●旧態依然として誰にも疑念にもたれないネット攻撃手段の末路 「ふざけやがって、ふざけやがって、ふざけやがってふざけやがってふざけやがって……!」 壊れたスピーカーよろしく、巫山戯たことが許せないらしい男の怒りがディスプレイしか光源のない部屋にこだまする。そこまでこの男が高潔無比だったかというとそうでもない。巫山戯たことに縁がないかといえば、この男の行いそのものが巫山戯ている。 彼の声に同期するように激しく打鍵されるのはファンクションキーの五番。所謂更新などに使われるキーで、それを悪用したWeb攻撃は割とよく聞くものである。 こと現代に於いては専用ツールの存在も多いと聞くが、旧態依然としてこのような行為は好まれる傾向にもある。 して、彼がなぜ執拗にこのような行為に耽っているかというと、単純に許せないから……で、あろう。 彼がつい先日まで盲目的に信望し、愛情すら抱いていたアイドル声優が入籍を発表した。所謂声ヲタの彼にはそれが許せず、今だこうして彼女のブログに攻撃的アクセスをくりかえしているのである。 脂ぎった顔には伸ばし放題の髪が張り付き、髭はもみあげと一体化してその境目がわからぬほどだ。 この事実に直面するまではもう少し小奇麗だったであろう姿もこの有り様。やや体毛の生育進度が早いように思えたが、彼の身を観測する者が居ないためその変化は衆目には晒されない。 「ダメだダメだダメだ、こんなのは僕が許さないんだ僕が裁かなきゃぁ……」 打鍵に費やした運動をそのままに立ち上がった彼は、異常なまでの移動速度で部屋から身を翻すと、道脇に停まっていたトラックに触れ、一瞬のうちに破砕した。 ●これはアク禁ですね、間違いない 「この炭酸水はサービスです、先ずは飲んで落ち着いてください」 「うるせえよそこはバーボンじゃねえのか」 「未成年でしょう君」 どこから出したのか、ペ○エを取り出した『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000202)に突っ込むリベリスタ。だが彼は未成年であった。 「あとこいつの独白長い。三行」 「声ヲタが 女性声優の結婚にキレて革醒し 超振動攻撃を覚えて破壊行動してるので止めてください 件の女性声優可愛い」 「誰が私見で一行延ばせつった」 件の、といっても今どき結婚報告を行う女性声優など珍しくもない。幾人かアタリをつけたリベリスタだったが、本人の尊厳を考えて口にしないことにした。 「冗談のような話ですが、彼の超振動から放たれる攻撃は実のところ割りと脅威です。受け止めれば守りを貫いて直接ダメージを与えてくるでしょうし、振動自体を推進力にしているので移動力も高いです。声優本人に累が及ぶことは先ず間違いなく無いでしょうが、街の被害を考えると早急に止めるべきかと」 「うわめんどくせえ。……で、そいつの、そのサイズっていうの? そういうのは?」 「横に広いです。こう」 「……一人でブロックできんのこれ?」 「二人は必要かと」 「そこ重要だろうが早く言えよ」 色々と片手落ちだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:風見鶏 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月10日(月)21:58 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● ずずん、ずん、ずりずり、ずずずずずっ。 微振動を繰り返しながらもその体を引きずるという矛盾した存在は、体躯からして既に規格外である。 爛々と光る瞳は既に理性の面影はなく、恐らくはその巨躯も『革醒』というディフォルメによって大げさな存在感を示しつつある。 「お相撲さん、でございましょうか……?」 本任務に於ける「黙っていればただの美人」枠代表、『天邪鬼』芝谷 佳乃(BNE004299)の呆けたような言葉が響く。 