●エリューション兵器研究所 「以前追跡を行ってもらって確認した施設の調査結果が挙がりました」 今回の依頼は、その結果を基にしたものです。 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう説明した。 ある工業団地に工場として建てられている建物が、実際にはE・ゴーレムの研究と製造を行う施設として運営されていたのである。 兵器として完成させたE・ゴーレムを使用、或いは販売するというのがその施設の目的だったようだ。 「六道の下部組織の1つのようで、実際に実験を繰り返しながら海外のフィクサードにも宣伝を行っていたようです」 アークのリベリスタを相手に実験を重ねている等と言うのは、海外のフィクサードに聞こえは良いのかも知れない。 実験や研究の成果を上部へと報告し、それによって予算を与えられるという形式だったようだ。 以前リベリスタたちが撃破したE・ゴーレムの幾つかはこの機関が実験的に開発した物だったようである。 「幸いまだ実験の途中で、完成して販売された個体は無いようです」 表向きは小規模な金属加工の工場である以上、その活動を中止させる事は難しい。 だからと言って放っておくなどと言うのは論外だ。 「そこで皆さんには工場内に潜入してもらい、内部で実験中のE・ゴーレムを利用して実験施設を破壊して頂きたいんです」 マルガレーテはそう言うと、スクリーンに画像やデータを表示させながら詳しく説明し始めた。 ●潜入破壊作戦 「研究施設は地下にあって、地上は本当に金属を加工する工場として運営しているらしいです」 地上の工場では事情をしらない一般人が10数人働いている。 それ以外に事情を知っている六道の研究者が社長含め役員という事で4名程度。 そして地下施設で働く六道の研究員が10名程度に、護衛としてフィクサードが数人という構成らしい。 「あまり予算が出ていないのか、護衛は最小限で多くを研究の為の費用に当てているみたいです」 地下施設には様々な機材が並んでいるらしいが、護衛のフィクサードは昼間は4名、夜間は2名。 給料が安いのか、やる気はあまり無さそうだという。 「夜になると一般人はいなくなりますし、研究者たちも多くは宿泊施設等に引き上げるみたいです。ですので、皆さんに潜入してもらい、夜まで待機してから活動して頂く形になります」 潜入方法はオーソドックスだが、運び込む資材に紛れてという形になる。 「フォークリフトで運ぶ大型の資材の内部に入って頂くことになります」 チェックから逃れる加工はアークの方で行っているので、騒いだりしない限り気付かれる事は無いだろう。 フォークで運べるようにした資材は3つ。 資材の内側には縦横1m高さ2m程度の空間が作ってあり、1つの資材の内側に2人ずつ潜伏する形になる。 「資材は倉庫に運ばれ、そこから昇降機を使って地下の倉庫に運ばれます。同じ資材が残っていますので、研究員が使おうとしてばれる様な事はありません」 資材を運び込むのは夕刻。 搬入するのは、研究員が全員帰宅し警備員のフィクサードのみになる日を選ぶそうだ。 夜になり従業員や研究者たちが帰るとフィクサード達は地上の詰所に移動し、2時間おきに地下も含めて巡回するという形になるのだそうだ。 活動を開始するのは、地下に人がいなくなってからである。 「地下は地上より狭く、実験施設は倉庫のすぐ近くになります」 実験施設は50m四方の大部屋1つと、周囲に幾つかの小部屋という造りになっている。 倉庫から大部屋へは広めの通路で繋がっており、通路と大部屋は頑丈そうな扉で仕切られているようだ。 大部屋は、実験と製造を兼ねた部屋になっている。 部屋の隅には実験用の機材があり、中央に製造用の設備がある他、製造中のE・ゴーレムが数機ほどあるようだ。 「部屋の入口で入室する為の識別が行われるんですが、その識別を誤魔化す物までは用意できませんでした……ので、扉を破壊して侵入して頂くことになります」 扉は頑丈ではあるが、リベリスタ達が攻撃すれば破壊できる。 もちろん攻撃を開始した時点で警報によって外部に気付かれるので、急いで施設の破壊に移らねばならない。 「室内に存在するE・ゴーレムの中で、部屋中央付近の2機、というか2隻のE・ゴーレムが、未完成ではあるものの稼働し、皆さんを攻撃してくると思います」 無数のコードやパイプ等が繋がれておりエネルギーの供給を受けているが、それが破壊されてもかなりの期間は動き続けられるようだ。 