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不見の刺客

◆不見の刺客
(「な……なんだこれは……口の中に何か入ってくる!?」)
 男性が異変に気付いたときには既に、それは口腔内に侵入を果たしていた。
 無味無臭無色。
 そう、空気……空気だ!
 空気が意思をもって自分の体内に潜り込んできた。自分が達した結論のあまりの荒唐無稽さに一瞬現状も忘れて失笑が洩れそうになるが、息苦しさは尚も強まっていく。
 凄まじい不快感と未知の体験への恐怖が一足飛びで自身を狂気へと導いていく。
 理解は出来なかったが、本能が男性を突き動かし、彼は絶叫する。
「「た、たすけてくれー!」」
 絶叫は、彼のバリトンの効いた落ち着いた普段の声音ではなく、凄まじく甲高い声になっていた……。

◆討伐指令
「敵は、ガスのE・エレメント。匂いもないし、隠れている時には目にも見えない。スゲーやっかいな相手だ。……だがこいつだけは絶対に倒してきてくれ」
 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が何時になく真剣な面持ちでリベリスタ達に告げる。
 今までに被害にあった人物達の状態を聞けば、彼がそうなるのもムリはあるまい。
「コイツは……コイツに体の中に侵入された人間は……」
 思い出しただけで寒気がする、といわんばかりに
「コイツに体の中に侵入された人間は声が超高くなって、しかも大本であるコイツを倒さなきゃ治らなくなっちまうんだよ!」
 そう。
 敵はヘリウムガスE・エレメント。
 バンドのヴォーカルをしている伸暁にとっては、ある意味でもっとも嫌な相手、嫌な能力。
 魅惑的な声をしていると同僚や家族から愛されていた中年の男性も裏声よりも高いヒドイ声になっていた。
 そんな声に代るなんて許せるもんじゃない!
「見えないだけで、不定形だが実体はある。殴れもすれば斬りつけることもできる」
 斬れて飛ぶのは相手の生命力。存在力とも言い換えられるだろうか。
 それを無に返せば敵を消滅させられるだろう。
 どうにかして敵の動きを止め、相手に攻撃さえできれば十分に勝機はあるはずだ。
「今までの傾向と『万華鏡』で得た情報から推察すると、敵が現れるのは悲哀の叫びを上げている人物の多く集まる場所、そして敵が特に狙ってくるのは低目の良い声や綺麗な声を出す人物のようだ」
 何がしかの哀愁漂う叫び声を上げていればエリューションを釣れるかもしれない。
 物理的ではなく、感情に惹かれるているのか、心からの吐露に特に敏感に反応している節がある。
 しかし、もし体内に入られたならば……それは逆にチャンスとも言える。
 体内から追い出すことさえ出来れば、そこに、その目の前に、見えないはずの敵が確実にいるということなのだから。
「対処が難しい敵だとは思うが、出現位置は凡その予測はついている。
 後はお前達の腕次第だが……絶対に……絶対に倒してきれくれ」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:仁科ゆう  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年05月10日(火)23:25
こんにちは、にしなです。

今回必要になるのは二つ。誘い出し、討伐すること。
対処法は様々あるかと思います。

見えない敵ですので、古典的なアレやコレやで対応できるかもしれません。
もちろん、渋いおじ様にわざと吸い込んでもらった後に
仲間のボディーブローで吐き出させてもらっても大丈夫です。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
ハッピー チャイム(BNE001429)
覇界闘士
十 刈穂(BNE001727)
ホーリーメイガス
ティーゲル・松崎(BNE001890)
ホーリーメイガス
襲 ティト(BNE001913)
スターサジタリー
襲・ハル(BNE001977)
スターサジタリー
立花・英美(BNE002207)
クロスイージス
神音・武雷(BNE002221)
マグメイガス
セッツァー・D・ハリーハウゼン(BNE002276)

