●白より生まれしもの 平原を覆い尽くした雪の上には、何かが動いた跡がついていた。 もっとも……時が過ぎればその痕跡も、新たに降り積もる雪に埋もれ、跡形もなく消えてしまうことだろう。 そうはならなかった。 雪が大きく盛り上がって飛び散り、そこから太く、それ以上に長い何かが姿を現す。 周囲の雪のように白く、同じ色の角とたてがみを生やした大蛇のような何かは、その口を開くと白い気を噴き出した。 息の吹き当てられた雪がたちまち強張り、氷のように変化する。 更に2体が雪中から姿を現し、雪に潜り、雪の上を滑りながら……白い息を撒き散らした。 周囲を雪と氷が包み込み、吹雪の中で息を撒き散らしながら、白い大蛇たちが暴れまわる。 その痕跡すら隠そうとするかのように。 雪はいっそう、空から……静かに、音もなく……舞い降り続けた。 ●雪原の戦い 「雪のE・エレメントという事だと思います」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言って、スクリーンに表示させたデータに視線を向けた。 今回の任務は、雪の中に現れたE・エレメントの撃破である。 頭部から手足の無い細長い胴体が生えているという形状のE・エレメントは、外見的には蛇に近かった。 大きさの方は5~6m程度で、大蛇と呼ぶのが相応しいだろう。 地球上にはそれ以上の大きさの蛇も存在するが、それらよりは遥かに高い戦闘力を持っているのは間違いない。 「E・エレメントは全身が白く、頭部に白い角とたてがみを生やしています」 フェーズは2で、数は3体。 「牙を生やしていて通常の物理攻撃も行なってきますが、基本的には吹雪を起こしたり冷たい息を吐いたりして攻撃を行ってきます」 ブレスの方は対象個人を傷付け、同時に凍傷も与えるようだ。 威力も精度もそれなりに高い。 対して吹雪の方は射程内の目標全員を傷付ける。 冷息と比べると精度は高いが威力は劣るという性能ようだ。 ただ冷気は強いようで、目標を傷付けるだけでなく動きを封じる効果もあるらしい。 「動きは見た目よりもずっと機敏です」 雪の上をすべるように移動し、時には潜り、それこそ雪の中を泳ぐように動き回りながら戦うようだ。 身体に鱗のようなものもみえるが、防御力そのものは低いようである。 「ただ、大きさに相応しい耐久力があり、加えて受けたダメージを少しずつですが回復する能力もあるみたいです」 周囲の雪から力を取り込んでいるのかも知れない。 E・エレメントが存在する平地は一面に膝より上程度に雪が積もっているようで、移動や戦闘などの障害になる可能性もあるようだ。 リベリスタ達にとって不利な土俵といえるだろう。 民家や農地から離れているのは幸いと言えるかも知れないが。 「冷気無効に似た能力を持っていますが、反面というべきか炎系の異常効果には弱いみたいです」 欠点は持つものの、厄介な相手である事は間違いない。 とはいえ放っておく訳にはいかないし、フェーズが上昇する事でさらに強力になる可能性もある。 「数もいますし、どうか充分にお気をつけて」 マルガレーテはそう言って、リベリスタたちを送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月26日(水)22:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●白と灰色に包まれて 「さむい」 一面、白に埋め尽くされた風景の中で、『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)は呟いた。 (……いつも同じことを言ってる気がするけどしょうがないよね) 「いつもさむいんだからさ」 呟きつつ、軽く身体を動かしてみる。 (ま、ちょっとぐらい指がかじかんだって、腕がぶん回せればだいじょうぶ) 自分の為す事は変わらない。 成せる事も変わらない筈だ。 「ヒェヒェ、ルー、ダイスキ」 その白い光景に、寧ろ元気をもらっているかのように。 「ユキ、タクサン、ウレシイ」 ルー・ガルー(BNE003931)は無邪気に嬉しそうに、口にした。 