●世の中にその名を背負っている人は結構居ます。 その日、男達は出会った。 「……そうか、お前もバレンタインだったのか」 「へへっ。そういうあんたもヴァレンタインだったとはな」 片や黒衣に身を包んだ長身痩躯の男、片や巨体を猫背に曲げた丸坊主の男。 「俺には分かる。お前がどれだけここで苦しめられてきたか」 「俺にだって分かるぜ。あんたがどんだけ辛酸を嘗めてきたか、な」 出会った場所、公園のベンチで肩を並べる二人の男。 遠く聞こえるのは、自らの名と同じイベントを声高に謳う商店の宣伝する音。そして、 「ね、ね。昇君、今年はどんなチョコが良い?」 「そーだなぁ。去年のチョコクッキー砂糖じゃなくて塩入ってたからそれ以外が良いな」 「もー! それは言わない約束でしょー!?」 「ははは、ごめんごめん」 公園を歩く男女の声。 「あの! …先輩は、甘い物って好きですか?」 「抹茶とか渋みのある奴が好きかな」 「……抹茶チョコって、アリですか?」 若々しく、来る日に備えて動き出す乙女達の声。 「悠君に、友君に、七海君に……」 「ヒロちゃん本命誰なのか分からないよね」 「本命はユイちゃんだよ?」 「えっ」 「えっ」 それはいずれも、どこかしら甘い響きを持っていて。 「……なあ、ヴァレンタインの旦那」 「なんだ、バレンタイン」 「どこもかしこも、甘い空気を出しやがって…そう思わねぇか?」 「そうだな。だってのに俺達の所には何の縁もない」 「ヴァレンタインなのに」 「バレンタインなのに」 二人の間に降りる静寂。ゆっくりと顔を向き合わせる。 互いの顔には絶望と、悲しみの涙があった。 「やるか」 「やるしかねぇ」 そうして二人は、手を取った。 悲しき星の元に生まれた運命に、唾を吐き付けるために。 ●チョコレート工場を守れ! 「フィクサード集団がチョコの加工工場を襲撃する計画を事前に入手しました」 手元の資料を確かめながら、天原和泉は集まったリベリスタ達に詳細を説明し始める。 「作戦の首謀者はジョン・ヴァレンタインとデクンド・バレンタインの二名。どちらもValentineですけど拘りがあるそうです」 こほん、と一言。 「彼らはバレンタインデーの円滑な進行を妨害するべく、チョコレート工場襲撃を企てた模様。その動機は……推して知るべし、ですね」 和泉によって作成された資料には、彼に賛同して複数のフィクサードが計画に加担している事が書いてあった。 そのどれもが男性である事から、やっぱり理由は明白だろう。 「直接カップルを襲撃せずにその製造元を叩こうとする辺りに本気度が窺えます。彼らも作戦に対して必死なのでしょう。ですが――」 どんなにくだらないとバッサリ切り捨てられるような理由であっても、フィクサードの起こす犯罪を見過ごす事は出来ない。それが『アーク』のリベリスタたる者の意志であり本分なのだ。 「くれぐれも彼らの説得(魅了状態付与)に応じる事の無いよう、気を付けて下さいね? …ふ、フリじゃないですよ?」 フィクサード許すまじ。されど、説得されちゃったら暴れるのもしょうがないかもしれない。しょうがないかもしれない。だって魅了状態だし。 兎にも角にも、リベリスタ達は現場へと向かう。 フィクサードの悪事を止める為に!(バレンタインデーを守る為とは言っていない) |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:みちびきいなり | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月10日(月)22:03 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●チョコレート工場を救え! バレンタインデーを控えた2月某日。日本のとあるチョコレート工場は危機を迎えていた。 「や、止めてくれ。これじゃあバレンタインデー用のチョコの販売が滞ってしまう!」 工場内の倉庫に集められた職員の一人が、目の前の細身の男に懇願する。 この時期は掻き入れ時であると同時に、自分達に注目が集まる数少ない機会。そんな大一番を前にして現れた突然の闖入者達は、瞬く間に職員を捕えると倉庫に彼らを押し込んだ。 