● スコットランド・ヤードの制圧に乗り出したジェームズ・モリアーティを辛くも撃退したアークとヤードの連合軍。彼等は『教授』の異名を持つ犯罪王・モリアーティらしからぬ派手な作戦の真意を掴めずにいたが、アークの協力を受けたヤードは持ち前の情報収集能力でこの交戦を糸口に敵本拠地がロンドン・ピカデリーサーカス地下に存在する可能性が高い事を確認する。敵本拠地は未だ幾つかの謎に包まれており、その全容が解明されている訳では無い。しかし、様々な情報と状況を総合的に斟酌した結果、アークとヤードは倫敦派を叩くには素早い攻撃が不可欠であると判断したのだ。 かくて再び倫敦に派兵されたアークのリベリスタ達は『教授』の待つ蜘蛛の巣に立ち向かう。 そこには六道の凶姫、そして彼女の恋人・凪聖四郎の姿もあった……。 ● 「ふしゅるるるるるるるる」 暗がりの中で人のような形をしたものが蠢く。 しかし、それは明らかに人間では無かった。 全身をぬめる鱗が包み、ぎょろりとした目が覗いている。その姿を評するのなら、半魚人と言った所であろうか。 キマイラ――フィクサード組織『倫敦の蜘蛛の巣』が生み出した生体兵器の1つだ。 人間とエリューションを掛け合わせて作られた、悪魔の産物である。 倫敦派は力を求める一般人を集め、彼らを改造した。キマイラの恐ろしさは、キマイラ自身の戦闘力よりも設計が自由であるという仕様にある。フィクサードの思うように運用できるのだ。組織の視点からすれば、大変魅力的な「技術」である。 「ふしゅるる……全テハ……」 目覚めたキマイラの脳内に命令が聞える。それは彼らの本能とも言って良い声。その声に従うことこそが、彼らの存在意義なのだ。人間としての自我が残っていない訳ではない。しかし、それすらも元は倫敦派へ忠誠を誓ったものだ。であれば、その声に抗う必要などありはしない。 「全テハ、アノ”オ方”ノタメニ……」 ただ、主が何者であるかを気にすることも無く、戦うだけの話だ。 ● 強烈な寒波に見舞われる1月のある日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。場にははっきりとした緊張が漂っている。ブリーフィングルームの中には『風に乗って』ゼフィ・ティエラス (nBNE000260)の姿もあった。 そして、リベリスタ達に対して、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は今回の件への説明を始めた。 「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるぜ。今回の依頼は『倫敦の蜘蛛の巣』への攻撃、『ヤード』とも共同で行う大規模な作戦になる」 いよいよ動きが来たのかとリベリスタ達の瞳が輝く。 モリアーティの攻撃計画をスコットランド・ヤードとの共闘で撃退したのは記憶に新しい。 ロンドン市内での戦いは大きな被害を出したが、各リベリスタの活躍もあり、交戦から倫敦派の情報の一部を獲得する事に成功した。 先の戦いでアークが収集した情報提供も含めた『ヤード』側の『捜査』は一定の成果を上げている。元々が神秘の警察機構である彼等は探査や情報収集には非常に強味がある。結果として若干の時間は掛かったが彼等は小さな糸口から敵側の綻びを広げたのだ 「倫敦での今までの戦いは互いの尻尾を掴ませないようなものだったらしいからな。だけど、前回の戦いは『ヤード』の捜査にとっては大きな進展をもたらしたみたいだ」 そしてその成果として、ピカデリー・サーカス地下に本拠地があることを掴んだ。しかし、守生の表情は微妙にうかないものだ。 「裏を返すと不安材料でもあるんだけどな」 確かにこれまでのモリアーティの『慎重過ぎる位に慎重な動き方』と前回の事件のやり方は余りにも違いが大きい。神秘研究者・リー教授の言った『アーティファクト(モリアーティ・プラン)』存在の疑い、蜘蛛側傘下組織『イーストエンドの子供達』が発した情報――モリアーティの真の狙いは倫敦の覇権ではない――という部分も気にかかる。 