●試練の迷宮 「以前から調査に協力頂いているアーティファクトの件で、また調査への協力をお願いしたいんです」 集まったリベリスタ達に向かって、マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう切り出した。 アーティファクトの名前は、試練の迷宮。 試練を望む者を、モンスターやトラップの配置された迷宮へと転移させる修練型のアーティファクトである。 大きさは掌に収まるくらいの特に飾り気のない立方体。 材質は金属か何かのように見えるが、詳細は不明である。 これまでの情報から、このアーティファクトは遥か昔……どれだけ昔か分からない程の過去、何者かが、修練の為に造り出したのではないかと推測されている。 「これまで調査の為に幾人かの方に迷宮に挑んで頂いたのですが、それを基に調査している最中、また新たな迷宮が現れたみたいなんです」 今回も直接死亡するような危険は無いようで、負傷によって動けなくなった者は強制的に迷宮の外へと転移させられる。 「ですのでまた……調査に協力という形で、迷宮に挑んで頂きたいんです」 マルガレーテはそう言って、集まっていたリベリスタ達を見回した。 アーティファクトの呼びかけに応じれば、応じた者たちは迷宮の入口へと転移させられる。 入口は門のようになっており、怪我などをしなくてもそこから迷宮を出る事は可能なようだ。 これまでのところ、迷宮内は通路の幅や高さは5m程度で一定になっており、所によって扉や部屋などが存在するという造りになっている。 壁や天井、床は石のように見えるが、戦闘を行っても傷付かない不思議な素材で出来ている。 また、物理的にだけでなく空間そのものも隔てられているようで、壁等を透視で見通すことは出来ず、透過しようとしても少し潜る程度のことしかできないようだ。 内部では敵としてモンスターのような存在が複数出現するが、造られた存在で生き物ではないらしい。 生物のような外見や動きをするものはいても、あくまで創造物でありプログラム的な何かで動いているようだ。 ちなみにこれまでの迷宮は、最後の部屋にいるモンスターを撃破する事で試練を乗り越えたと判断されている。 「今回も、最後の部屋にいるモンスターを倒す事で試練を乗り越えたと認められるようです」 フォーチュナの少女はそう言ってから、今回の迷宮について説明し始めた。 ●鋼と亡霊の迷宮 「今回の迷宮は大きな正方形状で、2つの階層に分かれているようです」 マルガレーテはそう説明した。 正方形の一片は数キロ程度らしいが正確なところは解らない。 全体の形は正方形であっても、内部はもちろん通路や分かれ道、扉などで遮られている。 「部屋らしき形状の場所は2箇所、皆さんが最初に出発する部屋と、ボスのいる部屋のみのようです」 リベリスタたちが到着するのは1階の中央部分にある正方形の部屋で、中央に迷宮の出入口があり、四方の壁にそれぞれ扉が付いているという構造。 「ボスのいる部屋は2階の中央部分にあるようです。皆さんのいる部屋よりやや大きめで、四方の壁には扉のない門のような出入口があるみたいですね」 その2階中央の部屋では、鎧を纏い金属の馬に乗った、幽霊のような騎士が待ち構えている。 「異常効果を受け難く、耐久力や防御力、攻撃力もそれなりに高いようです」 動きも決して遅くは無いという欠点の無さそうな敵ではあるが、攻撃の方は神秘と物理の単体近距離攻撃のみのようだ。 「この騎士を倒せば試練を乗り越えた事になります。が、部屋の中にはモンスターを創り出す台座のようなものが3つ存在しているんです」 3つの台座からはそれぞれ、鎧を纏った騎士、金属製の馬、幽霊のような存在が、不定期に間隔を開けつつ生み出されるようだ。 