● ガラガッシャーン 轟音と共に建物の壁が崩れ落ちる。 砕いたのは稲光を纏う獣だ。 「はっはー、最高じゃねぇか、こいつはよぉ」 その後ろから数人の男達が姿を見せる。もっとも体格はそれなりだが、顔つきはどこか幼さが残る。少年と青年の境目といった所であろうか。 リーダーと思しき少年の手には護符(アミュレット)が握られている。 彼らはこの街にたむろしている若者達だ。ギャンググループと言えば大したものだが、実体は若さを持て余し、現状への不満を暴力で発散するしかないもの達である。 先日、彼らの前に『三尋木』の人間と名乗るものが現れた。その男から渡されたのがこの護符。不可思議な怪物を操る力を持つアイテムだった。 「でもアキラ、こんなことして大丈夫かな?」 「へっ、この力があれば警察なんか怖くねぇよ」 不安そうな仲間をアキラと呼ばれたリーダーが笑い飛ばす。 思うようにこの力を使えと言われて、しばらくは悩んだ。そして、思いついたのが犯罪だった。金があれば何だって出来る。 邪魔者を吹き飛ばすことだって出来るのだ。 「さて、もう一発ぶっ放しておくか」 アキラは怪物に命じて、周囲を破壊させようとする。そのくらい派手な方が良いだろう。 しかし命じた瞬間、手に痛みが走った。 「イテッ! なんだこりゃ!?」 自分に逆らうように、護符がなにかしらの力を放ったのだ。その衝撃に、思わずリーダーは護符を手放してしまう。 その時だった。 今まで大人しく少年達に従っていた怪物の様子が変わる。 「グルルルル……」 自分を縛っていた何かが無くなったことを確かめるように首をもたげる怪物。そして、目に映るのは手近な獲物の姿だった。 少年達も悟る。 自分達が今の今まで扱っていた怪物が何者なのかを。 「アォォォォォォォォン!!」 「だ、誰か助けてくれ!」 ● 厳しい寒波の続く2月のある日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。そして、リベリスタ達に対して、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は事件の説明を始めた。 「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。あんたらにお願いしたいのは、アーティファクトの回収及びエリューション・ビーストの討伐だ」 守生が端末を操作すると、大型の猫型肉食獣を思わせるフォルムを持った動物が表示される。しかし、その身には雷光を纏っており、ただの獣でないことは一目瞭然だ。 「識別名は『ライジュウ』。フェイズ2、戦士級のE・ビーストだ。破界器の力で召喚されたもので、暴走して暴れているから、こいつを討伐して欲しい。その破界器は『三尋木』が所有していたものなんだがな」 そう言って肩を竦める守生。 『三尋木』と言えば、日本国内の闇を統べる主流七派の1柱。「穏健派」として知られてはいるが、それも所詮は他派に比べて「穏健」であるに過ぎない。無駄な争いを避け、確実に自分の目的を果たそうとする、ある意味で最もフィクサードらしい組織だ。 その『三尋木』は「束縛の護符」と呼ばれる破界器を街の若者たちに与えた。目的は破界器の効果を実験するためだという。 「元々はエリューションを使役するための破界器だそうだ。もっとも、こいつは失敗作のようでな。支配していたエリューションは暴走してしまったってことらしい」 破界器を与えられた若者たちは、エリューションを強盗に用いようとしていたので自業自得の結果ではある。『三尋木』にしてみれば、失敗作に関わる理由も無い。だが、アークとしてはエリューションを放置するわけにはいかないのだ。 「そんな訳で暴れるエリューションを止めて欲しい。場所は破界器を渡された連中が侵入しようとしていた美術館だ」 リベリスタ達が到着するタイミングは、ちょうどエリューションが暴走したタイミングになる。 