構えた“銘刀「冬椿」”の刃が目標を見据えて閃き、彼女の戦意を伝えるかのようですらある。戦いに興奮を覚えるのは人間の原初の反応なので当然といえるが、その物腰とともに柔らかな笑みには、そういうレベルではない危険性がちらつく。 「ああ、でも、私、『48手』には興味ありましてよ?」 そう言って意味ありげな笑みを浮かべた『天邪鬼』芝谷 佳乃(BNE004299)だったが、果たして彼女が送り出しとか小手投げとかそういったものに興味があるかっつーとなさそう。 だがそれに関して詳しく追求するとマジでネタ的なうっちゃりを受けるので聞かなかったことにするのが正しいのだろうと思う。 「可哀想に。リアルお友達、いなかったのでしょうか?」 本人が聞いたら人間関係と絶望感にクリティカルヒットでMアタック200くらいどってことない発言を出会い頭にカマす『雪月花』四季 護(BNE004708)の鬼畜さは今更こちらで表現するまでもないだろう。十分に魔力の賦活を済ませた上で、彼の発言に潜む意図しない刺がぐさぐさと相手を苛むとしたらもうこいつに忘却の石をもたせるべきである。無論褒め言葉的な意味で。 「ファンたるもの、相手の幸せを願うべきであり、キレて暴走など言語道断。ファンたる資格なし!」 「うる……っさイィ!」 朗々と宣言した蒼嶺 龍星(BNE004603)の言葉がノーフェイスに対して耳障りのいいものであるはずがない。理性的に祝うことのできる人種が、斯様な蛮行に走ること自体がありえない為である。だが、龍星がその実思っていることが「声優自身に伴侶となる相手を見る目がなかったらいいや」みたいなノリが入ってるので、その、異性を見る目がないということは言わないであげてほしい。きっとちゃんとした人だから! 共演作品から声優同士で結婚した例についてどう落し前つけてくれんだよ! となるわけで。 思い切り良く地面を踏み抜いた衝撃波が彼と『Eー4』無敵 九凪(BNE004618)を襲う。同行した面子の美形率に興奮を禁じ得ない彼が心中何を思っているかはさておくとして、彼の動きに先んじて放たれた振動が足場を崩し、動きを狂わされたのは違いない。 声を絞り出そうとしてその虚しさに思い至るのは非常に、こう悲しいことだけれども。 「……これを愛するというのはちょっと、というより控えめに言ってもVERY HARD(EX) ぐらいに見えますね……?」 ノーフェイスだしもうモノ扱いでいいよね的発言が飛んできましたが聞かないことにします。そういうことにしとけばいい。神谷 小鶴(BNE004625)が眼前の存在の価値について愛せるか否かを持ちだしたのは、彼女の従姪孫さんに依るところが大きいそうだ。 あの、そのご親戚は例外中の例外、愛やら恋やら吊り橋効果で明らかに軸線狂ってるいい例だと思うので一切信じなくて結構です。信じられたらそれはそれで困るんです。今後の意味でも。だから容赦なく殺っちゃって結構なんでその価値観やめて! 「……入籍どころかデキ婚発表があった私に死角は無いです」 懐に「あるお守り」を潜ませて戦場に赴いた『致死性シンデレラ』更科・鎖々女(BNE004865)の目がどことなく虚ろなのはいつものことなのだろうとある種の割り切りを発揮させるとして、彼女の当該対象に向ける感情が危険水域に至っているのは気のせいだろうか。いや事実なのだろうなあ。なんかすっげえシンパシー感じてるみたいなんですけど大丈夫なんでしょうかね……。 彼女の声が聞こえたかは定かではないとしたって、ノーフェイスの攻撃の苛烈さがいや増しているのはおそらく間違いなどでは断じてないのである。 若しくは、リベリスタと彼との力の拮抗がどこかで崩れているかのいずれか。どちらにしても迷惑極まりない事態への発展は必至。彼らなりの機転を期待したいもんである。 小鶴の回復が機能している以上、リベリスタ側の被害がそう大きくなるとも思えないのだが、それは飽く迄彼らの戦闘が十二分の効率を発揮した場合。