しかし、不確定不安要素の存在、本拠の詳細も含め倫敦派の状況は完全に掴めてはいない事を鑑みても、天才・モリアーティに徒に時間を与える危険性は言うまでも無い。 倫敦の戦況を変えてしまったのは、キマイラというエリューションの持つ極めて高い戦略価値だ。フェーズ4キマイラが完成し、量産が行われれば手に負えなくなる可能性は低くない。 結果としてアークと『ヤード』の上層部はリスクを覚悟の上で早期の攻撃計画の発動に合意した。 「あんた達には地下要塞の内部に向かってもらう。情報が少ないのは勘弁してくれ」 守生が機器を操作するとキマイラの姿が表示される。 魚のようなフォルムを持つ人間、いわゆる半魚人と言った所か。 「識別名はギルマン、Eビーストと人間が融合したタイプのキマイラだ。この辺の区画に潜んでいるようだ」 敵の要塞内部に潜むキマイラで隠密能力に長けたキマイラのようだ。真っ向からの勝負よりも奇襲を得意としている。そう簡単にやらせてはくれないだろう。 横を見ると、ゼフィも険しい表情をしていた。彼女の場合、初めて国外に向かうことへの不安もあるのだろうが。 なんにせよ、これ以上倫敦派の跳梁を許すわけにはいかない。 幸いにして、日本・三高平市への物理的干渉、奇襲を防ぐ為のロンドン市内の封鎖・監視は『ヤード』の予備戦力が担当することになった。後顧の憂いも無く戦える。 説明が終わった所でゼフィは立ち上がると、震えを押さえながら、リベリスタ達を促した。 「行きましょう、わたしも微力を尽くします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年02月09日(日)22:10 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 激戦の続くピカデリー・サーカス地下。 リベリスタ達は一塊となって、『蜘蛛の巣』の地下要塞を進んでいた。ここは敵の腹の中。ましてや、陰謀と得意とする組織の本部なのだ。用心に用心を重ねても、まだ十分とは言えないだろう。 その時だった。 リベリスタ達の周りを霧が包んでいった。 倫敦の闇を象徴するような、濃く、深い霧だ。建物の中でこのようなことが起きるのはいかにも不自然である。 さらに、気付くと足元に流れ込んでいた。 リベリスタ達は自分らが深い沼の中に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥る。 そんな心許ない感覚で歩を進める彼らの背中に向かって、怪しい影が忍び寄る。 そして、その魔手が正に届かんとした時、七布施・三千(BNE000346)が叫んだ。 「皆さん! 後ろです!」 ● リベリスタ達の後背を突こうとしたキマイラが無能だったかと言われると、そんなことは決してない。ただ、危険に聡い獣化因子の持ち主の前では、その効果は幾分限定されてしまうのは致し方ない所だ。 ましてや、三千の場合は獣化因子を完全に制御したハーフムーンなのだ。 そうやすやすと隙は見せない。 「ハッ」 敵と遭遇したリベリスタ達の行動は早い。 『影刃』黒部・幸成(BNE002032)は跳躍すると敵を迎え撃つ姿勢を取る。たしかに相手の技は確かなものだが、所詮は本能に基づくものでしかない。自分には戦いの中で培ってきた技術があるのだ。それに比べれば、キマイラの技など物の数ではない。 「敵の数も能力も分かっていれば、暗殺者なんて敵ではありません」 毅然と言い放ったのは『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)だ。戦いの舞台となったイギリスは彼女にとっては故郷に当たる。楽しい思い出だっていっぱいあるのだ。その場所をこんな犯罪組織なんかにくれてやるいわれは無い。 「蜘蛛の巣の好きになんてさせません。イギリスは私達が守ります!」 言葉と共に発露した強い意志が雷光となってセラフィーナの身を包む。