同じく無邪気に嬉しそうにしているものの、『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)の対象はルーとは異なっている。 「蛇さん! おっきな、蛇さん!」 そう言って瞳をキラキラさせながら彼女が眺めていたのは、彼方に見えるE・エレメントたちだった。 白い大蛇のような体と龍のような頭を持つ、雪のエリューション。 その姿に目を奪われていた旭は……少し間をおいて、我に返る。 「……ちゃ、ちゃんとたおす。だいじょぶ」 少しカタコトっぽくそう言って、彼女はコクコクと頷いてみせた。 「雪はすきだけど、これじゃ雪害なんてれべるじゃないもんね」 防寒対策を確認してから、雪が目に入らないようにとゴーグルを装着する。 ミストブーツは足場がすこしでも安定すればと考えての装備だ。 「うー、でもこれ靴とかゆー問題じゃないよね……」 うごきにくい。 「もー、きごーぐれんするもん! ゆきとかす!」 物騒な事を言いつつ、彼女も皆と共に警戒しながら……E・エレメントへと距離を詰め始めた。 周囲に気を配る必要が無い以上、あとは戦うだけである。 (寒いのはあんまり得意じゃないんだけど……ま、この間行ったアイスランドよりはいいよね) 「龍退治頑張るよ」 以前の任務を思い出しつつ、『魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)は短く口にした。 (雪の龍か……倒して剥ぎ取ったら何か出るかしらね……上鱗とか?) 『谷間が本体』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)は皆の言葉を聞き、考え事をしながら肩を竦めてみせる。 今の彼女は厚手のコートとロングスカートにレギンス着用という格好だった。 普段とは異なるその恰好は、もちろん寒さ対策の為である。 「寒いわね……こんな日は暖房の効いた屋内に居たいわ」 とは言え、格好の練習台を見過ごす訳にも行かない。 「モラン大佐とやりあった傷も癒えないうちからなかなかのお仕事を受けてしまいましたね」 『クオンタムカーネル』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)は呟きながら、今回の敵情報を再確認した。 フェーズ2のE・エレメントが3体。 耐久力は高く動きも機敏で、攻撃力も高く異常を伴う全体攻撃を持っている。 「なかなかの強敵ですが、大佐から奪った技の試し撃ちには不足がありません」 存分にやらせてもらいましょうかと、あばたはいつでも戦闘に移れる体勢で距離を詰める。 「冬眠時期というのに、はしゃぎ回って雪景色に一番不釣合いですね」 E・エレメント達を眺めながら『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)は、そんな感想を口にした。 「犬なら可愛げがあるものを、あれだけ大きいと可愛げの欠片もありませんね」 口ではそう言いつつも慎重に、彼はファミリアーを使用して空からE・エレメント達を観察する。 雪で見失うなどという間抜けな真似は回避しなければならない……そう自分に言い聞かせて。 滑り難く加工された安全靴で足を踏み出しながら……諭は、レディ ヘル(BNE004562)の方を向いた。 (不浄なエレメントは、世界の乱れ、浄化する) フェイトの導くままに。 声のような何かが響く。 実際には、空気を震わせるものはない。 彼女の思念が直接周囲に届いているだけだ。 仮面に隠された顔はもちろん、態度にも……彼女は何も、滲ませてはいない。 (寒がるそぶりでも見せれば可愛げがあるものを、鉄火面ではわかりませんね) 「表情ごと凍り付いても知りませんよ?」 ヘルの方へと視線を向けながら、諭は言葉を紡いだ。 「まあ、元々凍りついてるようなものでしょうけど」 そこまで続けても全く態度を変化させず、ヘルは思念を諭へと向けた。 (素顔を知りたければ、いつか『私』が死んだ時にでも見るといい) 例え地獄の業火に焼かれようと、この仮面が顔だけは守るだろう。 その言葉を諭がどのように受け取ったのかは、分からない。 