「俺達の目的はバレンタインデーの妨害だ。お前達には悪いがその職務、休んでいて貰うぞ」 「そんな!?」 絶望の表情を浮かべる職員を片手で軽く突き飛ばし転ばすと、細身の男――ジョンは傍に控える男達に言う。 「機関部を探せ。そこを破壊できれば修理に数週間は掛かるだろう。そうしている間にバレンタインは終了だ!」 「「おう!」」 応える声は複数で、そのどれもが昏く狂気にも似た血走った目をしていた。 「ヴァレンタインの旦那」 不意に声が掛かる。部屋に新たに入ってきた男の声だ。 「デクンド、どうした?」 「お客さんだ。女が数人、ボブが工場の玄関に立ってるのを見たと言っている」 「そうか」 職員の家族だろうか。だとしたら運が悪い。 「ケンイチ。ボブ達に伝えろ。手厚く歓迎しろ、とな」 「了解」 言葉に従い、ケンイチと呼ばれた青年が部屋を出る。代わりにデクンドと呼ばれた筋骨隆々で禿げ頭の男が部屋に残った。 「へへっ、俺達の計画成功まであと少しだ。なぁ? ヴァレンタインの旦那」 「ああ、もう少しで、多くのバレンタインデー信者の絶望の声が聞ける。ククッ、今から楽しみだ」 二人の男は、自らの作戦の成功を信じて疑わずに笑い合う。それを工場の職員達は恐れる事しか出来なかった。 運が悪い。 様々な意味を込めて、この場の皆がそう思っていた。 ●プレゼントフォーユー!(シリアス終了のお知らせ) 玄関を通り、来客の女達は工場内へと案内されていた。 「へ、へへ。可愛い子がいっぱいで、堪らないデス」 案内役を務めている男、ボブがだらしのない笑みを浮かべている。それをにこやかに受け流しているのは自称17歳……もとい、『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)だ。 雑談混じりに、ボブに恋人はいないのかと聞かれれば、 「かっこいい男性を苛めたり、少年にときめいたりしてられなくなるから作らないの」 蠱惑的な笑みと共にそう答えたりもして、褐色肌のボブの頬を赤く染めさせたりしていた。 他にも居並ぶ五人の女性のその全てが色取り取りに魅力的とあって、彼の心は舞い上がらんばかりだった。だからこそ気付かなかった。彼女達が何かを待っているかの様に静かにしていたのを。弱冠一名汚物を見るような眼差しを向けてるのは気にしない。 「ボブ!」 「ケンイチ! タケシ!」 彼女達の前に新たに二人の男が姿を現し、合流した時、彼女達は動き出した。 「もし……」 不意に、今まで黙っていた金髪の小柄な少女――エイプリル・バリントン(BNE004611)が口を開く。男達を上目遣いで見上げ瞳を潤ませての声掛けに、男達は一様にドキリとした。 「な、なんだいお嬢ちゃん! お、お兄さん達に言ってごらん!」 やや上ずった声で返事をする男達の顔をそれぞれ見てから、エイプリルは隣に立つ楚々とした印象を与える長い茶髪の女性――『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)と視線を交わす。それを受けて、旭が小さく頭を下げると切り出した。 「一緒に楽しめたらいーなって、おもって。チョコ、つくってきたの。よかったら受け取ってくれる、かなあ……?」 「「「な、なんだって!?」」」 余りにも意外な言葉に、男達は驚愕の声をあげた。 バレンタインではないこの日にどうしてチョコがあるのか、渡そうというのか、そんな小さな疑問は一瞬で消し飛んだ。 「お、俺達にくれるっていうのか!?」 「もっちろん!」 モヒカンヘッドのタケシの声に元気よく返事をする『さいきょー(略)さぽーたー』テテロ ミーノ(BNE000011)。 「はいっ! これっ! ミーノからぷれぜんっふぉーゆー!」 男達に戦慄が奔る。 ミーノが取り出したのは、製氷容器に固められたチョコがそのままラッピングされた物だった。 漂う地雷臭。しかし見れば満面の笑みのミーノが居て。 「あのね、うまくとれなくて……でも、いっしょうけんめいつくったんだよっ!」 彼女の言葉に男達の妄想が膨らむ。 「ミーノもチョコつくるよ~っ」 ほわほわと慣れないチョコ作りをする愛らしい少女が、レンチンでチョコを溶かそうとして苦戦したり、一生懸命ボウルの中のチョコを掻き混ぜたり、冷やしたチョコが取れなくて涙目になったりした結果。 