●夜、公園にて
 深夜の公園の中、戦う準備を進める8人の姿を、月が明るく照らし出す。
「今回の敵はヘリウムガスのE・エレメント……」
 『三高平の韋駄天娘』十 刈穂(ID:BNE001727)が、ふと作業の手を止め誰へともなく漏らす。
 隠れる場所や道具の調整をしていた仲間達も、その一言を合図に手を止め思いを馳せる。
「 ヘリウムガスなのに、お空に飛んでいかないのはさすがだねぇ……」
 フォーチュナに聞いた敵の組成を思い出し呟く刈穂。
「ゴム風船に詰め込めば、その気になって上空に飛んでいって弾けちゃう、 なんて事はやっぱりないよね?」
 自分でいってみた提案に、しかしありえないだろうと苦笑混じりに自分で否定もしてみせる刈穂。
「伸暁君もよう……『倒せば戻る』と分かってんなら囮位なりゃいいのによっ。最近は超高音の男性ボーカルも人気出てんだぞ?」
 『目標:三高平一の伊達男』ティーゲル・松崎(ID:BNE001890)は、ぶつぶつ言いながら準備を進めていた。
 ダンボールハウスをいくつか用意した手際と、髪や髭をだらしくないメイクを施しダンボールハウスで寝転がる姿が妙にしっくり来ている。
 餌となる悲壮感を演出をした結果、らしいがにじみ出る胡散臭さは相当なモノだ。
「美声をダックボイスに変える悪魔! 一応アイドルとして許せる敵じゃないわ。倒して犠牲者を元に戻さないと!」
 そんな彼の言葉に、とんでもないと拳をぐっ! と握り反論する『ガンナーアイドル』襲・ハル(ID:BNE001977)
「歌姫なので声を奪う奴は、敵だ!」
 公園の桜にもたれて小声でリズムを口ずさでいた『ライアーディーヴァ』襲 ティト(ID:BNE001913)と、『「Sir」の称号を持つ美声紳士』セッツァー・D・ハリーハウゼン(ID:BNE002276)も、ハルの言葉に追従する。
「声(うた)を生業にする者にとって今回の依頼は見逃すわけにはいかない」
 ただ、セッツァーは言葉にはしないが、出来れば他に参加しているレディー達には危険が及ばないよう立ち回りたい、と心の中に秘める決意もあるようで。
 だからこそ、今回の囮役も引き受けたのだ。
 どれほどの苦痛があるのか、どれほどの危険があるのかはまだわからない。だからこそ手を挙げるのが貴族に生まれたこの身の使命だと信じ。
「そうだね。精一杯頑張って絶対成功させなきゃ!」
 グッと拳を握ると、刈穂は準備してきた道具のチェックを再開した。

「ヘリウムガスの相手とは愉快な存在ですね」
 ガスを吸った人間の声を想像し、『幸福の鐘』ハッピー チャイム(ID:BNE001429)が肩を揺らす。
「あ、私の声は元々ヘリウムガス吸った様な声でしたね。うふふふふ」
 彼の独特の風体からは、それが悪びれた言葉とは見えず、ただ愉快なことを発見したという風情。
 奇妙な敵であることに、独白するように疑問を口にする『ミス・パーフェクト』立花・英美(ID:BNE002207)
「人に潜りその声を侵すこの敵の目的は一体何なのか。悪いいたずら? 存在の本能?」
 問うたわけでも問われたわけでもないが、応えのあったことにハッピーは少し真面目な色を瞳に浮かべる。
「悲哀に引き寄せられますか、彼の存在は感情に飢えているのでしょうか?」
 エリューションの行動の理由など誰も応えられる者はなく、誰もが頭を捻り、一瞬の沈黙が降りる公園。
 それがわかれば対処の方法も変わってくるのだろうが……
「よーくわからないけど、人の大事なモノを奪うってーのはゆるせねぇな~」
 モノ、という言葉に、声という意味を言外に含ませる神音・武雷(ID:BNE002221)
 彼の見せたシンプルな理由とわかりやすく真っ直ぐな正義感に、英美も肯き続ける。
「いずれにせよ偉大な亡き父の娘としてこの依頼パーフェクトにこなして見せます。それこそが私の本能だから」
 昼間に確認していた通り、隠れられそうな場所と、囮役をすぐに助けに駆け出せる場所。隠れるのが難しい場所には、ティーゲルが準備してきた簡単なダンボールハウスを配置する。
 数日も建てていると問題にもなりそうだが、今晩一日だけお邪魔します、と心の中で誰へともなく謝罪を送りつつ。


