●遭遇戦? ……この現状はどういうことだ。 アークのリベリスタ達は内心首を捻る。 眼前には一人の人物。その女性は手足を拘束され、車輌のトランクに現在進行形で押し込まれている。酷く怯えた様子で、現在までの彼女の状況が忍ばれた。 それを囲むはアークのリベリスタ達。他のリベリスタ組織からの応援要請を受け、この場へとやってきたところだった。 ――さらにそれを囲むのは、フィクサードの一団であった。 「――まずいな。なんとかして突破を考えなくては」 歯噛みする『クェーサーの血統』深春・クェーサー(nBNE000021)。想定以上の状況に、現状の打破せんとその知識と経験を最大限に頭脳で回す。 「弟よ、ここまでの流れは予定通り。このまま畳み掛けるで構わないか?」 「了。兄者の言うままに」 そのフィクサードの一団の中心人物と思われる二人の男……よく似た外見をした、二人の東洋人。長袍と呼ばれる黒い衣装に身を包んだ二人からは只ならぬ殺気を感じる。 二人の違いといえば、兄と呼ばれた男はその長い髪の前髪が無造作に垂らされ。弟と呼ばれた男は前髪をアシンメトリーに切り揃えてる程度の違い。 地下に広がる広大な駐車場にて、捕まった他のリベリスタ組織の仲間を救出する為に訪れたアークのリベリスタ達は、ここでフィクサード達と遭遇したのだ。 交戦の可能性は予想されていた。だが、このような形ではなかったはずだ。 ……出入り口を封鎖され、完全に囲い込まれるような形の遭遇では。 ――何かがおかしい。この戦いは確実に何か、事前に知った情報とは違う点がある。 それは数々の修羅場を潜り抜けてきたリベリスタ達の、直感に似た確信であった。 ●ブリーフィングルーム ――少々時間は遡り。 「……というわけで、皆さんには救出に向かってほしいわけですよ」 アークのブリーフィングルーム。いつもの如く『黒服』 馳辺 四郎 (nBNE000206)が集まったリベリスタ達へと説明をしている。だが、いつもとは少々違った点もある。 一つ目は、いつもならば四郎は予知されたデータを資料として印刷し、リベリスタ達へと提示する。だが、今回はそのいつも配られる資料がない。 二つ目は、いつもならアーク所属者しかいないその場に見知らぬ顔が二人ほど存在していた。 何故ならば彼らが、今回の依頼を持ち込んできた他のリベリスタ組織『宵闇』のメンバーなのだ。 彼らが言う所によると、任務中にフィクサードと交戦。その際に同じ仲間の一人が捕縛されたというのだ。 彼らの組織は小さく、実力者もこの場にいる二人とその捕まった女性の三人しか存在せず、反撃に移るには力不足。仲間を救出する為にアークの協力を要請……という流れだそうだ。 「一応裏を取ってみた所、彼らの言う話は大体事実のようです。多少のイレギュラーの可能性はありますが……まあ一番イレギュラーなのはリベリスタの皆さんの素行ですし、問題ないんじゃないですかね?」 無茶苦茶を四郎は言っているが、つまるところ予知の誤差範囲程度の違いしかない、れっきとした応援要請だということだ。 「すまない、俺達の戦力が足りないばかりに君達に余計な苦労をかけることになってしまう。だが、仲間だけは助けないといけないんだ。宜しく頼む」 応援を要請したリベリスタ組織の男、宵野御琴は深々と頭を下げた。同様にもう一人の男も頭を下げる。 こうしてリベリスタ救出作戦は始まったのだ。 ――後の状況を予想させることもなく。 ●李兄弟 「弟よ、彼らは――アークは来ると思うか?」 「可。兄者が思う以上に彼らはお人好し」 とあるビルの一室。二人の人物が静かに言葉を交わしている。 彼らの名は兄が李朱源。弟が李蒼淵と言う。 本来は大陸を舞台に活動していた職業凶手であったが、さる縁より逆凪と繋がりを持ち、日本へ流れてくることとなった兄弟である。 「アークは単独で力を増している。それ故に自由にさせておくのは困ると言う事だ」 「肯。事実彼らは強い」 少々のリスクを持ってしてもここでアークを削り取っておく。