接近するリベリスタ達に気付いたE・エレメント達が行動を開始した為だ。 隊列を整え前進していたリベリスタ達は、そのまま距離を詰めながら……敵の動きに合わせるようにして、戦闘を開始した。 ●雪原の戦い 「木漏れ日浴びて育つ清らかな新緑――魔法少女マジカル☆ふたば参上!」 ちょっとポーズも取りつつ後衛に位置を取った双葉は、ワンドを近付いてくるE・エレメント達へと向けた。 足場の悪さに少しでも対応するためにと能力によってバランス感覚は高めてある。 寒さ対策にと肌着等も着込んできた。 自分なりに出来るかぎりの準備は整えてある。 あとは実際にやってみるだけだ。 (私の一番の役目は龍の動きを止める事) 「紅き血の織り成す黒鎖の響き、其が奏でし葬送曲」 高速詠唱を行いながら、双葉は雪の上を滑るように近付いてくる雪龍たちの姿を確認した。 「我が血よ、黒き流れとなり疾く走れ……いけっ、戒めの鎖!」 詠唱の完了と同時に彼女の血を触媒に、無数の黒い鎖が現れる。 生み出された黒鎖は彼女の言葉に従うように、濁流のようにE・エレメントへと襲い掛かった。 ダメージを受けはしたものの雪龍たちは機敏な動きで直撃を避け、そのままリベリスタたちに向かって口を開く。 文字通り凍り付かせるような白いブレスが、雪で造られたエレメントたちの口から噴き出された。 それを堪えながら涼子は己が力を注ぎ込んで世界法則を強引に捻じ曲げ、自負と共に自身のルールを狭い空間内に適用させる。 そのまま彼女は強化したバランス感覚で雪の中を強引に進み、雪龍たちへと近付いた。 炎系のスキルを中心に押すというのが今回のリベリスタ側の戦術である。 自分にはそれらの能力は無い。 だから動きを封じられぬようにして行動の自由を保ちつつ、雪龍の動きを制限する。 涼子は自分の役目をそう考えていた。 その間に炎系の能力を持つ者たちに攻撃を行ってもらえば良いのだ。 「巻き込んだらごめんね、回復おねがいしまぁすっ」 そう呼びかけつつ、旭が腕にはめた魔力手甲に自身の力を注ぎ込む。 彼女はそのまま対峙した雪龍の1体に向かって、強力な横薙ぎの一撃を放った。 薙ぎ払われた彼女の腕と空間から周囲を焼き尽くすような炎が生み出され、雪龍へと襲い掛かる。 生み出された獄炎はそのままE・エレメントを包み込み、その力を奪うかのように激しく燃えあがった。 「オマエ、ルー、アイテスル」 そう言いながらルーが別の1体へと駆け寄り、獣じみた雄叫びをあげて全身に破壊の気を漲らせる。 (攻撃のタイミングを今回で把握しておかないと……) 体勢を維持しやすいようにと低く羽ばたきながら、シルフィアは体内の魔力を循環させることで活性化させた。 (機敏に動くですって?) 「面白い。避けられるもんなら避けてみろ」 わたしの攻撃さえ避けきるのなら、もうアークの手には負えねえよ。 あばたは超遠距離から狙えるように二丁の拳銃、シュレーディンガーとマクスウェルを構え、雪龍たちへと向ける。 狙うのは旭の攻撃で傷付いた個体である。 『倫敦で二番目に危険な男』の技を模倣改造した彼女の狙撃が、音なき福音が、雪のエレメントの体を貫いた。 「面構えだけは立派ですね。剥製にした方が強く見えそうです」 後衛で出来るだけ全ての敵を巻き込めるようにと位置を取ると、諭は高度な符術を用いて擬似的に四神を創り出す。 凍てつく空気を焼き、紅を纏いながら姿を現した朱雀が、その炎を雪龍たちへと向けた。 洗礼を浴びせられたE・エレメントたちが不気味な音を発し、獣のようにのたうち回る。 「一足早い春ですよ。暴れまわって好評とは嬉しいですね」 口ではそう言いつつも、諭は冷静に敵の様子を観察した。 命中はしたものの直撃では無かったようで、雪龍たちを包んだ炎は間もなく消滅する。 直撃させるためには充分に狙いを定めるべきだろうか? 様々な思考を頭の中で行いながら、諭は力を行使すべく次なる符を取り出した。 (青龍に、似て非なる存在) 変わらず口は閉ざしたまま、思念を浮かべながら。 ヘルは雪に足を取られぬようにと低く飛びながら、周囲の魔力を取り込み始める。 仲間たちの動きを確認しながら、双葉は更に動きを加速させた。 「魔を以って法と成し、法を以って陣と成す。