 そして数分の後、リベリスタ達は準備を整え、段取りの最終確認を終えた。
「この戦いが終わったらみんなで打ち上げね。私はカラオケボックスを希望するわ。アイドルの美声を聞かせてあげる♪」
「あたしも、自分の歌を歌いまくるぞ」
 緊張を和らげるためか、軽い調子のハルとティトの言葉に一頻り頷き、リベリスタ達はお互いの視線を交わす。
「それでは、セッツァーさんの囮作戦の為に最初は隠れておきましょう、私いい子ですね」
 うふふふふ、と笑みを残し公園の緑の中に身を隠していくハッピー。
「セッツァーさんの『声』は必ず護り抜いてみせます」
 彼を追うように、全員が配置に付いていく。茂みに、ダンボールハウスに。
 仲間達が身を隠しきったのを確認し、セッツァーは街灯が明るく照らすベンチの前に1人立ち、懐から葉巻を取り出し一服。
 一頻り葉巻を燻らせたセッツァーは大きく紫煙を吐き出し、ふらりと立ち上がると瞳を閉じて歌声を響かせ始める。

●悲哀の声/うた
 響くセッツァーの歌声は、 カルディッロ作曲のナポリの古典楽曲、『Core 'Ngrato』。
 「Catari,、Catari……」と、女性に捨てられた男性の深い悲しみを切々と歌声に乗せていく。
「悲哀でスか……懐かしい感情でスネ」
 茂みの奥でハッピーが周囲の変化に気を張り巡らしつつ、歌声に耳を傾けつぶやく。

(しかし私の声(うた)がこのような場面で役に立つとはな……目標をおびき寄せる大事な役目。万が一にも失敗は許されない)

 切実な使命感はより一層の悲壮感を歌に纏わせ、声が夜に響き渡る。
 反応は……未だ見えない。
 ダメなのか?
 そんな考えが頭の隅を掠めた時、ダンボールハウスからティーゲルが出てくると、歌うセッツァーの所にふらふらと近寄っていく。
「旦那ぁ~。もう一曲頼みますよ~」
 と、いかにも酒に酔った観客然とした風体で近くのベンチにどっかりと腰を下ろす。
 観客がいれば何曲続けて歌っていようとも不自然さはないと判断してのことか。直近での警護も視野に入っての行動か。
 小さく肯いたセッツァーは、一礼を送り、さらに歌声を響かせる。
(エリューションよ。おまえは何を思い、何を感じてそのような行動をするのだ……我が魂のウタの力よ、迷えるE・エレメントに届き給えっ!!)
 記憶の奥底から悲哀を汲み出し、応えのない疑問と共に声に乗せ歌へと変えていく。

 敵の姿は見えず、いつ襲来するかもしれない……
 緊張を保ち、待ち受ける8人の中で武雷とハッピーだけが、その視野の中に違和感を捉えた。
「ふぁ~あ……ん?」
 通常であれば見逃してしまったであろう、小さな変化。街灯の下に引き寄せられた虫の姿が一瞬、ほんの一瞬ぶれて見えた。
 だが、超直観で捨て目を利かせた2人には大きな違和感が、続いて圧倒的な危機感が膨れ上がる。
「きたか?」
「私、『目』にハ自信がアりマしてネ……其処でスヨ」
 2人の指摘に、隠れていた場所からリベリスタ達は一斉に飛び出す!