電気信号の完全制御によって高められた全身の反応速度は究極の領域に到達するのだ。 臨戦態勢に入ったリベリスタ達は、カスミの中にぼんやりと浮かぶキマイラの姿を視認した。ブリーフィングでも確認した通り、魚のようなフォルムを持つ人型のキマイラだ。足元には魚の形をしたエリューションの姿も見受けられる。 リベリスタ達の体勢が整ったのを見てか、敵方の攻勢は無い。 不意打ちが失敗したので、視界を利用しての攻撃に切り替えるつもりなのだろう。 そんな敵の様子にフュリエの少女、ゼフィは不安な表情を浮かべる。その不安を見て取った『雨上がりの紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)は不安を和らげるようにふわりと微笑を浮かべた。 「大丈夫、心配しないで。なんとかなります」 心中を見透かされて恥ずかしげにしているゼフィを励ますように、シエルは言葉を紡ぐ。お節介と言われるかも知れない。それでも、放っておける性分ではないのだ。 「実は私……争いは苦手です。今でも戦いの都度動悸が止まりません。私の癒しは皆様のお役に立てるか……いつも心配なのです」 「本当ですか!?」 確かにシエルも今となっては世界に知られ、世界に通用するレベルの癒し手である。それでも慢心したことなど一度だってない。 それでも、この場には9人のリベリスタがいる。 その全員がそれぞれに得手不得手を抱えている。 しかし、裏を返せば互いに助け合うことが出来るということ。決して1人きりではないのだ。 「皆様と一緒なら……幾度でも癒してみせましょう」 静かな決意と共に語るシエル。 シエルの言葉に力づけられたのだろう、ゼフィもまた覚悟を決める。 そんなフュリエの姿を見て、『蒼碧』汐崎・沙希(BNE001579)は内心でこっそりと苦笑する。 (本当味方で良かった。怖いけど逃げない、決意の眼差しで挑むとか。私、そういう人は一番敵にしたくない) 物理的な強さは鍛錬次第でどうにでもなる。 しかし、心の在り方はなかなか変えることができないのだから。 そう思いながら、沙希は敵のいる側に向かって1歩だけ踏み出した。別にゼフィを特別扱いしようという心算はない。実戦経験の少ない彼女の安全を確保した方が、結果としては成功率が上がると判断した魔でのことだ。 同じように自らの身体をそのまま壁にしようとしているのは『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)だ。いつものように巨大なカレー皿を振り回し、今日もカレーを食べたいと思いながら前に立っている。本気じゃない、これもやっぱりいつものように。 「なんで魚やねん。シーフードカレーが食べたくなります。ふぁいとっ!」 「お魚は大好きですけれど、半漁人は美味しくなさそうですぅ……。見た目も微妙なのもいただけないのですぅ」 『ぴゅあで可憐』マリル・フロート(BNE001309)は愛らしい顔を不満げに膨らませる。鼠のビーストハーフではあるが魚は嫌いじゃない。だけど、相手は魚類の悪い所を総取りしたような代物だ。正直、好きになれない。 だから、最強の決戦兵器……みかんの皮を取り出して威嚇を始めた。 「生臭いだけの魚ちくしょうはこのマリルちゃんの超必殺、『破滅のオランジュミスト』で爽やかなシトラスの香りをふりまいてやるですぅ!」 仲間達が気勢を上げる中で、『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)もまた霧の向こうに隠れる敵を見据える。まるで倫敦派との戦いの縮図そのものだ。相手の姿ははっきりと見えず、何を考えているのかもわからない。 それでも、だ。 「それでも……そんな目論見や企みなんて、纏めて撃ち貫いてあげる。その為にも。魚類風情が、私達の歩みを止められると思わない事ね!」 その時、水面がざわめくのを感じる。 どうやら相手も動き始めるようだ。それを察したミュゼーヌは月の加護を呼び込む。 