● 「なんだぁ、ここは」 それは男なのか、それともほかの生物なのか。一目見ただけではわからない。とにかくソレは異形の者であった。唯一分かるとすれば、頭部がワニのような形をしていることだ。そして、それは一体ではなかった。 「別のチャンネル。ということではありませんか」 女の声だ。だが、それも異形の生物だ。 「よくわからねぇな……難しい話はよくわからん。とにかく、少し腹が減った」 「まったく能天気ですこと。そうですね、ここの近くでもっとも栄養になりそうなものは……」 その女の声をした異形の生物が見たのは、 「ニンゲン、という生き物らしいですわ」 「ほう。で、そいつはどこにいるんだ?」 「そこに」 その異形の生物が目をつけたのは、なんでもない、普通の女だった。会社からの帰りなのか、スーツを着込んで、暗い夜道を歩いている。 ただ、それだけなのに、彼女は不幸なことに――、 「うし、食うか」 「私にも少し分けてくださいな」 「まあいいだろう……まあでもそのニンゲンってのはいっぱいいるんだろ? ならまた食えばいい話じゃねぇか」 「それもそうですね」 なんでもなさそうな声で、異形の者たちはその女へと向かっていった――。 ● 「緊急事態です、各員、すぐにブリーフィングを始めるので準備をお願いします」 『運命オペレーター』天原 和泉(nBNE000024)が息を切らしながら言う。 「とある街にアザーバイドが出現した模様。かなり凶暴なアザーバイドと思われます……現在だけでも被害者は4名にのぼっています……そしてどれもが……」 和泉は不快そうに続ける。 「食べられています……」 「食べるって……人間をか!?」 リベリスタは怒りと驚愕が混じったような表情で言った。 「ええ……信じられないかもしれませんが……本当です」 「胸糞悪い……」 「だからこそ、早急にこの問題を解決しなければならないのです」 和泉は資料を配りながら、 「すみません、急いでいるので少し荒いかもしれませんが……今回の目標はアザーバイド二体。体長はどちらも2メートル以上。言語での意思疎通は可能です」 目の前のモニターに異形の生物が映し出された。 「一体は刀を所持している模様……もう一体は銃火器のような武器を所持しています。今回は前者を『クロウ』、後者を『ラッド』と呼びます。どちらもかなり素早いということが確認されています。それと……アザーバイドの能力は空間を操ること、らしいです」 和泉は続ける。 「また性格は凶暴なことこの上ないと報告が上がっています。注意してください」 そして和泉は資料を置く。 「最終確認です。今回の任務はアザーバイド『クロウ』『ラッド』の殲滅。これを取り逃がせば、またさらなる悲劇を生んでしまいます。全てはみなさんにかかっています。どうぞよろしくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:河道 秒 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月11日(火)22:06 |
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■メイン参加者 4人■ | |||||
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● 「人を喰うのはあんまりエレガントじゃないわね。やっぱりヴァンパイアだったあたし的には、殺さずに吸い取るのが美しいと思うのよね」 そうぼやいたのは『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)だ。そしてその横には月杜・とら(BNE002285)が立っている。 「んー、情報を聞く限りなんだかめんどくさそうな連中だねっ。でもちゃんと殺すしかないっしょ♪」 「そうですね、人喰いのモンスターとは……素晴らしい。僕たちにはちゃんとした大義名分を持って、駆逐できる害悪じゃないですか。うーん、掃除のし甲斐があるというものです!」 そう楽しそうに言ったのは『必殺特殊清掃人』鹿毛・E・ロウ(BNE004035)だ。忠誠を誓った『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)が一緒にいるせいか、テンションが高い。 「頑張りましょう、我が主!」 「害悪を退治するのが官憲の役目ですからね。問答無用、です」 あばたが冷静に返した。 「それじゃ、まずは人払いをするよ♪」 とらが強結界を展開し、周囲に人が近づかないようにした。 「さて、さっさと終わらせましょうよ」 セレアがそう言うと、四人は敵がいる場所へと向かった。 ● リベリスタたちは、異界のモノたちと対峙する。 「あァ? お前ら、人間か」 男の声をしたワニの頭――クロウが言う。 「ボナセーラ☆ボトムへようこそ! とりあえず、ボトムの住民が全員弱いって考えは今すぐ捨てて? OK?」 とらが杖を構えながら言った。 「とら、あたしは話し合いとか考えてないわよ? あたしたちの同族を食べちゃったからね……ぶっ殺さないと気がすまないのよ」 「大丈夫だよ。最初から許すつもりなんてないから! だから二度と来れないように眠ってもらうけど、悪く思わないでよね」 「はははっ、何を言い出すかと思えば!」 女の声をした――ラッドが高々と笑う。 「貴様らは、黙って私たちの食料になってさえすればいいのに!」 「なら、食べるなら僕たちにしてください。そのほうが精がつきますよ」 「そうさせてもらおう!」 クロウが叫ぶと同時に、その姿が消えた。そして一瞬であばたの後ろに回り込む。