部屋の中央付近がある程度破壊されると、火災と小規模な爆発が発生し、急速に周囲に拡がってゆく。 それによって施設が破壊されるようだ。 「研究の為に供給されていたエネルギーの暴発か、証拠隠滅の装置でもあったのか……分かりませんが、戦闘を利用してE・ゴーレムと施設の両方を破壊する事ができる筈です」 後始末に関しては、化学薬品等が爆発しているという事にしてアークの方で手を回した専門の消防隊を敷地内に入れる事になる。 戦闘の痕跡等に関しては心配しなくて良いようだ。 「E・ゴーレム破壊後、皆さんは出来るだけ目立ち難いようにして施設から脱出して下さい」 地下の扉を破壊した時点でフィクサード達は侵入者に気付くが、自分達より戦力で勝っていると知れば研究者たちに連絡し、あとは状況を観察して報告するくらいで積極的に攻撃をしかけようとはしないようである。 消防隊員たちが駆けつければ、ただの警備員として振る舞おうとするだろう。 ●E・ゴーレムについて 「戦う事になるのは、施設内で製造中のE・ゴーレム達だけだと思います」 稼働するというE・ゴーレムは2隻、軍艦型のE・ゴーレムなのだとマルガレーテは説明した。 「以前にある湖に出現した軍艦型E・ゴーレムに酷似しています。ただ、こちらは航空母艦型と重巡洋艦型が1隻ずつの計2隻です」 どちらも耐久力はあり異常攻撃の効果を受け難いようだが、製造途中かつ水上ではない事もあり、移動はできず回避行動はほぼ不可能という状態。 それでも、戦闘行動は可能なようだ。 「重巡洋艦は防御力が高く、主砲による攻撃と副砲や機銃による攻撃を1回ずつ行ってきます」 主砲は単体の遠距離攻撃で威力は高め。 副砲や機銃による攻撃は同じく遠距離攻撃だが、こちらは射程内の全ての敵を狙えるようだ。 威力は主砲と比べるとかなり劣る。射撃の精度に関してはどちらも高いようだ。 「航空母艦は、防御力はやや低めになります」 攻撃は機銃などを使用した対空砲火のみで、命中精度はかなり高いものの攻撃力は中程度のようだ。 「ですが複数の艦載機を搭載しており、それを操って攻撃を行ってきます」 艦載機は10数cm程度の小型の物で、攻撃が命中すればほぼ確実に破壊できる程度の耐久力しかないが、動きは機敏で回避能力も高い。 「本来はかなりの数の艦載機を搭載できるようですが、未完成の為か、搭載されているのは全部で30機のみのようです」 内訳は、戦闘機が20機、急降下爆撃機と攻撃機が5機ずつ。 「戦闘機は2隻の艦と他の艦載機の護衛に回ります」 自分からは攻撃を行わず、艦や艦載機を攻撃する者に攻撃を行うというのが戦法のようだ。 数が減少した場合は航空母艦の護衛を最優先し、余裕があるならば艦載機を護衛するという方針で動く。 急降下爆撃機は目標の頭上から接近して精度の高い単体爆撃を行い、攻撃機は近距離攻撃の届かない5mほどの天井付近を飛行しながら、範囲内を掃討する爆撃を行ってくる。 どちらも攻撃可能なのは1機1回のみで、1度攻撃するとエネルギーを消耗し尽すようだ。 航空母艦はそのエネルギーを回復する力を持っているが、回復を行うためには艦載機は母艦に着艦しなければならないようだ。 そして着艦している間、艦載機の回避能力は大きく低下する。 全ての艦載機は航空母艦が撃破されると力を失って無力化するようなので、全滅させる必要は無い。 とはいえ多くが残って入れば、母艦を倒すまでの損害も大きくなるかもしれない。 「戦い方は皆さんにお任せします。とにかくゴーレムを撃破し、その後はできるだけ急いで施設から脱出して下さい」 実際、発生する火災と爆発によって施設はかなりの損害を受ける。 アークが手を回した消防隊が駆けつけ、実際に消火活動に当たるので周囲には多くの人や車も集まる。 「その中にアークの職員も交じっています」 脱出に関しての手引きは全て行ってくれるので、敷地の外へ出る事まで心配する必要は無い。 「夜になってからの隠密行動と戦闘、その後の地上への脱出に全力を尽くしてください」 色々と難しい所もありますが、宜しくお願いします。 