ブロッカーのスイッチが遅ければ、或いは間違いが起きることも想定せねばならないのだおる。 その状況を冷静に観察しつつ、一撃を確実に当てるべく『朱蛇』テレザ・ファルスキー(BNE004875)は重槍を真っ直ぐに構え、次の機を伺う。鈍重、と聞き及んでいたのなら、すべての攻撃がなんの問題もなく当たり、完全封殺の上で圧勝――少なくないリベリスタが想起するイメージは、しかし彼女の思考にはない。外せば生まれる隙に乗じて痛撃を貰えば倒れるのは自分だ。なら、確実に攻めることを選択するのは無論の道理だ。 痛めつけることが好きな人間は、しかし逆も然りであるケースはそう多くはない。痛みを糧とする暗黒騎士ならばそれを許容する器もあるべきだろうが、こと彼女に関してはその醸成は今しばらくの時間が必要であることは明らかだった。 「いちファンである分には良いが、こうなるとファンでも何でも無いのぅ」 「うふふ、何があってもいいんですよすきすきあいしてるあの声が無くなったら生きていけない」 「……そこまで行ってるとそれはそれでファンと呼ぶに不安だのぅ」 『鋼仁義侠 百万扇壁』加賀乃 魅ヶ利(BNE004225)が憂うように呟くが、尤もな彼女の主張すら鎖々女の劇的な愛情(隠語)の前には虚しいものである。声優に対する慕情を恋愛感情と絡めて捉え、『自らがそうなりたかった』のだろう、と誤解する者は少なくない。だが、正確な意味での『声ヲタ』というやつはそこまで安直ではなかったりする。……余り、理解したくない嗜好であるのは概ね同意だ。 やや距離を取り、鉄扇の重みを利用し振り上げられた蹴りは確たる勢いを以て烈風を為し、ノーフェイスに斬りかかる……だが、振動をものにした彼の身が着弾を拒絶したか、はたまた偶然の産物か。その一撃は勢いを失い、ざくりと路面を削りとった。だが、彼女が驚く暇は無い。……否。『全員に』そんな余裕は、微塵もない。 目の前の対象はフェーズ2。駆け出しのリベリスタ達が打倒するには、最大限の努力をして成し得る相手であるという事実を、彼らは改めて認識する戦いになるだろう予感が、ゆるりと首をもたげた。 ● 「コイツを食らえッ!」 「でゅるわぁあああああぶるわっひゃあひゃひゃひゃひゃどぅるわっはあああああああああぎゃあああああうわああああああああ」 龍星の体重が乗った一撃(だが何故か得物は長物だ)がノーフェイスの胴を揺らし、確かな振動が伝わったことを示す……のだが、あの九凪はいきなり叫びだして何が起きたというのか。 「……とか叫んでそうだよなぁ……そんなんじゃあダメだ」 あ、なんだ予想というか類推というか体験談なんです? 「騙したとか思ってるんじゃなかろうな? それはお前が勝手な思い込みをしてるだけだ」 「っ……かましィァァァァァ!」 だが、まあ感情のままにキレている相手に頭ごなしの否定は入らない。しようがない。彼の放った気糸は確実に相手を絡めとっているのだから一切の問題は無いだろう。 リベリスタ達の方針は正しい。動きが鈍重、体積の大きい相手は耐久力に長ける反面、当てるに容易な対象だ。命中率に一家言あろう面子による行動制限は戦闘において再優先に考えるべきものと言えよう。 動きを止められた事は僥倖だ。確実に、彼らが自由にできる一手を得たという意味では。 だが同時に、その一手を有効に使えるほど余裕がないのも事実である。 彼のノーフェイスを抑え続ける数十秒で、龍星と九凪は予想外の深手を負っている。振動による空気の圧力が二人を襲った回数は少なくないし、それによる精度低下も否定出来ない。 「群生を救給ひ恵給ひし。恐み恐みも白す」 「『これ』の相手を真面目にやっている時点で、少しつらいものがありますが……まあ、ね?」 護と小鶴の二人が全力で回復する必要がある程度の火力。一人で止めることが適わない相手であれば、どこかでブロッカーのスイッチは必須である。 つまり、二人に代わるブロッカーが前に出るタイミングであるが……嗚呼、後方でぎらぎらと目を光らせる鎖々女はどうしたもんだろうか。