現場には当事者たちしかいないが、警備員などがやって来る可能性もある。その辺には気を付けた方が良いだろう。『三尋木』のフィクサードに関しては、既にこの件は「失敗」と判断しているので、現場に来ることも無い。だから、目の前の敵にさえ集中すれば良い。 そこまで聞いて、リベリスタが質問する。現場にいる若者たちの処遇についてだ。 「それに関しては、あんた達に任す。さすがに見殺しにしろとは言えないだろ」 作戦の成否には関わらない、ということのようだ。 実際、革醒こそ果たしていないものの、神秘を犯罪に用いたという点では広義の「フィクサード」と言うこともできる。だが、同時に力を持たない一般人であるのも事実だ。あとはリベリスタ達自身の矜持の問題である。 「説明はこんな所だ」 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月20日(木)22:06 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 暗い林の中に雷光が走る。 エリューションの心は怒りで充たされていた。知性の低い獣である彼に、およそ状況は理解できていない。しかし、目の前にいる人間達が彼を縛り、意にそぐわぬ動きをさせた程度のことは分かっている。 その怒りの赴くままにエリューションが力を解放させると、宙にエレメントが姿を見せた。 「アォォォォォォォン!」 エリューションが大きく咆哮すると、雷が荒れ狂う。そして、その場にいた若者たちを焼き尽くそうとした。誰もが若者たちの死を確信していた。 しかし、正にその時だった。 「どうやら間に合ったようだな」 若者たちを守るように現れたのは『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)だ。既に始まっていると思い急いでみればこれだ。 (少年達は三尋木の連中に実験台代わりに使われているだけだが、やろうとしている事は犯罪だからな) 躊躇の念が無いではない。 しかし、真っ当な道に戻れるならそれに越した事はない。 死んでしまってはその先に存在する可能性はすべて消えてしまう。それだけはさせる訳に行かないのだ。エリューションに対峙しながらAFを起動させる。 「兎も角、見殺しはしまい。行くぞ、変身!」 言葉と共にクリスタル状のパーツを付けた鎧が疾風の体を覆っていく。 雷を身に纏うヒーローの登場だ。 「一般人に神秘の試作品を渡すとか利の為にしてはやり過ぎ! 普通に完成品を渡すのも駄目だけど」 四条・理央(BNE000319)は素直に怒っている。しかし、その怒りはこの事件の背後にいるフィクサード達に対するものだ。 元々、理央は神秘に対する造詣が深い。それだけにこの事態の危険度は誰よりも分かっている。また、彼女は心根のところで神秘に染まり切っていない所がある。だからこそ、この事態を引き起こし、ましてや事態をほったらかして姿をくらますような連中のことが許せないのだ。 本来であれば魔眼で若者たちの安全を確保したい所であったが、時間をかけすぎると余計な人を巻き込んでしまう可能性もある。それを考えると、そこまでの余裕は無かった。 「……あー、まあ、真面に叱ってくれる相手が居ないとこうなるのかね。俺も人の事は言えねえから難しい所だが」 怯える若者たちを見ながら、『蒼き炎』葛木・猛(BNE002455)は苦笑を浮かべる。彼自身、昔は荒れに荒れた暴力の日々を送っていた。革醒した後など、もっとひどい。それを思えば、決して彼らのことを笑うことは出来ない。その姿は自分がなっていたかもしれない姿なのだから。 「まあ、説教やらなんやらは後にするとして……先ずは派手に暴れてやるとしますかねえ!」 派手に自分の拳と拳をかち合わせると、エリューション達の前に立ち塞がる猛。 すると、その姿を目にしたエリューション達は、リベリスタ達に注意を向け、威嚇するように唸りを上げる。 しかし、その程度のことで怯えるのはこの若者たちのように、神秘に触れた経験の無いものの話だ。