鎧の騎士は突出した能力は持たないが特に欠点のない存在で、鉄の馬は物理系を重視した能力を持ち、耐久力や防御力も高いようだ。 また、動きを鈍らせたり封じたりする攻撃が効き難くなっているらしい。 幽霊、白く半透明なゴースト的な存在は、物理攻撃が効かないものの神秘系の攻撃に弱い。 攻撃そのものは神秘系の単体攻撃で威力もそれほど強くはないが、それによって自身の受けたダメージを少し回復させるらしい。 「この3種のモンスターは、迷宮内にも多数いて、1~3体ほどで徘徊しているようです」 この部屋で想像されたものたちが部屋から出て徘徊し始めるようだが、リベリスタたちが到着した時点で、すでに複数が迷宮内を徘徊しているようである。 とはいえ、時間が掛かれば数は更に増えてゆく事だろう。 「室内に入って戦いになると四方の門に扉が現れて出入りできなくなります。ですので、徘徊しているモンスターが戦闘に加わってくる事はありませんが……徘徊する数が多ければ、たどり着くまでの戦いも多くなります」 戦いを避ける事も大事だが、時には強引に進むという判断も必要になってくるかもしれない。 「鎧の騎士と鉄の馬は動いている時に音を立てます。少しくらい離れていても聞こえるのではないでしょうか」 マルガレーテはそう言った後で、迷宮内には部屋以外にも複数の箇所に扉がある事、騎士は扉を開けて、ゴーストはすり抜けて扉を通れるが、馬は閉じられた扉を通過しようとしないのだと説明した。 それらをうまく活かせば、戦闘を避ける事、減らす事はできるかもしれない。 「今回も迷宮に挑戦しても良いという方がいらっしゃいましたら……調査への協力、お願いします」 説明を終えてからそう言うと。 フォーチュナの少女はもう一度皆を見回してから、深々と頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年01月31日(金)22:51 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●試練の迷宮、三度 「ダンジョン探索! 男の子ならば誰もが憧れるよね!」 「ダンジョンアタックだな! 燃えるな!」 『一人焼肉マスター』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)と『疾風怒濤フルメタルセイヴァー』鋼・剛毅(BNE003594)の言葉は、ここまではほぼ同じだった。 それ以降は、まったく違った。 「迷宮をクリアして、金銀財宝とかお姫様をゲットだぜ!」 「きっと彷徨う鎧とかいるんだぜ、俺も憧れたもんだ」 剛毅の方は更に、突然動き出して通りすがりの冒険者に襲いかかるとか……と付け加える。 「でも、ここ、何も財宝とかなさそうだな……」 竜一の方はというと、ちょっとガッカリしたように呟いた。 もっともそれは事前に分かっていた事である。 財宝は無いし、お姫様もいない。 (ならば、なぜダンジョンに潜るのか。それは、そこにダンジョンがあるからさ!) 「まあ、索敵とか仲間頼りだけどな! 俺は、ほら、あれだ……せ、戦士だから……」 「まあ冗談はさておいて、このダンジョンはどういう仕組みでできているんだろうな」 そう言って迷宮内を見回しながら、剛毅は過去の迷宮調査の報告書の事を思い返した。 (プログラム的な何かで動いているというのなら電子の妖精で何かしら分からんものか) 何かアクセスするような端末でもあればと思うが…… 「まあ、あまり期待はしていないが……何かわかればめっけもんだな」 とにかく確りと周囲を観察しようと剛毅は気を引き締める。 (今回は幽霊と騎士と馬、かぁ) 「馬がいなかったら、60階建ての塔を登るゲームみたいな感じだったかも」 呟いてからまた、嫌~な想像をして、『ニケー(勝利の翼齎す者)』内薙・智夫(BNE001581)は頭を振った。 