●戦端
「どのあたり!?」
 刈穂の問いに、位置を知らせるハッピーと武雷。
 指し示す方向は微妙にずれてはいるが、大まかな位置に違いはない。
 ESPで感覚を研ぎ澄ませた刈穂は、あるかないかの希薄な敵の気配を捉え、用意していた舞台用のスモークを放出する。
 が。
「これじゃ、敵に色を付けられないか……」
 ガス状の敵への着色は難しく、色の付いた何かが見えることはなかった。
 しかし、ハルが小さな煙幕花火を同じ場所に投げつけながら檄を飛ばす。
「大丈夫、いける! 煙の揺らぎで奴さんをとらえる事が出来るはずよ!」
 確かに。その姿に色が付くことはなかったが、その煙の中に不自然な揺らぎがあり、その揺らぎがセッツァーに向かって一直線に何かを伸ばしているのが幽かに見てとれた。
 アクセス・ファンタズムである父の形見の懐中時計を、弓に変化させた英美がその伸びる”何か”に狙いをつける。
「父さんの弓は私の中に。その名にかけて必ず射抜いて見せましょう」
 煙の中を伸びる先端を、寸分の狂いなく正確に撃ち抜く精密射撃。
 しかし、その揺らぎの軌道に変化はなく、セッツァーの体へと向かい、その口の中へと侵入していく。
「効いてない!?」
「いえ、効いてまスヨ」「だな」
 仲間の驚愕の声に、エネミースキャンで敵の状態の変化を感じ取ったハッピーと武雷が同時に否定する。
 動きに変化が見れなかったが、その力強さ、生命力といえるモノが先ほどの一射で確実に磨り減ったのを感じ取ったのだ。

 一方で、セッツァーは口を閉じ、手で覆い抵抗するが、ガス状の敵の侵入を押し留めることは出来なかった。
 口から肺に至り、胎の奥にまで異質な空気に蹂躙される得も言えぬ不快感に、ついに片膝を突く。
「セッツァーさん、大丈夫ですか?」
『だ、大丈夫だ』
 誰からともなく掛かった声に、苦しい息の下で答えるセッツァーだが……その声は完全に普段の渋いおじ様ヴォイスではなく、ヘリウムガスの影響を受けた甲高い声に成り果てていた。

●捕獲
 ヘリウムエリューションがセッツァーの体内に侵入したのは確実、ということで全員がプラン通りに動き始める。
 ティーゲルが全員に先立ち、一般人が巻き込まれないように結界を展開する。
 さらに刈穂が大きなビニール袋を用意し、スッポリとセッツァーを包み込ませた。
「じゃあ、いっくおーっ」
 飛行と併せ、回復の準備を終えたティトが全員に合図を送る。これでセッツァーの受けたダメージをいつでも回復できる。それが敵から受けたものでも、仲間からのでも。
「では私が程々に手加減したボディーブローで吐かせて差し上げますよ!」
 腕を指をワキワキと怪しく動かすハッピー。
 スゴイ楽しそうじゃないか? という仲間からの問いにも真面目な顔で答えてみせるが、手の動きは変わらない。
「いいえ? まさかまさか仲間を殴ル事にウキウキしてル訳が無いでしョう?」
 その怪しい動きに一瞬、顔が引きつるセッツァー。しかし、いついかなる時も紳士たれ、と誇りを掲げる彼は颯爽とした立ち姿を見せる。
 うフふフふ……! という怪しげな笑みを浮かべながらハッピーのボディーブローがセッツァーのお腹にクリーンヒット。
 ぐふぅ、と甲高いのに鈍い微妙な声を出すセッツァーの口から息が洩れ、ビニール袋がいくらか膨らむがまだ体の中にはガスが溜まっていそうな気配があり、セッツァー自身もいまだ苦しそうにお腹を押さえている。
 すかさず、治すおーっ! とティトの詠唱をはじめると、苦しそうだったセッツァーをかすめて微風が通り過ぎる。
 風が通り過ぎると、痛みが引いたのか、幾分マシになった顔色で立ち上がるセッツァー。
「ありがとうレディー、おかげで痛みが……」
「ごめんなさい」「おっちゃん、恨みはないけどごめんよ~!」
 治癒の術をかけてくれたティトに華麗に礼をした瞬間に、刈穂の回し蹴りが、武雷のボディブロウが続けてセッツァーの腹部を襲った。