百戦錬磨のリベリスタ達にしてみれば、恐れるに足らず。ましてや、後ろに護るものを背負った『遺志を継ぐ双子の姉』丸田・富江(BNE004309)にしてみれば、怯む理由などどこにもない。 「さてと困った子供達だねぇ……まぁまずは事態を収めてからしっかりと反省させないとねっ」 「三尋木もまた随分と面倒な代物を一般人に……いいえ、子供相手に手渡してくれたものですね」 富江が目配せをすると、後ろにいた『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)も頷く。 おそらくは実験が失敗した後に、アークが始末を付けに来ることも織り込み済みなのだろう。そう考えると、自分達は便利に利用されているだけなのではないか? そんな疑念がわずかに少女の胸をよぎる。 しかし、そのようなことを悩んでいる暇は何処にもない。。目の前の事態を収拾せねば、何も始まらないのだ。そこで富江は温かな眼差しに闘志を浮かべる。相手を殺すための闘志ではない。護るべきものを護るための闘志だ。 「何れにせよ、今の私達は任された事をちゃんと果たすだけ……ですね」 「あぁっ! 戦闘開始といこうかねっ」 「任務開始。さぁ、戦場を奏でましょう……貴方達の相手は、私たちですよ?」 指揮官の合図を受けて、『アクスミラージュ』中山・真咲(BNE004687)が宙に飛び出す。漆黒の三日月斧がエレメントにぶつかり、派手に火花を散らせる。 「あいたたた、バチバチってなった!」 言葉とは裏腹にバトルマニアは無邪気な笑いを浮かべた。 この場にいる若者たちは完全に自業自得だ。ただまぁ、ここで殺されてしまうというのもかわいそうな話だ。それにエリューションをこのまま暴れさせるというのもよろしくない。 「リベリスタのお仕事、といきましょう」 バルディッシュ<ヘルハウンド>を握り直すと、遠心力を付けて高速の攻撃を開始した。 「イタダキマス!」 一方、リベリスタ達の元へと一斉に集まって行くエレメントを尻目に、『断罪狂』宵咲・灯璃(BNE004317)はエリューションの前に立って不敵な笑みを浮かべた。 わずかな光だけが差す戦場で、その瞳は炎のように輝いた。 「ほら、かかってきなよ。灯璃が遊んであげる!」 挑発的な言葉を向ける灯璃。その雰囲気はエリューションにも伝わったのか。唸り声を上げて襲い掛かってくる。しかし、そこへ赤と黒の双剣がカウンターの形で決まる。その傷口から呪いが忍びこみ、エリューションの動きを止めて行く。 一応、足止めのためだ。 仲間にはやるべき仕事があるし、『フィクサード』の安全も守ってやらねばならない。 「神秘を犯罪に用いたら“フィクサード”かぁ。モリゾーだっけ? 彼、良い事言うね」 狂気すら秘めた表情で笑う灯璃。彼女が真に罰したいのはフィクサード。エリューションはそのついでだ。 「警察に突き出しても器物破損程度だろうし。フィクサードにはちゃーんとお灸を据えなきゃ! うふふ、あはははははっ!」 人も知らぬ闇の中で繰り広げられる、神秘の鬩ぎ合い。 リベリスタ達にとってはいつものことかも知れないが、神秘にうっかり足を踏み入れてしまった若者たちにとってはそうでもない。 「今回はお前等は運が良かったん。次は助けなんか来ないと思っておくんだぜ」 そんな若者たちを脅しつけるように、『破邪の魔術師』霧島・俊介(BNE000082)は闇のオーラを蠢かせる。ひっと短く悲鳴を上げる若者たち。 どうやらそもそも足が動かないらしい。スキルに巻き込まないようにするのが精一杯と言った所か。 しかし、それが分かったのなら、俊介のやることは1つだ。 「大丈夫、死なせない」 短い言葉に幾多の想いを乗せて。 俊介は道を切り開くべく、力を解き放った。 ● 暴走したエリューションは雷を撒き散らしながら、リベリスタに対抗してくる。『三尋木』が目を付けたのもむべなるかな。これが自在に操られる戦闘力として投入されたら、危険な戦力となったのに相違はあるまい。 