用意した紙と鉛筆をアクセスファンタズムから取り出すと、気持ちを切り替えマッピングの準備をする。 三度、破界器の迷宮へ。 「今度もダンジョンアタックだけど、前回の試練を分岐点に試練内容変えてるのかな?」 四条・理央(BNE000319)も用意した荷物を取り出しながら呟いた。 方眼紙にペンや方位磁石、そしてチョーク。 影人を操りながら移動できないかと道具も用意してみた。 どうなるかは、実際に試してみるしかない。 (スライムから始まって今回は騎士) 「段階を踏んで居るみたいだし、イメージ的にそろそろ終わりが近いのかな?」 『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)は考え込んだ。 最後までクリア出来た人が、手に入れたのは名誉なのだろうか? (作られた当時は踏破する事で何らかの重要な仕事を与えられたのかもしれない) 命を落とさずに済むというシステムが、制作を命じた存在が挑戦者を大切に思っていた事を証明している気がするのだ。 「それにしても毎回メンバー入れ替わるけど、協力しあうって大事だね」 例え迷宮が一人でクリア出来る難易度でも、それじゃつまらなそう。 楽しそうな竜一を見ながら……キリエはふと、そんな事を考えた。 迷宮に挑む者は6人。 初挑戦の者もいれば、幾度も挑戦し試練を乗り越えてきた者もいる。 『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)もその1人だ。 「また新手かよ……迷宮の製作者は可也の凝り性だな」 (此処まであの手この手で来られると終わりに何が見えるか楽しみじゃないの) 通路のその先を……迷宮が最後に辿り着く場所を見据えるかのような眼差しで、喜平は呟いた。 「……あんたが用意した試練、必ず踏破してやるよ」 ●探索から遭遇戦へ 『音がするルートは避け、それでも敵と遭遇した場合は手早く殲滅して進む』 それが今回のリベリスタたちの基本方針だった。 (今回、トラップは無いようだけど……敵が迷宮を徘徊しているから、音に注意しておこう) 後列に位置した智夫は小さな音等も聞き逃さないように注意しながら、皆と共に迷宮を進む。 中衛に位置したキリエは、前と同じように番号を振りながら迷宮を進んでいった。 建造物のルールは当てはまらない以上、決めつけは危険である。 地道に、堅実に。 (2階もあるようだから、ゴーストが天井からすり抜けてくる可能性もあるのかな?) そんな事も考えながら、キリエは分かれ道を発見すると壁に数字を手早く書く。 喜平は暗視とESPを用いて探索者センスを高めながら、曲がり角や扉に特に注意して進んでいった。 探索中は前衛という名の肉壁と自身を定めている。 意思の疎通は出来るだけ小声やボディーランゲージ等で行い、足音にも気を配る。 竜一も前衛として暗視を用いながら、前方の先……通路が真っ直ぐだった場合の照らされぬ闇を警戒した。 後方に関しては、完全に味方頼りと割り切っている。 「……理央たんおんぶとかする? だっこする? 任せて! ……影人もふもふしてもいいけど!」 探索前はそんな調子で今も態度そのものは変えていないが、彼の動きそのものは皆と同じく慎重だった。 当たって音を立てそうな物は布を巻いたり挟ませたりし、移動時も音を立てないようにと注意している。 敵の音が聞こえやすいように、敵に察知されづらいように。 (素早く、それでいて慎重に行動だ) 警戒で遅くなり過ぎないようにとも注意しながら、竜一は喜平と共に前衛を担う。 一方で理央は、智夫と共に隊列の後方に位置していた。 