そう言ってフォーチュナの少女は、リベリスタたちを送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月24日(月)22:38 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●潜入作戦 「ロボに飛行機に砲台ときて、次は艦船かよ……」 以前の戦いを思い出しながら、ツァイン・ウォーレス(BNE001520)は呟いた。 彼が幾つかの任務で倒す事になったE・ゴーレムも、今回のように造られたものである可能性は極めて高いのだ。 「利用されてばかりじゃ気にくわねぇ、今度はこっちからいかせてもらうぜ!」 「見過ごせば碌でもない事になるだろう」 言葉を続けるように『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)も口にした。 (フェイトが無ければ崩界が進むだけなのにE・ゴーレムで商売とはね) 「施設諸共破壊して食い止めて見せるさ」 撃破する為の戦いの前に、今回は潜入という行動が、そして戦いの後は離脱という行動が加わる。 (動き出したら速戦即決、できるだけ早くE・ゴーレムを壊して脱出するお仕事、と考えると回復のみの私は微妙かもしれませんが) 「怪我人を出さずにミッションを遂行するため、と考えれば……存在価値、ありますよね?」 『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)は真面目な表情で考え込むように、問い掛けるように呟く。 『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)はというと…… 「暁の水平線に勝利を刻みに来ました」 いつもと変わらぬ様子だった。 「私だって本気出せばやれるんだから……まだ本気を出す時じゃないけどね」 いろいろなセリフに自分の意見も混ぜて形にしつつ……ぼうっとした感じに力を抜いて、発言する。 対照的に、緋塚・陽子(BNE003359)の方は活力が漲っているという感じである。 (潜入しての大暴れとか浪漫がある任務じゃねーか) 「盛大に暴れてやるぜ!」 嬉しそうにそう宣言する彼女らを眺めつつ…… 「携帯電話と予備バッテリーあったほうが良さそうね」 (アクセス・ファンタズムで通信できるとは言っても、出てくタイミングをあわせるのは声より文字による通信のほうが安全でしょうから) 必要そうなら仲間にも配っておこうと考えながら、『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)は行動や装備品などを確認した。 小夜もお花を摘みに行くわけにもいきませんしと色々準備し、移動中に身体を固定できないかと自分たちの入る事になる空間を確認する。 (あとはアークの職員さんが音が漏れないよう梱包してくれることを祈るのみ、ですね) 「あまり手荒に資材を扱われないことも……箱の中で転がり回されたらじっと耐えるしか」 「んー、あまり自己申告するのは気持ちいいものじゃないけど、体重を考慮して資材3つが同じぐらいの重さになるよう班分けするといいのかしら?」 考え込んでいたセレアが、小夜にそんな事を打診する。 「あれ……待って下さいよ?」 話しを聞いていたツァインは、そこでふと……考え込んだ。 (二人一組、暗くて狭い中で長時間……女の子が4人……これってつまり……!) … …… ……… 「ですよねー……祭雅さんもうちょっと向こうに詰められます……?」 ●工場地下へ (あー、暇だー、想定外の騒ぎおきねーかなー) 「騒ぎがあれば、緊急対応で出番が早く来るのによー」 資材の内側に作られた狭い空間の中で、暇を持て余した陽子は小さく呟いた。 (いっそ、オレが騒ぎを起こせばいいか?) そんな事を考えたりもしたものの、流石にそれはせずに彼女は夜まで長く感じられる時を過ごす。 音の方は外に漏れにくくなっているが、逆に外からの音も聞こえてこないので実際の時間は完全に時計任せだ。 時刻を確認しタイミングを計ると、小夜は皆と共に貨物の外へと移動した。 そのまま彼女は仲間たちに翼の加護を施し、床から僅かに身体を浮上させる。 セレアも同じように低空飛行状態を維持するよう努めた。 これで足音は立てずに済むし、何かに躓いたり足を掛けたりする心配もなくなるのだ。 