特にその主力を、だ。実力者を失えば組織としての実力の天井は大きく損なわれ、再び取り戻すまでに長い時間が必要となる。その為の一手、なのだ。 尤も逆凪の大将からすれば優秀な者が減るのは敵味方問わず惜しい可能性はあるが。 「彼らを誘い込み、叩く。この場で慈悲もなく。殺害こそが我らの得手」 その時、部屋の扉が開き。明らかに堅気ではない雰囲気を纏った男が彼らに声を掛ける。 「李さん、奴らが来た。想像以上にえげつない編成だ」 「解った。すぐに包囲する」 男の言葉に朱源が頷き、兄弟は部屋を後にする。 「いくぞ、弟。騙し討ちのような形は気が引けないこともないが……強くなりすぎた彼らが悪い、そういうことだ」 「否、兄者。天命也」 ――かくして偽装された戦場は始まる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:都 | ||||
■難易度:HARD | ■ リクエストシナリオ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年03月10日(月)23:16 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●我々 ――ああ、始まるぞ。 狩りが始まる。『俺達の』狩りが始まる。 ああ……楽しみだ。 ●包囲 「事前の情報と違う!」 「待ち伏せとは穏やかじゃないね……どういうこと?」 「し、知らん! こちらの動きが読まれていたか……!」 「罠の可能性はあるとは思っていたけれど、相手の配置が周到すぎる!」 広大な地下の空間に喧騒と叫び声が響く。 『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)が叫び、『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)が疑念の声を同行した宵闇の二人、紫ヶ崎 涼と宵野 御琴の二人に問う。二人もまた、動揺した様子で叫び返す。 リベリスタ達は地下駐車場の中央にてフィクサード達に包囲されていた。 リベリスタ組織『宵闇』のうち、捕縛された仲間を救出する……その為に敵を避けて無事仲間……日生 美緒の押し込められた車両まで辿り着いた瞬間、周囲は包囲された。フィクサード達にだ。 この状況は宵闇の二人にとっても想定外だったのだろう。周囲の状況に完全にパニックを起こしかけていた。 「落ち着け! 想定外の状況なんて、これまで何度でも味わった!」 「その通りだ。冷静さを欠いては本当に詰む。粛々と対応しろ!」 取り乱す者、責める者。そのような皆に『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)が檄を飛ばす。深春の指示もまた、同様に飛んだ。 事実である。万華鏡の効果が及びにくい海外での戦いが増えるほどに、想定外の状況というのは増えていった。それらを経験することでアークもまたイレギュラーへの対処は慣れてきたのだ。 「馳辺さんの悪戯でないなら、視えなかったということ……未来視対策か、情報隠蔽の類か」 周囲を油断なく見回し、『現の月』風宮 悠月(BNE001450)が呟く。さすがに命の関わるここでそういった悪質な冗談をフォーチュナがするとは思えないが、少し脳裏をよぎるあたり、馳辺 四郎というフォーチュナの信頼感が伺われる。 「泳がせていた、ということだ。アークの戦力、削がせて貰う」 「同。皆、処理する」 李朱源と李蒼淵。よく似た外見の二人が構えると同時にフィクサード達も一斉にそれぞれの武装を構え、じわじわとリベリスタの包囲を閉じ始める。 「とにかく脱出だ! しっかりしなよ!」 車両のトランクに詰め込まれていた美緒の拘束を夏栖斗が解く。 「あ、あ…… 拘束から逃れたことと、切羽詰った状況に美緒は言葉が詰まり、ただ拘束を解いた夏栖斗の姿を怯えた目で見つめ続ける。