描く陣にて敵を打ち倒さん」 詠唱と共に双葉の周囲に複数の魔方陣が展開され、中央に位置する彼女へと膨大な魔力が供給されていく。 その力で再び血の黒鎖を具現化させると、双葉は白き龍たちを呑みこむように黒い濁流を解放した。 ●力と力、凍気と熱 3体の雪龍のうち1体とはルーが対峙していた。 残る2体は前衛たちが押さえようとはしていたものの、E・エレメントの使う吹雪の力によってその動きは妨害されている。 強烈な冷気によって動きを封じる雪龍たちの攻撃に対して耐性を持っているのは、涼子、ルー、ヘルの3人のみなのだ。 「ホカ、イカセナイ、ズット、ルー、ミル」 ルーは攻撃よりも敵を抑える事を優先し、威嚇しながら掴みかかり、しがみ付き、咬み付いて、雪龍の1体を引き付けていた。 もちろんそれだけ受けるダメージも大きい。 強力な再生能力を以てしても回復が追い付かず、ヘルの癒しの多くが彼女に向けられる形になったほどである。 旭は吹雪によって行動を封じられる事もあって、雪龍の動きを完全に押さえこむ事までは出来なかったが、炎を纏う攻撃によってダメージを確実に蓄積させていった。 2体は雪の上を滑り、時には雪の中へと泳ぐように潜りこみ、動き回りながら吹雪と氷の息を使ってリベリスタたちに攻撃を仕掛けてくる。 その動きを何とか封じようと涼子は仲間たちと声を掛け合って状況を確認しながら、殺意を剥き出しにした大蛇のように雪龍たちへの攻撃を行っていた。 それを援護するように、あばたは射撃を行いながら敵の動きを観察し、仲間たちへと連絡する。 千里眼を用いた彼女の索敵は、E・エレメントが雪の中に潜った際に特に効果を発揮した。 雪龍たちが暴れ回っている戦場は、荒らされそこかしこに起伏が生まれ、戦いの衝撃や振動で何かがいるかのように震えて動き、時には波のように雪の飛沫が吹き散らされる。 強化したバランサーで足場の不利を何とか軽減しつつ、あばたは連絡と狙撃を続けていく。 旭も強化した聴覚を活用して、雪の盛り上がりや流れを確認しながら皆に注意を促した。 もちろんその間も攻撃は忘れない。 「わたしたちの炎で、逃げ場なんてないよーにしてあげる」 周囲に誰もおらず加減する必要が無ければ、彼女は消耗を気にせず自身の全力で雪龍を狙って獄炎を纏った腕を幾度も振るった。 仲間のダメージを確認し、できるだけ巻き込まないようにと注意して。 旭は1体の雪龍へと攻撃を集中させていく。 涼子も同じように味方を巻き込まないように注意し、同時に味方の攻撃を邪魔しないようにも注意して、雪龍たちの動きを追う。 「ま、死なないていどになら、巻きこんでくれてもいいけど」 声を掛け合い、皆からの連絡を当てにしつつ……何とかエリューションの動きを封じようと、彼女は反動を厭わず力を揮い続ける。 「当たるか……ならばコレだ……!」 シルフィアも羽ばたきによって魔力の渦を発生させ、その力を暴れ回るエレメントたちへと向けた。 普段とは異なるプレッシャーを放ち戦いを好んでいるような雰囲気を漂わせつつも、彼女の瞳は冷静に戦況を観察している。 味方の負傷は蓄積しつつあるが、敵へのダメージも大きい筈だ。 半数が動きを封じられる事もあるとはいえ、それを差し引いても充分と言えるほどに強力な攻撃をリベリスタ側は幾つも所持しているのである。 諭は狙いを定めると、符術によって再び創り出した朱雀を雪龍たちに向けた。 (雪で動きにくく敵の姿が見えないなら、足元の雪も溶かしてしまいましょう) 「ああ、意外と雪掻きに便利なものなのですね」 積り舞い散る雪を炎が、熱が……焼き尽くすようにして蒸発させる。 「ついでに煮殺されて下さい。手間が省けます」 四神に操られた炎が生きもののように、E・エレメントたちを包み込む。 それでも雪龍たちは全てを凍り付かせようとするかのように、リベリスタたちへと襲い掛かった。 知能や心のようなものはほとんど存在してない。 あえて言うならば動物のような、自然に息づく存在。 リーディングによる自身の認識を仲間たちに伝えながら、ヘルは奇跡の力を傷付いた仲間たちへと向けた。 (崩界因子を前に、膝をつくことは許されない) 氷の息吹に打ち倒されそうになった身を運命の加護で支え、穏やかな風を呼び寄せる。 