アクセスファンタズムで連絡を取ったツァインも、素早く資材の中から出て、全員が揃っている事を確認する。 疾風も念の為に簡易飛行を使用しつつ、暗視機能付きのゴーグルで周囲を警戒した。 アクセスファンタズムの方も、必要に応じてすぐに連絡を取れるように準備する。 「ここで見つかって騒ぎになってもしゃーねー」 陽子も見回りに警戒しつつ懐中電灯を手に、急ぎ実験施設へと足を向けた。 (扉を壊せば気が付かれるとはいえ、それまで戦闘せず移動できるよう、できるだけ物音は立てないように) 小夜は翼の加護を維持できるように気を配りながら、できるだけ静かに移動してゆく。 防犯装置などは他に無いのだろうかと不安に思いはしたものの……幸いそれは取り越し苦労に終わりそうだった。 「護衛のフィクサードはやる気ないみたいなので放っておいていいかな」 単体攻撃しかないから私はとくになにもできるわけでもなし、ゴーレムに集中攻撃だと考えて。 小梢はカレーを食べながら皆についてゆく。 荷を仕舞い込めるという点についてはアクセスファンタズムは優秀だった。 普通に持ち込もうとすれば匂いがネックになる可能性もある。 6人はそのまま無事に急ぎつつも慎重に移動し、実験施設の入口である扉の前へと到着した。 隠密行動はここで終わりである。 「ここが実験施設か。扉を破壊して突入する! 変身ッ!」 声と同時に疾風が一瞬で装備を纏い、扉へと攻撃を繰り出した。 リベリスタ達の攻撃に耐え切れず、頑丈な金属の扉はあっさりと破壊される。 ツァインは届いた声に従い仲間たちに戦いの加護を施すと、皆に続くようにして施設内へと突入した。 「そんじゃー開戦といきますかー! 両舷一杯! 宜しく候!」 ●施設強襲 周囲に警告の音声と警報が響く。 室内へと突入したリベリスタたち侵入者に向かってE・ゴーレムの艦載機たちが襲い掛かった。 部屋の中央付近の低い台座に置かれた状態の2隻の軍艦型E・ゴーレムたちも、設置されている砲をリベリスタ達の側へと向ける。 疾風はゴーレムたちと距離を詰めるように前進し、セレアは後衛で、範囲攻撃で纏めて攻撃されないようにと小夜と近付き過ぎないように注意しながら位置を取った。 もちろん回復を受けられなくなっては本末転倒なので、離れすぎないようにとも注意する。 敵が移動できない事もあって、位置取りの方は彼女が思っていた以上に容易だった。 小夜の方も回復の為の距離に気を配りながら位置を取る。 特に大事なのは、前衛全員に回復が届く事である。 その上で敵の遠距離攻撃で出来るだけ狙われ難そうな場所を探すようにしながら、彼女は室内を移動した。 攻撃の為に前衛たちがE・ゴーレムへと接近する以上、敵の射程外に位置するのは難しい。 それでも、艦載機に狙われるのに比べれば確率は減少する筈である。 広い室内で距離は縮まり、両者は互いを射程に捉えるまで接近した。 疾風はさらに前進し、艦型ゴーレムの1隻と相対するまで接近したのち、機敏な動きを行うために自身の気を脚部へと集中させる。 セレアも自身の血を魔力によって黒鎖へと変質させ、その狙いを艦と戦闘機たちへ向けた。 攻撃機と爆撃機は対象から外してある。 戦闘機からの反撃を減少させる為である。 本来は力の蓄積と詠唱を必要とする黒の葬送曲だが、彼女の力と技術はそれを不要のものとしていた。 瞬時に生み出された黒鎖の濁流が、E・ゴーレム達へと襲い掛かる。 攻撃によってゴーレムへと繋がれていた無数のコードが切断され火花が散り、別の警報音が響き始めた。 戦いながら同時に、機能を含めて施設を破壊するのもリベリスタたちの目的である。 小夜は周囲の魔力を取り込むことで自身の力を高め、ツァインは全身のエネルギーを守りに特化させる事で完全な防御態勢を整えた。 一方で航空母艦型のE・ゴーレムも接近したリベリスタたちに対しての砲撃、銃撃を開始する。 「さあいくらでも攻撃してきなさい、反射してあげるから」 (海軍カレーの力で金曜日が舞い降りる) 小梢は英霊の魂を加護へと変え、闘衣として身に纏った。 ゴーレムと艦載機の攻撃は、すべてが物理的な攻撃である。 (ここは私の物理防御が活きてくる) それを活かすために為すべき事を、彼女は充分理解している。 陽子の方はというと疾風と同じように距離を詰め、全速力で部屋中央の艦へと斬り込んだ。 