今回影人は6体を維持し、自分たちの更に後方、隊列の最後尾に続かせている。 移動しながら影人を作成することで移動が遅れるのではと懸念していたが、パーティが音に注意して慎重に移動する場合、大きく遅れるような事はなさそうだった。 その点に関しては力の温存が出来たといえる。 もっとも、6体もの影人を作り出すだけで理央の力は半減するのだ。 消耗を回復させる力があるとはいえ、智夫やキリエの万全のサポートがあってこその作戦とも言えた。 自身の力のみでとなれば回復に10分程度は必要である 何かが動く音が響く中、それを避けるようにして進んでいく10分は……決して短くは無い。 とはいえ戦いの最中と比べれば天と地ほどに違うのも事実である。 その時間をできるだけ長く取る為に。 後方の警戒は影人に任せ、理央は方位磁石を手にマッピングに専念する。 (本当は前衛に立ってバッタバッタとモンスターどもを薙ぎ倒したかったのに……) 思いはすれども行動には移さずに、剛毅は中衛として周囲を見回しながら迷宮を進んでいった。 耳を澄ますと様々な方向から、金属が触れ合って立てる音が聞こえてくる。 それに混じるようにして、時折別の音が響く。 おそらくは扉の開閉音なのだろう。 智夫はそういったものを聞くたびにハンドサインや小声で仲間たちと確認し合った。 皆も気付いているとは思うが、偶然聞き逃すという可能性もあるのだ。 音がそちらから聞こえてくると分かった場合は別の道に向かうようにして、6人は2階への階段を目指して進んでゆく。 ゴーストだけはそういった音を立てないようなので、音などせずとも周囲は警戒する。 特に扉がある場合、扉を抜けて不意打ちされぬようにと智夫は気を配った。 しばらくはそうやって何事もなく移動していった一行は、階段に近付いたところで2体のゴーストに遭遇する。 一本道の遭遇であるため、回避は難しい。 そう判断し、6人は敵を速やかに殲滅すべく行動を開始した。 ●続く戦いと探索 キリエが全身から伸ばした気の糸が、浮遊する半透明の存在を貫く。 それに続いた智夫が、掌に集めた聖光をゴーストたちへと向けた。 喜平も即座に力を収束させ、強力なエネルギー弾を一方のゴーストに向ける。 竜一も一気に距離を詰めると、宝刀露草を振るって生み出した烈風でゴーストたちを薙ぎ払った。 理央は神秘の力を持つジャベリンで攻撃を行いながら、影人たちに味方を援護させる。 神秘の力によるリベリスタたちの攻撃を受けて、2体のうちの1体が消滅した。 「しかし物理攻撃がほとんど効かないとか俺と愛称悪いな。状態異常もあまり効かないだと……」 ならば自分も神秘攻撃をと、剛毅は黒のオーラを収束させゴーストへと向ける。 更に続く皆の攻撃を受け残ったゴーストも呆気なく消滅し、6人は移動を再開した。 通過した扉は音を立てぬようにそっと閉めて、智夫は理央と共にマッピングを続けながら迷宮を進む。 階段に近付く途中で更に戦闘が発生したものの、敵の数は少なく、僅かな時間で6人は殲滅に成功した。 キリエと智夫は仲間たちの消耗に気を配り、戦闘に備えて力の回復を行っていく。 智夫は周囲に敵がいない事を確認すると仲間たちと意識を同調させ、キリエは自身の力を増幅させ仲間たちへと供給した。 そのまま階段の1つへと到達すると、一行は階段を昇り、第2階層へと足を踏み入れた。 なるべく敵の発する音の聞こえない方向を選んで。 皆の索敵を参考に情報を合わせる感じで、竜一は通路を進んでゆく。 もっとも、それで絶対とは彼を含め全員が思ってはいなかった。 音が聞こえる方の敵の数が少なく、逆に聞こえない方が敵が多く待ち構えている……そういう可能性もあるのだ。 場合によっては、あえて音のする方へという選択肢もあるのだろうが……どういった時に、となると……これは難しい。 