いや、つーかスイッチに入ろうとしてる。何かもってる。こええ。 あと護、すげえド真面目な顔で祝詞唱えながら焦り顔でアニメ雑誌(最新号)を取り出すとかシュール過ぎてどんな反応すればいいのかさっぱり分かんねえよ。ブロックから離れようとしてる九凪と入れ替わろうとしてる鎖々女とが反応しちまってるよ。 「あ゛……あぁ゛……!」 「あらあら」 「ふふふ」 苦鳴を上げながら束縛を振り払い、慮外の速度を発揮せんとしたノーフェイスに接近したのは、佳乃と鎖々女。後方で魅ヶ利が自らを的にかけ、彼を引きつけようとしたが、相手は二人を超えて接近できる状況ではない。 かといって、攻め手に走ってからノーフェイスに肉薄し切れる距離ではない。導かれる結論は余り色良い物ではない……が、それ以前に。 「まさか声優の方を恋人とでも思っていらっしゃったのですか? 妄想や現実逃避というよりは、そう。バカめ、と言ってさしあげましょうか?」 「ねぇ、これ何だか分かります?」 佳乃の挑発(非能力)が彼の額に青筋を浮かび上がらせるよりも早く、鎖々女の懐から取り出された物が眼前につきつけられる。……子宝祈願の、お守りが。 「あ……が……!」 「貴方の大好きな声優さんが、た~くさん子供に恵まれますようにってお参りしてきちゃいました」 にたぁ、と笑みを深める彼女の纏う空気に、後退したファーストブロッカー二人が背筋を凍らせる。相手を一方的に痛めつけたい気持ちが堪らないテレザは、感心したように目を細めているが……もうなんだろうこれ。 「声優の嫁がほしいなら、知り合える環境に入れる努力をすべきだろうが」 まって、今九凪がいいこといった! 何か言いながら表情曇らせてるけどすごい重要なこと言ったよ! 「クソぉぉぉぁぁアア゛……!」 苦悶の表情を浮かべ、あらん限りの悲鳴をまき散らすノーフェイス。声を全身の振動が増幅させ、慮外の威力と切断性を加え迸る。狙いは魅ヶ利。そして、彼女の周囲に陣取っていた後衛達。 重力の軛が彼らを再び絡めとり、精神の隙を突いて気力を奪い、自らの賦活すらも抜き取りにかかる、絶望の感情を押し出した悲鳴。 九凪と龍星の二人が受け止めていたそれよりは随分と弱いだろうが、後衛が受けるには随分と気力を要すことは間違いない。 現に。魅ヶ利はその一撃を受ける覚悟が出来ていた『上で』、体力の過半を持って行かれた。腰を据えた恨み言、その重みはあまりにも。 回復手二人にはそれ以上の苦痛が及んだことは想像に難くあるまい。重心を据えた巨体は、つまり受けるに不利、当てるにこの上なく有利……リスクを承知で一撃に賭けた「覚悟」なのだ。 まあ、そんな覚悟があったかどうかっていうと大体に於いてただの怠惰の産物じゃねーの? って龍星が軽く首をひねったのは内緒だ。そんな彼もさり気なく食らって運命削られてるのも、内緒だ。 佳乃は、愉悦の極みにあった。守り、受け、攻め、自らが放つに任せて身を裂く責め苦と受け止める攻撃の苦痛とを一手に受け止め、自らが望む痛みの全てを楽しんでいた。 身を裂く痛みが相手へ叩きつける一撃の覚悟であるならば、覚悟すら愉悦と笑ってしまう彼女の狂乱は何処までも重苦しい。 (彼女を否定する気は無いですが……理解できませんね……) テレザにとっては理解し難い感情である。まあ、これは完璧「S」という人種に於ける相違性の発露でもあろうか。 佳乃のように、与えることと受けることを同一とする痛覚の体現が一例であるならば。 テレザのように、一方的に与えることのみを好むタイプもまた道理なのである。 「それはそうとして、声優というのも、いわば役者の方なわけですよね?」 「……まあ、そうだな。違いない」 ふと、テレザの口をついてでた疑問に対し、ブロッカーに戻ろうと気を伺っていた九凪(フェイト使用済み)が動きを止め、頷く。既に彼は相手へのDisがブーメランであいつの体はボドボド状態だが気にしてはいけない。 「それを喜べないのであれば、きっと声優の方が好きなのではなく、声優の方に酔ってるご自身が好きなだけ、でしょうね。