冷たく熱い戦いは激しさを増しながら、ギリギリでバランスを保ちながら……終局へと向かっていた。 ●戦いの趨勢 永久炉で消耗を軽減しながら、あばたは旭が狙う雪龍へとできるだけ攻撃を集中させた。 雪龍たちの動きで吹雪に巻き込まれる事がある為、攻撃が一時的に途切れる事もあるが、その分だけ消耗の方は更に軽減されている。 もっともダメージの蓄積は大きくなりつつあった。 ESPと超直観によって敵の動きを窺いつつ……シルフィアは回復に力を割く形になっている。 「雪の中か……何処から来る……」 呟きつつ、彼女は入手できた情報を基にエレメントたちの動きを推測した。 ヘルは既に回復に専念する形になっており、双葉は彼女を庇うように位置を取りながら雪龍たちを攻撃する。 反撃とばかりに雪龍たちが、吹雪を呼び氷の息を吐き出した。 限界を運命の加護で乗り越えたルーはそのまま防御に専念しつつ、エレメントの意識が自分に向くように動き回り1体を引き付け続ける。 凍てつく吹雪をシルフィアが同じように運命の加護で退けたものの、続く氷の息に耐え切れず、あばたが戦線を離脱した。 だが、続いた涼子や旭、諭らの攻撃によって終に雪龍の1体が原型を失い、雪の塊のようになって崩れ落ちる。 1人が戦線離脱したものの1体が消滅したのだ。 戦局は一気に、リベリスタ達の側へと傾いた。 残った2体も涼子やシルフィア、諭らの攻撃を受け、再生し切れない程のダメージが蓄積しているのである。 加えてリベリスタ側が動きを封じられる可能性も減少したのだ。 逆に涼子は機を見ながら、暴れ大蛇で残った雪龍たちを攻撃し続けた。 シルフィアは詠唱によって癒しの福音を響かせ、旭と諭は吸血鬼の上位種たる力を用いて、エレメント達から力を奪い取る。 「やぁん、ちめた……! おなかこわしちゃいそ><」 「不味いですね。冷たすぎて飲めたものじゃない」 2人はそんな呟きを漏らしつつも攻撃を続けていった。 2人の用いる炎の力は、それだけでは足りぬほど消耗の激しい技なのである。 涼子が態勢を維持しながら牽制を行い、ルーは対峙する雪龍をひたすら自分に引き付け続けた。 ヘルは敵が逃亡しないかを警戒しつつ、仲間たちの回復を続けてゆく。 「魔弾よ、指し示すがままに敵を撃ち、穿ち、貫け!」 双葉の放ったマジックミサイルが雪龍を捉え、炎と共に空間を薙ぎ払う旭の一撃によって……2体目の雪龍が消滅した。 敵の攻撃が減った事と、味方の攻撃が自分が押さえる雪龍にも行われ始めた事を認識したルーも、行動そのものを変更する。 ヘルを庇わなくても大丈夫と判断した彼女は鉤爪に雷を纏わせ、充分に狙いを定めながら的確に攻撃を行い始めた。 最後の1体も、これまで受けたダメージが充分に蓄積している。 動きを封じられ、攻撃を集中され…… 最後は諭の創り出した四神の炎に身を包まれ……最後の龍もまた、雪が融けるように…… ただの自然へと、戻っていった。 ●弱まり始めた雪中で 風邪を引かない内に帰ろうと提案する双葉に、ちょっとだけとお願いして。 「えへへ、雪だいすきなんだもん」 怪我をした者の応急手当てをする間だけと、旭はまっさらな雪面にバフッとダイブした。 (まだジョシコーセーだからはしゃいでも許されるはず) 「女子大生になったらきっともっと大人になるからいーんだもん」 そう言いながら、彼女は懸命にゆきだるまを完成させる。 雪龍が暴れた跡に遠い目をしたりしたものの……ゆきがんばって積もってと、応援して。 その間に、ヘルは傷付いた者の応急処置を終えた。 雪は心なしか、少し弱まったようにも見える。 それを眺めているのか、何かを想うのか……悟らせない態度のまま、彼女は諭へと思念を零した。 (剥製は推めない) それだけ送り、翼を羽ばたかす。 考え込んだ諭は……それが自分の言葉に送られたものだと気が付いて。 小さくなる翼を眺めながら……今までとは少々異なる表情を、その後ろ姿に向けてみせた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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