「ひえひえチョコかんせい! きっとよろこぶの~」 喜びの声と共に完成したのだ、と。 「……ありがとう!」 男達に彼女の差し出したチョコを押し返す事など出来なかった。 続けて、旭とエイプリルによって複数のチョコが配られる。それぞれ梱包が違う数種のチョコレート。 「わたしと、エイプリルさんと、ランディさんとで作ったの。あ、それはランディさん作のだよ」 前髪で目が隠れてる男、ケンイチが受け取ったのは手触りからクッキーの様だった。 ボブやミーノからチョコを貰ったタケシもそれぞれに受け取っては、すでに顔はでれっと緩み切っている。 「お、俺。生まれて初めて女の子からチョコ貰った……!」 「それもこんな美少女達に!」 「後悔、ない、デス」 感激の涙すら流す彼らに、今が好機とセレアが声を掛けた。 「大人しく投降なさい? ただでさえ不幸なバレンタインデーが更に不幸な貴方の命日になるわよ?」 男達の表情が変わる。そこまで来て、彼らはようやく事態に気づいたのだ。 「バレンタインてね、すごくすてきなイベントだよ。お友達とチョコレート交換したり、日頃の感謝を形にしたり……」 畳み掛けるように旭が説得を試みる。バレンタインを壊すのではなく、楽しむ道があるはずだと。 「もしも話を聞く気があるのなら、外で話さないかい?」 エイプリルが彼らを導かんとそう口を開いた時だった。 「え、ええい!!」 男達が一斉に距離を取る。 それぞれに構えを取り、戦う意志を示して。 「お前達、リベリスタか!」 「くそう騙された!」 「ヒトデナシ!」 口々に悪態をつくが、彼らの手は受け取ったチョコレートで埋まっているため緊迫感台無しである。 「このチョコレートも、俺達を油断させるための作戦だったのか!!」 「ちくしょおおおおおお!! 騙したなぁああああ!! よくも騙してくれたなぁあああああああ!!」 「ジーザス!」 そこに一言入り込む。 「いえ、手作りですよ。本当に」 『メガメガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)の端的な言葉が、場を止めた。 「え、ほんとに?」 「ほんとほんと」 「ほんとのほんとに?」 「本当よ、食べてみなさいな」 うんうん頷くイスタルテと、便乗して答えるセレア。男達の敵意も止まり、ついつい言われた通りにチョコの包装を解いていく。 そして、一口。 「硬っ!? 歯、歯が痛い、デス!」 「と、とれねぇぇぇぇぇぇ!! どんだけくっついんてんだこれぇ!」 ボブとタケシの叫びが響いた。 「お、これは美味しい。当たりだな。ガトーショコラ風って奴かな?」 ただ一人美味しくチョコクッキーを頬張るケンイチが、これの作者である“ランディさん”を探す。 「これ、君が?」 視線を向けたのは、小柄な体躯に豊満な肉付きのトランジスタグラマー、『究極健全ロリ』キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)で。 直前まで三人を継続して汚物的扱いで見つめていた彼女だったが、その表情を変えた。 攻撃的な、邪悪ロリ特有の笑み。 「それを作った人を教えてあげましょう。それは……」 次の瞬間、俺だよ! と、物陰から飛び上がり身を現わす影一つ。鍛え上げられた筋肉質ボディ、野性味溢れる笑顔の、男。 「どうだ、俺の作ったチョコは美味いか?」 ランディさん、ことランディ・益母(BNE001403)は女性陣の傍に降り立ち、ケンイチの顔を窺い、言葉を続ける。 「しかもそれは、旭達と一緒に“仲良く”作った物だ」 突然のリア充アピールに、ケンイチの表情が幸せから絶望へ相転移していく。 「……そう、その絶望したツラが見たかった!」 ランディの言葉の直後に、男達の絶叫が木霊した。 一部始終を見つめていた今回の保護者枠『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)氏は後に語る。 弄ぶ。というのはああいう事を言うのだろう、と。 ●バレンタインを呪う者 ボブ達がリベリスタに撃破されたという報は、即座にジョン達へともたらされた。 