しかし、制御を外れて獣のように振る舞うエリューション等、リベリスタにとっては手慣れただ。エリューションを灯璃が石化で抑え込んでいる間に、エレメントは見事リベリスタ達の目論み通りに集められてしまう。 「今は私達が何とかします。逃げられないのなら、そこから離れないで下さい」 若者たちが安全な位置にいることを確認すると、ミリィは戦場を見渡す。予定通りに敵は集まった。後は一気に潰してしまうだけだ。 戦奏者の奏でると、戦場に勝利の証明が刻み込まれる。瞬く間にリベリスタ達の戦闘攻撃力は通常を『逸脱』していく。 「雷の魔獣に壱式迅雷は通じるか? だが!」 疾風は足に気を集中させると、無欠の歩法で一気に解き放つ。 自分の技と敵の能力は同質のもの。通じるかどうかは分からない。それでも、人々を護るために迷う事無く踏み切った。 果たして、常識からはあり得ない速度まで加速した武舞は、エレメントを撃ち落していく。 比較的負傷の少ない個体が仕返しとばかりに電撃を撃ち込もうとする。しかしその時、エレメントに向かって大きなマグロが振り下ろされた。 「かっちこっちに凍った本マグロの味はどうだい? まさにアタシ専用の鈍器だね」 するとどうだろう。 自慢げに冷凍マグロを振り回す富江の前で、敵味方の識別が出来なくなったエレメントは同士討ちを始め出す。攻撃の衝撃で混乱したのだ。 「さてと、やっちまいなっ! 後の事大丈夫、アタシにまかせておきなっ」 富江が檄を飛ばす。 しかし、そのタイミングでエリューションも自ら束縛を打ち破った。既に標的は自分を捕えたフィクサードでも、良いように扱ってくれた若者たちでも無い。傷を付けてくれたリベリスタ達だ。 「ウォォォォォォン!」 雷の魔獣は怒りのままに雷を放とうとする。 その時だった。 「分かった! こういうことだね!」 理央の声だ。 彼女はエレメント達の隙を縫うように、若者たちが落とした護符の元へと向かっていた。この破界器は「失敗作」であり、エリューションを支配するような効果は得られない。しかし、その動きに干渉をする程度なら、残った魔力でも可能なはずだ。 単に革醒者であれば使える程簡単な代物ではない。だが、理央は独学で力の制御にまで至ったリベリスタだ。その労苦に比べれば、この程度の破界器を制御する等、造作もない。 そして、理央が護符を掲げるとどうだろう。 みるみるエリューションはその動きを遅くしていくではないか。 「よぉ、こっちの方が数倍食いごたえがあると思うぜ。暴れるんなら俺らが相手になってやる」 慌てる様子を見せるエリューションの前には、いつの間にか猛が肉薄していた。まるで地面を縮めているかのような動きだ。しかし、エリューションの驚きはそれに留まらない。いや、それ所ではいられない。 「教えといてやるよ。喧嘩はよ、ビビッた奴が負けんだぜ?」 真っ白な籠手が光を放つ。すると、羅刹を思わせる闘気を纏った猛の拳がエリューションに向かって叩き込まれる。 一撃。 一撃。 拳が叩き込まれるたびに、エリューションの巨体が大きく揺れた。 「お待たせ。さて覚悟しな、獣ちゃん!」 理央が護符を使用したのを見て、一緒に破界器の解析を行っていた俊介も攻撃に回る。 胸中に過る思いは表に生きる人達は、どんな理由があれ此方のものに触れて欲しく無いというもの。もしも触れてしまったというのなら、意地でも戻る。それだけの話だ。 「それが多分、良い事なはずだからって信じてるん!」 俊介の意地と祈りが閃光となって戦場を焼き尽くす。神聖な裁きの光に焼かれて、残っていたエレメント達も一斉に消滅する。 「お待たせ、一気に決めよう!」 道を阻む壁を壊した。 敵の攻撃力も削いだ。 既にリベリスタ達を止める者は無い。リベリスタ達の力が一斉に爆発する。 「速くてカッコいい! でもボクも負けないよ!」 今なお、エリューションの速度は真咲に劣らない。それでも、真咲は追いついて見せる。 斧が光を纏い、その飛沫が飛び散るように見えた。 