 げふぅ

 腹の奥から、体積を減らされて行き場をなくした空気が一気に吐き出されてくる。
 同時に腹と喉の奥でこみ上げる酸っぱいものを耐えつつ、セッツァーが息の最後まで吐ききる頃にはビニール袋が大きく膨らんでいた。
 仲間達は彼に手を貸し、ビニール袋の中から出しながら、同時に袋口から溢れようとするガスを押さえる。
 透明がビニール袋は激しく暴れ周り、形をぐにゃぐにゃと変形させて今にも破れてしまいそうになっている。
「こっちに詰め込んで、早く!」
 刈穂が用意をしていたウォーターバッグの口を大きく開き声を上げると、数人掛かりでビニール袋を無理やりその中に圧し入れ、口を閉じて封じ込める。
 依然、ウォーターバッグの中で暴れまわろうとしているのは解る。が、しかしビニールほど簡単に形が変わるということはないようだ。
 それでもいつまで破られずにもつかはわからない。
「歌姫として君の存在は許せない。だから討つ!」
「奪われた人々の声、返してもらいます!」
 ティトと、弓を構え待っていた英美の宣言を皮切りに、リベリスタ達は攻勢を開始する。

 ウォーターバッグを破らないように、打撃と中心とした攻撃を中心に、時折水袋の口元の煙を揺らすガスはハルと英美が正確に撃抜き、出てくる頭を押さえる。
 敵の状態を逐一観察をしていた武雷とハッピーの目には、少しずつ削り取られ散っていくエリューションの生命力の残滓とも言うべきものが見えていた。
 少しずつ、少しずつ無くなって行き、やがてその時がくる。

「うふフふ、さア覚悟ハ宜しいでスか?」
 勝機を確信したハッピーは全身のエネルギーを手の中の大剣に集中させ、ウォーターバッグを激しく討ちつけた!
 水袋は、数度跳ねた後、全く動かなくなり、リベリスタ達が見つめる前で水袋は急速に萎んでいった。
「ん……終わったな」
 武雷が確認をする。
 今まで彼の目に映り込んでいた生の躍動が感じられない。
 完全に、消滅していた。

●月花
「お疲れ様でした皆さん、パーフェクトな仕事ぶりでしたね」
 皆でお互いの健闘と無事を確認する。
「ばいばい。君は生まれるべきじゃなかったんだ」
 その後ろで、ティトは最期の言葉を、消えた化生に手向けていたが、すぐに切り替え、戦闘前に言っていたように「カラオケに!」と主張するアイドル達に、待ったがかかる。
 何しろ幻視を使わなければ武雷はカラオケには行きにくいだろう、と。

 では、と誰もいない公園で月を肴に花を愛でることとなったようだ。
「カラオケでも花見でもどーんと来いだぜい」
 自身の姿でいけないかも、と不安だった武雷は即賛成。
「他の人の迷惑にならないよう、食べる量は調節するからね?」
 刈穂も答え、公園でのささやかな宴会がはじまった。

 結界で誰も通らない公園で、歌声と楽しそうな声が響き渡る。

 着替えや撤去を済ませたティーゲルは、同じく作業を追え、木の幹に凭れ掛かるハッピーの横に腰をかける。
 さっきまで聞こえていた(自称)アイドル達のアップテンポな歌や英美の情念とコブシに溢れた演歌に続き、今度はヘリウムガス後のキンキン甲高い声でしぶしぶながらセッツァーが歌いはじめたようだ。
「このウタを今宵、レクイエムとして捧げよう」
 その様子を見ながら、ティーゲルは隣のハッピーに声をかける。
「依頼毎に打ち上げパーティも……なぁ?」
「うふフふ、まア。たまには良いんじゃないでスカ」
 存外悪くなさそうな顔で、静かに。
 見上げる先で、月に照らされた花弁が美しく舞い降りてきていた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お待たせいたしました。

リプレイについてご意見・ご感想等ございましたらお教えいただけましたら幸いです。
忌憚のないお言葉をお聞かせください。