2階を進み始めて間もなく、6人は動く鎧たちとゴーストの混成集団と遭遇する事になった。 「ぬ、彷徨う鎧騎士を発見だ! みんな気をつけろ!」 警戒を呼びかけながら剛毅が構えを取る。 後方からも金属の響かす音が近付いてくるのを確認した理央は、足止めのためにと影人たちを向かわせた。 その間に、正面の敵を撃破しなければならない。 味方の状態がほぼ万全なのは幸いだった。 「くっ、見た目が似ていても、鋼さんを鎧の騎士と勘違いして攻撃したりなんかしない! ナイチンゲールフラッシュ! 」 「ま、まて俺は味方だ!ちゃんと中身があるだろう! こっちに攻撃するな!」 「……って、間違えるところでした……」 「ふう、危ない所だった。これからは間違われないように中身があるアピールをしておこう」 そんな冗談めいたやり取りを剛毅としたりはしたものの、智夫はキチンと鎧の騎士たちへと攻撃を行った。 通路の幅もあって、竜一と喜平が前衛を抑えている限りそちら側から騎士たちに接近される事は無い。 騎士たちの攻撃は弱くはないが、喜平と竜一の2人に短時間で深い傷を負わせるほどの力は持っていなかった。 智夫が聖なる光で攻撃を行い、喜平もその場からエネルギー弾で鎧の騎士を攻撃する。 竜一は物理攻撃が効くのであればと斬り込み、渾身の力をこめた一撃で鎧の1体を斬り裂き、同時に叩き潰した。 理央は味方を癒す必要がない時は力を温存するように、射撃による攻撃で仲間たちを援護する。 一方でゴーストの方は、騎士たちと対峙する竜一と喜平の間を縫うようにして中衛の剛毅に接近した。 「なに、俺が脆い……だと!? ぐぬぬ」 俺のフルメタルボディが火を噴くぜと力強く対峙した剛毅だったが、物理と比べると神秘に対しての防御力では劣っているというのが実際のところである。 もっとも、あくまで比べてであって、彼が実際に受けたダメージはそれほど大きなものでは無い。 負傷は気にせず、剛毅はオーラを操ってモンスターたちを攻撃した。 騎士たちの方は前衛の2人と対峙し、後方から影人たちとモンスター達のものであろう戦いの音が響き始める。 幸いというべきか、後方から敵が現れる前にゴーストと鎧の騎士たちの撃破は完了した。 6人は急いで先に進み、智夫とキリエが再び消耗の回復を行う。 今のところ前衛の2人がもっとも負傷していたが、それも回復を必要とするほどのものでは無かった。 消耗を気にせずに全力を尽くせるという事が、結果として負傷を軽いものとしているのだろう。 極力静かにし敵の立てる物音に気付いたら仲間に知らせ、回避出来る場所へ移動する。 出会ってしまった敵は速やかに殲滅する。 その意識のままに、キリエは進みながら変わらず壁に番号を振ってゆく。 (道中で金目の物や迷宮調査に役立ちそうな物を見つけたらGETする) そう考えながら喜平は迷宮を進んでいた。 今までの試練の経緯から、そういう類の能力は求められていないのだろう……とは思う。 (が、収集はダンジョン道に欠かせぬ物故……気構えは大事にしたい) 大部屋に近付くことでモンスターは増え、戦闘は更に2度発生した。 ただ、大部屋から出たばかりなのか敵の数は少なかった為、リベリスタ側の被害は殆どなかった。 そのまま6人は、2階中央の大部屋を目指す。 そして、通路の先に……扉のない大きな門が姿を現した。 ●更なる先へ 大部屋へと突入する前に、喜平と竜一は破壊の闘気を身に纏った。 部屋の周囲でも金属音らしきものは響き、鉄の馬と鎧の騎士が6人へと近付いてくる。 進路を妨害される前に一行は大部屋へと突入した。 扉のなかった門を……大きな、壁のような何かが塞ぐ。 広い部屋の四方に位置する門の全てが、同じように塞がれていた。 