「如何したのさ。灯璃をもっと楽しませてよ!」 灯璃の姿を見て、狂気を感じない者はいないだろう。技の反動すら顧みない変幻自在の戦いで、エリューションを追いつめて行く。 あぁ、楽しい 光と闇が彩る戦い。 果たしてそれが続いたのはどれ程の間だったのだろうか。 戦いの中に身を置いていたものには、永劫の時であったかも知れない。 戦いを客観的に見ていたものにとっては、あっという間だったのかも知れない。 いずれにせよ、石化したエリューションが粉々に砕け散った時、戦いは終わりを告げた。 「壊れちゃったらそこまでね。な~んだ、つまらない」 灯璃は妖艶な仕草で自分から流れる血をぺろりと舐める。如何に楽しい戦いであっても、相手が壊れてしまえばそこまでだ。 「ゴチソウサマ」 妙に真面目な表情で真咲が手を合わせる。これが彼女流の命を奪う行為に対する礼儀。 そして、おもちゃのように扱われたエリューションへの追悼の意であった。 ● 「しっかし、エリューションを操るねえ……失敗作とは言え、何れ完成させられる様な事があるとしたら厄介だが」 戦いの場から距離を取って、猛はぼやく。思い出されるのは先刻の倫敦で戦ったキマイラ達だ。あのような戦いを日本で繰り広げられたら叶わない。見れば、俊介も同じことを考えているようだ。フォーチュナに今後の捜査を依頼すると言っている。 「ま、ともあれだ」 そう言って目を現場にいた若者たちに向ける。先ほどの戦いを目にしていた彼らはすっかり小さくなってしまっていた。 「いいですか、貴方達。これに懲りたら少しはマシな生き方をしてみなさい。また同じ目に遭いたくはないでしょう?」 「社会っつールールの中で守られて生きてるって事を覚えとくんだな。……そこからはみ出たらどうなったって自業自得にしかなんねえよ」 ミリィと共に語る猛の言葉には、何処か自嘲の響きが伴っていた。 「で、でもよ……」 若者たちのリーダー格が何かを反論しようとする。しかしその時、その前に灯璃の刃はスッと姿を見せる。 「今回は、未遂だから見逃してあげるけど、もしまた同じような事をしようとしたら……」 「ひっ」 短く悲鳴を上げるリーダー格の頬をそっと刃が撫でる。うっすらと赤い線が浮かび上がった。 「灯璃との約束、忘れちゃダメだよ? 次は――殺すから、ね?」 そして、また腰を抜かすリーダー格を尻目に、興味を無くした灯璃は一足先に場を離れる。フィクサードがいない以上、此処に留まる必要はない。 「もしまた悪いことするなら、それこそ助けるどころじゃなくて。今度は、お兄さんたちを狩らなきゃいけなくなるかもしれないしね」 真咲はにっこりと笑顔で告げる。もはや、若者たちも恐怖しか感じられ無いようだ。 がくがくと首を縦に振る。 「毎回助かるとは限らない。死ぬぞ。これを機に真面目に生きるんだな」 「人生一回しかねぇんだからさ。馬鹿な事で時間潰してないで、もっと本気で生きてくれよ」 疾風の言葉には厳しさが見える。もちろん、これ以上神秘に関わらせないようにという彼なりの優しさもあってのことだろうが。 俊介の言葉には相手を思う真摯な想いがあった。若者たちにリベリスタ達の背負っている事情は分からない。それでも、何か伝わるものはあった。 リベリスタ達の言葉に顔を見合わせると、頷き合う若者たち。それを見て、富江はこれならもう大丈夫だろうと判断する。理央のスキルで事件に関わる記憶を封じはするが、ここでの経験から得たものは消えまい。 「それなら良いんだよ、あっはっは」 富江は思い切り若者たちの背中を叩く。 「怒る」のではなく「叱る」。それが年長者として若者たちを導く道だと彼女は知っている。 事件が終わり平和を取り戻した夜に、富江の豪快な笑い声が響くのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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