力によって生み出した無数のカードの中から1枚を選び出し、死の力を自身の振るう大鎌へと乗せる。 前進してきた彼女たちを副砲や機銃の広範囲掃射で攻撃しながら、重巡洋艦型のE・ゴーレムは、主砲の狙いを後衛たちへと向けた。 疾風はそれらの砲撃に耐えながら、まずはと航空母艦型に攻撃を集中させてゆく。 空母撃破後に重巡を狙うというのが、彼を含めた前衛たちの優先すべき攻撃順位だった。 巡回しているフィクサード達に関しては、敵対してくるなら倒すが逃げるなら追わないというのが6人の基本スタンスである。 接近中は間合いを無視する投げ技でゴーレムを施設の床に叩きつけた疾風は、完全に接敵した後は武器と身体に雷を纏い、舞うような動きで空母に近付いた艦載機も含めるようにして攻撃を行った。 艦載機、特に補給のために一時的に空母に着艦した爆撃機や攻撃機たちは回避もままならず撃破されてゆく。 戦闘機による反撃も行なわれはしたが、それを耐えるのに十分な耐久力を疾風は有していた。 それを逃れた艦載機たちも、攻撃の反射によって次々と撃墜されている。 「来いよ艦載機共! クロスイージス式VT信管だ、しこたま喰らえッ!」 ツァインがそう言い放った直後、彼へと攻撃を行った爆撃機が防御不可能なダメージを受け撃墜された。 攻撃が成功すれば反撃で撃墜され、攻撃が失敗しても補給で着艦しようとしたところで破壊される。 リベリスタ側のダメージも大きかったが、彼らの側には強力な回復の力を揮える小夜がいるのだ。 短時間で艦載機のほとんどが撃墜され、E・ゴーレム側の戦力は減少する。 結果として戦局は、リベリスタ達の側へと大きく傾いた。 ●破壊と攻防 艦載機という戦力のほとんどを喪失した艦型E・ゴーレムたちは、それでも怯まず攻撃を繰り返す。 セレアはそれらに対して特別な対処はせず、血を触媒にして生み出した黒鎖による奔流でゴーレム達を圧迫し続けた。 小細工は必要ない。 彼女はそう考えていた。 基本戦術は火力で押し切って黙らせる。 セレアはそう考えていたし、実際それだけの戦闘能力を彼女も、彼女の仲間たちも有していた。 E・ゴーレム達の攻撃は強力ではあったが、魔力を高めた小夜の癒しもそれに抗し得るだけの力を所持している。 「回復はー……いらないと。どんなけ硬ぇーんだ、大和型ですか、食事は毎日カレーですか」 小夜を庇うように位置する小梢に僅かに視線を向けた後で呟きつつ、ツァインは破邪の光を宿したブロードソードを空母型に向けて振り下ろした。 反撃とばかりに空母型E・ゴーレムは、彼を巻き込むようにして対空砲火で射程内のリベリスタたちを攻撃する。 銃弾や砲弾はリベリスタたちを傷付けはしたが、同時に施設内に破壊をもたらし、それを確実に拡大させていった。 幾つかの機器は既に完全に破壊され、小さな爆発や炎が発している箇所もある。 近付けばリベリスタとて負傷は免れないだろう。 今のところは小夜の力もあって、大きなダメージが蓄積している味方はいない。 もっとも、2隻の攻撃によって中小のダメージは皆が受ける形となっていた。 もし小夜の回復が途切れるような事になれば、形勢が一気に逆転する可能性もある。 前衛たちもしっかりと回復の範囲に収めようとする為、彼女は敵の射程にも踏み込んでいるのだ。 小梢は結果として、小夜を庇うように動き続けた。 敵は2隻とも回避行動を行わない上に、小梢の攻撃は前衛として充分に通用する威力を持っている。 高い耐久力の元となる彼女のフィジカルは、防御においてだけではなく物理的な攻撃という面に関しても優れた物を彼女に提供しているのだ。 とはいえそれはあくまでも副次的なものと、彼女は考えた……のかも知れない。 とにかく小梢は回復の要と考えた小夜を、優先して庇うように心掛けた。 陽子の方はというとは対照的に、とにかく攻撃に専念する。 爆撃機と攻撃機が全滅し、他の前衛たちも空母に攻撃を集中させるようになって以降、彼女は大鎌を振るって高速の二連撃を主体に航空母艦型に攻撃を集中させていった。 狙いを定める等という事はせず、ひたすら自身の感覚と美学に従って……彼女は死神の大鎌の如き刃を振るう。 流れるような動きで振われた刃が、空母の装甲の隙間を縫うようにして船体を傷付けた直後だった。 掃射を避け損なって負傷した陽子に、重巡洋艦型E・ゴーレムの砲撃が襲い掛かる。 