「蒼き月の光を、此処に……永久炉、フルドライブ!」 戦場が刹那、月を映す泉へと変わる。 そして霧の奥深くに差し込む月の灯かりが、始まりの合図となった。 ● 戦いは思いの外にリベリスタ側が苦戦を強いられることになった。キマイラ達の得意な戦場は裏を返せば、リベリスタ達にとっては不利な戦場。普段なら決定打となる一撃が必殺の効果を発揮しないのだ。 しかし、そのようなことで怖気づくような者は、この場に1人たりとていない。 「敵の数も能力も分かっていれば、暗殺者なんて敵ではありません」 低空飛行を行いながら果敢にキマイラに攻撃を行うセラフィーナ。彼女の翼の前で足場の不利など何の意味も為さない。 そして今までの戦いで見えない敵など何度でも斬って来たのだ。たとえ音だけが頼りであっても、彼女の技量であれば捉えられない敵などいない。 霊刀東雲が七色の光を放ちキマイラを傷付けていく。光に惑わされるキマイラはその刃で本来仲間であるはずのエリューションを傷付けてしまう。 東雲は夜の闇を斬る刀。こんな霧など物の数ではないのだ。 「この程度の霧、私には通じません!」 一方で、そもそもこの戦場をものともせず戦っているのは幸成だ。 暗闇の中での戦いなど、忍びである彼にとってはどうということも無い。大いなる毒蛇の因子を宿した彼にとってみれば、太陽の下も月光の戦場も大差は無いのである。 「その牙よりも鋭き刃が在る事、知るが良い」 何かが煌めいたと思うとエリューション達が盛大に血を噴き上げる。 それは飛び立つ姿を見た者の命を奪うと言われる凶鳥の技。エリューションの牙は鋭く、激しくリベリスタ達に傷を与えてきた。しかし、死の運命そのものには抗えないのだ。 そしてリベリスタ達の側はと言うと、予想以上に長引く戦いの中でも耐えきるだけの持久力を有していた。そしてそれを支えたのは、万端の準備を行った者の1人が沙希だ。 たとえ霧が視界を塞ごうとも、彼女の瞳は敵の動きをありありと捉えていた。 そして何よりも、 (やっぱり水のあるところはリラックスできるわ) 妙に妖艶な印象を与える微笑みと共に、沙希は上位存在の力を呼び込む。 人前では言えないが仄暗い水景色は心が和む。たとえそれが命を賭けた戦場であっても、だ。 鬼火の銀時計がもたらす不安定な輝きは、一層彼女の表情を謎めいて見せる。闇の中こそが彼女の領域なのかも知れない。 三千もまた、体内に魔力を循環させながら戦場を注視していた。 戦闘が始まって彼が即座に行ったことは足場の確保。すなわち、翼の加護による飛行能力の付与だ。罠があれば勝てない、万華鏡が無ければ戦えない等と言うようではリベリスタ失格。罠を踏み越える智慧を持っていたからこそ、彼もここまで戦ってこられた。万華鏡に頼らずとも戦う術はいくらでもある。 「ミュゼーヌさん!」 「えぇ、任せて頂戴」 三千の合図に合わせてミュゼーヌのマスケット銃が火を噴く。彼を信じるが故に彼女の攻撃には迷いがない。 攻撃が決まると弱っていたエリューション達はその動きを止めて行った。勇ましく戦う彼女の姿を見ると、自分の心が誇らしく思う気持ちで充たされていくのを感じる。 (ミュゼーヌさんが、皆さんが攻撃に集中できる場を作ることが、僕の役割……) 三千はキッとキマイラを睨む。 その横でマリルが引き金を引く。すると、最後に残っていたエリューションが撃ち抜かれて爆ぜる。 「にゅっふっふ! ザコはまかせるですぅ!」 ちょっと気取った仕草で銃口をふっと吹くマリル。 これで残す敵はキマイラだけだ。 「さぁ、連係プレイで一匹残らず料理してやるですぅ」 さらにキマイラのいる方向に向かって短剣を向ける。しかし、そこでブリーフィングで見たキマイラの姿を思い出し、へなっと崩れてしまう。 「でも食べたくはないのですぅ……」 煮ても焼いても食べられるビジョンが見えない。 実際に食ったら腹を壊しそうな気もする。 そんな気配を察知したからか、困惑から回復したキマイラから反撃の刃が飛んでくる。