クロウはそれで決まる――そう確信していた。しかし、そうはいかなかった。彼女の研ぎ澄まされた直感が、クロウの攻撃を知らせたのだ。 あばたは一瞬で振り向き、二丁の拳銃――マクスウェルとシュレディンガーを撃った。間髪入れずにクロウの周囲に気糸を展開し、動きを一時的に止めた。 「さて、掃除の時間のようですね!」 ロウはそう言いつつ、全身の状態を戦闘行為の速度に最適化し、身体能力のギアを上げた。そしてラッドに一気に接近し、華麗なる刺突を繰り出す。 しかし、大きく後ろに移動され、その刺突は外れた。 「逃がさないわよ!」 セレアは碧の本を展開し、自らの血液を黒鎖として実体化させた。その鎖は濁流のような勢いでラッドへと向かっていく。 「甘い!」 光速で打ち出された弾丸が鎖を次々と消していく。ラッドは続けて、弾丸を次々と放った。色とりどりの弾がリベリスタたちに殺到する。 「それならこっちも……」 二丁の銃を構えたあばたが正確無比な射撃でラッドへ弾丸を発射する。だが、その撃ち合いの中で、あばたがラッドの弾丸にかすってしまった。 「っ!? 我が主、足元が凍って……!」 「気にしないで。早くラッドを仕留めなさい」 「わかりました……!」 ロウは再びラッドへと駆ける。自らの主を傷つけた敵に対する怒りを胸にして。戦闘に最適化された彼の身体は柔軟性を伴ってラッドを翻弄する。 「ぐっ……!」 だがラッドも黙ってやられているわけではない。ロウに向かって弾丸を放つ。そしてその弾丸は一瞬で消えた。 「そんなの読めてますよ!」 そう、彼によけられない攻撃などないのだ。 そしてそのまま距離を詰め、無数の刺突をラッドに向かって放った。残像すら残す高速の剣技はラッドの身体に無数の傷跡を残した。ダメ押しにもう一つ、あばたが正確な射撃で完全にラッドの息の根を止める。 「キサマらァ!」 「おたくら、ホント共感性低いよな~。相手に知性があったら、調子こいていきなり食ってりゃ、同族の怒りを買うって目に見えてるじゃん。だからとらたちはおんなじようなことをしたまで」 「確実に殺すぞ! 貴様ら!」 クロウが激高し、気糸の罠から脱出した。 ● 「ハァッ!」 クロウが動く。今度は亜空間歩法ではなく、直線的にこちらへ向かってくる。とらはそれに冷静に対処した。全身から気糸を放ち、クロウの動きを止めようとする――しかし、クロウの剣によって全ての気糸が切断されてしまう。 「このままでは……!」 あばたは歯噛みしながらも神速の抜き撃ち連射でクロウを撃つ。しかしクロウは自分目の前の空間を切り裂いた。すべての弾丸がその空間に当たると同時に、切り裂かれた。 あばたはまだ動けないので、このまま距離を詰められると不利になる。 「させませんっ!」 ロウが間に割り込み、クロウとつばぜり合いをする。 「しまっ……」 しかし、亜空間歩法で一瞬で後ろに回りこまれてしまった。クロウが一撃を浴びせるべく、大きく振りかぶる。その隙をセレアは見逃さなかった。 黒い鎖はクロウに襲い掛かり、そして行動を制限した。 「ひとつだけ、聞いておこうかしら」 セレアが薄く笑いながら言う。 「貴方たち、痛覚あるわよね?」 「言ったでしょ、許さないって☆」 とらがそう言いながら翼を広げ、天に舞った。さらに激しく羽ばたき、魔力の舞う風の渦を発生させた。風という名の圧倒的な暴力が身動きのまともにとれないクロウに襲いかかる。 「まだ終わらんぞ……」 ボロボロの身体になりながらも、クロウは未だに立っていた。 「殺す!」 とらの背後に一瞬で回り込もうとする――が彼女の背後には壁があった。なので、壁の後ろに転移してしまったのだ。しかし今のクロウにはその程度のことは関係なかった。 斬撃で壁を吹き飛ばし、とらへと襲いかかる。だがとらもその攻撃に応戦するべく、全身から気糸を放つ。襲いかかる斬撃を気糸で何重にも締めあげ、スピードを殺していく。そんな行動が高速で行われていた。 一発でも外したら危険だ。しかしとらはそんなプレッシャーの中でも正確に気糸を出していく。 「今度こそ……撃ち抜きます」 あばたがクロウの頭部に向かって精密な射撃を繰り出す。彼女の攻撃はもっとも効率よく生命活動を停止させるには頭部を狙うのが一番だ、という判断に基づくものだ。 クロウの頭部に次々と弾丸が撃ち込まれていく。そしてクロウはとらから目を離し、あばたのほうへと向かっていく。 「させないって……言ってるでしょ!」 セレアが黒い鎖を無数に放つ。先ほどのよりも圧倒的に多い。それはクロウに襲いかかり、締め上げる。 「今度こそ仕留めてみせるわ。痛めつけて潰さないと……こっちの鬱憤が晴れないもの」 「ま、郷に入りては郷に従え。火葬でいいよね☆」 とらが羽ばたく。あばたが銃を抜く。あばたはそのまま二丁拳銃で大量の弾丸をクロウに向かって放つ。無慈悲に、彼女は拳銃のトリガーを引いていく。 そしてとらは翼を広げ、上空から魔力の渦を発生させ、それをクロウに直撃させた。もう、クロウが動くことはないだろう。 「なんとか、終わったみたいですね」 あばたが言う。 「やりましたね、我が主! 流石です!」 「わたしだけの力ではありません。みなさんがいたからですよ」 「なかなかいいこと言うわね……周囲に被害は出てないみたいだし、さっさと帰りましょ。それにしても面倒な奴だったわねぇ……ちょっと疲れちゃった」 セレアが微笑みながら言う。 そして夜が明ける。それはきっとこの街の夜明けでもあるのだ――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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