力を失い倒れそうになった身体を運命の加護で支え、彼女は再び己の刃を構えた。 戦いながら皆の状況を確認していた疾風が、今は攻撃よりもと一時的に陽子を庇えるように位置を取る。 続くセレアの攻撃によって空母型が破壊され、残っていた戦闘機たちも全滅した。 そして小夜の詠唱による呼びかけによって生み出された奇跡が、陽子の受けた傷のほとんどを消滅させる。 「重巡は侮れない、だがこの距離は……デストロイヤーの間合いよッ!」 空母型の破壊を確認したツァインは、攻撃目標を重巡型へと変更した。 体内の永久炉によって生み出された力を刃に注ぎ、破邪の輝きへと昇華させ、青年は幅広の剣を振るう。 (あとは、みんなでよってたかって潰すだけ) 「やっちまいなー」 変わらぬ調子で口にしながら、小梢はカレー皿として加工した鉄扇をE・ゴーレムへと叩き付けた。 航空母艦型に比べれば耐久力でも攻撃力でも優れている重巡洋艦型ではあるが、単艦でリベリスタたちを倒せるほどの火力は無い。 攻撃力はあろうとも即座に戦闘不能にできなければ、小夜の癒しによってダメージの多くを回復されてしまうのである。 特殊な呼吸によって周囲の気を取り込み、魔力を吸収し、それでも消耗していくほどの力を費やして、彼女は高位存在の力を癒しの息吹へと具現化させているのだ。 そして、それでも不足した場合にとツァインが戦いながら仲間たちの状態に気を配る。 互いにダメージを受けても、それが蓄積していくのはE・ゴーレムの側だけだ。 (狙って当てるのはオレの趣味じゃねー) 「大穴一発ぶちかますぞ!」 そう叫んで振るった陽子の斬撃が装甲の損傷を拡げるように船体を切断し……E・ゴーレムは、動きを止めた。 ●研究所からの脱出 「爆発に巻き込まれる前に脱出するぞ!」 重巡洋艦型が完全に破壊されたのを確認すると、疾風は皆に呼びかけた。 目的を果たした以上、速やかに撤収しなければならない。 幸い動けないほどの傷を負った者はいなかった。 「撃沈確認! 反転離脱ってなー!」 ツァインはゴーレムも動かないのを確認すると、室内を素早く見回してから出入口へと足を向ける。 同じく施設内の状況を素早く確認した陽子も、それで十分と判断して皆に続くように身を翻した。 (自分等で起こした火災で救助されるとか笑い話にしかならねーよ) 「さっさと逃げるさ!」 「ひゃー、脱出だ~ヽ(´∀`)ノ」 変わらぬ様子だがどこか楽しそうにも感じられる表情で言いながら、小梢も仲間たちに続く。 「できれば海で、もうちょっと大型のと戦いたかったなぁ~10m……いや100m級でも……」 地上への階段へと向かいながら……ツァインは呟きつつ、今回戦ったE・ゴーレムたちの事について考えた。 (小さいのは実験だからか……そりゃでかいのは金掛かるだろうし……) スポンサーがついたら本格的に大型を建造する予定だったのだろうか? (空母はいってみりゃ移動要塞だからな……そして外洋は万華鏡の射程外……) 「おっと……ちぃと寒くなってきやがった……」 自分の思いつきに何かを感じ、それを頭の片隅に追いやるように青年は呟く。 無理に通路に拘らず、可能そうなら窓でも壁でもぶち破って。 そんな事も考えつつ、セレアも皆の後へと続いていた。 研究施設はかなり頑丈そうではあったが、それ以外となると普通の……しかもあまり質の良く無さそうな資材で建物は造られているように見える。 (貧乏フィクサードの施設だっていうし火力集中させれば壊す程度はできるでしょ) もちろんそれで「崩れて生き埋め」等というのは嫌だから、考えは過激であっても彼女の観察眼の方は冷静だった。 あくまで脱出の為に必要ならば、時間の短縮になれば辞さない、というだけである。 炎が広がり異臭が漂い、周囲からは様々な警報音がひっきりなしに響いている。 「割とドラマとかゲームで定番のシチュエーションだけど」 (燃えるといえば燃えるけど) そんな事を考えながら、損壊した施設の各所に僅かに目を留めて…… 「どちらかって言うと笑えない状況よね」 そう呟くと、少し複雑な表情を浮かべてから。 セレアは仲間たちに続くように、速度を上げた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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