その美緒の肩を『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)が掴み、正面から目を見て揺さぶった。 「まずは深呼吸だ。仲間の二人もいる、落ち着くんだ」 杏樹の言葉にこくこくと頷く美緒。 「もう大丈夫。皆で一緒にここを突破しようね。がんばろ?」 『淡雪』アリステア・ショーゼット(BNE000313)が美緒を庇うように立ち、声をかける。アリステアのような少女もまた、この局面において抵抗する意思を見せている。その様は美緒を安心させるには十分であった。 こくり、と頷き立ち上がる美緒。リベリスタ側に反撃の態勢は十分に整った。 「通して貰う……! 邪魔をするのならば、切り開く!」 双剣を抜き放ち、『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)が駆け出した。それに合わせ、リベリスタ達は行動開始する。 「案ずるな、包囲を固め順に殲滅しろ!」 朱源の叫びと同時にフィクサードもまた動く。 前面衝突が、始まる。 ●凶劇 「何を仕掛けた、李 朱源!」 「答える必要はない」 快の問いをばっさりと切って捨て、朱源はその手で十字を切った。そこから生み出された光がフィクサード達を淡く包み、加護を与える。新田もまた、同様に十字を切り生み出した光で仲間を包み、守護した。 ――交戦と同時に、否。交戦以前よりリベリスタはフィクサード達へ別の戦いを挑んでいた。 この戦場は、その導入から何かがおかしいのだ。事前に聞いた情報より悪質な遭遇。どこかしら感じる違和感。 そして朱源の持つそのアーティファクト。情報を欺瞞するという、凶劇面。その力がどれほどのものかはわからないが、何か致命的なものを隠されているのかもしれない、といった危機感。 遭遇からリベリスタ達は様々な手段で相手の欺瞞を見破ろうとしていたのだ。今の快の声掛けもその一つだ。 相手の精神を見破る為のリーディング。そして精神的防護を破る、幻想を打ち破る力。それらを最大限に駆使して、相手の手の内を読みきろうとしたのだ。 他の仲間達もまた同様に、自らの持てる能力を活用し、情報をかき集める。拓真が、悠里が、相手の精神を読み取り現状の真実を読み出そうとしていたのだ。 ――その対象は、相手だけではない。味方であり、依頼人でもあるはずの宵闇の面々に対してまで行われていた。 ……そう、アークの面々は決して宵闇の面々を信用していなかった。 彼らの事を信じていないわけではない。ただ、彼らの立場を信用していないのだ。 人質を取られていたら。美緒が偽者だったら。欺瞞、という戦場に張り巡らされた罠がアークの面々の感覚を尖らせていた。 結論から言えば、宵闇の面々には異心は存在しなかった。彼らもまた、アークと同様に現状にまさに動揺し、理解が出来ていなかったのだ。 ――少々あった違和感といえば。彼らの中に、また違う何かがあるような……。 一方朱源の心の仮面を突破し、相手の企みを会話から誘い出して読もうとした快に見えたのは……ひとつの、アーティファクト。一枚の鏡。 その内容は読み取れはしなかった――恐らく凶劇面の偽装はそこまで影響しているのだろう――だが、何が偽装されているかは、漠然とだけ理解できた。 ――蒼淵の持つ鏡。分霊鏡。そこになにか、隠された事実が存在しているのだ。 「……蒼淵だ! 奴の分霊鏡が何か、秘密がある!」 読み取った快が、それを仲間に対して伝えた。 ――だが、それだけである。この戦場を支配しているものは、現在その情報ではないのだ。 回復の要であるアリステアは動くに動けないでいた。普段であれば、味方を癒すことに集中し続けることも出来ただろう。だが、この状況はそれを許さない。 ――朱源の持つ、一つの護符。殺劇圏と名づけられたそのアーティファクトが張り巡らせた領域が、それを許さなかったのだ。 癒しの為の力が拡散していくのを感じる。その護符の支配する領域において、傷を塞ぐことは許されない。