それなりに傷を与えている訳だが、高いタフネスはプロトキマイラの頃から見受けられた特徴だ。 「通しませんよー」 しかし、その反撃を食い止めるように立ち塞がるのは小梢だ。 さっきまでいたエリューション達に噛み付かれていたので、全身が痛む。一撃一撃は小さくてもあれだけ噛まれればさすがに疲れる。これは帰ったらカレーを食べなくてはいけないレベルだ。いや、多分無傷で帰ってもカレーを食べるけど。 「攻撃は得意な人にお任せ~」 カレーの偉大な力(本人談)で防御は固めている。あとは、アイツさえ倒せば戦いは終わってカレーにありつけるのだ。 「皆さん、あと一息です!」 ゼフィがフィアキィに命じるとリベリスタ達に気力が宿る。力を取り戻すと、リベリスタ達は一気呵成の反撃を開始した。高い再生能力を持つ敵が相手なら、それ以上の攻撃力で押し潰せばよい。 「空気……少し薄まりますよ……」 シエルが強く翼をはばたかせると魔力の風が渦を巻き、キマイラの醜悪な姿を露出させる。 普段は癒し手としてこの力を振るうことは少ないが、攻撃に回るというのなら話は別だ。優れた術師である彼女の魔力は、裏を返せば高い攻撃力にも通じている。誰も傷つけたくないからこそ誰かを傷付ける。相反するがそれ故に、強い力となってキマイラの身を苛む。 その間隙を縫うように、ミュゼーヌは一気に距離を詰めた。 彼女の体内に存在する永久炉が一気にエネルギーを発する。 「六道から生まれた、この日本の恥が。貴方達キマイラも……いい加減飽きたのよ!」 キマイラの肉体に銃口が接する。 その直後、限界まで速度を高めた弾丸がキマイラの胸板を貫いた。何とか体勢を立て直そうとするキマイラだが、ミュゼーヌはそれを許さない。そのまま円舞を舞うように黒銀の脚で踏み飛ばす。 壁に叩き付けられようとするキマイラ。その時、怪物の身体が物理法則を無視して中空に跳ね上げられる。見ると、そこにはいつの間にかキマイラの後背を奪っていた幸成の姿があった。彼の足元から伸びる黒いオーラがキマイラを押さえつけたのだ。 「貴方が何人の人間を暗殺してきたかは知りません。ですが、それも今日までです」 抜刀したセラフィーナ狙いを定める。 闇を斬り、光をもたらす。 それが彼女に与えられた運命。 であれば、ここで敗れる道理は無い。 「露と消えなさい、キマイラ!」 言葉と共に閃く刃。 七色の光が飛沫のように舞い、戦場を覆っていた霧を晴らしていく。 キマイラの消滅と共に、そこには何の変哲もない研究室の姿だけが残った。 ● 作戦の成功を本部に報告して一息つくリベリスタ達。 だがまだ戦いは終わっていない。 首魁たるモリアーティも幹部であるモラン大佐もいまだ健在だ。 わずかな休息を取る中で、シエルはゼフィに話しかける。 「ゼフィ様は薬師なのですね……心強うございます」 「はい、向こうにいた頃から、その知識を学んでいまして」 「さっちゃんも薬師なんですよ?」 「本当ですか?」 ゼフィはラ・ル・カーナにいた頃は薬草集めをしていた。それだけに怪我や薬についての知識はある。そして、同じ職に就いていた沙希に共感を抱き、話しかけようとする。内気な性格より好奇心が勝るのだ。 (まあ、確かに私は薬師だけど。ゼフィさんと会話が合うかは別でしょうに) しかし、沙希の返事はにべもない。返事を受けてしょんぼりとするゼフィ。 沙希は席を立つと、そろそろ移動するよう念話で呼びかける。 そして、最後にゼフィにこう言った。 (でも、ボトムの生薬を知りたいとかなら知識の提供を惜しむ心算はないわ) ゼフィの顔は顔をぱぁっと輝かせて沙希の後ろに付いていく。 まだ戦いはこれからだ。 リベリスタ達の心に油断は無い。 鬼が出るか蛇が出るか。はたまた予想もしえない邪悪の姿があるのか。 それでも臆することなく、リベリスタ達は霧の最奥へと歩を進めるのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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