「チッ、よもやこんな作戦にまで首を突っ込んでくるたぁ…」 「箱庭のリベリスタ共め!」 悪態を吐く間にも、プレッシャー達は近づいてくる。彼らは覚悟を決めた。 「行くぞ。デクンド、トム!」 「おうよ!」 「オッケイ!」 倉庫を出て、接近するリベリスタ達の元へと駆けていく。 そろそろ会敵予想地点に迫ろうという時に、突如として閃光が彼らの視界を奪った。 「しまった。フラッシュバン、か!」 「くっ、警戒しろぉ!」 閃光が抜け、彼らの視界がゆっくりと正常な物へと戻っていく。そんな彼らの正面に、人影一つ。 「……実は今回、ちょっと嬉しかったんです」 ゆらり、と。僅かに俯いているのか視線を窺う事が出来ないが、女が一人。 一歩ずつジョン達へと近づいていく彼女は、今回のモ女(モテない女子の略)担当、イスタルテだ。 「こんな機会滅多にないから……だから精一杯、心を込めて作りました」 ようやく窺えた瞳に、ハイライトは無い。 ゆっくりと前に差し出すのは血を連想する真っ赤な包装紙を、モノトーンのリボンで飾ったチョコレート。 「受け取って、いただけますよね?」 焦点の合わない瞳を向けながら照れた風に笑う。絶望的にアンバランスな顔だった。 「「「………」」」 敵どころか味方もドン引きである。 「あ、明らかに受け取っちゃいけない系のチョコだろおおお!?」 「こいつぁ絶対血とか入ってるぜぇ!」 「オーノゥ!」 血の混入の有無に関しては、ランディ氏曰く目が据わっていた。との事です。 戦々恐々といった様子のフィクサード達に、イスタルテの言葉が追撃する。 「受け取って、貰えない?」 一瞬の空白。きょとんとした表情。そして……一変して憎々しげな顔になった。 「貴方達も私の事が嫌いなんですね、これだけ、貴方達の事を思っていたのに……!」 初対面である。 「お前、お前もバレンタインに苦汁を舐めさせられた奴なら、俺達と共に来い!」 ジョンがイスタルテに説得を試みる。語り尽くせぬほどの憎悪と、苦しみ、悲しみを載せて。 「お前が今こうしてチョコを渡すのに成功しないのも、全てはバレンタインデーってのが悪いんだ!」 「ハッ!?」 「いや、ハッとしちゃ駄目だろ」 保護者担当、義弘さんの突っ込みは彼女には聞こえなかった。 「そう、やはり。私がチョコを渡せないのも、彼氏が一向に出来る気配がないのも!」 「全てはバレンタインデーが悪い!!」 モ女、説得(魅了)完了。 「やーん、もう誰でもいいから受け取って下さいよ~!」 涙目になりながら、モ女がリベリスタ達へとその矛先を変えた。 「っと、おいイスタルテは止めなくて……別に良いか」 彼女の得物は手造りのチョコ。持ってきたスキルも支援系。脅威かと言われるとさっぱりである。 ランディさんの言葉も最もなので、リベリスタ達はとりあえず彼女の事を華麗にスルーする事にした。 触らぬモ女に祟りなし。 「お、俺達の訴えを聞いて尚、この作戦の正当性を認めようとしねぇのか!?」 慌て気味のデクンドの叫びに応えるのは、キンバレイだ。 そもそも、から彼女の言葉は始まる。 「そもそもモテないのって9割自己責任じゃないですか? それをイベントその物を否定したあげくに暴れるなんてただのテロですよ……ぶっちゃけキモい」 その愛らしい容姿から想像もできない毒舌が吐き出されていく。傍のモ女もダメージを受けてるが気にしない。 「いっそこの場で死んでもいいですよ? きんばれい全力でマジックアロー叩き込んであげますから」 終始上から目線の彼女には、おとーさんという愛すべき人が居る。つまり小学生にしてリア充。 彼女からしてみれば目の前の物はただの卑屈な矮小物でしかないのだろう。故に、容赦は無かった。 「まあ私も鬼ではありません」 毒舌を受けて顔を青ざめさせている彼らへ掛ける声音が、不意にその色を変える。優しく、柔らかな音に。 「あなた方に相応しいバレンタインを演出してあげましょう」 だが安心するなかれ、彼女は邪悪ロリだ。 彼女の意志に従い、精巧な幻影が描き出されていく。過たず彼女の望むままに現れたのは…… 『ふんぬうううううう! アブドミナル・アンド・サイ!』(※台詞はイメージです) 『ほんはああああああ! バック・ダブル・バイセップス!』