徹底した殺し合いを要求される領域を突破しない限り、違う立ち回りが要求されるのだ。 ……まずは、その打開を行わなくてはいけない。 「切り開く。追随しろ」 深春が手中に生み出し、放った光球が相手の一団――北出口方面のフィクサードの群れへと、叩きつけられた。 炸裂する閃光と衝撃は朱源の張った加護を打ち砕く。閃光に咄嗟に耐えた、打ち漏らした素早い相手へは杏樹の手にした魔銃から放たれた弾丸が動揺に加護を打ち砕く。そこへリベリスタ達が殺到した。 「この囲み、突破させて貰うよ!」 拳を握り締めた悠里が、近くにいるフィクサードへと手に纏った冷気を叩きつける。撒き散らされた氷片がフィクサードへと纏わりつき、動きを拘束していく。 「ソェアアァ!」 裂帛の気合が響き、『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)の槍がフィクサードへと叩きつけられた。 その鋭い一撃は守りに欠ける相手をのけぞらせ、たたらを踏ませる。 同時に拓真の双剣が閃き、囲みをつくるフィクサードを切りつけた。重量の乗ったその剣戟もまた、フィクサードの囲みを突き崩していく。 中にはダメージを跳ね返してくる者もいるが、リベリスタ達にとって今重要なのはこの囲みを突破することなのだ。包囲されたまま戦う気は毛頭ない。撃破するにも逃走するにも、まずはこの囲みを抜けなくてはならない。そう判断したのだ。 一方、宵闇の面々もおとなしく追従しているわけではない。御琴が手にした大剣を振り回すと裂帛の剣気がフィクサード達の加護を吹き飛ばす。涼もまた、加護の破壊された相手へと銀の魔弾をばら撒いていく。美緒も加護を同様に仲間へ施し、突破を手伝っていった。 「はい、ごきげん麗しゅう! 殺意パなくて怖いね!」 切り裂かれた敵の布陣へと強引に身をねじ込み、進路を塞がれまいと夏栖斗が立ち塞がる。そして言葉と裏腹に、決して引けをとらない殺意……彼の場合は闘志、とでもいうべきなのだろうか。それを乗せた拳を叩き込んで突破路の保持を確実化していった。 ――徹底的に集中した突破は、その道を作り出すまでさして時間はかからなかった。包囲を突破することにはまず、成功したのだ。 ……第一ステップ、完了。 ●分霊 「おいおい、あんまり女の子を苛めるもんじゃないぜ?」 フィクサードの攻撃が雨霰と降り注ぐ中、アリステアや悠月といった耐久に劣る面々への攻撃者へフツの符呪が飛んだ。 朱源の張った加護は確かに強力なものであり、害意を相手に返す技ではあるが、間違っても無敵となる技ではない。拘束は確実に行われ、相手の手数を削ぎ取っていく。 包囲を抜けた後のリベリスタ達の行動は、迅速であった。防衛ラインを敷き、後衛への攻撃を防いでいく。同時に一転攻勢に移り、相手の布陣の肝――殺劇圏を所持する朱源の撃破を最優先に狙ったのである。 「覚悟!」 拓真が振り回す双剣が尋常ではない殺傷力を持って朱源へと襲い掛かる。朱源は特異な構えの武術で受け流すが、威力全てを削ぐことは出来ない。掠めた位置から血に染める。 追随するように、雨霰のように攻撃が降り注ぐ。杏樹の放った銃弾が、彼の守りを貫かんと針の穴を抜くような射撃で打ち込まれる。 夏栖斗が、悠里が、同時に飛び掛かる。電光を纏った悠里の一撃が、朱源を焼き焦がす。その吹き荒れる電光の中を貫くように、そして相手の守りごと打ち抜く様に、夏栖斗の飛ぶ拳撃が叩きつけられた。 アリステアの生み出した風が渦を巻いて相手を包み、切り裂く。普段は癒しに回されている魔力だが、決して彼女は非凡な力を持っているわけではない。攻撃にそれを回すことで、決して侮れない殺傷力を生み出すことも可能なのだ。 快が再び十字を切る。だがそれもまた、守りのためではなく相手を討ち果たす為の十字。神聖なる一撃が朱源へ叩きつけられ、その身を裂く。 ……そして悠月が、間合いへと踏み込む。魔術師ではありえない間合い。それは戦士の間合い。