安っぽい駄目人間としか申し上げられません」 「…………そうだな」 素直に喜べず影で泣く「嫁き○く○」めいた声優もいるんだぞ自重しろよ! とはいえなかった。ど正論すぎてもうね。 「しかし、あれだけ振動してれば、少し位スマートになりそうなもんだが……」 振動を繰り返し、リベリスタを度々傷めつけて尚、ノーフェイスの体型が変化する様子はなかった。振動を腹筋に直接伝えて痩せるとかいうアイテムな、あれ効くわきゃねえよ。パッドの定期交換がメンドくなって放置が関の山だって。マジでマジで。経験者が言うんだから間違い無えって。だから龍星、あいつそんな類だぞ。振動してもスマートになりきれないタイプだ。 さて。 ノーフェイスの動きが目に見えて鈍っている状況下で、ブロッカーが交代したっきりいい仕事してて変わらない昨今ですが。 鎖々女の言葉が一切止まらないのはこう、どういうことなのかと小一時間問い詰めたい所存でありましてからに。 「想像してみてくださいよ~。あの声を持つ人物で溢れ返る世界を」 「うるさ……」 「あの声搭載の本職看護士や歯科医や教師が誕生するかもしれないんですよ! 崇拝対象の結婚、出産、喜ばしいではありませんか。産めよ増やせよ我ら声ヲタの為にです!」 ものすごい論理の飛躍が始まり申した。 曰く。遺伝により相似の声を以て生まれた子孫が社会に出て、声優以外の職に就き、市井に広がったならどんなに幸せなことだろうか、と! 曰く。それがどれだけ素晴らしい世界だろうか、と! ……いやほんとどういう理屈だよこれ。 でもノーフェイスの反応が鈍った。マジで。 「…………解せぬ……」 肉体が限度を超え、動くことも出来ぬ魅ヶ利がごろりと動き、その様子を見やる。理解できなかった。なんだこれ。 だが、彼に対する声ヲタ観点からの精神攻撃はそれだけじゃなかった。あろうことか、先ほどからタイミングを見計らっていた護すらも何かすげえ構えていた。突っ込んでくるかと待ってたらブロッカーがヤバい級に仕事するので、もうこれぶっちゃけよう。そう思ったりしたわけだが。 マジックシンボルを収め、アニメ雑誌を広げる。なんということでしょう、付箋の貼られたページは衝撃展開の特集ではないか!(月刊誌でそれやったら数週先なのか次週なのかで喧々諤々の議論が起きるだろうが) 「貴方のエンジェルは彼女だけだったのですか!? 見たまえ! このページを! 可哀想に、貴方からのファンレターという支援を失った“娘”が、次週センターから外されて戦力外通知を受けるという衝撃の展開予告です!」 「……え」 完全に動きが止まる。振動が激しい分か、多く流された血が足元をしとどに濡らす中、その勢いが更に増す。 彼の声優ではないキャラクターが。彼のせい(とは言えないが)で凋落する様を目の前で。これは、なんだろう。凄く辛い。 膝を屈したノーフェイスの項に、佳乃が笑顔で刃を向ける。 その背後から、テレザの一撃が続く。 ……哀れである。どこまでも、ひたすらに。 ● 工事を示す設備を淡々と片付けながら、ノーフェイスの死体が運ばれていくのを小鶴は無感動に眺めていた。 なんだろう、勝利が凄く虚しい。出会いはまだ遠いというのだろうか。 予算消化が多いから工事多くなってまあ工期がタイトだったり雪ん中雨ン中路盤作ったりせにゃならんかったり固まりかけたアスファルト原料にガスバーナーで火ィ当てて何とか整形したりした挙句フィニッシャーが仕事しなくて思うような路面にならない舗装工の悲哀とかがあふれるこの季節、ツールの一つでしか無いそれに関して彼女は知る由もない。どうでもいい。 どこかすっきりした世界の隅で、素晴らしい未来を思って鎖々女が笑う。どーにも、病んでいる気がしてならないが。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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