部屋の隅には3つの祭壇が設置され、部屋の中央には……全身を金属の鎧で包んだ 騎士が1人、鉄の馬に跨って6人の方を向いている。 その鎧の中には、白い煙のような何かが存在していた。 1つの祭壇の上に鉄の馬が姿を現す。 その時には、リベリスタたちも亡霊騎士も動いていた。 喜平は打撃系散弾銃「SUICIDAL/echo」を軽々と取り回し、高速の狙い撃ちで亡霊騎士の騎乗する鋼鉄軍馬の膝部へと銃撃を浴びせた。 軍馬はそれを物ともせずに石の床を駆け、騎士は重く鋭い斬撃を喜平へと繰り出す。 「騎士の亡霊よ! 試すならば試すといい! 俺が、結城竜一だ!」 竜一は力を籠めながら距離を詰めると、反動を厭わず限界を超えて自身の力を振り絞った。 自身の肉体が傷付くほどの力と速度を以て、宝刀の刃が騎士を斬り裂く。 「漆黒解放でパワー全開! みせてやるぜ、フルメタルセイヴァーの雄姿を!」 剛毅も叫びながら構えを取った。 (今こそみせてやる俺のとっておきを!) 「唸れ、俺のペインキラー!」 自身の受けた傷すらも呪力へと変換することで生まれた苛む痛みの刃を、剛毅は亡霊騎士へと向ける。 その状況を観察しながら、キリエは気の糸を伸ばし亡霊騎士と鉄の馬を狙い撃った。 智夫は聖なる光で攻撃を行った後、仲間たちの回復を行うために癒しの福音を室内へと響かせる。 そして理央は仲間たちが亡霊騎士へと攻撃を集中させ易いようにと、それ以外の敵の足止めを開始した。 自身は武器へと施した力も利用して鉄の馬をブロックし、影人たちは鎧の騎士やゴーストたちの抑えに回す。 可能なら集中攻撃に加われるようにと考えはしたものの、先ずは抑える事が第一だった。 数十秒に1体ずつ、3つの祭壇の1つからモンスターたちが現れるのだ。 その間も部屋の中央付近では……喜平や竜一、剛毅らと亡霊騎士の戦いが続くのである。 キリエは詠唱によって生み出した癒しの風で、傷付いた剛毅を包み込んだ。 智夫も仲間が倒されぬ事を何より優先し、天使の歌で仲間たちを癒す。 理央も徐々に増えていくモンスターたちを引き付けながら、何とか仲間たちを癒せないかと立ち回った。 影人は殆どの点において彼女と同等の力を持つものの、耐久力となると大きく劣る。 放っておけば徐々に減らされていくのに対し、敵は増えてゆくのだ。 巻き込むような仲間たちの攻撃で倒される個体もある為に大きくは増えないが、敵の増える速度は倒す速度を……やや上回っているようにも思える。 喜平は複数を狙える時は高速射撃で一帯を薙ぎ払ってはいたが、無理となれば強力な単体攻撃で亡霊騎士を攻撃し続けた。 竜一は限界を超えた攻撃を繰り返し、剛毅も受けた傷を武器にして、呪いの力で亡霊騎士を攻撃し続ける。 数を増やした敵集団がリベリスタたちを押し潰すか、その前に亡霊騎士が倒れるか。 その勝負に勝ったのは……リベリスタ達の側だった。 喜平の銃撃に続いて繰り出された竜一の斬撃が、亡霊騎士の鎧を……肩口から圧し潰すように、切断する。 その一撃を受けて、騎士は動きを止めた。 鎧の内側に存在した何かが薄れ始め、それと同時に戦っていた騎士や軍馬、幽霊たちが動きを止め……姿を薄めてゆく。 試しにタワー・オブ・バベルを使って、キリエは騎士に語りかけた。 (遙か昔の修練システムなら、もう生きてはいない気がするけど) 問い掛けに答えるようプログラムされていないだろうか? そんな風に思いながら。 今は無理でも、いつか……この迷宮の先に答えがある事を祈るような気持ちで。 キリエは亡霊の騎士へと呼びかけた。 「ねえ、いつか貴方たちの主に会えるのかな?」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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