張る。
 一方調味料を頼りに食べ続けていたリシェナが、迫る限界に小さく呻いた。
「うぅ……フェイト使用!」
「待った、そこまでして食うべきじゃない!」
 五月女が慌てて押し留める横で、美楼がスイーツの置かれた一角を振り返る。
「さて、最後にデザートをー……あっ! まっ、待つネ! 美楼もそのケーキずっと食べたいと狙ってたヤツでそれ最後の一個ヨ!?」
 そんな制止も空しく掻っ攫われた最後の一切れを見送って。
「まさかメインのデザートを食い損ねるとは、思わなかったネ……」
 無念そうに呟く美楼の傍で、リシェナがテーブルに突っ伏し小さな白旗を振っていた。
「ぶ、物理的にもうお腹に入らないでござる……!」
「よしよし、良く頑張った。ついでにアタシにも一杯恵んでくれ」
 魔法瓶の茶を啜るリシェナを撫でながら、五月女が茶をねだる。
 そこかしこの賑やかな騒ぎを見回した義弘が、醤油を塗った餅に海苔を巻き付けて。
「……ま、こんな風に、仲間で楽しむのもいいだろう」
 マイペースに口へと運びながら呟いたのだった。


 過ごし方は人それぞれに、朗らかな恋の一日は、街の風景に混ざり溶けて過ぎて行く。
 そうして穏やかな日常を取り戻すまでの、それは当り前に過ぎていく世界の一ページとして流れていったのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 世間様では既にホワイトデーの季節が間近ではありますが、そんな事実はさておきまして。
 リアルタイムで口にするには憚られる頃合いとなってしまいましたが、そんな現実には目を瞑ります。
 ハッピーバレンタイン、素敵な一日を有難うございました!