白兵距離に術師が踏み込むという想定外の挙動。それ故に相手は虚を突かれ……掴まれた。 「まず、倒れて貰います」 近距離から叩き込まれる、魂までも打ち砕かんとする魔力。その奔流が朱源の身を、守りすら抜けて注ぎ込まれる。全身が裂け、血を噴出す 「油断はない。だが……やはり、一筋縄ではいかないか」。 ――だが、耐久に優れるといわれる朱源は伊達ではない。総攻撃を受けても即座に倒れるということはなく、握り締めた拳が放たれる。 その拳は守りを打ち砕く鉄塊。一瞬にして放たれた拳が、肉薄するリベリスタ達の防御と加護を打ち砕く。 「連。兄者より後に倒れることは許可しない」 そこへ弟、蒼淵が襲い掛かった。無造作に振り回された手刀がリベリスタと地面、蒼淵の眼前にある空間ごと一瞬で切り刻まれる。 非常によく似た二人の構え。だがその性質は両極端であった。 朱源の拳は打ち砕く技。あらゆるものを破壊する、打撃の拳。 蒼淵の拳は切り裂く技。あらゆるものを切り裂く、斬撃の拳。 柔と剛、ともいえる二人の性質はかみ合い、攻防を作り上げていく。朱源の殺傷力も決して非凡なものではないが、蒼淵のそれは遥かに兄を上回るものであった。 結果として、両者の被害は相当なものとなる。領域内において、癒しの力が影響することはない。それがさらに両者の負傷を悪化させていく。 だが、包囲を突破したリベリスタは決して回復することができないということはないのだ。布陣から外れた仲間を美緒とアリステアが癒していく。癒された仲間は戦場に再び飛びこんでいく。 何より……いかに朱源がタフであろうとも、エース達の総攻撃に長期間耐えることは不可能なのだ。時間の経過につれて、目に見えて傷つき動きが鈍っていく。 このままならやれる、やられる……そう思ったのは、両者。それ故に。 ――兄弟は切り札を、切る。 「――やれ、蒼淵」 その言葉と同時に……リベリスタの背後から、横から、衝撃がきた。 御琴と涼、二人の一撃がアークのリベリスタを襲ったのだ。 ……最初の想定の範囲内、ではあるが。宵闇の三人――御琴も含む――の様子は明らかに異様であった。 三人に共通するのは、その表情。口角を裂けんばかりに吊り上げた笑みを浮かべ、その目は見開かれながらも白目を剥いている。 先ほどまでの彼らからはまるで想像も出来ない、その姿。その表情は――腰に下げられた鏡、分霊鏡を青く光らせた、蒼淵と同じものであった。 三人が、否。三人と、朱源を除く全てのフィクサードが同様の表情を浮かべ、嗤っている。 ギギギギギ、と。人の喉から出すには異質すぎる音を立て、周りの者達が嗤っている。 「ギギギイギヒャヒャヒャ! どうも勘付いてはいたみたいだが、本質は視えなかったみたいだなぁ!」 先ほどまでの様子とまるで違う口調で、蒼淵は嗤う。同じ表情を浮かべた者達と同じ声で、嗤う。否、周りの者達が蒼淵と同じ声で嗤っているのだ。 ――アークのリベリスタは予測していた。彼らが裏切るであろう、と。そこは間違いではない。 だが、裏切りではないのだ。欺瞞されていた情報故に、彼らはこのようになっているのだ。 分霊鏡。それは意識をリンクする道具ではない。――意識のコピーを埋め込む道具なのだ。操り人形ではなく、蒼淵の分身となるのだ。 凶劇面は騙し切った。『分霊鏡の能力に関わる情報』を。――それ故に『宵闇の全員が襲撃時に捕まっており、分霊鏡で蒼淵の分身を埋め込まれていた事実』ごと。 ――そこから先はよく覚えてはいない。 アークの精鋭達は包囲を突破し、無事に本部への帰還を達成させた。蒼淵と同じ表情を浮かべ、同じ技を振るう宵闇の面々を突き放して。 ――後日、アークへと三つの小包が届く。その大きさは丁度、人の頭が入るぐらいのサイズをしていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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