(※台詞はイメージです) ローションぬるぬる筋肉ボディにたっぷりとチョコレートを垂らしたムキムキマッチョマンの変態達(幻影)。 「ぎゃああああ!?」 「そんなバレンタインがあるかよぉ!!」 「パーフェクッバディ……げふっ」 フィクサード倒すべし、慈悲は無い。キンバレイのイメージは間違いなく彼らの心を抉った。 「はいはい、みんな落ち着こうなー。取り敢えず現実に戻ってこいよー」 ドクターストップ、もとい、義弘によるストップがかかる。 「いい加減諦めちゃくれないか? 勝敗は決しているだろう」 (主に精神に)致命的な傷を受けたジョン達へ義弘の同情的な言葉が届く。が、 「わ、我々はバレンタインを……許さない!」 「絶対に、だ!」 彼らの膝はプルプルしていたが、瞳は真っ直ぐに見返して。 そう、彼らは本気なのだ。どんなに馬鹿らしく、どんなに惨めな作戦だったとしても。 セレアの言葉に屈しなかったのも、旭の説得を突っぱねたのも、全ては彼らの意志による物。 彼らも間違いなく、革醒者たる強さを持っていた。 だから、不幸だった。 「じゃあお仕置きだ。心して食らっておけ」 義弘の拳骨(魔落の鉄槌)が叩き込まれて後、彼らはリベリスタ達の集中攻撃を受けて敢え無く御用となった。 モ女はエイプリルのフラッシュバンで無力化された後、義弘に拳骨(ブレイクイービル)されて治りました。 ●フライングバレンタイン 後処理を済ませ、後はフィクサード達を連れて行く護送車を待つだけとなったリベリスタ達。 「結局、渡しそびれてしまったな」 タイミングが合わずに差し出し損ねたチョコを軽く手の平の上で転がしながら義弘が言う。 その言葉に目を輝かせたのはエイプリルだ。 「他の仲間が作ったチョコレートも食べてみたいとこだったんだよ」 興味津々といった様子で、義弘の手の中にあった和風チョコを見つめている。 「わたしも多めに作ったから、おすそ分け」 「味見したが、優しい感じがするいい味だったぜ」 旭の言葉にランディが続く。味見の際、ランディが旭にウサギ風にデコレートしたチョコクッキーを渡していたのだが、それは別の話である。 照れた様子で旭が小さくラッピングされたチョコマフィンとトリュフのセットを配っていく。 バレンタインを前にして、リベリスタ達がチョコを受け取っていく様は、 「まさしくフライングバレンタインっ!」 さっきまでぷっぷくぷーっとジョン達に説教していたミーノの言葉で、綺麗に丸く収まって。 彼らのバレンタインを守る戦いは幕を閉じたのであった。 ――では、終わらない。 完全に鎮圧され、シュンとしているジョン達の前に、セレアの姿があった。 力無く顔をあげて彼女を見上げた彼らの前に、それはずずいと差し出される。 「はいこれ、プレゼントよ?」 努力の痕がそこここに見受けられるような、そんな温かみのある梱包の、チョコレート。 「……べ、別に余ってたから持って来ただけよ、フィクサードなんかに本来、プレゼントあげる訳ないでしょ?」 視線を外し、頬を赤らめ手を突き出しそう言う姿は、今の彼らにとって―― 「女神、サマ」 「神は我々を見捨ててはいなかった!」 「ありがとう神様!」 どれ程神々しく映っていただろう。 拘束されて受け取れない彼らの為に、セレアは丁寧に梱包を解き、現れたチョコを砕いて6等分する。 「はい、あーん」 これは敗者への慈悲なのか、彼女は天使の笑みで彼らの口にそれらを放り込んだ。 そして。 「「「ゲボラァ!?」」」 一斉に吹き出し、ジョン達は昏倒する。 彼女が差し出したチョコレート、その名も本命チョコレート。読み方は、ほんきでいのちをねらうチョコレート。 「だってあたし、気になる人は苛めたくなっちゃう性だもの……」 天使の様な、悪魔の笑顔で彼女は彼らにトドメを刺したのである。気になる、の中身は聞いてはならない。 バレンタインを妨害せんと暴れたフィクサード達の事件はこうして、チョコレートによって解決したのである。 ハッピーバレンタイン! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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